『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)

監督:深作欣二。
出演:丹波哲郎。左幸子。三谷昇。藤田弓子。

昭和46年8月15日。一人の女性が厚生省あての不服申立書を持って役所を訪れる。昭和27年「戦没者遺族援護法」が施行され残された家族に遺族年金が支払われることとなったが、軍法会議により処刑された軍人の遺族には適用されずこの女性サキエもその適用されないとされた一人だった。しかし彼女の夫富樫勝男は昭和20年8月敵前逃亡により処刑と記されただけで、何一つその事実を明確に示すものがなく、そんなたった一枚の紙切れを信じることは出来なかった。遺族年金が欲しいからだと後ろ指さされながらも毎年8月15日に不服申立書を提出するサキエ。彼女が欲するのはただひとつ。夫の死の真相だけだった。サキエの思いに心動かされた役人は当局の照会に返事をよこさなかった富樫の所属していた部隊の生存者4人の氏名を教える。どうしても真相が知りたいのなら自らこの4人にあたってみては。という役人の言葉通りに4人を訪ねるサキエ。そしてその4人により語られる真実は戦場で繰り広げられた恐ろしくショッキングな事実だった。
神宮寺さんの「神宮寺表参道映画館」でこの映画のレビューを読ませていただいてから、この映画はどうしも観たい1本となっていた。それが運良くCATVで放映されることになりレビューを読ませていただいてからそんなに待たずにこの映画を観ることが出来たのは本当にうれしい。そして本当に観ることが出来てよかったと痛感する作品でした。もう戦後なんて言葉すら当てはまらないくらいに戦争の記憶から遠く離れてしまった今、残さなくてはいけない戦争の記憶。そのために絶対に必要な1本だと言っても過言ではないだろう。見事に完成された反戦映画。4人に話しを聞きにいく主人公サキエと同様に観ている側も次々と明らかになる事実に驚愕し、最後に主人公と同じ結論にたどりつく。サキエは言う「国が勝手におっぱじめた戦争だに、後始末は全部おらたちがひっかぶってるだに・・・」昨今愛国心を持たせる教育とかなんとか耳にするが、国が勝手におっぱじめる事に対して右へならえが愛国心だと言うような教育だけは勘弁していただきたい。その前に勝手に事おっぱじめるような国にしてはいけないのだが。

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『金環蝕』(1975年/東宝)

監督:山本薩夫。
出演:宇野重吉。仲代達矢。三國連太郎。山本学。高橋悦史。西村晃。

昭和39年。第14回民政党大会で、総裁選が行われ現総裁である寺田正臣が総裁に就任した。数日後、金融王と呼ばれる石原参吉の元に星野官房長官の秘書が2億円の借金の申し込みにやってくる。即座に断った石原だが、総裁選で使った金の穴埋めに走っていると確信した石原は独自に星野の動きを追う。一方星野官房長官は5億円の政治献金をするという約束で九州・福竜川ダム建設工事の入札を竹田建設に請け負わせるべく画策していた。星野の画策通り竹田建設が落札し、5億の金が政治献金という名目で星野の手に渡される。一連の星野の動きを掴んだ石原はこの件を暴露しようとするが・・・。
この映画の冒頭の総裁選は池田勇人と佐藤栄作が争った総裁選がモデルだそうだ。そして福竜川ダム建設工事の汚職って言うのも実際に起こった九頭竜川ダム建設における汚職疑惑なんだそうだ。で、この九頭竜川ダム建設における汚職疑惑ってのがどんなもんなのかちょっとネットで調べてみようと思って検索をかけたけどみつからなかった。だけど、「汚職事件」で検索したら・・・あはは・・・ぞろぞろ出てくるね(苦笑)。ま、実際の事件がどんなものであったにしろ、この映画は政治のいい勉強になる。「政治とお金」ってやつのね。私は過去にいろんな汚職事件の話を聞いても多少は頭にくるものの、所詮政治ってやつには金が絡むんだよ。なんてしたり顔で思ってた。だけどこの映画を観て私が思っていたお金の流れと違うことに気付き、そうだったのか!と目から鱗状態になっちゃった。では、「政治とお金」ワンポイントレッスン!政治家にはいろいろな調整や地固めのためにお金がいる。総裁選なんておっきな行事?があるとなおさら。そこでそのお金をどう調達するか。錦の御旗ならぬ「政治献金」のご登場。そのためにはそれを出してくれる所を探さなければならない。だけど大きな公共事業があればその相手は簡単にみつかる。まずは個人的な懐を満たせてもらって、次に実際の仕事で必要なお金を・・・。入札価格を教えてその会社に工事の権利を与えるんですが、ここがポイント。私が全く気付かなかったところなんだけど、入札額を自分たちが必要な金額を上乗せして設定するんですよ。本当なら1億円で出来上がる工事を2億円で設定する。で、業者はその入札額どおりに入札して自分とこの儲けより上乗せされている1億円を政治家に・・・。つまりその政治家に渡った1億円はその業者のお金じゃなくって、税金なんですよね。なるほどぉ〜・・・と関心してる場合じゃないんだけどね(苦笑)。本当にこの映画はいい勉強になります。マスコミの人間までお金つかまされてるって描写があるんですから。もう大笑い「だろうなぁ!」ってね。ホントこの映画はいろんな意味で面白いし、すごい映画ですよ。出演者がこれまたよくぞここまで集めたなというぐらいに濃厚だし、その濃厚な顔ぶれがこれでもかってくらいに演技合戦を繰り広げているからこれまたすごいです。映画の面白さだけではなく役者さんの巧さにすごいなぁと唸らされました。ネットで調べててこの映画のモデルが明記されてましたので、あげておきますね。まず最初に書いたとおり寺田首相(久米明)=池田勇人。星野官房長官(仲代達矢)=黒金泰美。神谷代議士(三国連太郎)=田中彰治。斎藤幹事長(中谷一郎)=田中角栄だそうです。この中谷一郎さん扮する幹事長が田中角栄だってわかりやすいですよ。なんたって扇子パタパタさせてますもん。というより角栄さんしか知らないや(笑)。

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『独立愚連隊』(1959年/東宝)

監督:岡本喜八。
出演:佐藤允。中丸忠雄。鶴田浩二。中谷一郎。

第二次大戦末期、北支戦線の山岳地帯で敵に包囲された最前線にある独立第九○小哨、別名独立愚連隊に従軍記者の荒木という男がやってきた。敵に包囲されている場所に危険を冒してまでやってきた彼の目的はそこで交戦中に起こったという情婦と大久保見習士官の心中事件の真相究明。そして彼の本当の名前は大久保。心中したとされる大久保見習士官の兄だった。心中が起こった部屋には数発の銃弾が残されており、心中ならば2発で事足りるはず・・・そして意味ありげな独立90小哨哨長の石井軍曹の言動。石井軍曹に不審を抱く大久保だが・・・。
『独立愚連隊西へ』とは姉妹作品のようなんだけど、別にこちらがパート1というのではないようだ。作品の面白さとしは『独立愚連隊西へ』の方がずっと軽くて面白かった。でも、こちらはコメディタッチの軽さはないものの、なんだか西部劇のような気がしてそれなりには面白かったですけどね。兄が弟を殺された復讐のために敵陣に乗り込む・・・まさしく西部劇です。しっかしこの作品でびっくりしたのが三船敏郎さん演じる頭を打ってちょっとおかしくなってしまった部隊長。真面目な顔して「敵襲!」って・・・(^^;)。しかも川で洗濯する慰安婦に向かって「おまえら○○○○があるのか!ないのか!」まさか三船さんがこんな役をやってらっしゃったとは・・・驚きです。そして思わずかっこいい!と声を発してしまったのが鶴田浩二さん登場シーン。中国服を着た鶴田さん本当にかっこいい。着流し姿よりしびれちゃった(笑)。岡本作品では結構いい役なさってる中谷一郎さんこの作品でもまたいい役で・・・。常に脇役にしか興味を示さない私には岡本監督のこの手の作品はすごく相性がいいみたい。

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『名探偵コナン 迷宮の十字路』(2003年/東宝)

原作:青山剛昌。
監督:こだま兼嗣。
声の出演:高山みなみ。山崎和佳奈。神谷明。山口勝平。

東京で3人一度に大阪、京都ではそれぞれ一人ずつ日本刀と弓矢で殺害されるという事件が起こる。そして捜査の結果その殺された5人は仏像や美術品の窃盗集団「源氏蛍」のメンバーであることが判明する。その頃小五郎、コナン、蘭、園子の4人は小五郎あてに依頼のあった8年前の仏像盗難にかかわるヒントである絵文字の謎解きのため京都にある山能寺を訪れていた。8年前の仏像盗難も「源氏蛍」の仕業ではないかと疑うコナンは絵文字の謎解きのため義経・弁慶に纏わる場所を訪ねることにするが、京都五条大橋で同じく大阪で殺害された「源氏蛍」のメンバーと面識があったために事件を追っていた西の高校生探偵服部平次と出会う。平次とともにこの事件を追うことにしたコナンだが、何故か平次が狙われ、さらにまた1人殺害されてしまう。残る「源氏蛍」のメンバーは義経と弁慶の二人。彼らの正体は?彼らの狙いは一体?
なんだかこの作品の主役はコナンや新一ではなくって平次みたい。新一ファンにはブーイングのようですが、私はこの作品は面白かったな。今までの劇場版のような緻密さはないんだけど、なんたって舞台は古都京都。義経・弁慶の時代劇がらみ。時代劇フリークでもある私にはうれしかった(笑)。それにバイクでの追跡シーンはすごく迫力があって見入ってしまいました。ストーリーは確かに??でしたけどね。あまりにも強引すぎ・・・って感じがありますね。でも時代劇っぽいから私はOK・・・(って単純すぎ?(笑))。私の好きな小五郎さんはほとんど活躍しませんでしたが、ラストに背負い投げみれたし、声優さんがかわってちょっとキャラかわった?という白鳥警部もなんかかわいかったし・・・。一般の感覚でいくと絶賛できないかも・・・って作品でしたけど。(笑)ただこの劇場版ってとにかく少年探偵団を出してこなきゃいけないって感じでいつもうまく絡めてあるんだけど、この作品に限って少年探偵団の登場はちょっと強引だったかなぁって気がしないでもない。でも京都府警の綾小路警部ってキャラはいい。また登場させて欲しいな。

2003年4月28日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『スパイ・ゾルゲ』(2003年/東宝)

監督:篠田正浩。
出演:イアン・グレン。本木雅弘。椎名桔平。上川隆也。

昭和16年。二人の男が検察に逮捕される。1人は日本人の尾崎秀実、もう1人はドイツ人リヒャルト・ゾルゲ。朝日新聞の記者であった尾崎は上海でゾルゲと出会い、日本の上海における植民地政策に反感を抱いていた彼はゾルゲの本当の正体を知らないまま彼に協力していた。その後まもなく日本に帰国した尾崎だが、昭和8年、日本にやってきたゾルゲと再会、彼の正体がソビエトのスパイであるとわかった上で彼への情報提供を行うようになる。祖国ソビエトを守るために諜報活動をするゾルゲ、軍国主義へと傾きつつある日本の中で日本国民を守る術として国家を裏切る尾崎。日本最大のスパイ事件、世界を震撼させたスパイ、リヒャルト・ゾルゲの物語。
イアン・グレン演じるゾルゲはすごくいい。彼の巧さにこの映画がひっぱられているような気がする。3時間というとんでもなく長い映画なんですが、インド映画で鍛えられている私にはこの長さはあまり気にならなかった。この映画あまり評判よくないようなんですが、『梟の城』よりもずっとよかったと思いますよ(笑)。でもねぇ、『梟の城』の時もそうなんだけど、やたらとお金かけてCG駆使してますが、そこまで必要かなぁ・・・って気がしないでもなかったですね。CGで戦前の東京の街を再現したりしてますけど、やたら使えばいいってもんじゃないでしょ。と言いたくなっちゃった。そのお金かけて再現した映像が目障りなんですよね。私はこういうのあまり好きじゃないです。でも私としてはこの映画ラスト15分・・・20分かな?くらいまでは星4つの気持ちで観てたんですよ。ところが締めに入るはずのラスト15分くらいからなんじゃこりゃ?というシーンが続き、ラストシーン。めまいを覚えてしまいました。「くさい!」思わず叫びそうになってしまいましたよ。こんな青臭いメッセージなんて普通いれないんじゃないかなぁ?むか〜し、むかしの映画サークルみたい。なんともぬる〜い映画に仕上げてしまいしたね(苦笑)。

2003年7月6日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『血槍富士』(1955年/東映京都)

監督:内田吐夢。
出演:片岡千恵蔵。月形龍之介。喜多川千鶴。田代百合子。加東大介。

江戸へと向けて東海道を進む若侍酒匂小十郎と槍持ちの権八と中間の源太。そして彼らと同じ道を行く旅芸人の母娘。身売りにゆく娘とその父。あんま。十手持ちの伝次。人目をやたらと気にする藤三郎。そして権八の槍に惹かれた浮浪児の次郎。彼は江戸に出ておじさんと同じ槍持ちになりたいと権八にくっついてくる。街道では大泥棒風の六右衛門の詮議が行われ、旅行く者たちの話もその大泥棒の話で持ちきりだった。その宿場で権八の目を盗み、小十郎と源太が飲み屋へ入る。この主人小十郎は普段は優しく気立てがいいのだが、酒乱癖があるためにくれぐれも頼むと小十郎の父よりきつく申し渡されていた。ところが同じく酒好きの源太は主人の言葉に抗えず、二人して酒を飲み小十郎が町人に喧嘩をふっかけることに・・・しかし巧い具合に駆けつけた権八が取り押さえ事なきを得て、江戸への旅は続くが、大井川が雨で渡れず長逗留となってしまう。そしてその宿場でいろいろな物語が進む。
この映画は槍持ちと主人の話だとばかり思っていたのですが、なんと群像劇なんですねぇ。その組み立てがすごく面白い。 内田吐夢監督の戦後復帰第1作ということで伊藤大輔、小津安二郎、溝口健二というメンバーが協力して作られたというだけあって、すごく絞まったいい作品だと思います。そしてこの作品の一番有名なシーンが冒頭の富士をバックにした東海道。富士山とやしの木というなんとも不思議なとりあわせなんだけど、全然変じゃない。こんなこともありなんですねぇ。映像も面白いし、いくつも重なった物語もその重なりに違和感がなくって、流れがすごくいい。すごく観たい!という思いにかられた映画って実際に観てみると観たいと思っている期待感が高くなっているために、なんだ・・・というのが結構あるんですが、この作品は観ることが出来てよかったぁ〜ってしみじみと思いましたね。そしてラストの武家社会への批判は戦後すぐのこの作品、もしかして軍や政府への批判じゃないかな?なんて気がしました。

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『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年/東宝)

監督:本広克行。
出演:織田裕二。柳葉敏郎。深津絵里。

2003年、様々なビルが建ち並び観光名所となっているお台場。そしていまなお発展途中のこの街で、奇妙な殺人事件が発生する。噛み付き魔、スリ、雑多な複数の事件に追われる湾岸署に特別捜査本部が設けられ、殺人事件捜査本部長となった女性キャリア沖田に翻弄されることとなる青島ら湾岸署員たち。「事件は会議室で起こっている」と言い切る沖田の指揮に不満を覚える彼らだが、本店の指揮には逆らえないと黙々と捜査をすすめる。しかし彼らをあざ笑うかのように第2の殺人事件が発生。しかも彼らの不協和音を知っているかのように「おまえらには捕まえられない」と電話をしてくる犯人。あせる沖田の指示はますます湾岸署員たちに苛烈なものとなる・・・
『踊る大捜査線 THE MOVIE』がすごく面白かったので、これはぜひとも観にいこうと決めていたのですが・・・1の方がいいや(笑)。予告ではすごく楽しみにしていたんですよ。だって、予告だと警察内部になんかありそうな感じだったじゃないですか。だから『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』』のようなものを期待してたんですよ。こう上層部で何かあって下には知らされなくって・・・っていうようなのをね。そんなのは全然ないし、女性キャリアの沖田ってキャラはなんだか女をバカにしとんのかい!って感じだし・・・。「事件は会議室で起こっているの」ってセリフの意味がわからん。「事件は会議室で起こってるんじゃない」ってセリフにただ対峙させてるだけじゃない。どうせこのセリフ使うんだったら本当に会議室で事件を起こしてくれよ。もともとこのドラマは今までの刑事ドラマと違うというノリで制作されているので、往年の刑事ドラマフリークの私には全然興味のない作品でテレビでは一度も観たことがなかったんですよね。もちろん観る気もなかった。だけど前作の映画の評判がすごくよくってレンタルで観たんですが、ドラマを観た事がない私にもすごく面白かった。だけど今回はどうももともとのドラマの部分に戻ったようですね。私には刑事ドラマじゃなくってホームドラマに思えてしまった。推理もなにもあったもんじゃないですしね。ま、それなりには面白いんじゃないですか。150分という長さにだれることもなかったですからね。

2003年7月25日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『仁義の墓場』(1975年/東映)

監督:深作欣二。
出演:渡哲也。梅宮辰夫。山城新伍。ハナ肇。室田日出男。

故郷を出て河田組の組員となった石川力夫は鑑別所に入れられ、そこで終戦を迎える。昭和21年鑑別所から出た石川は、やくざの世界に身を置きながらも、親分子分のしがらみを嫌い、傍若無人に暴れまくる。挙句の果てに親分を半殺しの目にあわせ刑務所に入ることになるが、親である組長に手をかけた石川は関東中のやくざから狙われることになり刑務所の中でますます凶暴になっていく。その後出所した彼は破門状を出され10年間の関東所払いとなる。鑑別所仲間の今井の計らいで大阪へ流れた石川だが、そこでヒロポンに手を出し彼の凶暴さは最早誰にも手のつけられないものになっていた。「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」という辞世の句を残しこの世を去った実存したやくざ石川力夫の物語。
とにかくすごい映画だという評判を聞いていたのでどうしてもみたい作品だったのですが、いやぁ、本当にすごかった(笑)。どんな登場人物でもその行動にはある種の理由づけが出来るんだけど、この石川力夫って人にはつけられない。もともととんでもないバカなのか?と言えばそうでもないし、どこかで何かの歯車が狂ったためにそうなったのか?と言えばなんかそうでもないような気がする。一体どうしたかったのだろう?もしかしたら元来型にはまるのが嫌でやくざの世界に身を置いたのに結局そこも型にはめられた世界で、自分自身何がなんだかわからなくなってしまったのだろうか?観ているこちらもなんだか訳がわからなくなってしまうんだけど、その訳のわからなさがこの映画のすごいところかも・・・(笑)。とにかく強烈な映画だ。この映画のリメイクである『新・仁義の墓場』も私は観ているんだけど、やっぱこっちの方がすごい。私はこちらの作品の方が好きですね。石川力夫の生き方にヘンな理由付けのないのがすごくいい。未見の方にはとにかく観て、すごいから。としか言えないけどすごい映画です(笑)。

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『さよなら、クロ』(2003年/シネカノン)

監督:松岡錠司。
出演:妻夫木聡。伊藤歩。新井浩文。

本当に実在した1961年から長野県の松本深志高校で12年間生活し、職員名簿にも載ったクロという名の犬の物語『職員会議に出たクロ』をもとに製作された映画・・・のはずなんですが・・・(^^;)。
どう考えてもこの映画クロが脇役に追いやられてるんですよね。で、どうも納得のいかなかった私は原作である『職員会議に出たクロ』を購入。映画よりもこちらの方がずーっと面白かった。どういう考えでこんな映画になってしまったのか・・・。私が思うにこの脚本家と監督(同じだったっけ?)は動物好きではないんじゃないかな。まぁ、確かにクロを主人公にするなら映画にするよりドキュメンタリーの方がずっといいに決まっているんですがね。それでも映画化ということを考えたならもっとやりようもあっただろうに・・・。動物映画としてしまってお子様相手の映画になっちゃうのが嫌だったのかな。ま、とにかく動物嫌いな人は動物が主人公であるべき映画は作っちゃいけないってことですね。でも、出番は少なかったですけど、このクロがすごくかわいかったのでそれなりにはよかったですけど(笑)。そして不覚にもラストのクロの葬儀シーンで校長先生が朗読する詩にウルウルきちゃったんですが、原作見るとその詩は松本深志高校の卒業生が書いたものだった(笑)。

2003年8月3日(パラダイススクエア)

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『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年/東宝)

監督:岡本喜八。
出演:小林桂樹。丹波哲郎。仲代達矢。森幹太。

昭和19年7月サイパン島陥落。米軍のその後の進路はフィリピンか沖縄か?なんとしても本土に敵を上陸させるわけにはいかない。大本営は本土防衛の第一線として沖縄に急遽大兵力を送り込む。沖縄第三十二軍司令官牛島中将、参謀長の長少将、高級参謀の八原大佐の3人はこの沖縄で米軍を食い止めるため綿密な作戦を練っていたが、それらはすべて大本営の作戦と命令によりことごとくつぶされてしまう。後手後手にまわる日本軍を尻目に米軍は駆逐の勢いで沖縄に攻め入ってきた。繰り返される激戦により日本軍の兵力は日増しに衰えていく。加勢を要する沖縄を本土決戦に焦点をおいた大本営は見捨てる形となる。沖縄軍の死者10万人、沖縄県民の死者15万人・・・沖縄県民の3分の1を死へと導いて沖縄決戦は終了した。
この映画は映画としてわかりやすく面白いものではない。それに2時間を超える長さ。まさかこんなに長い映画だとは思わなかったので途中でインターミッション入ったときは正直びっくりしました。
しかしその長さが気にならないほどに見入ってしまった。アメリカ軍が上陸してからの怒涛のような場面転換、これでもかとみせつけられる凄惨な場面。それでもそれらのシーンに何の感想も感じないまま、ただ場面をみつめていた。ところがテロップで入る犠牲者の数と「鉄血勤皇隊」などの部隊名に涙があふれてきた。ほとんどが武器などとらなくてもいい普通の人々。15歳や16歳の少年。そして看護婦としてかりだされた少女たちも武器を手にとる。沖縄決戦の終結は日本側に戦うものがいなくなったことによるものだ。大本営・・・すなわち日本軍が沖縄を見捨てたことにより終結する。おびただしい死体の山を築いて。私は沖縄には一度も行ったことがない。でもこの映画を観て行きたいと思った。なぜだか漠然と一度は行っておくべきだ・・・ふとそんな気がした。

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『ああ爆弾』(1964年/東宝)

監督:岡本喜八。
出演:伊藤雄之助。越路吹雪。砂塚秀夫。中谷一郎。

大名組の組長大名大作は3年の刑期を終えて出所したが、出迎えてくれるはずの子分の姿はなく、組に戻るとなんと矢東弥三郎という男に乗っとられ、元の子分たちは市会議員に立候補するという矢東の選挙活動に大忙し。自宅も矢東のものとなり、妻は新しい宗教にはまり、息子は生活のために新聞配達をしているという。憎むべきは矢東、ドスを片手に殴りこんだが、思いは果たせず、刑務所で同じ房だった爆弾作りの名人太郎とともに万年筆に仕込んだ爆弾を作り矢東の万年筆とすり替えようとするが・・・。
冒頭いきなり「うれしや、うれしや・・・」と狂言ではじまる。なんじゃこりゃ?と思ってみていると・・・アハハ・・・この映画ってミュージカルなのね(笑)。なんて斬新な作りなんだ。怪優伊藤雄之助さんの組長がもう最高!まさかこの人がこんなにもコメディむきだったとは・・・。物語はなんともはちゃめちゃでバカバカしいんだけど、狂言を軸にミュージカルにしてしまっているこのバカらしさがすごくいい。爆弾の威力を試すために映画館の地下で映画の爆発シーンにあわせ爆発させるという場面で劇場でかかっている映画はなんと『どぶ鼠作戦』。思わずにやけてしまった。おまけに中谷さんがダンスまで踊っちゃってるんだからびっくりです。最近の喜八監督作品って観たことないんですが、昔の作品はどうも私と相性がいいようですねぇ。

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『続・網走番外地』(1965年/東映)

監督:石井輝男。
出演:高倉健。アイ・ジョージ。嵐寛寿郎。中谷一郎。

函館でダイヤが盗まれるという強盗事件が起こる。同じ頃、刑期を終え網走刑務所から出所した橘真一は仲間の大槻と共に青函連絡船に乗っていた。船内で盗難事件が起こり乗員のすべてが持ち物検査を受けた際、一人の尼僧が持っていたトランクがひっくり返り中に入っていたマリモが散乱し、そのうちのひとつが大槻の足元に転がってくる。何気なくそれをポケットに入れた大槻だが、なんとその中には函館で起きた強盗事件で盗まれたダイヤが入っていた。そして強盗の一味と橘たちのマリモをめぐる争奪戦が始まる。
私はこのシリーズはテレビで放映されたものを何本か観ているのですが、どれがどれだかわかんない(笑)。でも、いつも刑務所から出てきてまた刑務所へ帰るというパターンだという意識があったんですが、なんとこの作品は違いました。なんかそれだけでびっくり(笑)。そしてラストのマリモ争奪戦には大笑い。決してドタバタはしていなんだけど、マリモと人質を交換するためにいきなりズドンとやられちゃかなわねぇってことで受け渡し場所はなんと祭りの踊りの輪の中。敵も味方も頭にお面つけて、松明持って、踊りのステップ踏みながらのにらみ合い。笑うなって言うほうが無理でしょう。特にアラカンさんのいかつい顔で睨みをきかせながらのステップはもうなんとも言えません(笑)。あげくの果てにマリモのキャッチボールがはじまるし・・・。いいですねぇこの展開、好きだなぁ。

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『心中天網島』(1969年/ATG)

監督:篠田正浩。
出演:中村吉右衛門。岩下志麻。滝田裕介。加藤嘉。

大阪天満の紙屋治兵衛と曽根崎新地の紀伊国屋の遊女小春は、客と馴染みの枠を超え深く愛しあっていた。しかし治兵衛には女房も子供もあり、いつか身請けをするという起請文だけが増え、身請けをする金子を用意することも出来なかった。このままでは情死の恐れもあると案じた治兵衛の兄孫右衛門は武士と偽り小春の客となり、小春の本心を問いただすと、治兵衛と死ぬ積もりはないと言い放つ小春。この話を立ち聞きした治兵衛は「今の今までだまされていたのか・・・」と小春への思いを断ち切るが・・・。
有名な近松門左衛門の浄瑠璃の映画化なのですが・・・。なんともびっくりする作品です。物語は何度も上演されている文楽や歌舞伎のものと何ら変わらないのですが、表現方法が斬新というか、突拍子もないというか・・・見事にはまってしまいました。冒頭は文楽の楽屋裏が映り、電話のやりとりが聞こえる。「なんじゃこりゃ?」「あぁ、ATGだ・・・」などとATG映画に持っている先入観が先走り、最後まで観ること出来るかなぁという不安がよぎる。場面は一転して遊郭へ・・・なんとも不思議なセットだ。そしてなぜかちょろちょろする黒子。「へ?何?」頭の中にうずまく「?」ここでもまた「やっぱりATGだ・・・」とつぶやいてしまうのだが、物語が進むにつれ、その黒子が気にならなくなる。場面に同化するというか、いて当然のように思えるようになり、この黒子が重要ですらあるように感じてくる。そしてラストの墓地での抱擁シーン。なんてエロチックなんだ。すばらしい。このシーンですごく気になったのが、ここはセット?それとも本当の墓地?ということなんですが、ネットで調べるとなんと本当に二人の墓のある大長寺だとか・・・。本物の墓地であのシーン・・・すごすぎる。それとお金がかけられなかったからという苦肉の策のセットということなんですが、このセットがすごくいい。最近のお金をかけてCGを駆使した作品よりもずっといい。芸術的ですね。篠田正浩監督の代表作として有名だというこの作品のことは全く知らなくって、ただ何気なく吉右衛門さん主演ということで録画しておいたのですが、観ることが出来て本当によかったと思える作品でした。

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『網走番外地 望郷編』(1965年/東映)

監督:石井輝男。
出演:高倉健。杉浦直樹。嵐寛寿郎。桜町弘子。

長い間故郷を離れていた橘真一が故郷長崎へ帰って来る。昔世話になっていた旭組の縄張りを奪おうと悪業の限りをつくす安井組に腹をたて単身乗り込み組長の安井に大怪我を負わせたために離れた故郷だったが、今もまだ旭組は安井組の横暴に耐えながらも港湾の積荷の仕事を細々としていた。母の墓参りだけで町をあとにするつもりだった橘だが、安井組の闇討ちで大怪我をした旭組長の息子の猛と昔思いを寄せていて今は猛の妻となったルミ子に懇願され、旭組に身を寄せることになる。そんなある日旭組に外国船の積荷を下ろす大きな仕事が舞い込むが、安井組はこの機会にと執拗に妨害工作を繰り返す。俺たちは堅気だと言い切る旭組長の言葉に安井組の妨害工作にひたすら耐える橘だが・・・。
堅気だからと敵の横暴に耐えるが、その敵の横暴さが極限に達したとき、怒りに立ち上がる健さん。そう、私の知ってる「網走番外地」のパターンはこれなのよ(笑)。いいなぁ、やっぱこのシリーズも。出てくる面子がそんなにかわんないってのもいいんですよ(笑)。特に由利徹さん。そんなに重要な役じゃないんだけど、お笑い系キャラで癒し系。この人出てくると画面が変わるような気がする。好きだなぁ。そしてこの作品では混血の娘エミーと橘のかかわりがすごくいい。案外これがメインかも(笑)。で、健さんよりもかっこよく登場の杉浦直樹さん扮する人斬りジョージ。「七つの子」の口笛で登場のパターンにはなんだか笑っちゃいますが、かっこいいです。ラストの健さんとの一騎打ちではガクっと膝を落とす健さんに「その傷なら七針も縫えば大丈夫だ・・・」って七針ってなんでやねん?と思わずつっこみいれちゃいましたが、とにかくかっこいいです。

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『ガス人間第一号』(1960年/東宝)

監督:本多猪四郎。
出演:三橋達也。佐多契子。土屋嘉男。八千草薫。

ある日吉祥寺の富田銀行が強盗に襲われるという事件が発生。逃亡する犯人の車を追跡していた岡本警部補は五日市街道のはずれにある日本舞踊の家元春日家の周辺で追い詰めるが、ガケから落ちた車には犯人の姿はなかった。その後また東海銀行が襲われる。第一の事件で犯人が姿を消した春日家が怪しいと感じた岡本警部補は当主春日藤千代の身辺を捜査すると、宗家とは名ばかりで弟子たちもいなくなり貧窮していたはずの春日家が急に金回りがよくなり、絶縁状態となっている弟子たちに金をバラまき、発表会の準備を進めていた。そして藤千代が使用した札の一部が強奪された銀行の紙幣のナンバーと一致し、彼女を強盗の共犯容疑で逮捕すると、図書館で働く水野という男が自分が犯人だと名乗り犯行の方法を実地しようと岡本警部補ら警官を銀行に連れ出すが・・・。
いやぁ、面白い!ガス人間なんて発想を一笑してしまえない物語の展開にびっくりしてしまいました。まさか悲恋物語だったなんて。シュルシュルとガス化して逃げさるガス人間。服はどうすんだ?という突っ込みさえ途中で忘れちゃいましたよ。しかも・・・八千草薫さんきれい!春日家を訪れた岡本警部補が見惚れてしまうというシーンにはそらそうだ。と思わず頷いてしまいました。昨今の映画ではこういう設定でも「えー!そうかぁ!?」と突っ込んでしまうことが多々あるんですが、この八千草薫さんにそんな突っ込みする人は皆無でしょうね。人間の悲哀が切実と語られているような趣もあって、本当に面白い映画でした。

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『美女と液体人間』(1958年/東宝)

監督:本多猪四郎。
出演:佐原健二。平田昭彦。白川由美。小沢栄太郎。

ある雨の降る夜。街角で誰かを待つ車。そしてその待ち人がかばんを抱えて現れたかと思うといきなり銃を発射し出したかと思うと姿を消してしまう。衣服一切をその場に残して・・・。捜査にあたった警察はその男が麻薬密売をしているギャングの三崎であることを突き止め、麻薬取引に絡む失踪事件として捜査を進めるが、衣服を残して消えたという新聞記事に興味を覚えた大学の研究室で核の影響で体が液体化してしまうという研究をしている政田が警察を訪れる。彼の話を一笑する警察だったがやがて第2の事件が起き、”液体人間”の存在が明らかになる。
『ガス人間第一号』に引き続きこの作品を観たのだが、いやあこれも面白い。冒頭の雨のシーンで流れる「ポワ〜ン」という不気味な音に、おぉ!これはのこぎりで奏でる「おまえはアホかぁ」ってやつじゃないか!と思わず全然笑うようなシーンではないのに爆笑してしまった。偉大だなぁ、横山ホットブラザース。と訳のわかんない話はおいといて・・・(笑)。核の影響で液体人間になってしまうという発想でラストに「地球が死の灰に蔽われ人類が全滅した時、液体人間が地球を支配し彼らの文明を築くかも知れない」なんてテロップが出るあたり、ただのSF作品じゃないって感じですね。物語の流れも全然陳腐じゃないし、そんなに無理も感じられなかった。とにかく面白い。それにこの映画での平田昭彦さんかっこいい。クールで知的ですごく素敵でした。

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『伊賀の影丸』(1963年/東映)

監督:小野登。
出演:松方弘樹。山城新伍。御影京子。高松錦之助。

信長を暗殺し、天下を狙う明智光秀は、引き続き今度は堺を訪れていた家康の命を狙う。無事三河へ戻れば対抗策のある家康だが、このままでは明智軍に四方を囲まれ逃げる術がない。そこで伊賀の百地三太夫ならばと伊賀を目指すが、その伊賀では明智の命を受けた甲賀七人衆が伊賀を急襲し、伊賀を手中におさめていた。その時伊賀を離れていた三太夫の息子影丸が駆けつけたときにはすでに時遅く、家康様をお守りしろという遺言を遺し三太夫は息を引き取る。家康の元へ駆けつける影丸の行く手を宿敵甲賀七人衆の首領邪鬼がさえぎる。
ガハハハ!東映時代劇お子ちゃまバージョンというこのノリがいい!昔観ていた『赤影』を思い出しちゃったよ。主人公影丸の松方さんがズラつけてないっていうのも『赤影』みたいだったし。1963年の作品っていうことだから、『赤影』の先になるのか、あとになるのか・・・とにかく同一線上にあるのは確かでしょうね。『赤影』を楽しんでいた世代には懐かしくも面白い映画ではないでしょうか?ただ、ラストの影丸と邪鬼の一騎打ちにの映像にはあまりのバカらしさに大笑いしてしまいましたが・・・(笑)。

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『男の顔は履歴書』(1966年/松竹)

監督:加藤泰。
出演:安藤昇。内田良平。中原早苗。中谷一郎。

立ち退きの決まった雨宮医院に交通事故の一人の男が運び込まれてくる。瀕死の状態の患者を雨宮は知っていた。沖縄戦線で彼の部下だった柴田上等兵、そして終戦から3年後の三国人たちが思うままに暴れていたマーケットで再会した崔文喜だった。それから18年たった今また奇妙な再会をした彼の顔をみつめる雨宮は、18年前彼の頬と心に傷を残したマーケットでの出来事を回想する。今まで日本人に虐げられていた三国人たちは、日本が敗戦国となったことで横暴の限りを尽くし、雨宮が地主のマーケットでも九天同盟の劉成元がマーケットの乗っ取りを企んでいた。マーケットで暮らす人々は地主である雨宮に助けを求めるが、殺し憎みあう戦場での虚しさを知る彼にはあえて争いを起こす気などなかったが・・・
冒頭「この映画は敗戦後の日本の混乱した時代に想定したフィクションである。そして世界中の人間が互いに愛し合い、信じ合える日を信じて作られたドラマである。」というテロップが入る。憎しみの連鎖をうまく生かし描いている面白い作品です。テロップだけ読むとなんだかお堅い映画のような気がしますが、全くそんなことはありません。三国人対日本人という対立を描きながら、差別や区別の心を持たない主人公が、戦争で、そしてマーケットで戦わざるを得ない状況となり、心の傷を増やしていく様を描くことで冒頭のテロップの主旨に沿っているというのがすごくうまい作りになってます。まぁ、しかし・・・劉成元役の内田良平さんのまゆげのない顔はマジ怖いですが・・・(笑)。そしてドーンっとアップになる安藤さんの頬の傷が本物だってのもすごいです。芝居は、ちょっと・・・と思ってしまう安藤さんですが、さすがあちらの世界にいらっしゃっただけあって、グッと睨んだ目には本物の迫力がありますね。ヤクザ映画っぽいけど、またちょっと違う趣があってなかなか面白い作品でした。

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『海底軍艦』(1963年/東宝)

監督:本多猪四郎。
出演:高島忠夫。藤山陽子。小泉博。上原謙。田崎潤 。

カメラマンの旗中と助手の西部はある夜、埠頭でグラビアの撮影をしていたとき、海から現れた不審な人影とタクシーの転落を目撃する。翌朝警察の現場検証に立ち会っていた旗中は、一人の女性をみかけ、モデルにしたいと彼女の乗った車の番号から彼女の所在を突き止める。光国海運専務楠見の秘書である彼女が楠見とともに乗り込んだ車を尾行する旗中と西部は、ムウ帝国の工作員と名乗る男に誘拐されようとしている所を助けることになる。遥か昔に海底に沈んだとされるムウ帝国は海底帝国として今も繁栄し、地上の人類を凌駕する文明で再び地上のすべての国家をムウ帝国の植民地とし、全世界の支配を目論んでいた。その彼らの唯一の不安材料は「海底軍艦」。敗戦の夜、行方不明となった楠見の部下神宮司大佐がある島に自らの基地を築き、密かに建造している超高性能の潜水艦だった。神宮司の上司だった楠見と今は楠見の秘書をしている神宮司の娘真琴なら神宮司大佐の居場所を知っているであろうと誘拐を企てたのだった。
海底軍艦なんて名前だから潜水艦だろうとは思っていましたが、まさか空まで飛んじゃうとは思いもよりませんでした。思わず『宇宙戦艦ヤマト』を思い出しちゃったんですけど、もしかしてヤマトの発想の一部はこの作品からきてるんじゃないかなぁ。今の感覚で観ると特撮はしょぼく感じてしまうのですが、この作品の製作年度から考えるとすごいですよ。特にラストの海上炎上のシーンには驚きました。しかも敵は宇宙人じゃなくって、ムウ帝国という発想がこれまたすごい。しかし、人類より優れた文明を誇るムウ帝国の衣装がなんで前時代的な、まるでエジプト王朝のようなものなのかが不思議ですが・・・(笑)。しかも槍持ってるし・・・。ま、そんなことはともかく物語は十二分に楽しめましたよ。いつも知的でスマートでかっこいい役の平田昭彦さんのムウ帝国人の衣装には思わずあまりのギャップにソファアからひっくり返りそうになりましたが・・・(笑)。平田ファン必見と言えなくもない。

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『暗黒街の対決』(1960年/東宝)

監督:岡本喜八。
出演:三船敏郎。鶴田浩二。司葉子。河津清三郎。中丸忠雄。

地元の暴力団小塚組と新興勢力の大岡組は小競り合いを続けていた。しかも金で地元の有力者を抱きこむ大岡組に警察さえ手が出せないでいた。そんな中東京から汚職警官として藤丘が左遷されてやってくる。大岡は汚職警官だったら使いやすいだろうと藤丘を抱き込もうとする。大岡の元に出入りしながらも、事故死として処理されたが本当は大岡により殺害されたとされる元小塚組幹部村山の妻の事件を調べたり、小塚組長を殺害し、小塚組の全滅を図る大岡組の手から村山を助けたりする藤丘。小塚組を全滅させ、村山一人を残しただけで何も怖いもののないはずの大岡組だったが・・・
面白い!まるで現代版の『用心棒』ですね。渋くて重厚な三船さんよりこういうちょっとやんちゃなイメージのある三船さんは本当に魅力的です。鶴田浩二さんもいい!東映映画に出ている鶴田浩二さんより東宝映画に出てる鶴田浩二さんの方が好き・・・なんて言ったら変かなぁ。でもなぜか東宝映画の方が魅力的に感じちゃうんですよねぇ。『暗黒街の対決』なんてちょっと堅くて暗いタイトルですが、笑い所もちゃんとあるし、なんで殺し屋カルテットがステージで歌うたうんだ?ってのまである(笑)。あの天本さんが歌ってるんですよねぇ。なんとも不思議な歌ですが(笑)。警察が大岡邸に乗り込み繰り広げられる銃撃シーンで、「ちょっと」とミッキー・カーティスさん扮する雇われの殺し屋が大岡組幹部の中丸忠雄さんを手招きするシーンは最高です。最初と最後の列車の中のシーンもいいし、すごく面白い映画でした。堪能したなぁ。

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