BY とめ

 猫や犬、ウサギにカメにサルにイルカ。とにかくなんでも動物が出ていれば動物映画なんだけど、ただ動物が出ていて
彼らが人間の役者を上回る名演技を披露したからってそれだけで終わる映画を主催者であるσ(^-^)が取り上げたと
なっちゃ、わざわざ動物映画特集とまで銘打って、何人もの方々にご協力願った意味がない。(なんてデカイこと言って大丈夫か?<とめ(笑)
 そして中には動物映画は好きじゃないとおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。そんな方にもぜひともとお奨めしたいのがこの『フルーク』なんです。

 簡単にあらすじをご説明すれば事故で死んじゃった人間が今度は犬に生まれ変わっちゃう。ま、これだけだとコミカルな映画を想像されるかもしれませんが、ところがどっこいこの映画はそんなに甘くない。
犬に生まれ変わったのはいいけれど、この主人公は序々に過去の記憶を蘇らせてしまう。しかもその蘇った記憶というのが自分には愛する妻と子がいて、友人のせいで事故に遭ってしまったというもの。過去に囚われたフルークは愛する妻と子の元へ、そして自分の敵である友人への復讐を実行するのですが、単純に犬に生まれ変わった人間の復讐劇でもないんですよ。

人間としても犬としてもうまく生きて行けなかったとラストに語る主人公のセリフが生きるってホントにむずかしいよなぁ・・・としみじみ感じさせる。深く考えるともの哀しい物語です。そのもの哀しさに涙が誘われるそんな映画です。

 登場人物のほとんどが、何らかの哀しみを胸に生きている。その生き方がσ(^-^)の心の琴線に触れるのかもしれません。
2回目にこの映画を観たときは冒頭に登場するホームレスの女性が出てきただけでもう涙腺緩んじゃってるくらいでした。

 それぞれに哀しみを胸に秘めているのだけれどこうしてこうなって・・・なんてそれぞれに対する説明は全くない。ちょっとしたセリフや行動にその哀しみがふっと漂う・・・その作りがいいんです。そんな作りだから登場人物みんなが生きている。

そして主軸のもの哀しい物語の中に映画の中のワンシーンとしてホントにさりげなくメッセージを織り込んだシーンが二つ。
まず野良犬の収容所。ここであっさりとそこの所員が口にする「明日にでも眠らせてしまいましょ」おいおいちょっと待てそんな無表情に言っていい言葉か?
次に出てくるサルや犬、鳥にねずみにたくさんの動物たちが囚われている化粧品会社の実験室。
生殺与奪は人間が握っていると完全に勘違いして生活している我々人間のエゴをみせつけられたような気になってしまう。
こんなことは許されないぞ!と大仰に構える訳でもなく、ほら!泣け!かわいそうだろう!とおおっぴらにお涙頂戴を誘う訳でもない。だからσ(^-^)はこの映画好きなんですよ。

自分が変な被害者意識に囚われたり、ひたすら自己中心的に物事を考えるようになっていたりした時にはゆっくりとこの映画を観たい。σ(^-^)にとってはそんな一本です。
人生楽しくって仕方が無いぜ「ガハハ!」という方にはちょっと辛気臭い映画かもしれませんけどね。(笑)

幾ばくかの哀しみを胸に秘めながらも過去に囚われていては決して幸せになんかなれない。その日その日をただ終わらせているだけ・・・でも姿勢は必ず前に向いていないと・・・ネ。そんなことをかすかに感じさせてくれる映画です。

『フルーク』(1995年・米)
監督・脚本:カルロ・カレイ
出演:マシュー・モディン。エリック・ストルツ。ナンシー・トラヴィス。サミュエル・L・ジャクソン(ランボー)。
BACK