PARADISE CINEMA PARADISE BOOK
くろねこ様

動物と話をする、そんなことができたら素敵ですね。
でも、どれほど仲良くなっても、動物の言葉って分からない。 声の調子や仕種で、こちらは相手の言いたいことが分かったつもりでも、実際に、何を言おうとしているのかは、やっぱり、分からない。

この作品で描かれている犬と人間の関係で、すごく素敵なのは、犬たちが、それぞれ、その家族の中で1番仲のいい子供を、自分が「守っている」と思っていることです。人間は、自分たちが犬を「飼っている」と思っていますが、犬の方は、人間の方こそ「守られ、慈しまれる」べき存在と考え、ものすごい思いやりと愛情をそそいでくれている。

犬のチャンスとシャドウ、猫のサシーと一緒に暮らす家族は、彼らを見捨てるつもりなどみじんもなくて、ただ、ほんの少しの間、他の人に預けただけでした。でも、そんな説明も、人間の言葉が分からない犬や猫に通じるわけがなく、だから、彼らは、大事な家族を探すべく出奔することになるのです。

最初のうち、チャンスだけは、昔、飼い主に捨てられて、収容所に送られた経験があるために、「捨てられたんだよ」と斜に構えるところがありますが、でも、本当にそう信じ込んでいたのだったら、他の2匹と一緒に行ったりはしなかったのではないでしょうか。 そんなチャンスと、気取り屋の猫のサシーは、実によく口げんかをしています。と言っても、本気で相手を傷付けようとするのではなく、「自分の方がエライ」ことを相手に認めさせ、優位に立とうという、なんだか、子供のケンカみたいな、おかしくもあり、微笑ましくもあり、というものなんですけど。それを鷹揚に見守るのは、さすが大型犬のシャドウ。

彼らが、旅する道は、野を越え山越え、川も越え。一筋縄では行きません。食べるモノだって、人間の家にいた時のようには行きません。おまけに、荒野には危険な大型動物までいるのです。時には力を合わせ、時には仲間とはぐれ、でも、何があろうとも、大切な人を求める旅、あきらめるわけにはいかないのですよね。それに、困難な中にも素敵な出会いもあるのですから。

この、「奇跡の旅」は、1963年に作られたディズニー映画「三匹荒野を行く」のリメイク版で、ベースとなる話は、変わっていません。大きな違いは、「三匹〜」の方が、動物の声はなく、ナレーションをいれているだけなのに対して、「奇跡〜」は、俳優たちが動物の声を吹替えていること。
それから、もう1点の違いは、飼い主一家の家族関係を、もう1つのモチーフとして取り入れていることです。
「三匹〜」では、一人暮らしの老人であったのに対し、「奇跡〜」では母親と子供3人、そして母親の再婚相手、という家族構成で、その再婚相手の仕事の都合で、一時期、動物たちと離れて暮らす、という設定になっています。だから、「三匹〜」が、どこかドキュメンタリー風なのに対し、「奇跡〜」は、完全にドラマ重視。
その分、「奇跡〜」の方が感動も大きくて、私好みの作品になっています。

子供と動物には弱い私です(笑)

『奇跡の旅』(1993年・米)
監督:デュウェイン・ダンハム
原作:シーラ・バーンフォード。
声の出演:マイケル・J・フォックス。サリー・フィールド。ドン・アメチー。
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