温 故 知 新

1 時計の仕組み今昔

  §1−1   ゼンマイ式時計「アナログ(相似型)」

 昭和50年(’1975)以前は掛け時計・置時計・腕時計等、時計といえば総てゼンマイ仕掛けの弾性力を利用して、テンプ或いは振り子の規則正しい周期運動を歯車に伝え、時を刻む仕掛けである程度の時間誤差は致し方なかった。従って、修理あるいは時間の誤差調整には熟練した匠の技が必要としました。また、ストッポッチによる計測は10分の1秒が限界でした。今日ではゼンマイ式時計は殆ど見かけなくなりましたが、宝石類を散りばめ職人芸による贅を尽くした手作りに近い超高級腕時計もあり、一部マニアには根強い人気があります。先日の新聞記事によりますと東京銀座の時計店では、50〜100万円はおろか数千万円もする腕時計が注文に間に合わないと報じられておりました。 
    こんな話 
年金生活者には夢のまた夢  アーッ  モッタイナイ!  モッタイナイ!


  §1−2   水晶時計「クオーツ」

 電子工学、取り分け超集積回路(LSI)技術の進歩により今日、時計と言えば水晶振動子とこのLSIを利用したクオーツ時計に取って変わりました。その動作原理は水晶発振子の周波数をカウントし、それを直接デジタル形式(計数型)で時刻を表示する方式と、水晶振動子の発信周波数でステッピングモーターの回転数を制御して針を動かす方法(アナログ型)があります。いずれの方法にしてもその精度は水晶振動子によって決まるもので故障も少なく、精度(月差 +−15秒以内)も格段に高く、電池交換以外殆ど手が掛からなくなりました。
 オリンピックを始め、あらゆる競技が100分の1秒を競うのはいまや常識、1000分の1秒を競うのもそう遠くはないかも知れませんが、このような計測を可能にしたのは将に水晶時計です。パソコンのタスクバーにある時間表示も水晶時計なのです。


  §1−3   電波時計 「水晶時計+誤差自動修正」

 正確な時刻及びカレンダー情報をのせた標準電波を受信することにより、誤差修正を定時的に行ない乍ら現在時刻を正確に表示する水晶時計のことです。標準電波の時刻情報は、10万年に1秒の誤差という超高精度を保つ「セシウムの半減期を応用した原子時計」によるものです。この電波は東日本地域では’99年開局の「おおたかど山標準電波送信所(福島県田村市 40KHz)」、西日本地域では’01年開局「はがね山標準電波送信所(佐賀市 60KHz)」の2ヶ所で送信され、1箇所で半径1000Kmがカバーできるので日本中どこでもこの恩恵を受けられます。
 標準電波は、正確な「分」「時」「1月1日からの通算日」「西暦の下2桁」「曜日」などの情報を1分間で一まとまりにして、しかも1日8回定時的に送信しますので時間調整は全く不要となりました。この標準電波を送信している国は日本の他、独・米・英・中国など一部に限られ、配信電波の周波数が違ったり、周波数が同じでも時刻情報に違いがあり、国際標準化はされておりません。従ってこの電波時計を持って海外旅行に出た場合は、普通の水晶時計(クオーツ)とかわりません。最近は高感度の埋め込み式極小アンテナが開発され値段も安くなり、市販されている時計の大半は電波時計に変わりつつあります。
 


 2  水晶振動子を用いたデジタル時計の試作


ただいまです。
 昭和44年に試作完成したデジタル時計兼ストッポッチ(現在も故障なし)
 上にあるのはシチズン社の電波時計
               デジタル時計の内部


  §2−1    昭和40年頃とは

 昭和40年代当初と言えば、「もう戦後ではない!」 工業立国日本の高度成長を遂げる礎の時期でもありました。白黒TV [ 始めて見たのは昭和23年の長野博覧会、自作は昭和31年(6チャンネルの時代)] ・洗濯機・冷蔵庫は殆どの家庭に普及し、かっては「高嶺の花・永久の夢」のように思えた自動車もボチボチ持てるような生活レベルになりました。米・ソの超大国は人間を乗せた宇宙ロケット開発に熾烈な競争を演じていた時期でもあり、昭和44年7月にはアメリカのアポロ13号が月着陸に成功し、世界中がTVの前で固唾を呑んだ時代でした。
 私は工業教育(電子関係)に携わっていた関係で、当時はパルス・デジタル・自動制御関係の研究を主にしておりました。特に自動制御関係(冴えたるものが航空機の自動制御)が花盛りでラプラス変換、線形二階微分方程式の解析等には「アナログコンピューター」が威力を発揮しました。東京など先進県の講習会等に出席すると決まって伝達講習をさせられた苦労が思い出されます。デジタル関係の書物・参考文献は殆どなく、ICロジック等はまだ入手困難な時代、東京秋葉原の電気街まで特急片道4時間かけて部品調達に出かけたり、創作回路はプリント基板から作ったものです。このデジタル時計は回路設計から試作・完成まで満2年間を要しました。デジタル時計が市場にでたのは昭和50年頃だったと思います。

  §2−1    1+1=  これは正しいか? (エジソンはどう考えたか ?)  

 人間は指が10本あるから10進歩が使われるようになったと考えますが、全人類が指8本であったなら8進歩が実用化されていたのではないでしょうか。偉大な発明家エジソンは1+1はどうして2になるのか、教師を困らした話は有名ですが彼は既に1+1=10(イチゼロと読む)と二進歩を考えていたのではないでしょうか? 
 時計には10進歩の他に、2進歩・12進歩・24進歩・60進歩等、種々の桁上がりとそれに伴うリセット方法が必要で、電子回路でもこれを実現することは容易なことではなく、私も試行錯誤の連続で回路設計の大半をこれに要しました。

 小学校低学年の子供達に「時間の概念」を理解させるのは大変なことです。それは小学校入学以前に親・兄弟から10進歩など関係なく歌のように教えられ覚えたからで、いきなり60進歩は誰しもかなり抵抗を感ずるものです。時計を教えるときはアナログ時計の模型ではなく、大きな算盤(デジタル理論)を使って、しかも位取りを明確にしてから1個づつ加算し、桁上がりとリセットを教える方法等は小学校の先生方・教材製作メーカの方々 如何なものでしょうか?

   §2−3    電気でカズを数えるにはどうしたらよいか?

 水晶振動子から発生したパルス波を特殊な電子式記憶回路でカウントし、到来したパルス数をデコダーという翻訳器を通して計数管に伝え、デジタル表示を行ないます。従って、時間の誤差は水晶振動子固有のもので、製造されたときに決まってしまうものです。常温でも10のー4乗位の精度があり、月差 +−15秒位の精度が得られます。


   (少し専門的な解説)

 電子回路で入力されたパルス数をカウントするには頭脳と同様、記憶回路が必要です。トランジスター2個をDC結合(直結または直流結合という)した双安定マルチバイブレター(フリップフロップ 略してFFと言う)という回路がこの記憶回路で1ビット(”1”または”0”の最小単位で 1 BITと呼ぶ)記憶できます。これを最大四個従属接続することで16進カウンターができ、AND(論理積)回路で途中に帰還パルスを加えることにより、N進カウンターが可能になります。
 1MHZの水晶発信子[内部に分周機能あり、出力側では10KHZ]の周波数を分周し、10HZをこのFF回路に通すと1/10秒を、100HZを加えると1/100秒がカウントでき、時計にもストッポッチにも使えるわけです。
 FF回路を16個従属接続したものが現在パソコンの演算中枢部を担う16BIT CPUのACC(アキュームレーター)です。従って、この水晶時計にもコンピューター技術の論理が使われております。そして時計の背景には各FF回路からの制御線が50本引き出されており、時間ゲイトの制御にも利用できるよう設計されております。


  技術的な詳細につては「新潟県 工業教育紀要 第6号  (昭和45年発刊)」に掲載されています。
      
詳細については下記矢印のところをクリックしてください。
         
                     

      tokei.pdf へのリンク