『Dear フランキー』DEAR FRANKIE(2004年・英)

監督:ショーナ・オーバック。
出演:エミリー・モーティマー。ジャック・マケルホーン。ジェラルド・バトラー。

スコットランドの南西部、グラスゴーに近い海辺の町。リジーは一人息子のフランキーと母とこの町に越して来た。彼女は夫から逃げるためにスコットランド中を何度も引越し、転々としていた。しかしその理由はフランキーには伝えず、彼の父親は船乗りで世界中を旅しているのだと教え、父親のフリをしてフランキーと手紙のやり取りをする。しかしこの手紙はリジーにとって耳の不自由なフランキーを近くに感じられる唯一の手段でもあった。そんなある日フランキーに父親が乗っている船だと教えていた「アクラ号」が彼女たちの住む町の港に寄港するという。父親に会えると喜ぶフランキーに真実を告げられないリジーは嘘の父親役を探すことに・・・。
この作品、予告編も観たことがなく雑誌ぴあでなんとなく気になり劇場へ足を運んだのですが、出演者の名前にジェラルド・バトラーをみつけて、あれ?どっかで聞いたことある名前だなぁ〜・・・としばらく考えていてやっと「おぉ!ファントム!」と思い出した次第でして・・・(^^;)。やはりおやじじゃないのがいけないんだろうか?(笑)。なんてことはさておき・・・。この映画は私の好きなパターン、悪人の出てこない映画です。そして耳の障害を持ちながらも聡明で優しい少年フランキー。耳が不自由であることを卑下するわけでもなく、まっすぐに対等に人々に接する彼の姿にふと天使の姿を見た。偽の父親役をもしかしたらフランキーは最初から見抜いていたんじゃないかなぁ。そして反対に彼に接する周囲の人々も彼を特別扱いせずにごく普通に接する。フランキーを守るためにと必死になる母親リジーの姿だけが現実的で、かえってその現実味が不快感を及ぼしてしまうというなんとも不思議な映画です(笑)。でもその感じた不快感を自分の中にみつけないようにすれば幸せになれる。優しくなれる・・・というの意味なのかもしれませんね。ほんのりとあったかくなれる映画でした。

2005年8月22日(OS劇場C・A・P)

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『SAYURI』The Memoirs of Geisha(2005年・米)

監督:ロブ・マーシャル。
出演:チャン・ツィイー。渡辺謙。ミシェール・ヨー。役所広司。コン・リー。

貧しさから、幼くして祇園の置屋に売られた千代は、自分がそこにいる理由も芸者の意味さえもわからず、ただ同じく家を一緒に連れ出され今は女郎屋に売られてしまった姉を探すことだけを考えていた。不思議な瞳ゆえに売れっ子芸者の初桃に苛められながら辛い下働きの日々を送る千代はある日、姉と出会い共に花街から逃げ出そうとして失敗し、芸者にはなれず一生を下働きとして置屋に奉公しなくてはならない身となる。辛い毎日に耐え兼ねて1人涙する千代に優しく声をかけてくれた一人の紳士。「会長」と呼ばれ芸者たちと共にいた彼に惹かれ憧れる千代は彼にもう一度会いたい。その思いでひたすら辛い置屋での生活を耐え忍ぶ千代に、別の置屋の売れっ子芸者で初桃のライバルでもある豆葉から芸者として育てたいとの申し出があり、芸者としての道が開かれる。そして芸者「さゆり」の運命が始まる。
冒頭、日本語でセリフがやりとりされ、字幕版を観に行った私は「え?間違えた?」とうろたえ、気分的に落ち着かない始まりとなる。冒頭の映像の流れだけで内容がわかる部分だけが日本語で、そのあとは英語になり字幕が出たのでここでやっと一息(^^;)。びっくりした。でもこの映画観終えて、吹き替え版も日本のキャストはすべて自分で吹き替えているのだと知り、吹き替えにしればよかったとすごく後悔している。だって、変な感じで英語に日本語が混じってるもんだから、それが気になって気になって仕方がない。「フジヤマ、ゲイシャ」という類ならわかるんですが、「チヨチャン」とか「ノブサン」とか「オネエサン」とか・・・勘弁してください。予告の時点でこれは日本ではない!と叩かれていたので、私ははなっからこれは日本ではないんだ。日本だと思ってはいけないのだ。と自分に言い聞かせて観ていたのに、日本語が耳に入っちゃうと・・・ねぇ。まぁ、着物の着方がとか、髪型とか、神社で賽銭入れて鐘がゴーンとか(笑)、日本人ならではの怒りはここでは置いておいて・・・新聞のこの映画の評に、日本人が描くなら絶対に入っている「侘びさび」をとっぱらったという言葉があり、思わず大きく納得(笑)。でも考えるとこの「侘びさび」をとっぱらっちゃったら、日本人らしい心情。つまりさゆりをみつめつつも、自分の片腕である延に遠慮する会長の心の襞。芸者を嫌いながらもさゆりに一途に惹かれつつ自分の思いのたけをぶつけきれない延の日本人ながらの不器用さ。が描ききれてないんですよねぇ。そして日本人なら必ず描くであろう密かに健気にそして熱く「会長」を思い続けるさゆりの心の葛藤も、「私は会長が好きなんだ!」とあまりにもストレートで何か今ひとつしっくりこない。そのおかげかラストは何とも安っぽいラブストーリーになっちゃってるんですよねぇ。でも、そのラストの謙さんがかっこよかったから、私はそれでよしと納得しちゃったけど(笑)。なんだか貶しているような感想になっちゃってますが、決して観て損する映画じゃないし、日本人ならではの感覚をとっぱらっちゃえば映像はきれいだし、キャストは豪華だし、よろしいんじゃないでしょうかね。

2005年12月12日(アポロシネマ)

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『16ブロック』16blocks(2006年・米)

監督:リチャード・ドナー。
出演:ブルース・ウィリス。モス・デフ。デヴィッド・モース。

夜明けまでの張り込みを終え、帰宅しようとしていたジャック・モーズリーは上司に呼び止められ今から囚人のエディを16ブロック離れた裁判所まで送り届けるように命じられる。徹夜明けだと文句を言うジャックだが「15分もあれば済む仕事だ」と説得され、しぶしぶ仕事を引き受けるが、護送中突然何者かに襲われる。なんとかバーに逃げ込んだ二人の前に現れるジャックのかつての相棒フランク。そこで彼はジャックにエディは警察の不祥事を目撃していて、彼が証言するということはフランクたちを窮地に立たせることになるのだと打ち明け、エディを置いてこの場を立ち去るように言うが、ジャックはそれを拒否し、エディを連れ彼らを振り切り裁判所を目指す。NY市警を敵に回した最悪の護送が始まる。
いやぁ、まさかこの作品がここまで面白いとは。劇場で予告編観たときに少しは気になっていたんですけど、こんなにも評判を博す作品だとは思いもよりませんでしたよ。確かに昔ながらの映画好きなら大概はまっちゃうでしょうね。いかにも警察署内のお荷物的な存在であると、ありありとわかるブルース・ウィリス扮するジャック・モーズリーは、酒浸りでヨレヨレで、それでも仕事にやってきてるのが不思議なくらいの警察官。ヨレヨレでやる気ないのぉ〜?って感じがよく似合ってる。そしてエディ役のモス・デフって誰?なに?このやたらと癇に障る声は?あ〜!もう!うるさい奴だなぁ〜!ってジャックが感じたであろうそのままが観ているこちらにもひしひしと伝わる。なんてドンピシャなキャスティングなんだ(笑)。逃走劇としてのアクションもまずまず面白いけど、この作品では人との関わりが巧く生きてます。調子のいいエディの人生やりなおせるんだという前向きさに感化されていくジャック。でも、これエディもジャックの命がけでエディを守ろうとする優しさに感化されたから「きっとやり直せる」という自信を持ったんじゃないかな?って思います。かっこよくって、渋くって、清清しい映画です。それにしてもこの作品でのブルース・ウィリス、顔色は悪いし、無精ひげで汚らしいし、おまけにだらしなくでっぱったお腹で見た目は本当に情けなく、どうしようもないんだけど、そのどうしようもなさが少しずつ冴えてくる。あのなぞなぞの答えをエディに告げるシーンの彼はもう最高にかっこいいです。悪になりきれないデヴィット・モースもかっこよかったですけど。

2006年10月30日(動物園前シネフェスタ)

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『007 カジノ・ロワイヤル』CASINO ROYALE(2006年・英)

監督:マーティン・キャンベル。
出演:ダニエル・クレイグ。エヴァ・グリーン。マッツ・ミケルセン。

イギリス諜報部MI6の諜報部員に与えられるコードネームの頭の「00」は殺しのライセンス。そのライセンスを与えられるために必要なものは能力と二人の人間を殺したという実績。その実績を積み「007」のコードネームを与えられたジェームズ・ボンドはテロ組織から依頼を受けたとされる爆弾魔を追ううち、テロリストたちから預かった金を株の空売りやギャンブルで増やすことを生業としているル・シッフルにたどり着く。そして株の空売りで資金を増やすために彼らが爆破しようとしていた飛行機はすんでのところでボンドに阻止されたル・シッフルが次に選ぶのはギャンブル。そのギャンブルでのル・シッフルの勝ちを阻止するために政府が用意した1500万ドルを手に監視役である財務省の役人ヴェスパー・リンドと共にカジノ・バー“カジノ・ロワイヤル”にボンドは乗り込む。
新しいボンドが選ばれるたびにいろいろと話題になるこのシリーズ。でも私はこのシリーズにはあまり思い入れがないんですよね。だから誰がボンドになっても「へぇ〜この人か・・・」と関心もない。ただあまりに自分のイメージから遠いと「これはなぁ〜」ってのは勝手なもので思いますけど。で、この作品のダニエル・クレイグ。『ミュンヘン』で初めて見てその後、彼が新しいボンドだと聞き、実はちょっとどうなんだろう?って気はしていた。そして、やたらと出てくるブーイング。だめそうだなぁ〜と思ってて、この作品が公開されるとなんだかやたらと評判がいい。「あれ?」なんだったのよ今までのブーイングはと思いつつ劇場で観た予告編。なんかよさそうじゃない。ってことで劇場に出かけたのですが・・・アハハ・・・いいですわコレ。今までの007シリーズと違ってすごい飛び道具は一切出てこないで、真っ向勝負。冒頭のどこまで行くんだ!という超アクションの追跡シーンにグイっと引っ張り込まれ、若さと肉体を武器にしたニューボンドに無理なく引き込まれました。案外こういう真っ向勝負路線のニューボンドいいんじゃないですかねぇ。ただもう少し男の色気があると言うことなしなんですけどね。

2007年1月6日(アポロシネマ プラス1)

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