『修羅雪姫』(1973年/東宝)

監督:藤田敏八。
出演:梶芽衣子。赤座美代子。西村晃。岡田英次。黒沢年男。

雪の降る夜、女囚監房で一人の女の子が生まれる。その子の名は雪。明治6年、近代国家として生まれ変わった日本で初めての徴兵令が布告されたために日本中が騒然となり、農民の一揆が相次いでいた。竹村伴蔵、塚本儀四郎、北浜おこの、正景徳市の4人はその騒ぎを利用し農民から金を騙し取るために白装束の男が徴兵にやってくるというデマを流し、偶然小学校教師として赴任してきた鹿島剛とその息子を撲殺し、妻小夜を犯した。小夜を気に入った徳市は小夜を我が物としたが、復讐に燃える小夜の手で殺害され、小夜は無期刑を受ける。あとの3人への復讐を果たせない小夜は自らの子供にその復讐を託すため、監房でいろんな男たちを誘い、やっと生まれた子が雪だった。雪は小夜の監房仲間のお富に引き取られ、道海和尚のもと修羅の子として剣術の激しい修行を受ける。やがて美しく成長したお雪は母の復讐のため残る3人を探す。
『キル・ビル』を観てどうしても観たくなった作品。冒頭の雪の中の立ち回りはもうまさしく『キル・ビル』の世界。『キル・ビル』は完全にこの作品が下敷きになってますね。この作品を観てから『キル・ビル』を観たらもっと楽しめたかも。つながるところがいっぱいあって本当に面白かった。もちろんこの作品単独でも十分に楽しめる映画でしたけどね。外国映画で日本映画の面白さを教えてもらうとはなんとも皮肉なものですが、すごく面白い作品でした。荒唐無稽と言えなくもないですが、その荒唐無稽さが面白い。そして何より梶芽衣子さんが素敵だ。あの影を含んだ美しい横顔。かっこよすぎます。道海和尚との剣術修行のシーンには思わず笑っちゃいましたが・・・。

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『修羅雪姫 怨み恋歌』(1974年/東宝)

監督:藤田敏八。
出演:梶芽衣子。伊丹十三。吉行和子。原田芳雄。岸田森。

父母の仇を討ち果たした鹿島雪は、殺人犯として指名手配され、警察に追われ逃げ回る日々を送っていたが遂に逮捕され、絞首刑の判決を受ける。しかし死刑執行の日、刑場へ送られる雪を数人の男たちが救出し、特警の菊井の許へと案内する。そこで雪は菊井から雪の命と引き換えにアナーキスト徳永乱水の命と一通の手紙の奪取を命じられ、乱水の家に住み込むが、乱水から菊井が革命主義者たちを大量に処刑するために事件をでっち上げたこと、そして彼が欲しがっている手紙はそのことを暴露するものであることを聞き、菊井を裏切る雪だったが・・・。
修羅の子として生まれた目的は第1作で果たしてしまっているため、この物語はどうも無理やりという感じがしてしまいますね。復讐という目的を一から作ってしまわないといけないという物語の流れがつらいし、あまりにもあっさりと菊井を裏切ってしまうために、わざわざ雪を助けた菊井がバカみたいに感じでしまう。このあともシリーズ化でもしようとしていたのかな?自らの復讐は終えたが修羅道を歩いてしまった雪に残されているのは修羅道しかない・・・という「女殺し屋」というパターンですんなり行った方が面白味があったんじゃないかなぁ・・・なんて気がする。アナーキストと秘密警察という発想がすごいと言えばすごいですが・・・。おまけに拷問したあげくにペスト菌を打って貧民窟に投げ捨てるんですから、秘密警察やりすぎですよ(笑)。『修羅雪姫』は本当に面白いと思いましたが、私はこちらはあまりおすすめしませんね。(^^;)

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『非常線の女』(1933年/松竹)

監督:小津安二郎。
出演:田中絹代。岡譲二。水久保澄子。三井秀夫。逢初夢子。

社長の息子に好意を持たれながら昼間は真面目なタイピストとして勤める時子は、実はヤクザな世界では姉御として顔を利かせていた。そんな彼女の情夫は元ボクサーの襄二。与太者どうしと二人はうまくいっていたが、襄二に憧れ襄二の子分になった大学生の宏の姉が弟を元に戻して欲しいと頼みに来た日から、自分とは違う世界の宏の姉が気になりだす襄二。襄二の心を取り戻そうと彼女の元は出向いた時子だが、自分にはない彼女の純真さにあっさりと引き返し、堅気の世界への夢を見るようになる時子。そして二人して出直そうと決めたとき、宏が姉の店の金を持ち出したが、それがバレて200円という金を埋めなくてはいけないと泣きついてくる。
小津監督のハードボイルド映画ということですごい興味のもとにこの作品を観たのですが、最初はサイレントということでなんだかしんどかった(^^;)。物語もなんだか単調に感じたし、田中絹代さんの丸顔の姉御っていうのもなんだかイマイチしっくりこなかったし・・・(笑)。ところがサイレントに少しづつ慣れてきた中盤からの物語の展開に俄然面白味が出てきてラストの粋な終わりがすごくいい。しかも日本映画なのになんともアメリカンな雰囲気。映像と衣装がおしゃれだ。宏の姉の衣装が着物で、彼らの家も和風なんだけど、それ以外はほとんど洋風。時子と襄二のアパートも靴脱がないし(笑)。完全にアメリカンですね。1933年当時もそうだろうけど、今から見ても非現実的。同じ与太者どうしっていうセリフにはさすがに古さを感じますが、すごくモダン(これも死語かな?)な映画でした。

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『大盗賊』(1963年/東宝)

監督:谷口千吉。
出演:三船敏郎。有島一郎。浜美枝。水野久美。中丸忠雄。

泉州堺の豪商呂宋助左衛門は海賊の汚名を着せられて樽詰めにされ火刑に処せられる。ところがいつの間にかその樽から逃げ出して、海賊だと言われたのだから本物の海賊になると仲間と共に海に出る。ところが嵐で船は難破。残った数人の仲間と財宝と共に漂流しているところを黒海賊に襲われ、財宝を奪われてしまう。海に投げ出された助左はある島に流れ着き仙人に助けらる。その島の領主羅刹王が悪事の限りを働いていると聞いた助左は城に乗り込むが、それは病気の王をいいことに宰相が罪のすべてを王に着せ、国を乗っ取るつもりでいることを知る。王の評判の悪いことに心を痛めていた姫に協力して宰相の悪事を暴こうとする助左だが・・・。
いやぁ、何がびっくりしたって、宰相役の中丸さんが「おばば」と呼んで現れたのがなんと天本英世さんなんですもん。もうこれだけでこの映画観た甲斐があったって思っちゃいましたよ(笑)。天本さん、似合いすぎ。こんなに素晴らしい俳優さんは二度と現れないだろうなぁ。女性の入浴を覗いて天から落ちちゃったという仙人を先祖に持つスケベな仙人の有島さんも、いつものごとく飄々とした雰囲気で茶目っ気たっぷりだし、三船さんがこういう特撮もので大暴れしているというのが観れるというのもすごいですよ。本当に堪能した。遊び心いっぱいの冒険活劇。いいですねぇ、こういうのはやっぱり。

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『猫と庄造と二人のをんな』(1956年/東宝)

監督:豊田四郎。
出演:森繁久彌。山田五十鈴。香川京子。浪花千栄子。

荒物屋の庄造は甲斐性がなくなんでも母親の言いなりで、彼が唯一大切にするのは飼い猫のリリーだけだった。そんな庄造に不満を持ちながらも一人商売に精を出し家を切り盛りしていた妻の品子がある日、庄造の母おりんとの不仲から家を出て行く。ところが、品子が出て行くとすぐに新しい女房として庄造の叔父中島の娘である福子が家にやってくる。実は小金持ちの中島の娘をもらえば、金に困ることはないと考えたおりんがわざと子種がないからと品子に難癖をつけ追い出したのだった。そのことを知った品子はどんなことをしてでも庄造の元へ戻ってみせると決心し、庄造が誰よりもかわいがっているリリーを自分のものにすれば、きっと庄造がやってくると「庄造はあなたよりリリーの方を大事に思っているからリリーを手放した方がいい」と福子に言い寄り、リリーを手元に置くことに成功するが・・・。
以前読んだ『猫だましい』という本でこの映画のことが紹介されていてすごく観たいと思っていた作品なんですが・・・。まさかこんな物語だったとは・・・。こんなに情けない男だとどんなにかわいがられても猫だって愛想をつかすんじゃないかと思うくらいに情けなくっていい加減な男庄造に、金に苦労しないですむんだったら何だってありだぜって感じのどぎついおかん。そして一人の男をめぐる女の攻防・・・しかもそれが惚れたはれたの話じゃなくってもうほとんど女の意地。なんともすごい物語です。そしてラストがなんともまた皮肉で・・・(笑)。猫のリリーを真ん中にこれほどまでうまく女の怖さ、執念深さと男のいい加減さを見事に描いた作品ですね。あっちこっちにふりまわされるリリーがなんともかわいそうでした。

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『たそがれ酒場』(1955年/新東宝)

監督:内田吐夢。
出演:小杉勇。小野比呂志。宮原卓也。多々良純。野添ひとみ。津島恵子。

いろんな客で賑わう一軒の酒場。広いホールにカウンター、そして小さな舞台。店の開店前に歌のレッスンをする専属ピアニスト江藤とその弟子で有望な素質を持つ健一。次々とやってくる従業員。その中の一人ユキは愚連隊の森本に恋人との仲を横恋慕されていた。店の開店間際に一番乗りでやってきていつものカウンターの隅に陣取る常連の梅田。みんなから先生と呼ばれている彼は今はパチンコを家業としているが、元は名の通った画家。戦時中従軍画家として戦地に赴き絵筆をとったことに心を痛め絵筆をとることをやめてしまっていた。店が開店しサラリーマン、学生、いろんな客たちがやってくる。
この監督の『血槍富士』も群像劇だったんだけど、なんとこの作品も群像劇。こういういろんな人たちがからまる群像劇って私は好きなので、この作品もすごく面白く楽しめました。それにやっぱ遠い昔のよき日本って感じがこれまたいいんですよ。私もすっかり年くっちゃって懐古趣味に走っちゃってるんでしょうか(笑)。いろんな人がいて、いろんな出来事があって、それぞれに人生を抱えていて・・・好きだなぁこういう作品。最後にはほんのり心があったかくなる。特に自分も絵筆を捨てたくらいの傷を持ちながらも、本当に優しい瞳でみんなを眺める先生がすごく素敵です。ただこの映画を観てひとつ残念だったことは、クレジットに天知茂さんの名前をみつけたんだけど、どこに出ているかわかんなかったこと(笑)。

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『歌麿 夢と知りせば』(1977年/日本ヘラルド映画)

監督:実相寺昭雄。
出演:岸田森。平幹二朗。山城新伍。成田三樹夫。内田良平。

田沼政権で江戸文化華やかな中、数々の浮世絵が人々を楽しませていたが、歌麿の描く女は版元の蔦屋からは認めてもらえなかった。なんとしても女を描きたいと焦る歌麿を友人の燕十と風来山人は吉原に連れ込み、天井裏から部屋を覗かせる。数々の痴態を目にしながらもなお歌麿は、女を描くことが出来ずにいた。世間では盗賊“夢の浮橋”が江戸っ子の喝采を浴び、役者市川団鶴が大人気だったが、裏では田沼失脚のための陰謀が画策されていた。
面白くって、エロくって、かっこいい作品でした。しかも脇役として一癖も二癖もある、そんでもってなぜか早逝してしまった俳優さんばかり揃っているというのも不思議なんですが、みなさん本当にもったいない。もうこんな俳優は2度と現れないだろうという人ばかりだというのをこの作品でしみじみと感じさせられます。岸田森さんが歌麿を好演。本当にこの人は巧いですよ。硬軟演じ分けの出来る俳優さんで、この歌麿は軟の方。しかもこの人がこんなにも母性本能くすぐるような何とも言えない無垢な笑顔をなさるとは・・・思わず面倒見てあげたくなりました(笑)。しかしこの映画で一番びっくりしたのが山城さん。かっこよすぎますよ。案外この映画の中では一番おいしい役かもしれません。檜田屋に乗り込んだ時のセリフがこれまたかっこいい。「俺の嫌いなものは愛されねぇ者の嫉妬。女をいじめる奴。それに夢を見ようとしねぇ奴さ。」
物語も面白いし、映像もこれまた凝っていて面白い。堪能致しました。

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『半落ち』(2004年/東映)

監督:佐々部清。
出演:寺尾聰。原田美枝子。柴田恭兵。國村隼。伊原剛志。

ある日、一人の男が警察に自首してきた「妻を殺しました」と。彼の名は梶聡一郎。元捜査一課の警部で今は警察学校の教師をしていた。現役の警察官の犯行に動揺する県警幹部たち。それでもアルツハイマー病に苦しむ妻から「殺して欲しい」と嘆願されたため止むに止まれず犯行に到った・・・マスコミや世間に対してこれならば警察の面子は保たれるはずだった。しかし彼が自首してきたのは事件発生から3日後。そしてその空白の2日間になにがあったのか彼は頑なに語ろうとはしなかった。事態の収拾に焦る県警幹部たちは誘導尋問で空白の2日間を捏造する。検察に送られ、彼の公判がはじまるが、梶は空白の2日間については誰にも語ろうとしない。検事、弁護士、新聞記者、そして梶を取り調べ本当のことを聞くことが出来なかった刑事。それぞれがそれぞれの立場でその空白の2日間を・・・梶の真意を探るが・・・。
いやぁ、見事に泣かされました。サスペンスとしての面白味はちょっとどうかな?という感じですが、役者が上手いし、泣かせるドラマとしての組み立ては最高ではないでしょうか。いい感じで泣き所を持ってきてます。年とともに涙腺がゆるくなってきちゃってるもんだから、「あれ?」って思っている間もなく泣かされちゃいましたよ。そしてこの映画を観て一番の拾いものは柴田恭兵さんが嫌いじゃなくなったこと(笑)。実は私この人『あぶない刑事』とかのあのちゃらけたドラマのイメージしかなくって、とにかく大嫌いだったんですよね。ちゃらけた役しか出来ないとまで思ってました(爆)。ところが結構いいんですよ、この映画では。役柄だけで偏見を持ってはいけないと反省。
あ、そうそうこの映画でこれもうちょっと説明しておいてよ・・・と思ったのが骨髄移植についてなんですが、私この映画観て家に帰ってからネットで検索して調べちゃいましたよ。世間の皆さん骨髄移植って何度でも出来るって知ってらっしゃるんでしょうかねぇ。私は一度っきりだと思ってたんですよ。ですからうるうる泣かされながらもずっとこのことが気になっちゃって・・・(笑)。で、調べたら何度でも出来るそうです。こういう奴もいるんだからもうちょっと親切に説明加えておいてくれたっていいと思うんですけどねぇ・・・。

2004年1月18日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『いつかA列車に乗って』(2003年/)

監督:荒木とよひさ。
出演:津川雅彦。加藤大治郎。真矢みき。小林桂樹。栗山千明。

ジャズバー『A−TRAIN』。開店前のステージでピアニストの江藤に曲の指導を受ける健一。彼はサックス奏者としてプロになることを夢見てこの店で住み込みでウェイターをしていた。開店時間が近づき次々とやってくる従業員たち。そして毎夜この店に通う常連の梅田。店が開店し、ひとり、またひとりとやってくる客たち。それぞれの人生、それぞれの思いを抱いてジャズに耳を傾ける人々。ジャズバー『A−TRAIN』の中で織り成されるそれぞれの一夜の物語。
私がすごく気に入った作品『たそがれ酒場』のリメイクということで、ぜひとも観たいといそいそと劇場へ出かけたのですが・・・(^^;)。決して悪い作品ではないのですが、やはり『たそがれ酒場』には及びませんでしたねぇ。群像劇を扱うには監督初心者ではやはり少し無理があるのかもしれませんね。舞台を現代に持ってきてジャズバーにするという発想はおしゃれだし、全編に流れる音楽もさすがにこちらはプロということですごくいいのですが、物語のまとまりにちょっと欠ける感じがあるのは否めない。大きなスクリーンでまるまる2曲も本物のジャズの演奏が聴けるというのはすごく気持ちよかったですけどね。でも小林桂樹さん扮する元検事のセリフがよかったなぁ「人生は忘れ物を捜す旅、あなたはまだ若い。まだまだその忘れ物をとりに戻れますよ」

2004年3月1日(動物園前シネフェスタ)

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『イノセンス』(2004年/)

監督:押井 守。
声の出演:大塚明夫。田中敦子。山寺宏一。竹中直人。

電脳ネットワークが発達し、肉体の機械化も進み、人とサイボーグ、ロボットが共存する2032年の日本。少女型の愛玩用ロボットが暴走、所有者を惨殺する事件が発生する。捜査にあたる公安九課の刑事バトーとトグサ。以前コンビを組んでいた自分と同じサイボーグである通称”少佐”の失踪から心に囚われた何かを持ってしまったバトーは、ロボットの存在意義に思いを巡らせながら捜査を進める。
前作の『攻殻機動隊』はビデオで観たのですが、その時はなんともいえないおいてけぼり感を感じてしまったのですが、こちらは無事ついていけました(笑)。いや、やたらと繰り返される禅問答のようなセリフや、やたら小難しい引用には思わず眉間にしわをよせてしまったのですが、そういうのを理解しようなんてこと考えずに観ることが出来るくらいにバトーがかっこいい。ハードボイルドな探偵映画を彷彿とさせる映画でした。特にバトーと飼い犬の関係がなんだかすごくいい。あの犬のキャラクター商品が欲しい・・・(笑)。それにしてもアニメ・・・なんて単純な括りにしてしまえないほど映像がすごいですねぇ。物語の進行も面白いし、テーマも面白い。しかし、こういうテーマを語ろうとすると禅問答のようになってしまうんでしょうかねぇ。そんなことはないですよねぇ・・・。(^^;)

2004年3月15日(TOHOシネマズ泉北)

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『名探偵コナン 銀翼の奇術師』(2004年/東宝)

原作:青山剛昌。
監督:山本泰一郎。
声の出演:高山みなみ。山崎和佳奈。神谷明。山口勝平。

小五郎のもとに舞台女優である牧樹里が、彼女の宝物であるスター・サファイアを狙うという怪盗キッドからの犯行予告解読の依頼にやってくる。翌日、舞台の最終日にキッドがやってくるという小五郎の強引な解読のため、劇場「宇宙(そら)」に集まった小五郎、コナン、蘭に園子、そして少年探偵団たち。果たして本当にキッドはやってくるのか?ところが出演者たちと挨拶を交わす彼らの前に大胆にも工藤新一に変装したキッドが現れる。それはコナンの正体が新一だと知っているキッドの挑戦状か!?
なんだかコナンを観に劇場に行くというのが年中行事化してしまって、ついついまた劇場に足を運んでしまったのだが・・・。なんか今までの作品以上に強引だなぁ(笑)。「キッドVSコナン」じゃないじゃない。おまけに名探偵じゃなくってもいいじゃない。ま、確かに事件は発生するんだけど・・・(^^;)。大技だなぁ。『名探偵コナン版エアポート2004』ですか・・・(笑)。ま、それでもそれなりに楽しんだからいいんですけが、やはり名探偵という以上はトリックや推理にメインを置いて欲しいなぁ。

2004年4月19日(TOHOシネマズ泉北)

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『三十六人の乗客』(1957年/東宝)

監督:杉江敏男。
出演:小泉博。淡路恵子。志村喬。扇千景。千秋実。佐藤允。

東京で強盗殺人事件が発生する。犯人は3人を殺害し、300万円を奪って逃走。犯人の手がかりは奪われた札の番号だけ。逃走する犯人を捕らえるために主要各駅を張り込む刑事たち。一方聞き込みに回ろうとする山上に部下の一人が渡辺君から預かったと辞表を手渡す。渡辺は山上の部下であり娘婿でもある刑事で、3年前にも同じように刑事が嫌になったと愛人と一緒になろうとしたところを山上の説得で辞職も離婚も留まったのだが、また同じ女性よりが戻ったという。あきれる山上は聞き込みの途中、渡辺の愛人の店に寄り、彼らが信州へスキーバスで出かけたことを知る。しかし偶然にも犯人もそのバスに乗った可能性があることを知った山上は浦和署に連絡し、渡辺にスキーバスを見張らせることに。刑事を辞めるつもりの旅行で刑事として重要な仕事を課せられたしまった渡辺の目は次第に刑事のものへと変わっていく。乗客は全部で三十六人。人目をやたらと気にする青年。大きなカバンを大事そうにかかえる男。時間ばかり気にする男・・・疑えばみんな怪しく見えてくる。本当にこの中に犯人がいるのか?
この作品も面白そうで、すごく観たくて観たくて仕方のなかった作品なんですが、意地でもみつけてしまうのが私のモットーでして(笑)。とは言えまさかビデオ化されていたとは思いませんでした。おかげでみつけることが出来たんですけどね。こんなに面白い作品がすんなり観れないなんておかしいですよ。私は残念ながら最初から犯人を知っていたのですが、これ犯人を知らなければもっと面白かったでしょうね。知っていてもどこでどういう形で犯人が犯人として現れてくるのか、全然読めない。そしてあいつも怪しいこいつも怪しい・・・って言ってる中盤でカードのほとんどが裏返される。その裏返し方もこれまたうまい。ここである程度裏返されたことでホッとさせるあたりの作り方は素晴らしいですね。観たい観たいと思っててみることが出来ただけでもうれしいのですが、これほど観たかった作品がやはり素晴らしい作品だったということもすごくうれしいですね。そうそうこの作品にも私が喜八監督作品ですっかり好きになってしまった中谷さんがご出演なさっているのですが、『独立愚連隊』とかの癖のあるニヒルなイメージと全然違うひ弱なイメージに思わずびっくり。映画の出始めから上手い人だったんだぁ・・・と感心。本当に惜しい人を亡くしました。

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『放浪記』(1962年/東宝)

監督:成瀬巳喜男。
出演:高峰秀子。田中絹代。加東大介。仲谷昇。宝田明。

幼い頃から両親と共に行商の旅で各地を転々と暮らしていたふみ子は今、母と2人幼い頃同様行商をしながら駄菓子屋の2階で暮らしていた。自分は一人でも大丈夫だからと九州で暮らす父のもとへ母を発たせたふみ子だが貧しい暮らしは変わらずはカフェーの女給をしながらわずかな給料から好きな本を買い、日の目をみない詩作にふける日々を送っていた。ある日彼女の詩が詩人であり劇作家である伊達の目にとまり同人雑誌の仲間に入るように薦められ、文学者たちの仲間に入るようになり伊達と暮らし始めるが彼の浮気によりその生活も長くは続かず元のカフェーの女給へと戻る。その後も小説家の福地と結婚するが貧乏との縁は切れなかった。そして福地との仲も壊れ、元のカフェーの女給へ戻ったときやっと彼女の力作『放浪記』が世間に認められる。
有名な林扶美子の自伝的小説『放浪記』の映画化作品で、しかも成瀬監督作品。すごい期待度で鑑賞したのですが、うむ・・・。私はこの原作読んでないんで、何とも言えませんが、もしかしたら私この原作はすごく嫌いかも(笑)。映画の中で白坂がふみ子の作品を評して貧乏を売り物にして、ゴミ箱の中身をひっくり返して目の前に広げられているようで気分がよくないというようなことを言ってるんですが、もうまさしくその通り。しかもその貧乏はどう考えても自らが招いているような気がして仕方ない。まぁ、この原作は幼い頃から成長して成功するまでの話で、この映画はある程度成長して東京で暮らしはじめたところからの話だからそのあたり描き足りない部分はすごく多くあるのかもしれませんがね。そうそうこの映画で若き日の橋爪功さん発見!なんかそれだけがうれしかったな(笑)。

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『あゝ決戦航空隊』(1974年/東映)

監督:山下耕作。
出演:鶴田浩二。池部良。小林旭。

太平洋戦争後期、それまで進撃を続けていた日本軍の勢いは少しづつ衰えをみせてきていた。やがてサイパン陥落。なんとしてもフィリピンを死守し、劣勢を建て直したい日本軍は大西中将を第一航艦司令長官に任命し、捷一号作戦を展開する。捷一号作戦を前に軍部では熟練パイロットの不足、経験の少ないパイロットによる戦闘以外での事故が増えていることから戦闘機に爆弾を積みパイロットもろとも敵軍へ突っ込む特攻作戦案が浮上していたが、大西はその作戦には反対の意見を示していた。しかし捷一号作戦を成功させるために敢て特攻作戦を取り入れる。だが彼の苦渋の選択も空しく捷一号作戦は失敗に終わり、戦局は益々悪化し、特攻作戦は大本営作戦として当たり前のものとなっていった。そして昭和二十年日本の敗戦が濃厚となり軍司令部は和平論へと傾くなか、このまま何もせずに敗戦では特攻として死なせた兵士たちに申し訳がたたないとひたすら主戦論を主張する大西だが、その主張は容れられず8月15日終戦の玉音放送がラジオから流れる。特攻の生みの親とされる大西滝治郎中将の物語である。
メンバーがメンバーだからか、やはり東映が戦争映画を作ってもどうしてもやくざ映画のように見えてしまう。というか流れはやくざ映画のような気がしないでもないんだが・・・(笑)。しかしこの映画がこの戦争での天皇の責任まで言及していると聞きどうしも観たいと思った作品なんですが、確かにそのあたりはすごい。大西の「この戦争は国民が好きで始めた戦争じゃないんです、国家の戦争なんですよ・・・」と幕僚、閣僚、そして天皇が死んでこそ戦争に負けたと言える。そして和平か否かは国民が決めればいいという。このセリフはすごい。そしてこのセリフは単に先の戦争だけの話じゃなく、今の国家の幕僚、閣僚となった者たちへの牽制のような気もする。フィリピン陥落から内地に戻り、焼け落ちた我が家の前で近所の人たちに軍人である自分が至らないためにみなさんに苦労をかけて申し訳ないと頭を下げる大西のセリフと行動に「お前らもこれくらいの意識持てよな」と思わずつぶやいてしまった(笑)。傑作ではないけど退屈もしない・・・でも、3時間は長いな・・・。大作仕立てにしたせいか、やくざ映画の呪縛がどうあがいても解けないのか、どうも芝居のくささが気になってしまった(^^;)。

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『銀嶺の果て』(1947年/東宝)

監督:谷口千吉。
出演:志村喬。三船敏郎。小杉義男。河野秋武。

銀行強盗の三人組が北アルプスの山深い旅館に逃げ込んだ。その先には逃げ道がないと悠長に構える警察官たち。そして三人を追い詰める警官たちだが、雪崩の恐れがあるために発砲は出来ない。ところが三人組みの一人が発砲し、そのせいで雪崩が起こってしまう。その雪崩に巻き込まれ三人組の一人は死亡してしまうが、雪崩で警官たちを撒くことが出来た二人、野尻と江島は雪に埋もれた山小屋にたどり着く。その小屋では老人とその孫娘、そして登山家の本田が生活していた。彼らが銀行強盗などとは知らず、二人をあたたかく迎える彼ら。その小屋で過ごすうち、その孫娘と生きていれば彼女と同じくらいの年になっているであろう自分の娘とを重ねあわせ心を動かされる野尻。しかしそんな野尻をあざ笑う江島は本田を道案内に下山を強行すると言う。道案内を強要された本田を先頭に険しい雪渓を登る野尻と江島は・・・。
この作品は三船敏郎さんのデビュー作だそうですが、荒々しくて残忍な悪役がデビューだとは思いませんでした。しかし、さすが黒澤監督や谷口監督が俳優として推しただけあって男前で、際立つ個性を持っているなぁ・・・と感じさせられました。こんなに若い頃のこの人の作品ってこれがはじめてなんで、この人が男前なんだ・・・と今まで気付かなかった(笑)。そして朴訥としたイメージで温厚でいい人としか思っていなかった志村さんの悪役にびっくり。最初サングラスにひげ面の志村さんを見たときかっこいいって思っちゃった(笑)。でもだんだんいい人になっていく段階でああ、やっぱり志村さんだ。と納得しちゃったのはやはり、『七人の侍』や『生きる』のイメージが焼き付いているからでしょうね。この時代でも雪山でこれだけの撮影できたんですねぇ。雪崩のシーンは思っていたより迫力がありました。物語の流れは少し荒っぽい気がしないでもないですが、物語自体はすごくいい作品だと思います。DVD出たら欲しいな。

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『女が階段を上る時』(1960年/東宝)

監督:成瀬巳喜男。
出演:高峰秀子。森雅之。加東大介。仲代達矢。

銀座のバーの雇われママをしている圭子は、早くに夫を亡くし、小児麻痺の息子を持ち仕事もままならぬ兄と母の面倒をみるためには、バーで働くしか仕方がなかった。一人暮らしの女にしては高価なアパートに暮らし、高価な着物を着てはいても、それはすべて仕事のためだった。毎日上るバーへの階段、つらく重い気持ちで階段を上りながらも店のドアをあけるとき彼女はすべてを押し殺す。そんな毎日を送る圭子ももう30歳。いい人をみつけて結婚をするか、自分の店を持つか・・・。岐路に立つ圭子を巡る関西の実業家の郷田、プレス工場の社長関根、圭子が密かに思いを寄せる銀行の支店長藤崎、そしてマネージャーの小松。
この映画の中の高峰秀子さんが一番きれいなんじゃないかな。いや、もちろんもともときれいな人であることは確かなんですが、銀座のママということで自分の美しさを前面に出しているような気がする。映画によって自分の持っている外観、雰囲気をこんなに変えてしまえるというのは、やはりこの人はすばらしい女優さんですね。しかもこの作品では衣装も担当しているとか・・・この映画ほどカラーじゃないのが残念な映画はないですね。モノクロでも着物のセンスのよさ、お金を節約するために昼夜兼用で着れるようにと地味めの着物を選ぶという圭子の雰囲気が伝わってくるんですから、カラーだともっと衣装選びの巧さが際立ったのではないかと思います。
しかし、この映画を観終って、あぁ、私もまだまだ男を見る目がないなぁ〜って思っちゃいました(笑)。やはり実業家の郷田を選ぶくらいじゃないとダメですよねぇ。

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『黒線地帯』(1960年/新東宝)

監督:石井輝男。
出演:天知茂。細川俊夫。三原葉子。三ツ矢歌子。

麻薬で女を縛り、売春させているという秘密売春組織を追うトップ屋の町田は、敵の罠にはまり、眠り薬で眠らされてしまう。目覚めた町田の横には彼のネクタイで首を絞められた女の死体があった。彼女は町田が売春組織の女だと目をつけて追っていた踊り子だった。このままではどう言い訳しても自分の罪になってしまう。自分をはめたのは、間違いなく自分が追っていた売春組織だと確信する町田は、こっそり部屋を抜け出し、売春組織を追う。
冒頭、天知さんのナレーションで細部をはしょっている展開に驚いた(笑)。普通、秘密組織を追っているという展開があって、あまりに近づきすぎたからと罠にはめられるというシーンに移ると思うのだが・・・。ま、わかり易くていいですけどね。天知さんと言えば渋くてニヒルなイメージがすごくあったんですが、この映画では罠にはめられて苦悩してる割には明るくて、おちゃめな感じもあったりして、なんか新しい魅力を発見したようで得した気分になっちゃった(笑)。しかし、途中、町田が出会うかわいい女の子が、三ツ矢歌子さんだと映画を観終って、映画のデータ探してて始めて知り「えぇ〜!!」と思わず叫んじゃったよ。どうしても私の頭の中ではこの映画の女の子と晩年の三ツ矢さんが結びつかない。(^^;)・・・。それにしてもこの売春組織のボス役の人、インパクトありますねぇ。もう座っているだけで悪いおっさんなんだもん。それになんか出てくる人出てくる人みんな濃い。すごいなぁ〜(笑)。

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『黄線地帯』(1960年/新東宝)

監督:石井輝男。
出演:吉田輝雄。天知茂。三原葉子。

ある男からの依頼で東京に来ていた神戸税関長を殺害した殺し屋衆木。しかし外には、すでに警察が到着していた。報酬は警察への密告だったのだ。自分をはめた雇い主への復讐のため神戸へ向かおうとするが、東京駅はすでに警察に包囲されていた。そんなとき公衆電話で話しをしている女を見つけ、拳銃で脅しアベックを装い、警察の目を逃れ列車に乗り込む。彼女はダンサーで、踊り子募集の広告で神戸へ向かう予定だった。そして彼女が話しをしていたのは恋人である新聞記者真山。彼は彼女の電話が途中で切れたことを不審に思い、彼女が見たという広告元を訪れるが、その広告主新日本芸能社は国際売春組織と関わりがあることを知り、彼もまた神戸へ向かう。
昔あった赤線にひっかけて、外人に日本人女性を斡旋することから黄線だって・・・なるほどねぇ。黄線地帯となっているのは神戸。しかし、神戸ってこんなに怪しい街だったかい?というくらいに怪しい街となっている。BGMはなんだかインド音楽みたいだし・・・(笑)。私が生まれる前の神戸ってこんなに怪しかったんだろうか?それにしても天知さんほど、陰りのある、孤児院で育ったんだという設定の似合う俳優さんっていないですよねぇ。陰を演じさせたら天下一品ですね。陽でもなかなかに巧い俳優さんですが。しかし・・・靴屋のおやじ、あれだけデカデカと「一緒にいる人は殺し屋です」って書いた札渡されてるんだから気付けよ(笑)。ま、そのお札があっちに渡ってこっちに渡ってという面白い流れになっているので、あのおやじが気付いちゃったらおしまいなんですけどね。このお札の流れと一緒で殺し屋、税関長、国際売春組織、とつながって行くのが面白い。飽きさせないうまい作りですねぇ。

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『火線地帯』(1961年/新東宝)

監督:武部弘道。
出演:吉田輝雄。天知茂。鳴門洋二。三原葉子。

梶川組のシマである競輪場でパクリ屋をやっていた伸一と健次は、梶川組の者にみつかり彼らから追いかけられることになるが、梶川組と縄張り争いを続ける重宗商事の情婦ゆみの車に逃げ込んだことから、重宗商事に雇われることになる。その夜拳銃の密売が行われ、その拳銃を競り落とすのは梶川組であると見越した重宗はその銃の横取りを画策し、梶川組の車の後をつけるが彼らが手を下す前に梶川組の車は橋の欄干に激突していた。労なく拳銃の横取りに成功した彼らだが、梶川組の車を狙っていたのは彼らだけではなかった。梶川組に拳銃を売りつけた男黒岩がその拳銃を狙っていた。翌日重宗商事の行動のすべてを見ていた黒岩は重宗を恐喝するための電話をかけてくるが、黒岩に現場を見られていたとは知らない重宗は伸一と健次を疑う。今度は重宗商事からも追われる身となる伸一だが・・・
ラインシリーズということなんだけど、なんか先に観た『黒線地帯』と『黄線地帯』とは雰囲気が違うなぁと思っていたら・・・なんだ監督が違うんですね。先の2作品と比べると、こうちょっと明るい感じがしました。それにしても・・・黒のスーツに黒のシャツ、黒の中折れ帽子と昔ながらのギャングスタイルの天知さん・・・似合いすぎます。主役よりかっこいいし、主役より雰囲気持ってるもんだから主役がかわいそうに浮かばれませんよ(笑)。きっとこの映画天知さんが出てなかったら私退屈したかも・・・(^^;)。ま、それなりには楽しめたのですが、昔懐かしい娯楽アクション映画という感じしかしませんでしたね。伸一に惚れている健次の妹幸子のキャラにはなんだかすごくうざったさを感じちゃいましたし。この年代のこういう娯楽映画のほとんどに言えることなんですが、結構オーバーアクションなんですよねぇ。「よし!」って感じで指をパチンとならすシーンのダサいこと・・・。思わず笑っちゃいましたよ。腕を大きく振り上げてパチン!ですもんねぇ。この当時はあれがかっこよかったのでしょうか?(笑)それとも、吉田さんだからそう感じてしまったのか・・・(^^;)

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『座頭市と用心棒』(1970年/大映)

監督:岡本喜八。
出演:勝新太郎。三船敏郎。若尾文子。

凶状持ちで血の匂いのしない日はない生活を送っている市が、ふと思い出した花の香り、水のせせらぎ・・・3年前に訪れ心休まる日々を送った蓮華沢の里にもう一度行ってみようと足を向けた市だが、そこは市が知っているあの平和で穏やかな里ではなくなっていた。小仏の政五郎というやくざに支配されていたのだ。しかもその政五郎は同じくこの里に君臨する生糸問屋の烏帽子屋弥助の実の息子だったが、御金改役まで出世している出来のいい弟三右衛門が役目を利用し、小判鋳造の際金を横領、そしてその金を父弥助に預けているはずだと、なんとかしてその金をみつけようとやっきになっていた。ところがそんなときに現れた座頭市に手下をやられ、面倒になる前にと用心棒に座頭市の殺害を依頼するが・・・
座頭市って結構三枚目的なところもあったんだけど、この作品ではなんだかそれが強調されているように思う。一瞬はだかの大将の山下清とだぶっちゃいましたよ(笑)。捕り方に捕まるシーンでは大笑い。おいおい・・・市さん大丈夫かい?こりゃやっぱ山下清だよ(笑)。この用心棒もどこかコミカルで、市と用心棒の駆け引きが面白い。市をいたぶる用心棒がなんだか悪がきみたいで楽しかったなぁ。居酒屋の女将梅乃と用心棒、市の3人の関係にもう少し面白味が欲しかったところですが、女性を絡ました作品の少ない喜八監督ですから、仕方ないかな。でも、居酒屋での用心棒と梅乃のセリフのやりとりは好きだな。「今夜泊まっていいか悪いか?」「俺と寝るか寝ないか?」そしてそのかわり政五郎を斬ってくれという梅乃が「斬るか斬らないか?」。素っ気ないセリフなんだけどこのリズムがいいんですよね。ラストにも思わずにやり。すっかり喜八監督ファンになってしまってる私にはすごく面白くてうれしい作品でした。

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