雪實賓館 雪實様
PART1

自分の小学校時代の思い出の映画というのが何本かあります。
たとえば、初めて保護者なしで映画館に見に行った「十戒」、その後のホラー嫌いのトラウマになってしまった「マニトウ」、
学校の映画鑑賞会で唯一かつ強烈に印象に残っている「幻の馬」。
そして、親父と一本だけ一緒に見に行ったのがこの「猫は生きている」でした。 親父がどこかでチケットを貰ってきたのかそれとも学校かなにかで優待券を自分で貰ってきたのか、その辺の記憶は定かではありませんが、ねだって連れて行ってもらったことは覚えています。意地っ張り同士の父子だからお互い滅多にお願いしたりされたりしないんだけど、今思えば信じられないくらい素直にお願いして、あっさり聞いてもらったな〜とちょっと感慨。なんて書くとまるで親父はもういないみたいだけど、ちゃんと存命です。と、脱線はこれくらいにして。

1975年(1977年という資料もあり)大映作品、人形劇です。もとは絵本で、それを京芸という劇団が人形劇にし、さらに映画化されたようです。

《あらすじ》
昭和20年東京。少年は、母と幼い妹と暮らしていた。本来なら疎開しているはずなのだが、父親がいない(と記憶しています)家を守るためなのか、戦時下の帝都で暮らしていた。少年の家の近所には、やはり幼い子供たちと暮らす野良猫も住みついていた。苦しい時代だが、優しい母と無邪気な妹そして猫たち、仲良く暮らしていた。
そして、3月10日がやってくる。この夜帝都上空を埋め尽くしたのは、約300機の米軍の爆撃機B29だった。後の世に言う東京大空襲。雨のように降り注ぐ焼夷弾と炎に埋め尽くされる下町の家々。少年と家族も、そして猫の親子たちも、吹き荒れる炎の嵐の中を逃げた。生きるために。 果たして少年は家族を守れるのか。猫の親子は助かるのか。燃えさかるこの世の地獄の中で、彼らの運命やいかに。(おぼろげな記憶を辿って書いたので、誤認があってもご勘弁を)

残念ながら明るい話ではないです。でも、小学校時代にそれも一度見たきりなのにラストシーンが目に焼きついて離れない、そんな強烈な印象を与えてくれた作品です。
動物映画というよりは反戦映画の類なのかもしれません。けれども、猫の目を通して描くことで単に凄惨なだけの話にならないで済んでいます。子供向けに戦争を伝えるための話ですから工夫されているのでしょう。とにかく、少なくとも当時この映画を見た子供たちには強烈な印象を残していると思います。

さて、見てから20年以上になり、もはや見るチャンスはないだろうと思っていたのですが、ビデオ化されていることを最近知りました。もちろんレンタル店に並ぶことはまずないのですが、図書館などの公共施設の視聴覚教材として採用されている例が少なからずあることも知りました。ひょっとしたら、近所の図書館にあるなんてこともあるかもしれません。
また、サーチエンジンで「猫は生きている」をひくと案外たくさんひっかかります(実はうちのHPも)。ビデオの発売元の広告もあってそこにビデオのパッケージ写真があります(http://www.cinemawork.co.jp/neko.html)
ほのぼの系の動物映画を期待される方にはちょっと難がありますが、もしチャンスがあれば見て欲しい一本です。

『猫は生きている』(1975年・日)
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雪實賓館 雪實様
PART2

猫のライバルといえば、何を思い出しますか?
犬を思い浮かべる人も少なくないでしょうけど、永遠のライバルはやっぱりネズミですよね〜。直接対決すれば本来は猫のほうが強いんでしょうけど、某米国製アニメーションに出てくるネズミのJは、同じ家に住む猫のTを圧倒。あまりの強さに猫のTにエールを送りたくなっちゃいます。

ということで、ほんとうは猫大好きでロシア映画の「こねこ」を書きたかったんだけど、取られちゃったのでネズミの映画を書きます。って、だからといって「こねこ」を書くたぬさんとわたくしめがライバルというわけではないので念のため。熊と狸では争いになりませんがな(笑)

映画の主役になる動物では圧倒的に犬が多いようで、ネズミはそれほど多くないです。でもそんな中で「マウス・ハント」は一級品です。

◎あらすじ
兄アーニー。一流コックとして名をはせ、経営する店は大繁盛。しかし、油ギッシュな足が6本ある生物のせいで閉鎖。いっきに苦しい生活へ追い込まれる。
弟ラーズ。父の遺した製糸工場を守っているが、設備も製品もおんぼろ。とっくの昔に経営難の上、勝気な女房には逃げられてしまう。
にっちもさっちもいかなくなってしまった二人は、父の遺したおんぼろ屋敷へやってきて失意の寝床につくのだった。
しか〜し、この屋敷が金の卵だった。有名建築家の手になるもので、数百万ドルの価値がある。これで人生建て直し!!
二人は高く売るべくリフォームを始めるのだった。しか〜ししかし、この屋敷には先住者がいた。一匹のネズミ。たかが一匹のマウス。でもこいつ、とんでもないスーパーマウスだった。はたして二人はこのマウスをやっつけて、幸せを手に入れることができるのか……。

主役の兄弟を演じるネイサン・レインとリー・エヴァンスももちろんうまくて映画を守り立てているんですけど、やっぱり珠玉はマウスでしょう。信じがたいのはほとんどSFXを使わずに撮影されたこと。マウスの行動のほとんどは、生の"演技"なのです。詳しく書くと面白くなくなるので省きますけど、「えっ、これが生なの?」と思うようなシーンの連続です。SFXなのはほんの数箇所です。

もうひとつ忘れられないのはクリストファー・ウォーケン。彼が演じるのは害虫・害獣駆除業者。業を煮やした兄弟が依頼するわけですが、う〜んいい味出してる。マニアックで無駄にかっこいい、でもどこか抜けている役をやらせたら天下一品のウォーケンにぴったりです。登場シーンは多くないですけど、ばっちり印象に残るはずです。
未見の方はご覧あれ。きっと損しないですよ。ぜひぜひ(笑)

『マウス・ハント』(1997年・米)
監督:ゴア・ヴァービンスキー。
出演:ネイサン・レイン。リー・エヴァンス。クリストファー・ウォーケン。マウス。
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