投げやり読書メモ(完結)

これは2,001年頃の読書の記録です。古い本もありますが載せてみました。これからは(新版)に記録してゆきたいと思います。

お酒の健康医学 栗原雅直 ふたばらいふ新書
酒飲みへのグッド・レターという副題が付いている。
医学博士の著者もお酒が好きな方だ。失敗談と自戒を交えながらお酒との付き合い方を話している。お酒への愛着が伝わってくる。「アルコール患者の脳は記憶中枢をつかさどる部分に萎縮が起こる。しかし長い間アルコールを飲まないと、その萎縮はある程度まで回復することもある。神経細胞はやられてしまえば、回復不能なはずだが、不思議なことに実際そのような例がある。タバコもお酒も、その他の悪癖も、節制はいつ始めても遅すぎないものだ」

「死の医学」への日記 柳田邦男 新潮文庫
自分が病気になって目を向けることのなかった世界を知ることができた。末期医療に対する著者の考え方が記されている。見識や体験から積み上げられた重みのある提言である。

サッカーの世紀 後藤健生 文春文庫
サッカーが世界の人々の生活とどう結びついてきたかっていうようなことをヨーロッパとかアジアとか南米とか、それぞれの地域別に特性を分析して、そして未来の姿はどうなるかというようなことが書かれている。日本の分析のなかから「もっと個性を!もっと自己主張を!(略)こんな国では、やはり自由な発想を必要とするスポーツ、サッカーが強くなるとは、とてもではないが思えないのだ。(略)道路でどちらの方向からも自動車がまったく来ない時でも、赤信号だったら横断していけないとか、自分の仕事が終わっていても、残業している同僚がいれば、自分もついきあいの残業をするとかいったこと。そうした社会のあり方がおかしいと思っていても、声を上げずに我慢して、従順さを装っていなければいけないこと・・・社会は安全きわまりない社会であることは事実なのだが、社会からさまざまな、煩雑な規制を受け入れなくてはならないということをも意味している。」長い引用だが、共感します。

ずっと死体と生きてきた。 上野正彦 K・Kベストセラーズ
最近起こった事件の犯人像を監察医である著者の立場から説明している。監察医=死体の死因を検証する。公務員と同じ立場なので収入が少ない。臨床医=病院の医者、開業医など。収入が多い。事件に巻き込まれて無念のうちに死んでしまった人々を救いたい。信念を実行している著者は偉い。世の中にはいろいろな職業に就いている方がいる。

キーボード革命 諏訪邦夫 中央新書
この本は参考になった。ハードウェアでキーボードを軽視してはいけない。ブラインドタッチの重要性、優位性などを著者が自らの経験をもとに丁寧に説明している。会得するためには優位性を認識することが動機付けだ。

チェンジ・ザ・ルール エリヤフ ゴールドラット ダイヤモンド社
新しいコンピューターシステムを導入。仕事は合理化されているようだが利益の増加に結びつかない。逆にシステムの管理費が発生するシステムや機器を導入するだけでなく、それに合わせてルールを変えないとだめである。コンピュータがどうのこうのと議論するより、仕事のルールを変えることが必要なのだと言いたいようだ。そんなことは当たり前のことである。モジュール ソリュージョン プレゼンテーション その他しかも同じ用語が何回も何回も何回も何回も何回も…全然おもしろくない。最後まで読まなかった。

ナニワ資本論 青木雄二 朝日新聞社
資本家と労働者の関係がわかりやすくく説明されていた。資本主義は「勝者の論理」で動いている。現実から目を背け他人の情けとか、気持ちに期待していても誰も助けてくれないとのこと。基本的にはそうだが、人間誰でも弱い面があるはずだと思う。

フィジカル・インテンシティ 村上龍 光文社知恵の森文庫
W杯フランス大会前後の日本サッカー界やそれを取り巻くメディア、日本経済、政治では世界から相手にされない。言われてみればそうかなあ、くらいにしか思わない僕はこの本を読む資格はないのかも知れない。この本を読んで人生を転換するなんて大それたことはできそうにないが、過激さから目をそむけていてはこれからの社会は勝負できないということを肝に命じなければならない。サッカーについての読み物としてもおもしろい本だ。

フィジカル・インテンシティX 熱狂、幻滅、そして希望 2020FIFA WorldCupレポート 村上龍 光文社知恵の森文庫
W日韓、テレビを見ながら一喜一憂していたことを思い出す。職場でもテレビをつけて仕事をしていた。世界に乗り込むには多くの時間、才能、努力などが必要だ。サッカーでは、日本はそのスタートにようやく立つことができた。というようなことが書いてある。将来は楽観できない。むしろ苦戦するだろう。というようなことが書いてある。その通りだと思う。

まんが勝逃げ資本論 カッパブックス光文社 青木雄二
例によって独特の皮肉を込め、経済沈滞をもたらした国家、政治家、政治家を選んだ国民を批判している。自分は自分で生きるという作者の人生哲学を述べている。JCOの原発事故での国家、政治家、公共団体の無責任さ、責任転嫁を批判しながら社員の行動を命懸けと評価している。著者は本当は人間らしい行動、生活に期待し憧れていたのかも知れない。

めざせダウニング街10番地 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫
この本はいつ頃買ったのとかストーリーはどうだったかとかを憶えていなかった。しかし面白かったことだけは憶えていた。今読んでもおもしろい。この小説の登場人物の皆様は政治家として出世したいため、足の引っ張り合いを三つ巴で繰り広げるのだが、ところどころにフェア精神が見受けられるので日本の政治家とは違い、かっこいい。この作家らしく登場人物や背景は重みを感じさせ、展開に納得させられる。

ロシア皇帝の密約 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫
登場人物で一番興味深いのは冷徹優秀なKGBの情報員ロマノフだった。同僚のアンナを金銭欲のために欺いて首をしめて殺してしまうところ、生々しい急展開に驚いた。死体がその後トランクの中から発見されたときの場面もなかなかだ。冷徹ロマノフも最後には。作者の筋書きは最後はだいたいうまく行くと決まっているのだが、それでも十二分に楽しめる。何度か再読。映画版もあるそうだが観たことはない。

悪者見参 木村元彦 集英社
ユーゴスラビア情勢に興味があったわけではないが、入院するときに病院で読む本を買いに行ったらストイコビッチが表紙になっていたので買った。ストイコビッチは名古屋グランパスに在籍していた世界的な名選手だ。民族紛争、内戦、制裁、空爆そして崩壊。国土、人の心は日を追って荒廃していった。やる人、見る人に関係なくサッカーは精神的な支柱であり必要不可欠なものだった。ストイコビッチもそうだった。一般的にはセルビア人が悪者扱いされているようですが真実はどうなのか。読んだあとは、新ユーゴと独立した国々が複雑な関係にあることを知りながらも、どの国も応援したくなった。日本サッカーはこんな国々とまともに勝負ができるのだろうか。Wドイツでクロアチアと対戦する。

闇に消えた怪人 一橋文哉 新潮文庫
「かい人21面相」、グリコ森永事件のレポート。別に興味があったわけではなく、書店で立ち読みしていたら面白そうなので買った。読んでいて冷たく暗いものに触れたような、ぞっとするときがあった。過激派、暴力団、韓国マフィア、警察内部、地下組織など、いろいろ犯行説があるようだ。犯人一味は年老いた現在、僕たちと同じ日常社会で過去をひた隠しながらひっそりと生活しているとのことである。怖い話です。

胃がんと大腸がん 榊原宣 岩波新書
こういう本はたくさんあるがこの本は胃がん、大腸がんについての情報をコンパクトにまとめてあって読みやすい。医者の責任の重大さを述べている。手術が始まるまでの具体的な手順を説明しているところ、読んでよかった。患者は麻酔がかかった後のことは全然知らないのだが、これを読んでどのように進められたのかわかった。患者を大切にしてくれる先生だと思う。

会社蘇生 高杉 良  角川書店
破産した商社を会社更生法により再生しようとする、管財人、宮野弁護士の物語。テンポよく話が進み、難しい局面でも割とスムーズに切り抜ける。少し大雑把なので今ひとつ緊張感が維持できなかった。。

癌 患者になった5人の医師たち 黒木登志夫 角川ONEテーマ21
最初の小倉恒子さんの体験記。「きょうのような明日がくることを願って」というテーマである。現代社会では常に人より一歩先、今日より明日、明日より明後日が普通の考え方であろう。競争社会では当たり前でもある。「今日と同じでもいい」と思うことは弱虫、敗者の考え方なのだろうか。せっぱつまった環境を体験すれば決してそうではないことがわかる。

奇跡的なカタルシ 村上龍 光文社知恵の森文庫
あなたの人生よりサッカーのほうが面白かもしれない」という前文句だ。最後まで楽しく読めた。今の日本は救いようがないので日本を飛び出てしまえと言っている。しかし著者のように国に頼らず生きる力を誰もが持ち合わせてはいない。Jリーグ、全日本サッカー、欧州サッカーについての分析もおもしろい。日本の選手はすぐボールを離したがる、ファールされると情けない転び方をする。その通りだと思う。

驚愕の理由 ウルス・フォン・シュルーダー 毎日新聞社
「みじん切りの人生の真実」っていう帯がまかれている。本当にみじん切りである。短編小説、短編ものを読むときは漫然としていると筋書きがわからないことがある。集中していてもわからないことがある。この本にはそんなのが二編くらいあった。腹立たしいので再度読み返してもわからなかった。私の読み方が悪いのか。行き当たりばったりに人とふれ合って流浪することの素敵さ。僕ももこんな生き方に憧れる。誰もがそうだと思う。「戸口に立つ少女」不思議な雰囲気を持ったバンコクの女の子。出会いと別れを多く経験するほど人間は深みを増す。

健康を約束する45章 栗原雅直 ふたばらいふ新書
以前は検診で「肝臓に油がたまっています」「胆のうポリープです」「高血圧です」「糖尿病予備軍です」などという指摘を受けていた。不摂生に起因するものだった。今は手術をした後の胃の状況の関係で食物摂取量が減ったため血圧を除き比較的安全値となっている。胃が丈夫であればまたもとに戻るかも知れない。意志が弱い。この本は独特の語り口が親しみやすい。健康のありがたさを諭してくれる。

死体検死医 上野正彦 角川書店
その道のプロが自分の経験を通して愛、憎しみといった人間の心にあり方の大切さを世間に問うために書いたのだと思う。どんな職業でも人の心の裏側、出来事の裏側が見えてしまうことがあるのだろうが、著者のようにバランスのとれた人間性を持っていればそれを受け止めて、他の人へそれを道標として伝えることができる。以下は本からのメモ。
著者の父の言葉
「命がなければ、すべてはない。命の限り生きて、やるべきことはすべきである。国のために殉ずる、それも一つの生き方には違いないが、自由という個人の考えを尊重する思想もある。戦争で短い命を終えるならば、せめてこのような考えの人々やあることを、おまえも知っておくべきだ」
安楽死の許容六条件(昭和三十七年十二月名古屋高裁)
1.不治の病で、死期が目前に迫っている
2.患者の苦痛が見るに忍びない
3.苦痛の緩和も目的とする
4.患者本人の嘱託、承諾がある
5.原則として医師の手による(疑問=医師は生命をサポートするのが使命であると著者)
6方法が倫理的に妥当である(毒物を飲ませるとかは駄目)
性転換手術について
「性転換というと、男が女にあるいは逆に女が男になると思いがちであるが、実は男の睾丸を除去し、外陰部を女性器のように形成するだけで、卵巣を移植するわけではない。細胞の核の中にある、染色体に変更が生じてもいないのである。・・・本人は女になったつもりかもしれないが、実は中性なのである。そのことを自覚したとき、中性としての新たな悩みがつきまとうのではないだろうか。もって生まれた宿命に逆らうことは、むずかしいことなのだ。」
臓器移植について
「脳死と臓器移植を容認しているアメリカの人々は、電車から降りる際、前に立っている人に、降りますからどうぞおかけくださいと席を譲るように、脳死と臓器移植をとらえているという。・・・われわれ日本人には、そこまでフランクに命をとらえることはできないであろうし、脳死と臓器移植は日本人にはなじみにくいという国民性(感情)があるように思える。

私の事件簿 中坊公平 集英社新書
自分の仕事をとことん勉強すること、謙虚、誠実であることの大切さを教えられた。その後、中坊さんに崇高さを求めすぎると失望するらしいという思いを抱かせるような別の本を読んだ。成功の裏には汚さもあるだろうか。

十二の意外な結末 ジェフリ・アーチャー 新潮文庫
「ア・ラ・カルト」と「クリスティーナ・ローゼンタール」がおもしろかった。
「ア・ラ・カルト」の父は一流の料理人になり名声を勝ち取った息子を最後には認めるようになった。これは何回読んでも飽きない。
「クリスティーナ・ローゼンタール」の父はユダヤ人の神父であり、息子には厳格だった。息子は法律家として成功したが、父に秘密でドイツ人の娘クリスティーナとの愛を貫いた。悲しいことにクリスティーナと愛娘は相次いで亡くなった。息子は失意に落ち自ら後を追った。父は息子の遺書を生きている限り永遠読み返し続ける。息子の人生の開放を認めなかった自分に悔恨の念を抱きながら。
ふたつは爽やかさと刹那さが対照的な物語だ。

十二本の毒矢 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫
思ってもいない結末はいつものことであるが、ある短編は用心していても結局何も起らないものもあった。何も起らないことが罠。肩すかしをくらって「上手なもんだなあ」と感心する。「最初の奇跡」・・・悪魔も子供のときは天使である。「ヘンリーの挫折」・・・筋書きがよく理解できない。これ以降の短編を読む気がなくなった。

十二枚のだまし絵 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫
いつもながら意外な展開になるのだが、筋書きだけでなく登場人物の人間くささが楽しめる。「試行錯誤」や「眼には眼を」の刑事さんの洒落た描写、「TIMEO DANAOS・・・」のお調子者の主人公の情けなさ、「非売品」の学生画家の主人公の可愛らしさなど。「バクダッドで足止め」「高速道路の殺人鬼」などは傑作だと思う。

生 柳 美里
好きな人ががんにかかり、共に闘病した記録。元夫との間の子供に対する愛情の記録。がんについて、子供に対する愛情についてなど自分を中心に述べている。個性的過ぎてあまり共感できなかった。

俗物図鑑 筒井康隆 新潮文庫
25年以上前に買った本だと思うが、一度読んですごい本だという記憶があり再読した。筒井康隆は世間と主義主張上のトラブルがあり一時表に出なかったが、この頃また出ているようだ。俗世間は本来安心していられる場所のはずなのに、いつの間にかそうではなくなってしまって、間違った俗に占領されて自分の居所がないというようなテーマだと思う。。現代にも当てはまるところが多くあると思。表現上の問題で廃盤になっているのではないかと思う。

続・金融腐食列島 再生 高杉 良 角川書店
同僚推薦の一冊。おもしろかった。様々なプレッシャーに板挟みされながら、どうにか切り抜けて行く竹中。悪者、佐藤常務。こんな極端な人は珍しいがこういう人も現実にいる。児玉との人情中心の関係がおもしろい。サラリーマンは読んでおいた方がよいと思う。

続 病院で死ぬということ 山崎章郎 文春文庫
死を迎えることになった人の尊厳について考えたことがあるか。人が人らしく死ぬためには周りの人はどうすればよいのか。ホスピスの思想を学ぶことができる。施設だけが重要なのではなく心がその基礎にあると思う。

超整理日誌 野口悠紀雄 ダイヤモンド社
この本は平成8年ころのものであり時代の流れが感じられる。会社の会議に参加できない立場になると会社の一員であるという意識が薄れてくる。
「やまとことば」のおかしさ
「ふれあい」「やさしさ」…当時頃から使われ始めたそうです
地球にやさしい、自然にやさしい・・・軽薄だと指摘しているが確かにその通りだと思う
ふれあい電車、ふれあい快速・・・使い方によっては確かに怪しげに聞こえる
さらなる・・・「さらに」という副詞をこのように活用させることはできなはずであり誤用ではないか
インターネットでの情報検索のムダ・・・宝庫ではなくゴミの海だが(検索のコツをつかめば便利だと思う)

田宮模型の仕事 田宮俊作 文春文庫
昔、田宮の模型の戦車、戦闘機などが流行った。タミヤニュースっていう情報誌を購読して友達と回し読みしていた。社長の職業人としてのセンス、勤勉性に感心させられた。

燃ゆるとき 高杉 良 角川書店
赤いきつね東洋水産社長、森和夫さんの物語。森社長のように誠実であることこそ真の経営者になるための要件だということ。

百万ドルを取り返せ! ジェフリー・アーチャー 新潮文庫
再読。記憶はあやふやなもので、「あれなら読んだことあるよ」と言っても、中身は全然覚えていないということをいつものことながら痛感した。相場師にひっかけられて損失を被った金融家、医者ら四人が手を組んで逆に相場師をひっかけて、損失を取り返す。著者の小説は人物、場面などに必然性があり楽しい。

病院で死ぬということ 山崎章郎 文春文庫
病院は治療する場であって、人が死んでいく場所ではない。死と対峙したときの人間の尊厳について、死に行く人に対する周りのケアについて考えさせられる。この本を読んでいるとき娘が本の題名を見て「どうしてこんなに怖い本読んでいるの」そうではなく心を豊かにしてくれる良書。

名門ホテル乗っ取り工作 フリーマントル 新潮文庫
東京の姉が送ってくれた本のなかにあったので読んだ。題名の通り、アメリカのホテル近代的センスを持つ経営者がイギリスの名門ホテルに買収工作を仕掛ける筋書き。分厚い本でした。楽しめることは楽しめるがジェフリー・アーチャーを読んでしまうとこちらは影が薄くなる。


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