『イントゥ・ザ・ワイルド』INTO THE WILD(2007年/米)

監督:ショーン・ペン。
出演:エミール・ハーシュ。マーシャ・ゲイ・ハーデン。ウィリアム・ハート。

ヴァージニアの裕福な家庭に育ち、優秀な成績で大学を卒業したクリス・マッカンドレス。彼は一人旅に出る。最初は中古の車で出かけた彼は、途中車を捨て紙幣さえも燃やしヒッチハイクを繰り返しながら、本名を捨てアレキサンダー・スーパートランプという偽名で遥か北アラスカを目指す。

なぜこの作品がアカデミー賞で無冠だったのか?不思議で仕方がない。人が生きていく中で、その時々に自分の中に去来するいろいろな思い。まるでそれを投影するかのように流れていく物語。彼が途中出会った農場主のウィル。彼は言う「おまえはまだ若い。頭でっかちになりすぎるな」私もクリスに対して抱いた印象もこの通りだった。頭がいいのはわかる。でもそれだけですべてを語っちゃダメじゃないか、頭がいいからそう考えるのか?でも彼はその自分の若さもちゃんとわかってたんですよね。それでも目指したかった・・・アラスカを。聡明で生真面目すぎたのか・・・。ヒッピーの少女にクリスは言う「手をのばして自分の夢をつかんで」彼の夢はなんだったのだろう?ずっと彼の心を捕らえていた父への嫌悪。それの払拭か?自分探しの旅?自分で見つけたいのではなく見つけてほしかったのか?息子がいなくなって変わっていく両親。そして両親に抱かれる夢を見て眠りにつくクリス。 ショーン・ペンって優しい人なんだなと思う。この映画の語り口は本当に優しい。そして押しつけがましくなく諭すようなそんなイメージがある。バーガーショップでバイトするクリス。店長が言う「アラスカ行きの手助けをしてあげたいけど靴下ははいてね。」クリスがいなくなり悲しみにくれる父、映し出される足元には素足に履いている靴。どんなに嫌っていても同じ血。消し去れないものがそこにあるんですよね。いなくなってから気付いても本当に遅い。彼が無事街へ帰っていたらどうなっていただろう?いや、それは考えるのはよそう。「幸福が本物となるのは誰かとわかちあったとき」彼が導き出した答えだけを私は胸にしまっておきたい。悲しくて涙が出るんじゃない。優しくて涙が出る。そんな映画でした。

2008年10月6日(MOVIX堺)

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