『ホワイトアウト』(2000年)

監督:若松節朗
主演:織田裕二。佐藤浩市。松嶋菜々子。吹越満。

冬の奥遠和。二人の遭難者を救出すべく発電所所員の富樫と吉岡は係長の静止を振り切り天候の悪化した山へ向かうが、救助した遭難者が暴れたために吉岡は足を骨折。止む無く遭難者2名と吉岡を置いて、富樫1人が救助を呼びに戻るがホワイトアウトと呼ばれる強風によるガスと雪の真っ白な闇に覆われ救助を呼ぶのが遅れたために吉岡は帰らぬ人となってしまう。それから3ヶ月、吉岡の婚約者だった千晶が吉岡の働いていたところを見るためにやってくるという。彼女の到着を待つ富樫。しかしやって来たのは彼女だけではなかった。突然に武装グループに占拠される発電所。ただ1人外に出ていたために人質にならなかった富樫は人質となった同僚たちと自分が救えなかった友人の彼女を助けるために単身十数人のテロリストたちに立ち向かう。
映画がはじまってすぐ、σ(^-^)がホワイトアウトに襲われちゃったよ。だめだぁ〜!なんなんだよ、あのダイジェスト版を見ているかのような感覚になっちゃう導入部は?こりゃ、映画観てから原作という順番の方がよかったなぁ。ストーリー展開がわかっているだけに発電所占拠までの流れの不味さに何ともクラクラしてしまった。そして原作を読んでいてσ(^-^)が結構気に入っていた笠原のキャラがどうも薄味すぎ。最初は笠原って登場人物省いちゃってるのかと思ってしまった。そして何より・・・。平川千晶・・・あんた邪魔なんだよ。と言いたくなるくらいに原作のキャラと違ってるんだもん。ありゃないよ。あれじゃいなくてもいいじゃない。原作ではいなくてはいけない登場人物なのに映画じゃいなくてもいいキャラに成り下がってるって一体どういうことなんだろ?この映画が上映されているときに「日本版ダイハード」なんて声を聞いたんだけど、そりゃ『ダイハード』に失礼ってもんですよ。比べること自体間違っている。原作が気に入っただけになんともつらい。原作がある映画ってのはつらいですねぇ。原作を先に読むか、後から読むか。これって映画の出来によって変わってきますもんねぇ。この映画の場合は後から読むべきでしたね。

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『みんなのいえ』(2001年)

監督:三谷幸喜。
出演:唐沢寿明。田中直樹。八木亜希子。田中邦衛。野際陽子。

念願のマイホーム建築に夢膨らませる夫婦。特に妻民子のマイホームに対する思い入れは強く、洋風のおしゃれな家を希望していた。そんな彼らが設計を依頼したのは民子の大学の後輩でもある新進気鋭のインテリアデザイナーの柳沢。しかし彼は建築士の免許を持っていないため施工は大工の棟梁である民子の父長一郎に依頼することに。
柳沢の設計するおしゃれな家の設計図を元にすんなりとおしゃれな家が建つと思っていた二人だったが、現実はそんなに簡単ではなかった。映画の出来としては『ラヂオの時間』の方が好きだな。これも面白いし十分に楽しめたんだけど、ちょっとノリすぎじゃないの?と感じるところが多かった。基本的に本筋とは違う部分のお遊びのようなシーンは私はあまり好きじゃないんですよね。劇作家である夫の作品の導入なんかいるのかな?って気がしたし、民子の姉夫婦のキャラがなんかうざくて・・・。あんな奴らいるよ、とは思うんだけど、わざわざ取り入れてまで見たくないキャラだね。それに・・・いくら昔気質で和室にこだわるって言ったって、20畳の和室はないだろ?ま、あのオヤジも最後にはちょっとやりすぎだと反省はしてたけど、お茶やお花の師匠の家ならともかく、一般家庭じゃ迷惑以外の何ものでもないよ(笑)。
ありえないような・・・でもありえるかなぁ〜・・・という微妙な線を出来れば維持して欲しかったな。

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『無法松の一生』(1958年)

監督:稲垣浩。
出演:三船敏郎。高峰秀子。芥川比呂志。笠智衆。

小倉の人力車夫富岡松五郎は喧嘩っ早く、あたりでは有名で無法松と呼ばれていた。そんな松五郎はある日怪我をしている吉岡大尉の息子敏雄を助けたことから、吉岡一家と懇意になるが、大尉は急逝。息子を父親のような立派な人間にしたいと願う未亡人の気持ちを汲み取り献身的に敏雄と未亡人よし子の面倒を見る松五郎。やがて月日は流れ幼かった敏雄少年も青年となり松五郎を必要としなくなり・・・
スナックでおじさんたちが歌う「無法松の一生」はよく聞いていて知っていたんですが、映画は一度も観たことがなかった。で、今回BSで放映されるんでこれは観なければと録画をしたのですが、なんと今回は前作の『無法松の一生』と2本同時に放映される・・・さてどうしたものかと思いつつ新しい方を録画したのですが、なんでも前作は戦時中のため検閲でズタズタにカットされたとか・・・。映画としてはカットされていない後の作品の方が完成度は高いんだろうけど、一体どの場面がカットされていたのかちょっと興味がありますね。こんなことなら前作も録画しとけばよかった。
でも、この作品って恋愛映画なんですね。しかもすごく切ない。松五郎が吉岡家を訪れる最後になった祭りの日。彼が叩く祇園太鼓。そのあとラストを迎えてあらためてあの祇園太鼓を勇壮に叩く松五郎が、あの太鼓に自分の心のすべてをぶつけていたんだと気付かされる。この作品がこの監督だけではなくいろんな俳優さんでいろんな監督で何作も映画化されている理由がわかるような気がする。いい作品です。そして富岡松五郎・・・いい男ですよね。不器用で純粋で・・・。

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『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(2001年)

原作:青山剛昌。 監督:こだま兼嗣。脚本:古内一成。
声の出演:高山みなみ。山崎和佳奈。神谷 明。山口勝平。

キャンプの帰り道に西多摩市にある完成間近の日本で最も高いツインタワーに立ち寄ったコナンと少年探偵団のメンバーに阿笠博士は偶然にもこのビルのオーナーである常盤美緒の招待でこのビルに訪れていた小五郎・蘭たちと偶然合流する。ビルの内部を案内されるコナンたち。その時コナンは工藤新一をコナンに変えた謎の組織のジンとウオッカと思われるポルシェ356Aをビルの前で目撃する。そして竣工前のホテルに強引に宿泊していた市会議員が殺害され、現場には割られたお猪口が置かれていた。犯人探しに乗り出す少年探偵団だが第二の殺人事件が起こり、またしてもそこには割られたお猪口が・・・。犯人は一体何者なのか?この事件に「黒の組織」は関わっているのか!?
はじめて劇場で観る『名探偵コナン』期待度が大きすぎたか・・・・。いや、楽しませてはもらいましたよ。しかし、ストーリー的には過去の作品の方がいいかな・・・と・・・。変に「黒の組織」を絡ませてしまったためにメインの事件がどことなく薄味になってしまっている。この事件だとテレビ版で十分に描ける事件だとすら感じられた。メインの事件の緊張感がないんですよね。力点は「黒の組織」、ラストの大技に置いたんだろうね。きっと。ま、それでもいつもはおいしいところコナンに持ってかれてる元太くんと光彦くんの二人が颯爽とかっこいいところ見せてくれたんでよしとしましょうかね。最高にかっこいいシーンの元太くんなんだけど、それでも彼の行動の原点は食い物ってのが彼らしくってよかったな(笑)。

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『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』

原作:青山剛昌
声の出演:高山みなみ。山崎和佳奈。神谷 明。山口勝平。

高校生探偵の工藤新一はある日謎の組織の犯罪を目撃し、そのときに飲まされた薬により体が小さくなりその日以来小学生江戸川コナンとして過ごすことに・・・テレビでおなじみ『名探偵コナン』の劇場版第4弾。
警察官が立て続けに二人も射殺されるという事件が起こる。ところがいつも協力的に内容を知らせてくれる警察関係者たちの様子がおかしい。そんな中白鳥刑事の妹の結婚を祝う会の行われたホテルで今度は女性の佐藤刑事が犯人の銃弾に倒れる。しかも毛利蘭の目の前で・・・。生死をさまよう佐藤刑事、幸いにも蘭は無傷だったが、佐藤刑事が撃たれたショックで記憶を失っていた。そして犯人の次の狙いは犯人を唯一目撃しているはずの蘭。果たしてコナンは無事蘭を守りきり、犯人を捕まえることが出来るのか・・・。
やっぱいい!大好きだなぁ〜『名探偵コナン』。当たり前の話だけどテレビシリーズよりも劇場版の方がずっとおもしろい。さすがにアニメなんで劇場まで観に行くことは、躊躇してビデオを待っていたんだけど・・・。これ観て決めました次回作は絶対に劇場に行くぞ。それにこの作品白鳥刑事役の塩沢兼人さんのラストの作品なんですよねぇ。「NEED NOT TO KNOW」この声がすごく素敵に響きました。

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『ラヂオの時間』(1997年)

監督:三谷幸喜。
出演:鈴木京香。唐沢寿明。西村雅彦。

ラジオドラマの脚本募集に投稿し、見事採用された主婦の作品がいよいよ深夜ラジオで生放送されることに・・・。物語はパチンコ店に勤める主婦が昔の恋人と再会し、夫を捨て新たな恋に走るという恋愛劇。リハーサルも順調に終わり、あとは本番の時間を待つだけになったのだが、本番を直前にひかえているにも関わらず主演女優のわがままから急遽舞台は日本からアメリカへ。そしてパチンコ店の店員である主人公はなんと弁護士に・・・。なんとか主演女優のわがままにあわせ台本を修正し、本番へと突入するが、わずかな台本の設定変更だと思っていた修正が物語を進めるうちに次々と辻褄合わせをしなければならなくなりどんどん物語は大きく変わっていってしまう。わがままを押し通す出演者たち。何がどうなってもとにかく番組をうまく終了させようとやっきになるスタッフ。そして次々と台本を脚色され、せっかくの作品を無茶苦茶にされてしまう主婦。ラジオの収録スタジオをいう小さな空間で織り成される人間模様。
おもしろい!なんでこの作品今まで観なかったんだろう?はなっから邦画はあまり観ないんだ。という自分の中の決め付けで観なかったんだろうなぁ。邦画、洋画を問わずこういう作品好きだな。邦画だからってはなっから除外しちゃいかんなぁ。とこの作品を観て反省。とにかくそんなバカな・・・って展開が最高におもしろい。どんどん変化していくラジオドラマ。そのせいで急遽用意しなければならない効果音を作る過程に思わず感心してしまいましたよ。確かに駐車場の管理人が元効果マンだったなんてぇのは出来過ぎと言えば出来過ぎなんだけど、それがまたかえって面白味を増しているように思う。こういう人が右往左往して走るドラマは大好きだな。それに出演者みんないい味だしてるんだよねぇ。

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『12人の優しい日本人』(1991年)

監督:中原 俊。
出演:相島一之。豊川悦司。二瓶鮫一。山下容莉枝。

ある殺人事件の審議に集められた12人の陪審員。何とも軽いノリで出前の飲み物の注文を取り、では挙手で無罪か?有罪か?あっさりと全員無罪で評決が一致となりみんなが帰り支度をはじめたとき、その中の1人が「それでいいんですか?話し合いましょうよ」と切り出した。まぁ、まだ注文した飲み物も来てない事だし・・・と、とりあえず議論をはじめたのはいいのだが、同情、批判、それぞれの自己が噴き出し白熱(?)した議論が繰り広げられる。果たして被告は有罪か無罪か・・・。彼らの答えは出るのか?
この映画も評判のいい作品だったんだけど今まで一度も観たことがなかった。『12人の怒れる男』をモチーフにした日本人ならではの密室劇ですね。確かに日本人だったらこうなるだろうなぁ〜と思わず苦笑いしたシーンも多々あり、最高に面白かった。でもσ(^-^)が一番大笑いしたのは「だよ〜んのおじさん」の落書き。会議やら話し合いやらをしていたら絶対に1人はいるんだよね、意味のない落書きする奴(笑)。それにこの映画何が見事って、12人全員のキャラがみんなちゃんとたってるのがすごい。もう一人、一人、いるいるこんな奴。とちゃんと納得出来るんだもの。特にあのボーっとしたおじさんとおばさんがいい!本家?の『12人の怒れる男』も好きだけどこっちもなかなかいいですねぇ。日本もなんだか陪審員制を導入するとかしないとか・・・。この映画のようにうまくいけばいいですけどねぇ。(笑)

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『WXV PATLABOR THE MOVIE3』WASTED THIRTEEN(2002年)

原作:ヘッドギア。
監督:遠藤卓司。
声の出演:綿引勝彦。平田広明。田中敦子。大林隆之介。

昭和75年東京。湾岸地域で汎用作業ロボット<レイバー>が襲われるという事件が連続して起こっていた。湾岸開発に反対する組織のテロか、単なる事故か?事件は混迷を極めていた。地道な地取り捜査を進める城南署の二人の刑事ベテランの久住と若手の秦。やがて二人はレイバー襲撃事件とほぼ同時期に起きた米軍輸送機墜落事故に目を向ける。墜落機から消えた荷物・・・。そして遂にレイバーだけではなく人間が襲われるという事件が発生したとき二人の目の前に異常な怪物が姿をあらわす。
私はこれ面白かった。好きだな。何がいいって昔ながらの刑事もの推理ものの王道パターンが見事に踏襲されているのがいい。「REM'sインナースペースWebページ」のREMさんがこの映画を『砂の器』だとおっしゃってたのですが、確かに似てる。そして金田一シリーズにも似たような匂いのする映画です。ロボットものであり怪獣ものであるこの映画がそれらの映画に似ているということ自体不思議なお話なんですが、あえてその路線に持っていったというところが私としては気に入った。
『機動警察パトレイバー』の劇場版第3弾でありながら本来の主役である特車2課を完全に脇にまわすという大胆さ。見事だ。ただ、怪獣を作り出すための設定に米軍や自衛隊を絡ましたのが妙に中途半端になってしまっているんだけどね。このあたりを所詮本筋とは違うから中途半端にならざるをえないとは思うんだけど、もう少しドロドロ・・・ってした感じにしてほしかったかな。関係者の口はみんな塞がれちゃった・・・とかね(笑)。ま、そんなことは置いといて・・・
『モンスターズ・インク』を観に行った時にこの映画の予告編を観て「こ・・・この声は!?」と綿引さんの声に惹かれて観に行って、パターン的には好きなパターンの映画でしかも綿引さんが主役。贅沢言ったらきりがない。映像と演技がすごい。私はとにかくこの映画は好き(笑)。

2002年4月1日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』(2002年)

原作:青山剛昌。 監督:こだま兼嗣。脚本:野沢尚。
声の出演:高山みなみ。山崎和佳奈。神谷明。山口勝平。

米花シティホールで体感シュミレーションゲーム「コクーン」の発表会が行われようとしていた。「コクーン」とは眠りながらにしてリアルに再現された歴史上の事件に挑み、その仮想世界では痛み、匂い、すべての五感が現実と変わりなく得られるというもの。そのゲームに挑むのは政界・財界・芸能界など各界を代表する招待者の子供たち。ところがゲームの発表試乗直前「コクーン」を作った最高責任者・樫村が何者かに殺害される。彼のダイイングメッセージは「JTP」。ゲームの中にこの答えが隠されていると感じたコナンは「コクーン」に乗り込む。そして蘭、少年探偵団の一行も。しかしこの「コクーン」が“ノアズ・アーク”という人工頭脳に占拠され、誰一人としてこのゲームをクリア出来なければゲーム参加者50人の命はなくなる。50人の命を賭けた挑戦がシャーロック・ホームズが活躍した19世紀末のロンドン、ベイカー街で繰り広げられる。
乱歩賞作家の脚本。舞台はホームズの時代。事件は「切り裂きジャック」。これだけ並べられたら観に行かない訳にはいかないでしょう。そして描かれるものは普通とは違うことを嫌い切り離そうとする日本の教育、政界・財界などの実力ではない世襲制などへの批判。そしてその子供たちを抹殺することで日本のリセットをしようという発想は観ていて「おぉ!」とのめり込んでしまうくらいに面白かった・・・そうそこまではね。でも後半スカスカ。人工頭脳の発明者である10歳の少年の自殺の意味もイマイチだし、樫村殺害の動機も思わず「は?」って開いた口ふさがらなかったよ。事件解決してるんだけど解決してないって感じがすごく残った。元太くん風に言うとすごくおいしいうな重をてんこ盛りにしすぎて食べきれなかったって感じかな。だから観ていてもったいないよぉって思っちゃった。ここまでしたんだったらきれいに食べきってよ。これだったらとんでもない電脳犯罪者がゲームを占拠してそれを解く鍵はゲームの中にあるってくらいの内容でならした方がよかったんじゃないかな?やたら重厚なメッセージ織り込んでても外面なぜるだけならやんない方がましだよ。

2002年4月29日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002年)

監督・脚本:原恵一。
声の出演:矢島晶子。ならはしみき。藤原啓治。屋良有作。小林愛。

ある朝不思議なことに野原一家全員が「湖にたたずむお姫様」の夢を見た。そしてその日ペットのシロが庭に掘った大きな穴を調べたしんのすけは古い手紙をみつける。しかもその手紙の差出人はしんのすけで「てんしょう2ねん」にいるとある。何のことかわからずに呆然とするしんのすけがふと気付くとそこは夢に出てきた湖。一体ここはどこなんだと探索をはじめるしんのすけの目の前には合戦中の侍たちがいた。そして偶然にも今まさに狙い撃ちされようとしていた井尻又兵衛という侍を助けてしまう。なんと歴史を変えてしまったのだ。しかもしんのすけがいない世界には意味がないとひろしとみさえにひまわりまで車に乗って戦国時代にやってくる。戦国時代に勢ぞろいした野原一家。しんのすけが変えた時代はどうなる?無事現代に戻れるのか?
もういい!すごくいい!前作の『オトナ帝国』で緩まされた涙腺がまたしても緩まされてしまった。こんなにも切なくさわやかな悲恋ものは近年なかったのではないだろうか?美しい姫廉姫に思いを寄せる井尻又兵衛がすごく素敵だ。戦場では鬼の又兵衛と異名をとりながらも普段はぼ〜っと空を見上げる青空侍。身分違いの恋に苦悩しながらも、武士としての使命のために愛するものを守るために戦場へ赴き命を賭して戦う。そして又兵衛を「お〜い青空侍」と呼ぶ廉姫。その呼びかけに彼女の心のすべてが物語られている。戦って欲しくないずっと空を見上げてぼ〜っとしていて欲しいんですよ・・・出来れば自分の側でね。語り合えない愛ほど切ないものはないですよ。
「春日部在住野原一家義によって助太刀いたす!」と野原一家が車で突進するシーンからもう胸が熱くなってしまった。そして敵将を追い詰める野原一家。そう誰だってどの時代だって青空侍のようにぼ〜っと空を見上げて平和な時をすごしたいんだ。でも戦わなければならない時もある。でも戦う理由はただひとつ「愛するものを守るため」なんだよ。自分の欲で戦いを仕向けちゃいけないんだよ。戦いを強いちゃいけないんだよ。世間では有事法たらなんたら騒いどりますが、その有事ってのは「愛するものを守らなければいけない」ときなんだよ。それをご都合で解釈しようとする春日城を攻めようとした敵将のような奴が出てきたときは、この敵将を一喝したしんちゃんのように一喝しなくちゃいけないですね。

2002年4月29日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『KT』(2002年/シネカノン)

監督:阪本順治。
出演:佐藤浩市。キム・ガプス。チェ・イルファ。筒井道隆。原田芳雄。

1973年8月8日東京で元韓国大統領候補の金大中が拉致される。そしてその5日後自宅前で開放されるが、なぜ拉致されただけで暗殺されずに戻ったのか?究明されることのなかった真実が事件の首謀者とされるKCIA。駐日韓国大使館員。在日韓国青年同盟。新聞記者。そして・・・自衛隊。この事件を巡り錯綜する様々な人々の姿と共に今明らかになる。
本当にこの事件は訳のわからない事件だった・・・って政治なんてま〜ったくわからないお子ちゃまの時に起こった事件なんだからそら訳なんてわかる訳ないんだけど、それでもなぜかこの事件は記憶にある。それだけすごい事件だったんだろうな・・・で、この映画で描かれる真相ってのもこれまたすごい。そして今現在韓国大統領として笑顔でテレビに映る金大中氏を思い出し、この人が背負ってきたもののすごさをこの映画で垣間見て拍手喝采したくなってしまった。
この事件自体はノンフィクションだが、この映画の本筋はフィクションである・・・しかしこれを事実としなくてもこの映画は現実のすごい部分を描いている。それは、政治の裏。政治スキャンダルなんてたまに表に出てくる程度のものだけではない得体の知れない裏の裏・・・平和日本なんて言ってるけど、暗部ではとんでもないことが日常茶飯事のように起こっているかもしれない・・・そんなことをこの映画は喚起させてくれる。この映画のワンシーンで引用される一言「自衛隊が日陰者でいるうちは国民は安全なんだ」今、このセリフは深すぎるよ・・・なんたって自衛隊が日陰者でなくなりつつありますからねぇ〜・・・。お〜怖・・・。

2002年6月22日(動物園前シネフェスタ)

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『仁義なき戦い 代理戦争』(1973年/東映)

監督:深作欣二。
出演:菅原文太。小林旭。金子信雄。成田三樹夫。梅宮辰夫。

『仁義なき戦い』のシリーズ第3作。この作品はホントあらすじ書くのむずかしい。なんたって、あっちがこうなったから、こっちがこうなって・・・と入り乱れますからねぇ。だからこそ面白いんですが・・・。
とりあえず・・・。村岡組の組長は病気療養中。このまま引退だろうと察する打本会の打本はその座を狙い、村岡組の幹部武田、松永、江田と兄弟の杯を交わし、元々兄弟分であった山守組の広能を含め5人の結束を固め、広能に取り合ってもらい、神戸の明石組とも杯をかわすが、村岡組のあとは山守組の組長と決まり、山守と対決することになる。
そして岡山で小森組(打本)と浜崎組(山守)の代理戦争を仕掛けるが、これに敗れ、明石組に逃げ込む。このことにより明石組対山守組の抗争へと発展するかにみえたが、とにかく汚くて、小ざかしい山守組の組長は広能に責任をおっかぶせてこれを回避。しかしその後もまとまるものもまとまらなくしてしまう山守のせいで明石組対神和会という巨大勢力の抗争にまでもつれこむことに・・・。
やくざ映画だからと言って血で血を洗うだけじゃないのが、面白いです。ドンパチがなければこれ、会社や、政治の世界の権力争いにそのまんま持っていける話なんですよねぇ。しっかしなんでこんなに人徳のないスケベでおバカな山守が組長なんてやってられるのか・・・(^^;)。やくざも日本独特の縦社会なんだねぇ。でもこのどうしようもない山守組長なんですが、金子信雄さんのうまさもあるけど、なんともいえないいいキャラなんだ。子分が言うこと聞いてくれなきゃ、泣き落とすんだもん。案外彼なくしてはこのシリーズは語れないかも・・・。そうそう以前観た時は気にならなかったんだけど・・・。この映画の山城新伍さん、かわいすぎ(笑)。髭生やして、顔に傷つくってんだけど、サングラスしてない時って妙にかわいいんだ。幹部には見えないよ。反対に梅宮さん・・・眉毛そるのは、反則技だよ。こわすぎ・・・。
そしてこの映画のラスト・・・次回作へ続くって感じで終わるんですが、そのラストがいい。怒りに震える文太さんかっこいいッス。ちゃんと完結はしてないんだけど、私はこのシリーズでこの作品が一番好きだな。

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『昭和残侠伝 死んで貰います』(1970年/東映)

監督:マキノ雅弘。
出演:高倉健。池部良。藤純子。中村竹弥。長門裕之。

深川の料亭「喜楽」の跡とり息子であるはずの秀次郎は、なさぬ仲の義母に気を使い家を出てやくざ渡世に身をおいていた。しかし秀次郎の服役中に父が死に、その後起こった関東大震災で妹も死に、義母も視力を失ってしまう。衰退してしまったもののなんとか「喜楽」の店だけは残り、板前の重吉が相場に走る妹婿のかわりに店を切り盛りしていた。そして出所した秀次郎は菊次と名前を偽りやくざ渡世から足を洗い「喜楽」で働きだすが、妹婿が手を出した相場の損により新興やくざの駒井組に「喜楽」の権利書を奪われてしまう。
なんでもこの作品が『昭和残侠伝』のシリーズの中で一番の傑作とか・・・。私は過去に何本か観てるんだけど、どれがどれだかわかんない(^^;)・・・。でもあらためて劇場で観てすごくよかった。フィルムが悪かったのが口惜しいですが、この手の作品を劇場で観るなんてことめったとないことなのでいい経験にもなりましたしね。しょっぱなの藤純子さん・・・か・・・かわいい。芸者姿はこれまたほれぼれします。健さんは文句なしにかっこいいし、池部良さんも最高にシブくって文句なし。それにこの映画セリフがいいんだ。殴りこみに出かけようとする秀次郎にかける芸者幾太郎の「止めはしません。でも今度は私の義理と情けに生きてください。」くぅ〜・・・泣けるぜ。そして「かたぎのあんたを行かせる訳にはいかない」という秀次郎に重吉が「ご恩返しの花道なんですよ」と封をしたドスの封を切る。かっこよすぎます。
そしてこのシリーズお決まりの例の健さんの歌をバックに夜道を並んで歩く二人。大きなスクリーンで観て鳥肌たっちゃったよ。もうすべて文句なしに最高でした。

2002年9月1日(テアトル梅田)

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『仁義なき戦い』(1973年/東映)

監督:深作欣二。
出演:菅原文太。松方弘樹。梅宮辰夫。金子信雄。

戦後まもない日本。広島呉市。ヤミ市で山守組の組員たちを相手に暴れる奴を組員たちに代わって殺ったことにより刑務所に入った広能昌三はそこで土居組の若杉と兄弟の契りをかわす。そして山守組長が保釈金を積み保釈となった広能は山守組組員となるが、年月がたち日本が戦後の復興を遂げてゆくにつれ、やくざの世界も義理や人情だけではなく利権が絡み、山守組と土居組の抗争が勃発。やがて山守組の内部抗争へと進んでいく。
最初は気のいいおやじだった山守が組が発展し、金と権力を握るととんでもない奴に変わっていく様がなんとも最高です。田中邦衛さん演じる山守組長の腰巾着の槙原がこれまたとんでもない奴で、土居組を殺りに行こうという時にいきなり残される嫁がかわいそうで・・・と泣き落として自分はさっさとその場から逃げ去っていく。そんな奴が最終的には山守組のNo.2なんだもん・・・世の中を見事に描いてますねぇ。体よくうまく泳いだもんが勝ちなんだよね。そんな理不尽な後味悪そうなストーリーなんだけど、この映画笑わせてくれるシーンが結構あってうまく娯楽映画になってます。一番爆笑したのは文太さん演じる広能の指つめシーン。本来指つめシーンなんてエグいシーンのはずなんだけど、この映画ではつめた指が飛んでいっちゃって、みんなで庭を探し回るというお笑いシーンとなってます。しかもそのつめた指が飛んでいった先はニワトリ小屋で見つかったときにはそこのニワトリさんにちょっとつつかれて形がいびつになってた・・・なんてオチまでついてます。どっからこんな発想出てくるんだろ(笑)。
前半はコミカルに、後半はシリアスにと観ていてあきない流れがまたいいんですよね。
そうそう余談ですが、後半の松方さんのサングラスなんかださいんだ(笑)。でも、当時はあれがかっこよかったのかなぁ。

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『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973年/東映)

監督:深作欣二。
出演:北大路欣也。千葉真一。菅原文太。成田三樹夫。

『仁義なき戦い』のシリーズ第2作なんだけど、主役は文太さん演じる広能じゃなくって北大路欣也さん演じる山中。予科練に憧れながら、年齢が満たないため入れずに終戦を向かえ、力のはけ口を暴力にしかみつけることが出来なかった青年山中は、マーケットで大友会の連中といざこざを起こしいきがるも、反対にめった打ちにされてしまう。そこを村岡組の組長に拾われやくざの世界に身を置くことになる。一方マーケットで山中を打ちのめした大友会の連中は、村岡組の発展が気に入らず、村岡組を潰そうと数々の手段で村岡組に対抗しようとしていた。そんななか山中は村岡組長の姪といい仲になるが、所詮は組の駒。利用され、若さゆえに翻弄され、やがて・・・
これはやくざ映画テイストの青春映画って感じですね。若さゆえの無謀と狂気が見事に描かれています。ただ・・・ちょっと暗いかな。この映画唯一のお笑いシーンは広能親分に子分たちが犬の肉食わしちゃうシーン。このシーン私好きなんだ。うまくステップ踏んで落としてくれます。まず、子分たちと歩いていてやたら犬がほえる・・・自分たちを犬を捕まえる奴らと間違えているのかな・・・とのんきに話す広能親分。そのあと肉買ってくると別れた子分たちは犬を捕まえ、肉を食べる広能親分。しかし外ではやたらと犬がほえている。腹が減ってるのかな?と優しい広能親分は肉を犬にやるが、犬に唸られはじめて犬の肉だと気付く。うまいよなぁこの流れ。私は基本的に青春の狂気・・・なんてストーリーはあまり好きではないので、このシリーズの中では結構人気あるらしいこの作品はあまり好きじゃないんですが、千葉さん扮する大友のキレッぷりは一見の価値あります。見事にキレてますよ(笑)。

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『仁義なき戦い 頂上作戦』(1974年/東映)

監督:深作欣二。
出演:菅原文太。小林旭。梅宮辰夫。松方弘樹。

『仁義なき戦い 代理戦争』の続編『仁義なき戦い』のシリーズ第4作。
前作で山守組から破門状を出された広能は、山守組と対立。激化する広島市内のやくざの抗争に市民たちが「暴力反対」の狼煙をあげ、新聞社も真っ向からやくざ組織に立ち向かい、警察も一斉に取り締まりに乗り出した。警察に包囲されて身動きのとれない広能だったが、明石組の岩井の協力を得て、打本会の打本と山守組と真っ向勝負に出ることに・・・。
ところが相変わらず情けない打本のおかげで、山守に対する18年の積年の恨みを晴らせるはずが、反対に警察に逮捕されてしまう。しかし打本にしても山守にしてもホントとんでもない親分ですねぇ。特にこの映画では打本・・・本当に最低です。自分の組の若いもんが山守殺りにいこうとしてるのを、親分のあんたがちくってどうする?!こんな奴の下についてるもんの気が知れないよ・・・と思うのですが、どうやらこの手下たちも結局はいきがって暴れたいだけ・・・の輩のようですな(^^;)。上が上なら下も下ってやつだね。
でも山守をやっつけてかっこよく終り・・・っていうのじゃないのが、このシリーズのよさかもしれませんねぇ。
リアリズムってやつですか・・・。やくざの世界も斬った張った、義理や人情なんて遠い昔なんだよ。となんともシンミリしたラストです。『仁義なき戦い 代理戦争』があっちがこうなったらこっちが・・・という見過ごすことの出来ないテンポのいい流れなので、ちょっと面白味にかけるかも・・・。でもこのシリーズ本来ならこの作品で完結だったらしいので、そのあたりは仕方ないかもしれませんね。

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『仁義なき戦い 完結篇』(1974年/東映)

監督:深作欣二。
出演:菅原文太。北大路欣也。小林旭。松方弘樹。

『仁義なき戦い』のシリーズ最終作。
前作で警察に捕えられた広能は懲役7年の求刑を受け、網走刑務所に収監中。山守は引退し、その跡を継いだ武田は広島やくざの結束を図り、暴力団撲滅のために強化する警察の取り締まりに対抗するべく「天政会」という政治結社を作る。しかし所詮は寄り合い所帯の「天政会」は数々の問題を抱えていた。なんとかそれらを抑えていた武田だが、逮捕されその留守を若い松村に任せる。武田のいない間に「天政会」を我が物にしようと画策する者たちを知力で排除していく松村。出所し元の会長に戻った武田だが、時代はもう武田の時代ではなくなっていた。
まさしく完結篇。前作の『仁義なき戦い 頂上作戦』で終わらなくてよかったな。という気がします。
武田の留守を守る松村の現代的なクールさと前時代的な力と暴力に固執する大友の対比が世代交代の必然を表しているかのようで面白いです。そして広能、武田の幕ひきがかっこいい。本当にかっこいい生き方とは引き際を心得ていることだとしみじみと感じさせられます。このシリーズは本当に面白いので好きだったのですが、今回また改めて観てこうして感想をアップして気付いたのですが、この映画第1作から3作までが1973年。そして最後の2作は1974年の製作。今から考えるとすごいですよね。それだけまだ日本の映画産業が元気だったんだ。この時代くらい元気になって欲しいな。それと『仁義なき戦い 代理戦争』の感想で梅宮さんの眉毛反則技だ。なんて言っちゃったんですが、このシリーズ同じ俳優さんが違う役で出てるんですよね。だからみんなそれぞれ髪型変えたり、メイク変えたりして役作りをしてるんですよ。元々ずっと短髪の梅宮さんは眉毛そるしかなかったんだろうなぁ・・・なんて思ったりして(笑)。このシリーズそのことを踏まえて観るのも面白いですよ。このシリーズ5本中3本に全部違う役で出てる松方さんもすごいですから。

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『十三人の刺客』(1963年/東映)

監督:工藤栄一。
出演:片岡千恵蔵。里見浩太郎。嵐寛寿郎。内田良平。

明石藩主・松平斉韶は斉韶は将軍家慶の弟であるということをかさに、傍若無人の限りをつくしていた。そんなある日参勤交代の途中で立ち寄った尾張藩木曽上松陣屋で、尾張藩士牧野の妻を手込めにし、夫である牧野ともども惨殺してしまう。この事件で常日頃から斉韶の暴君ぶりを愁いていた明石藩江戸家老間宮図書は主君の暴君ぶりを書状で訴え、老中土井大炊頭の門前で割腹し果てる。しかし斉韶は将軍の弟君である為に表立った処分は難しく老中土井大炊頭は極秘に御目付役・島田新左衛門に斉韶の暗殺を命じる。
さすが『あなたが選ぶ名作・傑作・娯楽作 東映DVD希望作品大募集!』ってので23位に入ってDVD化される作品だけあります。キャストも重厚ですしね。あっさり終わっちゃわないラストも面白い。本来なら主人公である片岡千恵蔵さんのかっこよく渋いシーンが最後のはずが、西村晃さん演じる十三人の中で一番剣が強いはずの平山九十郎の無様な無残なシーンを後に持ってくるなんて・・・。インパクト強すぎます。ただ・・・やはりこの作品はどうしても『七人の侍』と比べられることが多いようなのですが、比べてしまうとつらい部分があるんですよねぇ。ひとつの村をまるごとトラップにしてしまうんですが、その仕掛けられたトラップがわかりづらいし、イマイチ工夫がない。多数対少数の戦いでひとつの村まるごとトラップにするなら必ず落とし穴とか、火薬が使われて当然なんだけど全くそれらは出てこない。この時代の東映時代劇、見所は殺陣だぜっていうことなのか・・・。そしてこれを『七人の侍』と比べて言っちゃうと時間的なものからかわいそうだとは思うんだけど、十三人のキャラがたってないんですよねぇ。嵐寛寿郎さんが連れて来る5人は2個1・・・ならぬ5個1だもの。ま、ここを時間的なものと七人より六人も多いということで目をつぶっても、ラストのそれぞれが倒れるシーンはやはりちゃんと個々にわかりやすくして欲しかった。几帳面な性格の私めには、ここんところの大雑把さは許せないな(笑)。

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『変幻紫頭巾』(1963年/東映)

監督:工藤栄一。
出演:大友柳太朗。丘さとみ。片岡千恵蔵。山城新伍。

権力を傘に悪徳の限りを尽くす老中田沼意次の前にある夜、紫頭巾が現れ、田沼の首先に刀のつきつけ、自らの悪事を書き連ねた誓言書を書かせた。そして三日以内に老中の職を辞さぬ場合はこの誓言書を世に明らかにすると言い残し立ち去る。すかさずあの誓言書を世に出してはならぬと配下の者に命じ、なんとしても三日の間に紫頭巾を捕え、誓言書を取りそうとする田沼意次。そしてその一方でニセ紫頭巾を放ち悪事を行わせ、紫頭巾の評判を落とし、紫頭巾を追い詰めようとするが・・・。
いやぁ、まさかレンタル屋でこういう作品をみつけるとは思わなかった。楽しいなぁ。もう気分がいいほど娯楽時代劇だよ。物語は勧善懲悪で単純明快なんだけど、シーンごとにちゃんとツボを押さえた心憎い作りになってる。まず田沼が配下に紫頭巾捕縛を命じるシーンはいいよ。まず、田沼から腹心へ、そこから命じられる与力たち。そしてその与力がまた同心たちを集めて偉そうに命令して、その同心が今度は目明したちへ・・・。さりげなくブラックの入った笑い好きだなぁ。紫頭巾対ニセ紫頭巾の対決シーンも一瞬どっちが倒れたかわからない間を持たせるカメラアングルの小技がいい。でもって紫頭巾が捕り方に囲まれるシーンの迫力はすごい。怒涛のごとく押し寄せる捕り方たち。そこを縦横無尽に逃げ回る紫頭巾。映画だねぇ。映画だからこそ出来る大迫力。ホント気持ちいいです。そしてラスト田沼の息子意知への恨みを爆発させ殿中にもかかわらず刃傷沙汰に及ぼうとして取り押さえられた佐野善三郎に反対に切りかかろうとする意知の前に突如立ちふさがる紫頭巾。あんた一体どこからきたんや?という突っ込みはいれちゃダメですよぉ。過去にいろんなヒーローがいましたが、すべてのヒーローの共通点はみんなテレポート出来る。ってことなんですから。テレポート出来なきゃヒーローにはなれないんだから(笑)。
変装は出来るし、剣は強いし、テレポートも出来る。ホントにこの紫頭巾はすごいっス。

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『穴』(1957年/東宝)

監督:市川崑。
出演:京マチ子。船越英二。山村聡。菅原謙二。

文芸公論の記者北長子は警官の汚職記事を書いて文芸公論を首になる。悲嘆している長子に友人の赤羽スガは失踪者のルポを書くことを勧める。早速週刊ニッポンに長子自らが1ヶ月間失踪し、そのルポを書き、そしてその長子を1ヶ月の間にみつけた人には懸賞金50万円というプランを売り込む。もちろんその間みつからなければ懸賞金は長子のものに。無事週刊ニッポンと契約成立。早速失踪しなければならないのだが、それには元手が必要だということで第億銀行の支店長白州に資金を借りに行く。ちょうどその頃強盗の計画を進めていた白州、千木、六井の3人は強盗の計画を変更し、長子のこの計画を利用して預金の横領を企てる。そんなことに利用されるとは思わない長子は失踪資金を借り、いそいそと失踪の支度・・・そして29日後東京に戻ってくるが・・・
ばっかだぁ!なんておちゃらけでバカな映画なんだ。すっごい愛すべき映画だ。いいなぁこれ。このノリ好きだなぁ。なんかみんな楽しんでない?って聞きたくなる作品です。すっとぼけた変装や、コミカルな動きの京マチ子さんもいいけど、端正な二枚目であるはずの菅原謙二さんがいいんだ。最初は菅原謙二さんだと気付かなかったよ。でもって、京マチ子さんに対抗すべくのコミカル演技。思わずファンになっちゃったよ。俳優たちも楽しんでるだろうけど、撮ってる側もすごく楽しそう。太陽みたいなイラストがチョロチョロ出てきたかと思うといきなり29日後・・・って・・・おいおい・・・(^^;)。思いっきり遊んでない?
なんでも私も気に入った『黒い十人の女』は公開当時は全然ヒットしなくって、最近リバイバル上映でいきなり人気が出たそうなんだけど、この作品はどうなんだろ?私は好きだなぁ。こういうノリでいっちゃってる作品は大好きです。

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