監督：ポール・グリーングラス。
出演：コーリイ・ジョンソン。デニー・ディロン。タラ・ヒューゴ。

２００１年９月１１日。アメリカが・・・世界が忘れられない日。アメリカ国内の空港を飛び立った４機の旅客機がほぼ同時にハイジャックされ、２機はワールド・トレード・センターに、１機はペンタゴンにそれぞれ激突し炎上した。しかし残る１機、ユナイテッド９３便はターゲットに到達することなく、ペンシルヴェニア州に墜落した。乗客４０人を乗せたこのユナイテッド９３便に何があったのか？
まるでドキュメンタリーだ。映画として面白いか？と問われれば私は面白くないと答えるだろう。でもそれは娯楽としての映画と考えればという話で、決して観てつまんない駄作だと言う意味ではない。この映画はすごく誠実な映画だと思う。有名な俳優は一切使わず、管制官や軍関係者の一部はあの日実際にその場にいた本人が自ら演じているそうで、ありのままを徹底して描きだそうとしているのだということがひしひしと伝わってくる。神に救いを求める言葉はテロリストからもそして乗客たちからも発せられる。あの日の犠牲者たちには何の罪もない。ただあの日アメリカにいて、ワールド・トレード・センターに、ペンタゴンに居合わせ、そしてあの４機の飛行機に乗り合わせただけ。乗客たちが自分たちに襲いかかってくるのに恐怖を覚える若いテロリストたちの姿に等身大の人間の姿が映され、決して彼らが悪の化身ではないという描きかたをされている。確かにこの日のテロは許されるべきことではない。だけどこれが戦場だったら許されるのだろうか？戦争という名目をつけたからって、それぞれの今日、そして明日を奪うなんて行為は絶対に許されるべきじゃないんですよね。リアルであるからこそ痛いし、悲しい。だけど本作はリアルに描くことで、この事件をどうみるか？というのを突きつけているような気がする。

2006年８月19日（動物園前シネフェスタ）