『憲兵とバラバラ死美人』(1957年/新東宝)

監督:並木鏡太郎。
出演:中山昭二。鮎川浩。細川俊夫。若杉嘉津子。天知茂。

昭和12年10月。仙台歩兵第四連隊の炊事用に使われている井戸から首と四肢が切断された女性の胴体が発見される。その死体は死後6ヶ月を経過し、妊娠までしていた。死体が発見された場所から軍内部の者の犯行は歴然としている。犯人探しに躍起になる仙台憲兵隊だが、軍は難航する捜査に東京から小坂曹長を事件解決のために派遣する。対立する仙台憲兵隊と小坂。やがて仙台憲兵隊は事件当夜井戸の付近で不審な行動をしていた恒吉軍曹を逮捕し、恒吉の情婦が行方不明になっていることから恒吉を犯人と断定、口を割らせるために拷問にかける。恒吉の犯行とは思えない小坂は恒吉が拷問で殺されてしまうまえになんとしても犯人をみつけなけらばならない。女の身元すらわからない状態にあせりながらも、死体の状況から冷静な推理を進め陸軍病院に目をつける。
それにしてもすごいタイトルだなぁ(笑)。タイトルだけで一体どんなとんでも作品なんだろう?と思っていたら・・・なんとすごくしっかりとした推理ドラマじゃないですか。死体の切断シーンが描写されるでもなく、殺された女性が幽霊となって化けて出るわけでもない。普通の推理ドラマより異色なのはただただ軍隊の中で死体が発見され、犯人が軍人だってことだけ。でもこれ冷静に考えると死体を軍内部の井戸に遺棄しなければこの犯人は捕まらなかったのでは?(笑)。なんて思っちゃうと身も蓋もないんですがね。しかし『東海道四谷怪談』で有名な若杉嘉津子さん、こんなにきれいな人だったとは・・・。『東海道四谷怪談』でもきれいなんですが、こちらの方が役柄的に明るいせいかその美しさが際立っている。軍の物資をこっそり横流しするという小賢しいマネをしていたために犯人だと決め付けられる恒吉役が天知茂さんなんですが・・・男前で女にもてたという役の設定はよかってもただただ拷問されるってのはなんかかわいそう(笑)。新東宝って今から考えると結構贅沢な役者の使い方してますよねぇ。

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『砂の器』(1974年/松竹)

監督:野村芳太郎。
出演:丹波哲郎。森田健作。加藤剛。加藤嘉。緒形拳。

昭和46年6月、国鉄蒲田操車場構内で60代と思われる男性の他殺体が発見される。捜査にあたる警視庁の今西刑事と西鎌田署の吉村刑事は被害者が前日蒲田駅前のバーで若い男と飲んでいたという情報を掴む。そしてそこのホステスが耳にした被害者の言葉「カメダ」と被害者が東北訛りで話していたという証言から人名、地名を洗い出すが手掛かりは何一つ得られなかった。8月になり被害者の身元もわからないまま西蒲田署の捜査本部は解散され警視庁の継続捜査へと移るが、継続捜査を続ける今西、継続捜査からはずされても尚事件が気になる吉村。二人の努力により事件は思わぬ展開を見せる。事件の線上に新進気鋭のピアニスト和賀英良が浮かび、それと共に悲しく過酷な運命が明らかになる。
これぞ不朽の名作。何度観ても感動します。しかも今回はデジタルリマスター版の劇場公開。この作品が大きなスクリーンで観られるだけでもうれしいのに、映像まできれいなんですから言うことなしです。迫力のある映像だから大きなスクリーンで観たほうがいいなんてことじゃないですね。映画は大きなスクリーンでみるからこそ価値がある。と言っても過言ではないんじゃないかなと今回この映画を観てつくづく思いました。テレビでみてももちろん感動はするんですが、あのラストのコンサート会場と放浪する親子の映像が交互に映し出されるこの映画の見せ場とも言えるあのシーン。大きなスクリーンに自分が包み込まれているような感覚で観るものだから、テレビで観る以上に感動しました。美しい緑の中、過酷な吹雪の中、肩を寄せ合い歩く親子の姿・・・それ観ているだけでもうウルウル状態。劇場の中もあちこちからすすり泣きが聞こえた。いいわ、やっぱりこの映画。和賀の写真を見せられ成長したわが子の姿に感涙しながらも子を思う気持ち一つで「こんな人知らない」と声を絞り出す加藤嘉さん。巧すぎます。素晴らしい。そしてその和賀の過去を報告するもあまりにも過酷な運命に涙を隠しきれず涙を拭う丹波さん素敵です。いい映画は何度観てもいい。でも劇場で観るともっといい。今回再見して丹波さんに惚れ直した私はDVD買いますが・・・(笑)。

2005年6月20日(梅田ピカデリー)

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『HINOKIO』(2005年/松竹)

監督:秋山貴彦。
出演:中村雅俊。牧瀬里穂。本郷奏多。多部未華子。

交通事故で母を亡くしたショックからリハビリを拒否し、車椅子で父親とも口をきかずにただ自分の部屋に閉じこもり生活をするサトルのために、父親は自分の会社で開発している遠隔操作のロボットを与え、学校への代理登校をさせる。サトルの代わりに登校したロボットH-603は軽量化のためボディの一部に檜を使っていることからクラスメイトから「ヒノキオ」と呼ばれ、やがてクラスのガキ大将ジュン率いる三人組の仲間に入ることになる。その頃ネットゲームの「パーガトリー」がゲームの中で起きた事が現実に起きると話題になっていた。ゲームなんかより実際に行動する方が面白いというジュンに少しづつ外の世界に目を向けるようになるサトルだが・・・。
母の突然の死によるショック。父への不信感。暗く閉ざされたサトルの心がロボットを通して出会ったジュンたちによって少しづつ開かれていく・・・基本はそうなんだけどこの映画はそんなに単純に描いていないのがすごくいい。この映画の鍵はすべてジュンの行動なんですよね。そのジュンが本当に君は小学生か?と問いたくなるくらいに大人なんですよ。彼女自身大きな心の傷を持ちながらその傷の深さを優しさで埋めている。そしてその優しさは強さでもある。息子の心の傷を思い、触れたくても触れられず、自分自身も深く傷ついてしまっているサトルの父と対照的な立場にいるジュン。ゲームの中で起きることが現実に起きるという話をうまく生かして現実とゲームを交互に描き、ラストでは現実の世界でまっすぐに走るジュンが奇跡を起こす。清清しい涙の流せる作品です。
そして私がこの作品こんなにも楽しめたのはジュン役の多部未華子ちゃんがよかったのもありますね。悪がきっぽい雰囲気からふとすべてを悟っているような大人の表情を見せ、ボーイッシュな中にキュートな女の子っぽさも持っている。今後の彼女がすごく楽しみです。

2005年7月11日(TOHOシネマズ泉北)

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『姑獲鳥の夏』(2005年/)

監督:実相寺昭雄。
出演:堤真一。永瀬正敏。阿部寛。宮迫博之。原田知世。

昭和二十年代末の東京。雑司ヶ谷の久遠寺医院の娘、梗子が20ヵ月もの間身篭ったままでいるという噂が世間を騒がせていた。そしてその夫は一年半前に病院の密室から消えてしまったという。小説のネタにとこの事件に興味を抱いた小説家の関口巽は久遠寺医院の噂の妊婦梗子の姉である久遠寺涼子と出会ったことで深くこの事件に関わることとなる。
やっぱむずかしいよねぇこの作品の映画化は・・・というのが正直な感想です。私は原作を読んでいるので事件の流れ、物語の流れはしっかりと頭に入っているので、ああ、これがあれでここでこうね・・・と組み立てが出来たのですが、これ原作知らなかったらわかり難いんじゃないかなぁ。決め所、締め所がなんか散漫なんですよ。一番のネックはなぜ関口なのか?という部分の過去の描き込みが少ないんですよね。確かにあのシーンは映像化しにくいでしょうが、やはり「フフフ・・・遊びましょ」という涼子のいっちゃってる妖しさが濃厚でないとダメでしょう。ただ涼子に惚れてしまった・・・という単純図式のようにしてしまうとこの事件にのめり込む関口というのが出てこないし、それに対して乗り出す京極堂という決めが薄れてしまう。欲を言えばきりがないんですが、楽しげに演じている京極さんの登場シーンでチャラにしてしまうしかないか・・・(笑)。今後これがシリーズ化されるかどうかは怪しいですが(私はまず無理だとふんでいる)、それぞれのキャラについて一言。京極堂=多くを望むのは無理なんでこんなもんでしょ。関口=可もなく不可もなく。榎木津=もう少しはじけて欲しかった(笑)。木場=全然違う!却下!
ということでこの映画観て憑いてしまった妙なもの落とすためにもう一度原作読もうっと!(笑)。

2005年7月18日(動物園前シネフェスタ)

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『女間諜暁の挑戦』(1959年/新東宝)

監督:土居通芳。
出演:高倉みゆき。天知茂。三原葉子。

日華事変下の中国。2年間のスパイ訓練を終えた岸井は三津井雪らの「むらさき機関」に配属される。彼の役目は重慶スパイの首領と目される京劇スター晃彩に近づき彼らの正体を暴き動きを封じることだった。だがやがて二人は本当に愛し合うようになり、岸井は2度の失態を犯してしまう。そのことにより裏切り者として岸井の処置を命じられる雪もまた岸井を密かに愛していたのだった。
女間諜というタイトルだから、主演は三津井雪役の高倉みゆきさんのはずなんですが、主演よりも敵同士でありながら愛し合ってしまう岸井と晃彩、天知さんと三原さんが主演のラブサスペンスのような映画だというのが何とも不思議です。別に女間諜じゃなくっても・・・って気がする(笑)。ま、密かに岸井に思いを寄せる雪の女心が微妙に絡むのがこの映画の面白さなのかもしれません。なかなかに真っ当で面白い映画でした。いや、実は新東宝映画だし、タイトルも『女間諜暁の挑戦』とシリアスっぽくないタイトルだったんで、もうちょっと「とんでも映画」なのかと思ってたんですよ。(^^;) しかしいつ見てもどんな役やっても三原葉子さんってグラマラスでチャーミングな女優さんですよねぇ。好きだなぁ。

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『星になった少年』(2005年/)

監督:河毛俊作。
出演:柳楽優弥。常盤貴子。高橋克実。蒼井 優。

小川動物プロダクション。様々な動物に囲まれて生活する小川哲夢。彼は動物臭いと学校でいじめられていても、動物たちと過ごすことを楽しんでいた。そんなある日母の一大決心によりゾウのミッキーがやってくる。すぐにミッキーと心を通わせた哲夢はゾウに夢中になる。そして続いて子ゾウのランディがやってくるが、子ゾウの頃から訓練を受けているミッキーとは違い、ランディは言うことをきかなかった。落ち込む哲夢だったがタイのゾウ使いの学校の話を聞き留学を決意する。言葉も通じず生活環境も全然違う中で訓練を積んだ哲夢はやがて日本人で初めてのゾウ使いとなる。実在した、いつかはゾウたちの楽園を作ることを夢見てゾウたちと心通わせた一人の少年の物語。
動物と子役には適わないとよく聞きますが、確かにそうですよね。まだ開花しきっていないと言えるかもしれない柳楽優弥くんですが、ゾウと心通わす哲夢を素敵に演じてます。そしてまさかゾウに泣かされるとは思いませんでした。ゾウって賢いんですねぇ。実は私友人とこの映画の話をしていたときに思わず「ゾウになった少年」と言ってしまったのですが、映画を見終わってあながち間違いではなかったと一人納得してました。いっそのこと「ゾウになった少年」でもよかったんじゃないか?なんて思っちゃいましたね。だってそのほうが哲夢君の生き方にふさわしいような気がする。ただねぇ・・・こういう実話ものってフィクションとノンフィクションのブレンドがむずかしいものだと思うのですが、どうもこの映画こってり過ぎるんですよね。継父の話や母親の号泣シーンなんてなかった方がいいように思う。あのタイのラストシーンはすごくよかったな。

2005年7月25日(TOHOシネマズ泉北)

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『亡国のイージス』(2005年/松竹)

監督:阪本順治。
出演:真田広之。寺尾聰。佐藤浩市。中井貴一。

東京湾沖で訓練航海中のイージス護衛艦いそかぜの中でとんでもない計画が進行されていた。艦長が殺害され、沖縄米軍基地から奪われたわずか1リットルで東京を廃墟に変えてしまう威力を持つ科学兵器GUSOHがいそかぜに某国の特殊工作員によって持ち込まれているというのだ。艦に新たに乗り込んだ如月行が特殊工作員だとされる。他の乗組員たちと距離を置いていた如月行を気にかけていた先任伍長の千石は幹部を説伏せ彼の説得に向かうが・・・。
まずはよくぞ纏めた!って感じですね。あれだけの長い原作をうまくコンパクトにまとめたなぁって感心致しました。しかもさすが防衛庁協力とあって、映像がすごくかっこいい。あ・・・ラストの衛星の映像はちょっと吹いちゃいましたが(笑)。キャスティングもいいなぁ〜。当初千石役に真田さんと聞いておやじ臭の強い千石に真田さんってことはアクション重視なのかな?と思っていたのですが、いやぁ、しっかりおやじしてくれてますし、原作で思い入れの強かった宮津艦長・・・っと映画では副長ですが・・・の寺尾さんいいわぁ〜、かっこいい。あのラストシーン臭くなってもいいからもっとためてのばして欲しかった。「お父さんが悪かったな・・・」というあの優しい声。素敵だ。すっかり寺尾さんにのぼせ上がっちゃったよ(笑)。まずまずは楽しんだ映画だったんですが、ただやはり原作に思い入れを持ったものとしては多少の物足りなさを感じずにはいられないんですけどね。原作では個々の描写が細かくてそれぞれに男たちが際立っているんだけど、そこらの人物描写はばっちゃり省かれちゃってる。そうしないと映画として成り立たないのはわかってるんですが、一体あなた誰なんですか?状態のジョンヒを入れるくらいならこの子登場させないでそっちのエピソード足して欲しかったなって思っちゃう。ま、贅沢言えばきりがないですけど。

2005年8月8日(TOHOシネマズ泉北)

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『妖怪大戦争』(2005年/角川映画)

監督:三池崇史。
出演:神木隆之介。近藤正臣。阿部サダヲ。高橋真唯。栗山千明。

今年10歳になるタダシは両親の離婚により、母親と一緒に鳥取にある祖父の家で暮らしていた。東京育ちのタダシは鳥取での暮らしに馴染めずクラスメートからもいじめられていた。そんなある日神社のお祭りでタダシは大勢の子供の中から世界の平和をもたらす正義の味方と伝えられる”麒麟送子”に選ばれる。とは言うものの手ぬぐいと赤飯をもらっただけで何も特別なことはなかったが、タダシの知らないところでとんでもないことが起こっていた。この世の怨みを一身に背負った魔人加藤保憲により人類壊滅計画が進められていたのだ。そしてタダシは”麒麟送子”としての本当の指名を帯びてしまう。
ギャハハ!!いいわぁ〜この映画。私大好き。久々に大笑いして堪能させていただきました。なんともやる気のないゆる〜い妖怪たち。そのゆるさがこれまたいいんだ。「正義は勝つ」なんておざなりの展開じゃないのがこれまたいい。映画好き妖怪好きが集まって嬉々として作りました!っていうのが全編に溢れている。『インディ・ジョーンズ』でおなじみのシーン入ってるし(笑)。そしてお笑いの鉄則である間。これがこの映画ピシッって決まってるんですよ。もうすべてのシーンでこの間がいい。うまいですよ。そうそうこれ「妖怪キャスティング」が京極夏彦さんなんですが、京極さんわかりやすすぎ。産女と豆腐小僧目立ちすぎですよ(笑)。しかし少しボケかけたじいちゃんに菅原文太さんって・・・(^^;)。なんて贅沢なキャスティングなんだ。贅沢といえば妖怪たちもこれまたすごい。はっきりわかるの近藤正臣さんと竹中直人さんだけだよ。エンドクレジット見てびっくりしちゃった。大天狗=遠藤憲一さん。砂かけ婆=根岸季衣さん。大首=石橋蓮司さん。ってわかんないよ!(笑)。これは絶対第2弾あると見た。ぜひとも作って欲しいですね。

2005年8月17日(TOHOシネマズ泉北)

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『野良犬』(1949年/東宝)

監督:黒澤明。
出演:三船敏郎。志村喬。三好栄子。木村功。

暑い夏の日。射撃練習を終えた村上刑事は無造作に上着のポケットに入れていた拳銃を帰りのバスの中ですられてしまう。拳銃には7発の銃弾が装填されていた。必死に拳銃の行方を探す村上だが、すでに彼の拳銃は強盗事件に使用されていた。上司の計らいでその強盗事件の捜査にあたる署へ派遣された村上は、その署の熟練刑事佐藤と共に事件を追うことになる。
なんとも熱くて暑い映画だ(笑)。『砂の器』でもそうだったんだけど、やはり犯人を必死に追い求める刑事ものにはこの夏という季節が一番合うのかもしれない。自分の拳銃が自分の不注意により盗まれ、そればかりか犯罪にまで使用されてしまい必死になる若き刑事村上に扮する三船さんいいわぁ〜。これ見る前はもっと「俺の拳銃がぁ〜」っとギラギラした感じなのかなと思っていたのですが、責任を感じ必死になりながらもなんか、さわやかさがあるんですよね。三船さんの新たな魅力発見(笑)。同じように復員後すぐに荷物を盗まれながら刑事という職業を選んだ村上刑事と世を恨み妬み犯罪に手を染めた犯人の遊佐との対比に人としての生き方が示唆されているように思う。遊佐の貧しさや不幸を描きながらも決してそれと犯罪を犯すということは同一ではないというのが一環してこの映画にあるのがすごく好ましく感じました。しかしこの映画は絶対に夏に見るべきですね。しかも同じような暑さを体感しながら見ると余計にリアリティが感じられていいかも。

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『豹(ジャガー)は走った』(1970年/東宝)

監督:西村潔。
出演:加山雄三。田宮二郎。加賀まりこ。高橋長英。神山繁。

南ネシア共和国でクーデターが起こり、大統領ジャカールは南ネシア共和国を出国し日本の米軍基地からアメリカへと亡命することとなるが、彼は革命政府から命を狙われていた。何としてもジャカールの暗殺を阻止しなければいけない日本政府は、元オリンピック射撃選手である警視庁警部の戸田を警護にあたらせる。彼の射撃の腕と洞察力は革命政府のテロリストの敵ではなかったが、彼は南ネシアと武器取引をしていた日本企業N物産の雇った殺し屋九条の存在を知る。優秀なシェパードのような戸田と、敏捷で獰猛な黒豹のような九条。シェパードと黒豹の一騎打ちが始まる。
えっと・・・この映画一応加山さんが主役なんですが、九条役の田宮二郎さんかっこよすぎです。いいとこ全部持ってちゃったみたい(笑)。しかも田宮さんのセリフ半分以上が英語なんですよねぇ。他の出演者たちがセリフとして覚えましたって感じがアリアリの英語に対して、もともと英語が堪能な方でいらっしゃるから全然違和感なくって他の人たちがすごくかわいそう。なんだかこの映画「田宮さんのかっこいいとこ全部見せてあげるよ作品」と言っていいかも(笑)。あ、でも案外これ主役じゃないから余計にかっこよく見えるのかもしれませんね。これ主役でやったら鼻について仕方ないかも(笑)。で、ラストの一騎打ちシーン。これまたかっこいいです。そしてあのラスト。なんかいいなぁ〜。

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『花嫁吸血魔』(1960年/新東宝)

監督:並木鏡太郎。
出演:池内淳子。天草博子。瀬戸麗子。寺島達夫。高宮敬二。

ニュー東京舞踏学校の白井藤子と玉木里枝・篠原英子・滝内喜代子・光武早苗は仲の良い友達だった。ある日、同じ学校の喜代子に内定していただった映画のヒロインに藤子が抜擢される。明るい未来に心弾ませる藤子。そしてそんな時友人早苗の兄貞夫からプロポーズされる。役を獲られた喜代子、密かに貞夫に好意を寄せていた玉木里枝は藤子への嫉妬をつのらせて行く。そして英子と付き合っていた芸能記者の大田基保も藤子への関心を示し、英子に別れを告げる。藤子への恨みに突き動かされた三人はピクニックで藤子を断崖に誘い出し彼女を突き落としてしまう。命はとりとめたものの女優として活躍出来ない傷を顔に負い、病床にあった母は未来を悲観し自殺してしまう。失意の中で母の遺書により山奥の陰陽師である影山家を訪れた藤子を待っていたものは・・・。
なんでもこの映画は結婚して女優を辞めた池内淳子さんがあっさりと離婚し、再び女優としてカムバックするための「踏絵」映画「これぐらいやる覚悟があるのなら、女優として復帰させてやろう」というものらしい。確かにこれぐらいやる覚悟がなきゃ女優なんて出来ないかも・・・という気はしないでもないが、それにしても凄まじい。池内さんの女優根性を叩きつけた映画であると言っても過言ではないだろう。池内さんのモンスターメイクに着ぐるみのモンスターの中身まで池内さんだという壮絶な作品で、カルト映画の位置にある作品だけど、それだけのとんでも作品ではないんですよねぇ。面白い。確かに名作だなんて言えるような作品ではないですが、褒め言葉としてのB級作品という言葉のしっかりとあてはまる作品でした。池内さんがモンスターに変わるまでのメイクと特殊撮影はすごいですよ。ま、そのあとの腕をワッサワッサさせているモンスターはなんだかなぁ〜って感じですが(^^;)。そして観終ったあと「人を呪わば穴二つ」悲しいまでに実感させてくれます。なんともせつないラスト。これがまたいいのかもしれません。

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『いつか読書する日』(2004年/)

監督:緒方明。
出演:田中裕子。岸部一徳。仁科亜季子。

坂道の多い田舎町。夜の明けきらない中、牛乳配達をする女性。彼女の名前は大場美奈子。もう50歳になる。牛乳配達が終わり朝食を食べ終ると今度はスーパーに出勤してレジを打つ。そしてクタクタになって一人の部屋で一冊の本を読み終えることなく眠りにつく。そんな彼女が心に秘めた思い。高校の同級生だった高梨槐多への思い。そして末期ガンの妻を自宅で看病をする高梨槐多もまた美奈子への思いを秘めていた。高校時代二人は付き合っていたが槐多の父と美奈子の母が自転車に二人乗りして交通事故に遭い亡くなったことで二人は疎遠になってしまうが、美奈子はその頃の思いを抱いて一人生きていた。そんな二人の心に気付いた槐多の妻容子はもう長くはない自分の最期の思いを美奈子に託す。
ネット上での評判もよく気になっていた作品だったんですが、劇場でこの作品の予告編みてから大阪での上映が待ち遠しくて仕方なかった。やっと観られた。そして観られてよかったと思う作品でした。主人公が50歳という設定で大人の純愛という評判からか客席の平均年齢は高かった。主人公と同じ50代かも・・・。
この先ネタばれありです。




でもね、私この作品純愛だとは思わなかったんですよね。いや、確かに30年も同じ人を心の奥底で大事に大切に思い続けるというのは純愛に間違いないんですが、二人が別れることになったきっかけがポイントではないかと思うんですよね。決して二人が決着をつけた終わりではなかったということ。槐多の方は自分で決着を付けたんでしょうね。「平凡に生きる」という方法を選ぶということで。だから自分の父とスキャンダラスな死に方をしてしまった女性の娘、美奈子との未来は考えられなかったんだろうと思います。そして彼が選んだ平凡な生き方というのは幸福感というものとは別次元にあるもの。ただ日々を波風なくごくごく普通に暮らしていくことだったのかもしれません。一方美奈子の方は槐多のつけた決着に置いて行かれたのかも・・・自分の母のせいで・・・という思いがあったのかもしれませんが、すがることも追いかけることも出来ずに心の奥底に槐多への思いを沈めて一人生きることを選んだ。スーパーの店長から「バージン?」って聞かれるシーンがあったんですが、これまさしくその通りだったんでしょうね。だからこそ余計に決着の付かなかった恋への思いが重たかったのかも・・・。男と女一つになることで何かが始まり何かが終わるんじゃないかな。
容子の言葉で波立った二人の気持ちが容子の死で大きなうねりとなる。美奈子を抱きしめた槐多が言う「今まで思ってきたこと全部したい。」父と母の死がなければ訪れていたであろう二人の流れ。答える美奈子「全部して…。」30年前の決着。ラストは確かにせつないけれど、決して不幸ではないと思う。槐多のあの微笑を含んだ死に顔は、自分に課した「平凡な生き方」を脱却して得た幸福感から来るものだろうし、「よし」と掛け声をかけて階段を駆け上っていく美奈子はきっと、槐多に抱かれたことで「心から愛した人がいました」とやっと過去の恋に決着をつけ、新しい朝、新しい日を清清しく生きていくんだろう。

2005年9月19日(OS劇場C・A・P)

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『忍-SHINOBI-』(2005年/松竹)

監督:下山天。
出演:仲間由紀恵。オダギリジョー。椎名桔平。黒谷友香。

長きに渡った戦乱の世は徳川家康により治められた。甲賀卍谷と伊賀鍔隠れ、戦うことだけを生きる術とする忍びの里にも平和な日々は訪れていた。そんな平和な日々に甲賀弦之介と伊賀の朧は出会い、互いに惹かれあい恋に落ちていた。しかしいくら平和な日々が訪れようとも二つの里は400年もの昔からいがみ合い争う敵同士であることにはかわりがなかった。運命を変えようとする弦之介と運命からは逃れられないと諦めようとする朧。そんな時家康の側近南光坊天海は乱世にこそ必要だった忍は平和な世では恐怖でしかないとその存在を壊滅しようと一計を案じ、両里より精鋭5人を選抜し戦い、先に駿府に到着した里の者のどちらか一方によって家康の世継ぎが選ばれるとの命を下す。互いの精鋭5人の頭領となった弦之介と朧は運命を賭けて駿府を目指す。
なんだかあまり評判よくないようですが、私は面白かったですよ。ただどっちかっていうと弦之介と朧の恋っていうのはあまり眼中になかったですが・・・(^^;)。戦うしか生きる意味がないという互いの里から選ばれた精鋭たちの方が主役の二人より魅力的だったような気がする。決して主役二人が魅力なしっていうのじゃないんですよ。脇が良過ぎ(笑)。特に弦之介は主役で、しかも甲賀の頭領でありながら、強さっていうのが全然感じられない。戦いに否定的でなんとしてもこの無益な戦いをやめさせたいという意識が強かったというのはあるかもしれませんが、戦わなさすぎ。同胞より女を選ぶってどうなんだろ?抗えない運命への苦悩ってのがもっとあってもよかったのでは・・・。とかいいつつ脇が良過ぎなんですよね。特に体内にいる虫により殺されても死なず300年は生きているという伊賀の薬師寺天膳役の椎名桔平さんかっこよすぎ。平和な世に自分の存在は必要ないと自覚しつつも死にたくても死ねぬ自分に苦悩するというより冷笑するという大人ぶり。惚れましたね。それに対抗する幼い頃より毒を飲まされ体に毒を持つようになりその毒故に人を愛することができない甲賀の陽炎役の黒谷友香が妖艶でいて、儚くって・・・美しい。私の中ではこの二人が絡むシーンがこの映画の見所だったような気がします。ラストの朧の凛とした姿も素敵でしたけどね。すごくいいとは言えないけど見て損はない映画でしたね。

2005年9月26日(TOHOシネマズ泉北)

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『NANA』(2005年/)

原作:矢沢あい。
監督:大谷健太郎。
出演:中島美嘉。宮崎あおい。成宮寛貴。松田龍平。

東京へと向かう新幹線で隣り合わせた、彼氏と一緒にいたい。それだけの理由で東京に向かう小松奈々と、歌で成功するという夢を抱えて東京に向かう大崎ナナ。雪で遅延となった新幹線の中で意気投合した二人は一度は東京駅で別れるが、互いに見つけた引越し先で偶然に再会する。同じ部屋が気に入った二人は一緒に暮らし始めることに・・・。趣味も生活も正反対の同じ名前と同じ歳の二人の友情と恋の物語。
なんでもこの原作がすごく人気があるそうなんですが、私は残念ながら未読。だけど結構評判がいいので観に行ったのですが・・・(^^;)。悪くはない。悪くはないんですよ。途中まではすごく楽しみましたから。ただ・・・ねぇ。なんでもこの原作はまだ続いていて、この映画の好評に第2弾の製作が決まったとか。これが私にとっての大きな問題でして・・・。原作が続いていて第2弾ってのが悪いっていうんじゃないですけどね。でももう少し映画としてまとまりのある映画らしい終わり方ってあってもよかったんじゃないかなぁ。って思うわけですよ。なんかねぇ、私にとってはこの終わり方、「だから何?」って感じでしてね。なんだかすごい消化不良を感じてしまった。そしてマンガの中で歌われている曲が実際に自分の耳に響いて、ライブの興奮も伝わってくる。それが映画にした良さだと思うのですが、どうもライブの映像がイマイチだったんですよね。ナナがナナである存在感をしっかり感じさせられる場所がステージだと思うのですが、どうもその迫力に欠けてたような気がするんですよねぇ。ま、とにかく・・・夢を追ってる若さ、突っ走ってる若さってのはいいなぁ〜ってことで(笑)。もうこういうのにワクワクする年じゃないのかなぁ・・・ハァ〜。

2005年10月3日(アポロシネマ)

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『春の雪』(2005年/東宝)

監督:行定勲。
出演:妻夫木聡。竹内結子。高岡蒼佑。榎木孝明。

公爵家の令息松枝清顕は、幼い頃名門華族の綾倉家へ預けられ、綾倉家の令嬢聡子と共に育つ。時が経ち久しぶりに再会した二人だが、幼い頃に抱いた清顕への思慕を未だに持ち続ける聡子に対し、清顕は冷たく接する。やがて聡子に宮家との縁談が持ち上がり、聡子はなんとか清顕の心を推し量ろうと何度も手紙を出すが、清顕は悉くそれを退ける。ところが正式な婚約が発表され、天皇の勅許が降りたとき、清顕は聡子への思いを強め、強引に聡子へ求愛する。許されぬことと知りつつその愛を受け入れる聡子だが・・・。
私はこの原作読んだことないです。というより三島作品って一冊も読んだことないんですよね。なんかとっつきにくくって・・・。でもこういう文芸作品っていうのはどっちかというと好きなんで、映画は観たいと思ってたんですよ。で、正直な感想と致しましては、ま、こんなものなのかな・・・と。映像はきれいだったし、それなりに面白かった。でもなんか自分の中で淡々としてしまったんですよね。原作を読んでた方が楽しめたのかな?と思いネットで検索かけてみると「主人公は我儘で自分の容姿と育ちにプライドを持った傲慢な美少年」というお話らしいということがわかり、なんで淡々としてしまったのかがわかりました。妻夫木君に傲慢さが感じられなかったんですよね。手に入れられない物を欲する強欲さ、自分には手に入れられないものなどないんだという傲慢さ。これがイマイチ感じられなかったために、それ故に破滅的な最期を迎えてしまう清顕の哀れが薄れてしまったのかもしれません。もう少し毒が欲しかったですね。そういえば最近この毒を含んだ俳優さんって少なくなってるような気がするなぁ。

2005年10月31日(TOHOシネマズ泉北)

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『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年/東宝)

原作:西岸良平。
監督:山崎貴。
出演:吉岡秀隆。堤真一。小雪。堀北真希。三浦友和。

短気な父則文と優しい母トモエ、1人息子の一平が暮らす鈴木オート。そしてそこに集団就職で青森からやってきた六子。鈴木オートの向かいにある駄菓子屋茶川商店の店主をしながら少年誌に細々と小説を執筆するしがない小説家茶川竜之介。竜之介が密かに憧れる一杯飲み屋のおかみのヒロミ。戦争で妻子を亡くしてしまった医者宅間。東京タワーの完成を間近に控えた昭和33年の東京下町。夕日町3丁目で織りなされる物語。
もうベタベタ。手垢の付きまくった展開に物語。だけどそのベタベタの当たり前の展開に見事にやられてしまう。懐古趣味・・・いいんじゃない。懐かしさに浸って、優しさに酔って。そんな映画もありでしょう。あの時代だからいいとか、今の時代は・・・なんて言って見ちゃだめなんですよね。ただほのぼのとした雰囲気とアナログな世界を描くためにあの時代だっただけで、人っていいんですよ。優しさと悲しさと辛さと・・・いろんな人のいろんな感情が混ざって町の雑踏は生まれているんです。純朴に素直に優しい涙流しましょうよ。「心のとげ抜き映画」と呼ばせていただきましょう。昭和33年の夕日も、平成17年の夕日も同じく赤いんです。空気が汚れ、ビルの陰に隠れていても夕日は赤いんです。青く変わっちゃいないんですよ。ネ。

2005年11月7日(TOHOシネマズ泉北)

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『カーテンコール』(2004年/)

監督:佐々部清。
出演:伊藤歩。藤井隆。鶴田真由。藤村志保。夏八木勲。

東京の出版社で契約記者として働く橋本香織は、清純派女優のスキャンダルをスクープする。これで正社員確実と喜んでいたのも束の間、写真を撮られた女優が自殺未遂を起こしたことで、福岡のタウン誌へ移動させられる。そこで「昭和30年代終わりから40年代中ごろまで下関の映画館にいた幕間芸人を探して欲しい」という葉書に目を留めた香織は下関にある映画館「みなと劇場」を取材することに。その芸人の名は安川修平。当時を知るモギリの宮部絹代から当時の話しを聞くうちに安川修平探しに没頭する香織は、やがて幕間芸人としてだけではなく、在日韓国人として安川修平とその家族の過去を知ることになる。そして物語は二組の父と娘の話しへと展開する。
劇場に入り、座席に座り映画が始まるまでの時、BGMで流れるのは『いつでも夢を』に『下町の太陽』。懐かし映画だぁ〜・・・との思いに浸っていて、映画が始まり「みなと劇場」が出てきたときには感動で胸がジーンとなりましたよ。これは映画好きのための映画だとすっかり思い込んでいたのですが・・・。安川修平に近づくにつれ映画の様相が変わってくる。あれ?え?おぉ!これぞまさしく人間ドラマ。素晴らしい。そして取材のきっかけとなった一枚の葉書が思わぬところで繋がり愛を感じさせる。晩年の安川修平のステージシーンは涙なくして観られなかった。安川修平は言う「私は幸せ者です」と。娘との和解は出来なくても、どれだけ娘に憎まれていたとしても、娘の婿と孫と会ったことで、娘が今幸せに暮らしていることを知る。自分の愛する娘が今幸せなんだ。それだけで充分なんだという娘への愛に溢れた言葉のように思う。どんなに辛くても人は前に向かって歩いている。歩いているからこそ幸せになれる。晩年の安川修平役の井上尭之さんははまり役ですね。歌声は素晴らしいし、あの笑顔もまた素晴らしい。ただ一点、いくら年月が経っているとは言え、藤井隆さんと井上尭之の演奏にあまりにもギャップがありすぎたのが気になってしまった(笑)。40年経ったらすげ〜うまくなってる。って思っちゃいましたよ。(^^;)

2005年11月14日(シネ・リーブル梅田)

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『大停電の夜に』(2005年/)

監督:源孝志。
出演:豊川悦司。田口トモロヲ。原田知世。吉川晃司。寺島しのぶ。

あまり流行っていないバーのマスター。キャンドルショップの女主人。出所したばかりの元ヤクザ。元ヤクザの恋人で彼から逃げ出し結婚した妊婦。不倫中のサラリーマンとOL。その妻。ホテルの中国人研修生。天体マニアの少年。入院中の人気モデル。数十年連れ添った老夫婦。それぞれがそれぞれの想いで迎えようとしたクリスマス・イブ。その夜突然東京中の明かりが消える。12人の登場人物が、何かを失くし、何かを得る一夜の物語。
私の好きな群集劇。だけど群集劇としての面白さはあまり感じなかった。でも個々の物語は面白く、失うものがあって得るものがあるというパターンがなんともほんわかしててよかったな。ただ不倫相手のOLとホテルの中国人研修生ってのは別にいらなかったような気がするのですが・・・(^^;)。
ちょっとネタばれ。


特に不倫相手のOL。こいつがいたために田口トモロヲ扮する亭主が最後に妻の元へ戻るという図が、私の中ではふざけんなよこの野郎ってなっちゃったんですよね。だって別れたにしたって、妻との待ち合わせをキャンセルして呼び出されたホテル行っちゃあいかんでしょう。もうその行動だけでやっぱり妻が・・・なんて説得力なさすぎ。電話でグズグズ言われて待ち合わせの時間に間に合わなくなったので、行く気を失くし・・・っていう形で進んでくれた方が彼の心の葛藤がわかりやすかったような気がする。それと群集劇の大体のパターンで別々の場所の人間を一箇所に集めるっていうのがあるんですが、なんかこの映画の場合無理やりって気がしなくもない。別にバーに集めることはないと思うんですがね。ま、出演者も豪勢ですし、クリスマス向けのラブストーリーというあま〜い雰囲気でまずまずはOKって作品じゃないですか。私はヤクザの銀次の物語が一番好きですけど。

2005年11月28日(アポロシネマ)

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『男たちの大和』(2005年/東映)

監督:佐藤純彌。
出演:反町隆史。中村獅童。仲代達矢。鈴木京香。

鹿児島県枕崎。漁師の神尾は内田真貴子と名乗る女性に乞われ、戦艦大和沈没地点まで船を走らせる。神尾は戦艦大和の数少ない生き残りだった。そして真貴子は当時神尾の上官であった内田二兵曹の娘だと言う。あの時死んだと思っていた内田が生きていた。神尾の心の中にあの時のことが蘇る。昭和19年の春、神尾たち特別年少兵を乗せた大和は、艦内で厳しい訓練を行い、やがてレイテ沖海戦で初の実戦を迎える。しかしこの時連合艦隊は事実上壊滅。そして昭和20年4月。大和は沖縄へ向け帰ることのない出撃をすることに・・・。
すばらしい。こんなにもリアルで重厚な映画になっているとは思いもよらなかった。緩急がうまい。出ている俳優さんがすべて素晴らしい。真っ向勝負という雰囲気がすごくする。明日は戦場という日の「死に方用意」に胸が熱くなった。そして戦闘シーンの凄まじさ、迫力は今までになかったんじゃないだろうか?そしてそのリアルさ、壮絶さに胸が締め付けられる。容赦なく降り注ぐ銃弾、血飛沫をあげ倒れる兵士たち。このシーンを見て「戦争したっていいじゃない」なんて言うバカは少しは減るんじゃないだろうか?決して大げさに描いているのではない。これが戦争なんだろうな。それとこの映画では戦闘で死んでいく男たちだけではなく、銃も持たず、愛するものを死んでしまうかもしれない場所へと送り、待っているはずだった母や女たちの死も描いている。見事に練り上げられた作品だと思う。そして戦後60年たった今、こういう映画が作られる意味はすごく大きいように思う。

2005年12月26日(TOHOシネマズ泉北)

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『憲兵と幽霊』(1958年/新東宝)

監督:中川信夫。
出演:中山昭二。天知茂。久保菜穂子。三原葉子。

田沢伍長の結婚式の日、田沢伍長の妻となった明子に心を寄せていた波島少尉は部下の高橋から残念でしたねと声をかけられる。しかし波島は最後までわからないと不敵な笑いを浮かべる。翌年その高橋から機密文書を失くしたと報告を受けた波島は自分が助かりたいのならその罪を田沢に被せるようにと高橋をたきつけ、田沢は無実の罪で銃殺されることになる。しかし実はその機密文書は波島が奪い中国のスパイへ売りつけていたのだった。田沢を亡き者にした波島は続いて田沢の母を自殺に追い込み、やがて明子を我が物にするが・・・
よくもまぁ、これだけ悪事を重ねられますね波島さん。という波島役が天知さんだから、似合いすぎているというか、その冷たい目がたまりませんなぁというくらいに嫌味なく役に同化している(笑)。悪いことして幽霊に祟られるというのはなんだか『東海道四谷怪談』の前哨戦のような作品ですね。それにしてもこの映画の唯一・・・ではないけど、不思議な点がどうしても手に入れたかった明子を手に入れた途端あっさりと捨てちゃう波島が中国人スパイ張の情婦・紅欄と真剣に愛しあうって・・・(^^;)。ピカレスク・ロマン風にしたかったんでしょうかねぇ。私には面白いんだかなんだかわかんない作品でしたが、天知さんの色悪ぶりを堪能できたし、相変わらず三原葉子さんは色っぽかったし、こんな拷問ありですかい?というようなやたら艶かしいショットで拷問される久保菜穂子さんのシーンも見応えあったし・・良しとしましょうかね。

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