『ヒート アイランド』(2007年/)

監督:片山修。
出演:城田優。木村了。北川景子。伊原剛志。細川茂樹。

渋谷を仕切る不良グループ「ギルティ」は、やばいことには手を出さないをモットーに毎週ファイト・パーティーを開催し、潤沢な資金を手にしていた。ところがある日、メンバーの一人が女の子に絡んでいるところを一人のおやじに注意されたことの腹いせに、そのおやじを襲い持っていたボストンバッグを奪ってしまう。ところがそのボストンバッグには訳ありそうな3千万の現金が入っていた。リーダーのアキはなんとかその金を元の持ち主に返し、事を収めようとするが、時すでに遅く、その金を廻り、関西やくざに強盗団。そして関西やくざと対立する地元やくざ。南米マフィアまでが加わる争奪戦に巻き込まれることになる。

普通じゃ、まずこの作品は観に行ってないはず。だけど、関西やくざの役で近藤芳正さんが出演と聞いちゃあ、観に行かない訳がない。近藤さんって案外厭味ったらしい役だとか、悪い役似合うんですよねぇ。この作品での関西やくざも似合っておられましたよ。ただちょっと悪ノリ気味のような気がしなくはない・・・っていうか地元やくざ役の豊原功輔さんが、ノリノリだからそうなってしまうのかも(笑)。なんかこの作品、主役メンバーの若手のこれからがんばりましょうチームとベテランの強盗団役の伊原、細川、松尾の渋くかっこよくおちゃらけに走らないようにと絞めときましょうチーム。そしておふざけお笑い担当チームっぽい演技に走っている豊原、近藤のお二方の三すくみという不思議な構成の作品です(笑)。 原作がこういう作りなのかは知らないんですが、これ金の入ったボストンバッグが絡んであっち行ってこっち行って、あっちからこう来て・・・とまずまずに面白い流れの作品なのに、まず用意ドンがいけない。お姉ちゃんに絡んでやっつけられた腹いせで奪ったボストンバッグってのがねぇ。巻き込まれ型の物語展開に無理があるような気がする。しかも南米マフィアっていらないんじゃないのかなぁ。で、大きな傷が人死にが多すぎる。こういう話は人死なさないでもっていくのが基本なんじゃないのかなぁ・・・なんて気がする。ま、近藤さんのおちゃめな関西人役堪能したし、伊原さんがただただかっこいいとこ全部持ってちゃいましたねぇってな終わりで、それはそれで面白かったんじゃないかと・・・(笑)。

2007年10月31日(MOVIX堺)

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『やじきた道中 てれすこ』(2007年/松竹)

監督:平山秀幸。
出演:中村勘三郎。柄本明。小泉今日子。

時は太平、大阪では「てれすこ」と呼ばれる不思議な生物が捕獲され大きな話題となっていた。その頃江戸では、品川の遊郭の花魁お喜乃に頼まれ新粉細工職人の弥次さんがせっせと偽物の切り指を作っては遊廓に通っていた。「あなたのために・・・」と客をだましては必死に金を集めるお喜乃。ところがそんなお喜乃が、沼津の病気の父親に会うために、一緒に逃げてくれと弥次さんに縋ってきた。満更でもない弥次さんに、舞台で大失態をやらかした喜多さんが自分も一緒に連れて行ってくれと頼み、二人してお喜乃の足抜けを手伝うことになる。無事遊廓を抜け出した三人の沼津を目指す珍道中が始まる。

タイトルにある「てれすこ」はあってもなかってもどっちでもいいや。って感じなんですが、とにかく全編落語をモチーフにした、人情喜劇。私はこういうの大好き。喜多さんが舞台で犯した大失態は、完全に私のツボ。思いっきり吹き出しそうになるのをこらえてました。平日だからか、この作品だからか・・・はわかりませんが、全般的に観客の年齢層はかなり高め。そのせいか笑いの場所が違うんですよねぇ。この作品はもっと大爆笑がおこってもいいくらいなのに・・・。寛平さん出てきて笑って、藤山直美さんの登場で笑って・・・出てきただけでおかしいってのはわからなくもないけど・・・ねぇ。 中村勘三郎さんのノリノリ演技もいいし、柄本明さんの飄々とした演技もいい。そこにキョンキョンがこれまたいい味出してるんですよ。寅さんが無くなった今、正月の定番作品にしてほしいくらいに楽しい作品でした。 あ・・・それとこの作品ネコ好き必見です。 まず遊廓の女将役の波野久里子さんが猫を抱いて登場するのですが、どうもこの子抱かれてるのが嫌なようで、セリフを言いながらこのネコを放すと、廊下を走っていくのが早い早い(笑)。このにゃんこの姿に私吹き出しちゃいましたよ。で、そんな風に嫌がってたにゃんこさんですが、今度はしっかり演技をしてくれます。喜多さんの首つりシーンにご登場。おいしいとこ持ってってくれますよぉ。

2007年11月26日(アポロシネマ)

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『魍魎の匣』(2007年/)

監督:原田眞人。
出演:堤真一。阿部寛。椎名桔平。宮迫博之。田中麗奈。黒木瞳。

昭和27年。連続バラバラ事件が起こり世間を賑わせていた。探偵の榎木津礼二郎は柚木陽子(元女優美波絹子)からいなくなった娘を探して欲しいとの依頼を受けていた。そして作家である関口巽と京極堂の妹であり記者である中禅寺敦子は、不幸を匣に封じ込めると評判ながら、莫大な寄進を集める謎の教団の陰謀を暴こうと調査をしていた。そんな中榎木津が探す陽子の娘加菜子が列車に轢かれ美馬坂幸四郎が所長をする巨大なはこ型の研究所へと運ばれることに。そしてそれぞれの事件がつながっていく・・・。

うむ・・・。 これ原作読んでない人わかりにくかったんじゃないかなぁ。なんせイケイケドンドンで進んでいきますもんね(笑)。見事ですよ。まぁ確かにあの原作を2時間そこいらの映画にまとめようってのが無理ありありなわけで・・・。原作好きな私は、もうなんじゃこりゃ?な世界だったんですが、「ほぼ日」でこの映画について語る京極さんの話を読んで大きく納得。なるほどね。抜粋しますと「財産略取に絡んだ、密室からの人間消失による不可能誘拐事件と、梗概は書かれる。」ところが「映画では、そこが、ぜんぶ「ない」。」「ミステリーとしていちばんの核になる部分だけ抜き取っちゃった。」 原作者ご本人があっけらかんとこうおっしゃってるんだから原作と比べると・・・なんてたかがファンが言っちゃあいかんだろ。ってな気になる(笑)。ま、原作者が楽しんだんだから原作ファンも楽しんでいいんじゃないかってな気になってるわたくし。しかし物語は別としてキャラはやはり原作を踏襲して欲しかったなぁ。っていうか京極堂のキャラ榎木津とかぶっちゃってるから榎木津がはじけきれてないんですよ。抑えろよ京極堂!(笑)。次回作ってあり得るのかしら。でも順当にいけば次は『狂骨の夢』なんだけど、映画として原作とは別物で映像化するなら『鉄鼠の檻』の方が面白いかも。見たて殺人だしね。でも1作目、2作目と評判はイマイチになっちゃってるから次はないかなぁ・・・。

2007年12月24日(MOVIX堺)

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『マリと子犬の物語』(2007年/東宝)

監督:猪股隆一。
出演:船越英一郎。松本明子。広田亮平。佐々木麻緒。宇津井健。

山古志村に住む石川家の兄妹亮太と彩は、母を数年前に病気で亡くし父と祖父と4人で暮らしていた。ある日散歩に出かけた兄妹は1匹の子犬と出会う。マリと名付けられた子犬は石川家の家族としてすくすく育ち、3匹の子の母となる。4匹の犬たちと仲良く暮らす石川家だったが、2004年10月23日マグニチュード6.8の大地震が山古志村を襲った。倒壊した建物の下敷きになった祖父と彩を助けたのはマリだった。しかし救助隊は人間を助けるだけで手一杯でマリたちを救助することは出来なかった。残されたマリたちを想いなんとか助けようとする石川家の人たちと取り残されながらも健気に生き抜こうとするマリと子犬たち。

動物と子供にはどうあがいても勝てません。しかもフィクションだけど、マリと子犬たちの話は実話だそうで、余計に勝てません。もうただただ感動。予告編見ただけでウルウルきてた私はマリが出てきただけで泣きそうでした(笑)。 この作品ってどうなんだろう?あまり評判聞かないけど・・・。私はこれ無茶苦茶いいって思ったんですけどねぇ。見せどころがうまいんですよ。リアル仕立てじゃないドラマですよっていう作りが随所にみられるんですが、それがいい。コミカルなところはいかにもなコメディの動きをして、泣かせどころは「ハイ!ここ!」と言わんばかりに見事に泣かされます。くるぞくるぞ・・・というあざとさがない。マリと冷蔵庫のシーンには拍手しそうになりましたよ。普通ああいう場面の挿入はしないと思うな。娯楽作品として見る側を全然しんどくさせない作りなような気がします。 しかし・・・マリもすごいけど、何なのこの彩役の子。すごすぎる。何者!?うますぎるよお嬢ちゃん。お兄ちゃん役の子も上手いんだけどね。上手い子役二人にかわいすぎるマリ。私は『ALWAYS 続・三丁目の夕日』よりも断然こっちの方がいい!

2007年12月30日(アポロシネマ)

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『スマイル 聖夜の奇跡』(2007年/東宝)

監督:陣内孝則。
出演:森山未來。加藤ローサ。谷啓。モロ師岡。

膝を壊しタップダンサーの夢を諦めた修平は、恋人静華と結婚するために彼女のいる北海道へとやってきた。教師をするから大丈夫だと静華の父に結婚の許しをもらいにいった彼だったが、娘との結婚を渋る父親が出した条件は、なんとこれまで一度も勝ったことがない小学生のアイスホッケーチーム「スマイラーズ」を優勝させることだった。アイスホッケーのルールすら知らない修平に勝機はあるのか?

おバカなノリの笑い。作りすぎだろうっていうくらいにマンガチックにしてるんだけど、これって案外シリアス部分の照れ隠しのような気がしないでもない。大筋のシリアス部分はもうホントにベタなんだ。一体過去に何度このパターンが使われただろうっていうパターンなんだけど、許しちゃうんだなぁ。陣内監督うまいよ。娯楽作品とはいかなるものか?っていうのをよ〜くわかってらっしゃるって気がする。で、この作品でのスパイスはアイスホッケーシーン。半端じゃない。しかもこの作品では演技の出来る小学生にアイスホッケーを覚えさすのか?アイスホッケーの出来る子に演技をさせるのか?の選択で後者を選んだそうなんですが、すごいわこの子ら。この映画を観終わったあとで彼らが素人だって知ったんですけど、全然そんな風には見えない!スポーツやってるから勘がいいのかな。一応メンバーの中では主役級の男の子昌也役の子は大人になってからの昌也役の坂口憲二さん似の男前。なのにこの時点は素人だっていうんだからねぇ・・・でもやっぱりこのあと本格的俳優デビューだそうです。 それとやはり陣内監督は音楽もやってるだけありますね。タップの音とスケートの音。BGMと融合させて見事なリズムを奏でてる。スケートリンク一体の大合唱。名シーンですね。やっぱりこういう清々しい映画は好きだな。

2008年1月5日(TOHOシネマズ泉北)

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『黒幕』(1966年/松竹)

監督:小林悟。
出演:天知茂。野川由美子。殿山泰司。扇町京子。高宮敬二。

大阪の岩倉製薬と東京の赤玉製薬は、互いに製薬会社のトップを狙うライバル会社。同じように売り出していた強精剤は、岩倉製薬の"王精"がはるかに売上を延ばしていた。赤玉の社長西条は、プロパーと呼ばれる社長直属の販売特殊任務の利根に"王精"の秘密を探るように命令する。プロパーとしての腕は超一流、しかも女性にモテモテでプレイボーイの利根は同僚の美人プロパーである千石に興味を抱き強引に彼女を口説き落とすも、なんと彼女は二重スパイだった。あっさりと敵の術中にはまり捕えられる利根。そして岩倉製薬の罠に落ち倒産の危機に瀕する赤玉製薬は・・・。

新東宝がつぶれ、他映画会社に流れた天知さんの数少ない主演作。しかもピンク映画では知る人ぞ知るという小林悟監督作品で、一般作品とは言えその後のピンク映画での活躍を彷彿とさせるラブシーン。そしてそこに絡むのが天知さん!なんて聞いたらもう見たい度MAXな状態で、何があっても見たい!って作品だったんで、1本の映画のために夜行バスに乗車。我ながらよくやるよなぁ・・・とは思いますが、見ないとすご〜く後悔するような気がしたんですよ。でも初恋の人には何年もたってから会わない方がいいというよくある話がチラリとよぎる。期待度高すぎたな(笑)。いや、しかしこのとんでもなさは語るネタとしては最高だ。"王精"の秘密を探るために"王精"開発の研究者の元を訪ねるとそこいたのはその研究者(これがなんと殿山泰司。こういうコテコテ似合いますねぇこの方いかにも精力があって好きものそうで・・・(笑))の娘ほど年の離れた嫁なんだけど、この嫁がいかにもおつむが弱そうで好きもので・・・。ユリの群生地に利根を引き入れモーションをかける。「え?」とたじろぎながらもやる!おまけにお父ちゃんはこうするんだとテクニックまで指図され、嫌な顔をするがやる!最後には弱いとまで言われてしまう利根。最初から最後まで困った顔で、このシーンにはマジで困ってたんじゃなかろうかという気がする。女の子のお尻触るシーンもすごく触りにくそうだったし(笑)。お笑いキャラは好きだったようだけど、エロキャラは苦手だったようですね天知さん。天知茂主演作品として観るには不思議な作品だけど、ピンク映画を代表する小林悟監督のその後に続く一般作品として観るには面白いのかも・・・。 しかし期待度レベルが下がった今もう一度見たいと思ってたりする。癖になる映画か?(笑)。

2008年1月21日(ラピュタ阿佐ヶ谷)

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『母べぇ』(2008年/松竹)

監督:山田洋次。
出演:吉永小百合。浅野忠信。檀れい。坂東三津五郎。

戦争の足音が序々に高くなりつつあった昭和15年。ドイツ文学者の滋と妻の佳代そして娘の初子、照美と4人幸せに慎ましく暮らす野上家に深夜、特高により滋は治安維持法違反で検挙されてしまう。決してお父さんは悪いことをしたから捕まったんじゃないと二人の娘に言い聞かせ滋のいない家を守る佳代。年が明けても滋は戻らず、日本は太平洋戦争へと突き進み、過酷な世情の中でもただひたすら夫の帰りを信じ二人の娘を育て守りぬいた一人の母親の物語。

この作品を観に行った同僚(60歳の女性)は、悪くはなかったんだけど、なんだかあの時代(戦時中)を描いている割に結構みんな小奇麗だし、緊迫感がなくって拍子ぬけしたと言っていた。 うん。確かにそれは言えると思う。でも藤沢作品3部作でも見せた山田監督のディテールへのこだわりがこの作品では一挙に無くなった。なんてことはないと思うし、なくなるはずもないと思うんですよね。ということはつまりこれはわざとじゃないかと私は思う。もんぺはいて竹やり持って・・・なんていう実際に一般庶民が巻き込まれた戦争中の描写なんてのはNHKあたりの歴史ドラマでやってもらってたらいい。つらいだの苦しいだの悲しいだの・・・そんなの当たり前に心の中に持っていて、それでもとにかく真っすぐに生きていかなければならない、生きてきた人たちの姿を通し、「な、これからどうするかわかってるよな」って言われたような気がする。 しかしあのラストのセリフは痛い。最後の最後にあれ持ってきますか。だから山田監督なんだなぁ・・・とは思うんですけどね。(^^; この作品のすべてがあのセリフに集約されてるような気がします。 60を過ぎてこんな小さな子供たちの母親役ってどうよ?という意見がたくさんありますが、私はそんなに違和感なく見られましたよ。この映画撮影前に吉永さんがそのような年齢的なことを山田監督に伝えたら大丈夫です。この時代のお母さんたちは疲れてましたから。ってなことを言われたとか(笑)。だからいいんじゃないですかね。それよりも私はいくら特別出演とは言えラストの大人になった長女初子が倍賞千恵子さんってのに違和感ありありでした。(^^; 

2008年2月18日(アポロシネマ)

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『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008年/東宝)

監督:樋口真嗣。
出演:松本潤。長澤まさみ。宮川大輔 。阿部寛。

戦国時代、隣国山名に攻め込まれ陥落した秋月城下では、山名軍が消えた埋蔵金と姫の行方を追って躍起になっていた。そんな山名軍の使役にこき使われていた金堀り師の武蔵ときこりの新八は山から発生したガスによる事故の騒ぎに乗じ逃走し、偶然滝のほとりで薪に埋め込まれた金塊を発見する。喜ぶ二人だが、突然現れた真壁六郎太と名乗る野武士に捕らえられ、秋月の同盟国である早川までその金塊を運ぶ手伝いをさせれれることになる。六郎太と口が利けなくなったという六郎太の弟と供に山名を抜けて早川を目指す武蔵と新八。

私は最初、この作品がリメイクされると聞いたとき「勘弁してよ」と思ったクチである。ところがこの作品の脚色が中島かずきさんで新感線メンバーが出てると聞いてあっさり劇場に足を運ぶ。結構単純な人間です。 で、感想ですが、やはり元作品に思い入れのある人にはきつい作品となってるんじゃないですかねぇ。実は私、元作品はあまり面白いと感じなかったんですよ。なんか地味な感じがして・・・。だから結構派手に今風に作られている本作はそれなりに楽しめました。でも大人の作品ではないな。って思います。姫と武蔵のラブストーリーが単純で甘いし、武蔵と新八のコンビに魅力がない。あっさりすぎるんでしょうね。「あぁ、面白かった。チャンチャン」って作品かも。(^^; あ・・・あとすご〜く気になったのが「裏切り御免!」。これ元作品の姫と六郎太を助ける敵方の六郎太の友人が言うセリフで、結構かっこいいセリフだから、これでラストを閉めたかったんでしょうが無理してねじ込んだ感があって、どうも私にはいただけなかった。金堀り師の武蔵がいきなり武士言葉のセリフを吐くのはおかしいってことで、まず姫だとばれたときに雪姫に武蔵に向って言わせてるんだろうけどここに無理がある。裏切りじゃないし・・・(^^; 武蔵は武士じゃないけど、こんな辻褄合わせしないであっさり武蔵にだけ言わせてもよかったんじゃないかな?って気がします。 さてどこに出てるのかな?と期待して探していた橋本じゅんさんは結局みつけられなかった。粟根まことさんは出番は長く気付かないわけがないっていう出演で、しかも小役人っぷりが最高でした。似合うなぁ・・・ってかうまいなぁ。『ローレライ』でもよかったし、私はこの人映像での演技の方が好きかも。『ローレライ』と言えばピエール瀧さんも出てらっしゃったんですが、『ローレライ』ではあんなにいい役だったのに、こちらではえらいあっさりした出演だったのでかえってびっくりしましたよ(笑)。古田新太さんに生瀬勝久さんもサクっと出たよって感じで(笑)。賑わしのような出演メンバーで楽しむという方法もある作品でしたね。

2008年5月12日(アポロシネマ)

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『長い長い殺人』(2007年/WOWOW)

原作:宮部みゆき。
監督:麻生学。
出演:長塚京三。仲村トオル。平山あや。谷原章介。

一人の会社員がひき逃げで殺害された。事件は単なるひき逃げ事故ではなく、故意による殺人。しかもその会社員には多額の保険金がかけられていた。捜査員もマスコミも疑惑の目をその妻へとむけるが、妻には完璧なアリバイが。 そして引き続き起こる殺人事件。すべてにその妻とその愛人がかかわっていた。疑惑の人として一躍世間の耳目を集める彼らだったが、事件は意外な方向へと進む。

劇場でこのチラシを見つけ、ちょうど原作を読んで間がなかったので、ぜひとも見たいと前売りを購入。 ところが、これってWOWOWで放映されてたのね。全然知らなかった。 でも言われてみれば出演者はすごく豪華なんだけど、どうも作りはテレビドラマですな。いや、決して面白くないわけじゃない。原作を無理なくうまく映画化していると思いますよ。でも、この原作って財布が擬人化され、登場人物それぞれが持つ財布が、物語を語るんですよね。それは、読み手としては斬新だし、すごく面白いんだけど、見る側としては、どうもチープな感じをもたらしてしまうんですよね。 案外、映像化に当たっては、原作の持つ面白みである財布の擬人化を取っ払ってしまってもよかったかもしれない。財布が語らなくても物語はすごく面白いものですからね。 あとバスガイドさんのエピソードは原作そのままにしてほしかったな。私はあのエピソード好きなんですよ。親友が豹変する様も人間の根底にあるエゴがすごく強く描かれていて面白いんですけどねぇ。それにバスガイドさんは、原作の方がちゃんとハッピーエンドですし。と、文句ばかり言ってるようですが、すごく面白かったんですよ。 出演者はみんないいし。仲村トオルさんの探偵も、長塚京三さんの刑事もいい。谷原章介さんは、マッチングしすぎです(笑)。

2008年6月2日(シネマート心斎橋)

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『パコと魔法の絵本』(2008年/)

監督:中島哲也。
出演:役所広司。アヤカ・ウィルソン。妻夫木聡。土屋アンナ。阿部サダヲ。

大きな屋敷に住む一人の青年の元に風変わりな老紳士が訪ねてきた。そして部屋にあった仏壇に飾られた写真とそばにあった一冊の絵本を手にとり、とある病院で彼に起こった出来事を語り始める。写真の主大貫は「お前が私を知っているだけで腹が立つ」と会う人事に言い、意地悪でわがままで、病院中の嫌われ者だった。そんな彼がある日同じ病院の入院患者である一人の少女パコと出会ったことで、彼は人々の記憶に残ることになる・・・。

初演の『ガマ王子VSザリガニ魔人』をDVDで観て、昨年上演された再演をNHKのBSで観て、すっかりこの物語のファンになってしまった私はこの映画の公開が待ち遠しくって仕方無かった。しかも予告編を観る限り、舞台版のセリフやシーンはしっかりと生かされているし。 冒頭、後藤ひろひとさんのなんともふざけた登場に思いっきり吹き出しそうになる。きっとこれが大王らしいんだろうな(笑)。 実は私は好評だった『下妻物語』も『嫌われ松子』も観ていない。なんかねぇ、あの極彩色の色遣いとアニメチックな動きに苦手意識が働いて、どれだけいい作品だと言われても観る気がしなかったんですよね。じゃあこれもそうじゃない。って言われるとそうなんだけど、これは元の物語を知ってるもんだから、ここまでデフォルメして完全なファンタジーにしちゃってるからこそ映像化した意味あり。って思えるんですよね。実写とアニメの切り替えがすごく巧みで、ホント見事なファンタジー作品ですよ。 ただ堀米と大貫の関係の描き方がちょっと雑だった気がする。あの「タニシ」のシーンで、舞台版だと大貫にちょっかいをかけながらも、この偏屈なクソじじいをどうにか出来ないか?という堀米の気持ちが滲みでる「バカを治す薬はありませんか?」なんだけど、映画でのシーンではそこまでは読み取れないんじゃないかなぁ。好きなシーンだけに惜しい気がする。あと木之元さんを國村隼さんにして、おかまにしちゃうという荒業にはびっくりです(笑)。しかしここでおかまさん登場させちゃったから室町のザリガニ魔人がちょっとインパクト弱くなっちゃってるんですよねぇ。國村さんのおかまは最高でしたが。ただ今後芸風が変わらないことを祈ります(笑)。

2008年9月13日(TOHOシネマズ泉北)

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『おくりびと』(2008年/松竹)

監督:滝田洋二郎。
出演:本木雅弘。広末涼子。余貴美子。山崎努。

楽団の解散でチェロ奏者の夢をあきらめなければいけなくなった大悟は、妻と共に母が残した家のある山形へと戻ってくる。求人広告でみつけた「NKエージェント」へと面接に出かけると即刻採用。一体何の仕事かもわからないのにとよくよく聞いてみると遺体を棺に収める仕事「納棺師」だと言う。とにかく強引な社長に押され、妻には「冠婚葬祭の仕事」と仕事の内容をぼかし、戸惑いながらもいくつもの死に向き合ううちに、納棺師の仕事に誇りを見いだしてゆく。

私がまともに遺体を目の前にして、じっくり葬儀と向き合ったのはもう20年近くも前の父親の葬儀だけなんですが、こんな納棺なんてのなかったような気がする。病院から運ばれてきて、最初はふとんに寝かされていて、気がついたら棺に納まっていた。(^^; きっとこの映画のラストで出てくる「はい、足持って、行くよ」ってな納棺だったのだろうと思う。田舎の方ではどうかはわからないけど、都会ではたぶんほとんどがこのパターンなんだろうね。それにどうも「湯灌」というのがこの納棺の儀らしいのですが、別料金のようです。 葬儀そのものはもちろん死者を送る儀式なんだけど、この映画で描かれる「納棺の儀」というのはまさしく儀式。丁寧に厳粛に生前の面影を取り戻す死者。死者の生前の行い、死者を送る人々の死者への思いなどがこの儀式により、それぞれの心を駆け巡っていく。そして悲しみは残るけれど、憎しみは消えるのかもしれない。ふとそんな気がした。死者への思いのけじめがつけられないでいるのなら、「湯灌」を利用するのがいいのかもしれない。火葬場の職員のセリフにあった、ここは門番で人はここをくぐって旅立っていくと・・・しっかりと旅支度を見られたら素直に「いってらっしゃい」と言えるかも・・・。 淡々と・・・そして優しい映画でした。 この作品は主演のモックンが自ら企画したとか・・・。彼ならではの作品ですね。この主役は彼だからこそよかったのだと思います。

2008年9月17日(MOVIX堺)

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『次郎長三国志』(2008年/角川映画)

監督:マキノ雅彦。
出演:中井貴一。鈴木京香。岸部一徳。北村一輝。温水洋一。

所は清水港で近頃売り出しの親分清水の次郎長は頼りになる右腕大政を筆頭に、彼を慕いついてくる子分たちに囲まれて、愛妻お蝶と共に清水一家を盛りたてていた。そんなある日兄貴分が宿敵黒駒の勝造が影で糸を引く祐典一家から殴り込みをかけられたと聞き、急ぎ次郎長一家は甲州を目指す。

この作品も公開が待ち遠しかったんだぁ。なんたって、予告編で見る桶屋の鬼吉役の近藤芳正さんがかっこよかったんだもん。で、無茶苦茶いっぱい出てるし名古屋弁で三枚目扱いなんだけど、かっこよかったぁ。ま、私としてはそれだけで十分っちゃあ、十分なんですが、やっぱそこは映画としてもどうかってとこも見とかないと・・・ネ。ってことでどうかって言うと、私としては楽しかったですよ。清水一家のメンバーは全部いいし、特に法印の大五郎役の笹野高史さん『おくりびと』でもいいとこ持っていってましたが、この作品でもおいしいとこ取りじゃあないですか。ただねぇ、これ物語長いんですよね。過去にも映画化されてますが、ほとんどシリーズとして製作されてますから、この一本をどうする?って部分があったんじゃあないかなぁって気がする。これ一本でわかるようにするか?シリーズを見越すか?うまくいけばシリーズにしてもいいかなぁ・・・ってことにするか?多分私は最後のうまくいけば・・・っていうのがあったんじゃないかなぁって思います。だから作りが微妙なんですよね。とにかく基本ストーリーをザクッって盛り込んでるんだけど、スカッと終わり!っていう達成感がないんですよねぇ。これは黒駒の勝造がまともにからまずに完全に残ってるせいかもしれませんけどね。あ、それときっとこれは私の時代劇に対する思い入れの部分のせいもあるかも・・・。だって、やっぱ時代劇と言えば殺陣!後半の崖っぷちを駆け上がり駆け降りる次郎長一家のシーンには「キターッ!かっこえぇ〜!」って思いっきり気分が高揚したんですよ。ところが・・・つらいですよねぇあの殺陣シーンは。ほとんどが一対一で、引きのシーンが無い。しかも・・・短い。このメンバー面白いので、もう一本観たいな・・・って思うんだけど、この殺陣がクリア出来ないとまた同じような消化不良感を味わっちゃうことになるのかなぁ。と思うとつらいとこだな。この手の作品だと、正統派の殺陣じゃないと変だしね。CGなんかで誤魔化したら作品変わっちゃうしね。もう昔のような時代劇って見られないんでしょうねぇ。

2008年9月21日(MOVIX堺)

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『20世紀少年』(2008年/東宝)

監督:堤幸彦。
出演:唐沢寿明。豊川悦司。常盤貴子。香川照之。石塚英彦。宇梶剛士。

1997年。ケンヂは失踪した姉の赤ん坊の面倒を見ながら母親とコンビニを経営していた。巷では「ともだち」と称する教祖が率いる謎の教団が現れ、不思議な事件が多発していた。そんな中ケンヂの小学校時代の同級生ドンキーが自殺する。そのことにより、現在多発している事件がケンヂが小学生の頃、仲間と共に作った「よげんの書」とそっくり同じことがわかり、ケンヂは「ともだち」により、この事件に大きく係ることとなる。

まずは原作を!と「大人買い」をして、一気に読破。おもしろい!で、さて映画はどうなってるのかなぁ〜。と鑑賞。おもしろい! 私は好きだなぁってか原作をきっちり作りこんでくれてるじゃあないですか、うれしいねぇ。でも、ここでふと気づく。突拍子もない設定でも漫画だとそのまま素直に受け入れられるんだけど、こうして映像になると、なんか荒唐無稽感がアリアリと出ちゃうんですねぇ。だからこれ原作読まないで観た人には、「なんじゃこりゃ?」な感じがするかもしれませんね。まして年代が自分たちの知ってる今ですからね。ネタばれが嫌な人には向かないかもしれませんが、コレは案外原作読んでから観た方がより面白く観られるような気がする。あれがこうなって・・・ほぉ〜やるじゃん!ってな感じでね。私はしっかり楽しませていただきましたよ。とにかくキャスティングがいいですね。全然無理がない。万丈目なんてびっくりするほどそのまんまじゃないですか!(笑)。モンちゃん役の宇梶さんもいいなぁ。原作の雰囲気そのまんまで、この人こういう風にするとかっこいんだと気付きました。ただ「ジジババ」がなんで研ナオコさんなのかがわかりませんが・・・(^^;  あ・・・それと竹中直人さんのピエール一文字いらないよ(笑)。もう特異キャラはいいって・・・。真剣めまいしましたよ。(^^; 早く第2章が観たい!楽しみだなぁ。

2008年9月22日(MOVIX堺)

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『K-20 怪人二十面相伝』(2008年/)

監督:佐藤嗣麻子。
出演:金城武。松たか子。仲村トオル。國村隼。

舞台は第二次世界大戦を回避した1949年の架空都市「帝都」。 19世紀から続く華族制度は極端な格差社会を生み、職業選択の自由はなく、下層階級の者たちはひたすら貧しさに耐えるしかなかった。そんな中富裕層のみをターゲットにし、次々と高価な品物を盗み出す"怪人二十面相"が世間を騒がせていた。そしてその二十面相と対決する名探偵明智小五郎は羽柴財閥令嬢との婚礼を控えていた。その結納の儀に怪人二十面相が現れる。予告状により物々しい警備の中、そんなこととは知らずただ結納の儀の写真を撮って欲しいと頼まれたグランドサーカスの曲芸師遠藤平吉は、天窓に上りカメラを構えるが、すべては彼を二十面相に仕立てる罠だった。

えっと・・・とりあえず映画の中で言われてる通りであらすじを書きましたが、ここに一つ間違いをお知らせします。この映画の公式サイトでも「明智小五郎」と記されておりますので、あらすじでその字を使いましたが、この映画に登場する「明智小五郎」は私たちの知っている「明智小五郎」ではありません。江戸川乱歩先生創作の「明智小五郎」では全くないことをまずお知らせ致します。もしかしたら敗地大五郎かもしれません(わかる人にだけわかるネタですが・・・(笑))。 私はこの映画全然つまんなくはなかったですよ。あの見事な身体能力。どこまでが実写なのかはわかりませんが、ああいう動きは大好きだ。でもよーくよーく考えると中身はないんですが・・・(爆)。 あー、でもいいんだいいんだ。私の好きな國村さん結構いい役で、かっこよかったから。小日向さんも出てたし・・・でも途中でコヒさんどうなったんだよぉー! しかし、これ原作があるんですよね。原作通りの内容なのかなぁ?だったらまず原作が叩かれてもおかしくないのにねぇ。私が思うほど乱歩ファン、明智ファンっていないのかなぁ。何にも考えずに暇つぶしに観るには十分な作品だと思いますよ。でも明智ファンには絶対に勧めない。 私の明智先生は、そら確かに若くて美しい女性には弱いけどさ(誰のこと言ってる?これもわかる人にだけわかるネタということで・・・)、誤認逮捕して人苦しめるようなことはしないぞ! それより何よりなんなんだよ!架空都市「帝都」って!! ってかさー、なんかこれよーく考えたら『バットマン』じゃん!(爆)。

2009年1月3日(MOVIX堺)

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『連獅子/らくだ』

『眠駱駝物語 らくだ』 作:岡鬼太郎。
改訂・演出:榎本滋民。
出演:中村勘三郎。中村勘三郎。坂東彌十郎。片岡亀蔵。

フグにあたって死んじゃった"らくだ"の馬太郎の弔いの金を用立てようと、家主のところへ赴き、出さないなら死人にカンカンを踊らせるぞと脅して、本当に踊らせちゃうという古典落語の有名なお話なんですが、まさか歌舞伎でもあるとは思いませんでしたよ。 もう最高です。生で観たらもっと面白かっただろうなぁ。 しかし珍しく彌十郎さんが大家のおかみ役で女役?と思っていたら・・・笑わせてくれますねぇ。死体に怯えて玄関先の勘三郎さんの上に落っこちちゃったのってあれマジじゃないですかね?そして死体の馬さん役の片岡亀蔵さん。面白すぎだよって思って帰って調べると・・・『野田版研辰の討たれ』で、からくり人形やってらした方なんですね。素晴らしい。 この話ってとにかく死体が踊っちゃうっていうだけで、もうただただそれが面白いというなんとも卑怯極まりないネタですが、面白いんだから仕方ない(笑)。本当に死体が踊っちゃうと『スリラー』になっちゃうんですがね。あ・・・もしかしたら『スリラー』の元ネタは『らくだ』?!・・・なワケないですが。

『連獅子』
監督:山田洋次。
出演:中村勘三郎。中村勘太郎。中村七之助。片岡亀蔵。坂東彌十郎。

コレ、頭をグルングルン振り回すって場面しか知らなかったんですが、結構長いんですね。 Yahoo百科事典連獅子 それと途中僧が二人出てくるところで、なんか狂言みたいだなぁーって思ってたら狂言なんだそうで(笑)。古典っていろんなところで繋がったり絡んだりしてるんですねぇ。 花道の様子とか細かいところが見られて面白かったんですが、やはりこの迫力は生で観たいですね。

2009年1月5日(なんばパークスシネマ)

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『禅 ZEN』(2008年/角川映画)

監督:高橋伴明。
出演:中村勘太郎。内田有紀。藤原竜也。村上淳。

乱世の鎌倉時代。仏道の正師を求め、24歳で宋へ渡り、修行を積み悟りを得て日本へと帰り、ただ座るのみ・・・「只管打坐」を説き、あるがままの姿であるがままに生きることを伝えた道元禅師の物語。

地味な映画だ。だけどだれるところは全くない。道元役の中村勘太郎さんが素晴らしい。なぜ今まで道元は映画やドラマで描かれなかったか?日蓮や親鸞のような劇的な派手な人生ではないかららしい。だからこそこの作品での道元、中村勘太郎は素晴らしい。立ち居振る舞いに声、地味な中で中村勘太郎さんに・・・道元に惹かれる。ただ残念なのは映像はきれいなんだけど、やたらとやりすぎ感があって、時折首をかしげてしまう。道元が大悟したシーンでは吹き出しそうになってしまった。道元を蓮に座らせてどうする?(笑)。地味なら地味で自然でいいのに・・・。 中村勘太郎さん以外の出演者もよかったですよ。ただ道元の弟子懐奘役が村上淳さんだとは思わなかった。やせた?なんか私の知っている雰囲気と全然ちがったのでびっくりしました。絶賛するような作品ではないですが、私は好きですね。心が洗われる。「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」 部屋のどこかに書いて貼っておきたいですね。

2009年1月19日(MOVIX八尾)

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『君は海を見たか』(1971年/大映)

原作・脚本:倉本聰。
監督:井上芳夫。
  出演:天知茂。山本善郎。寺田路恵。中山仁。内藤武敏。

土佐清水市の海底展望台の開発に関わる設計技師増子一郎は、妻亡き後の一人息子の正一の面倒も妹の弓子に任せっきりで仕事に追われていた。家に帰っても仕事の続きで息子の話すらまともに聞かない一郎。一郎の出張中のある日正一は身体の異状を訴えた。そのまま大学病院へと移された正一の精密検査の結果はウィルムス腫瘍という腎臓に出来る特殊な小児がんだった。医師から聞かされた話は、症状はかなり進行しており、手術をしても余命3か月くらいであろうと言うことだった。しかも正一は2か月も前に身体の異状を一郎に訴えていたのだった。息子の話をきちんと聞いてやらなかったことに苦悩する一郎。息子に残された時間をどこまでも一緒に過ごそうと決心する一郎。そして海を見たことがないという正一を連れて、正一から父親を奪ってしまっていた一郎の職場である土佐の海へ連れて行くことにする。

どこまでも市井の人の似合わない俳優の一人である天知さんの唯一のパパ作品である。 しかし普通の優しいいいパパでないあたりにこのキャスティングの妙があるんですよね。子供と向き合えない不器用さは案外この人だから、うまくこの作品に醸し出されているのかもしれない。なんでもこの作品は、この映画化の前にテレビドラマで放映されていて、その時の父親役は平幹二郎さんだそうで、子供の正一役は映画版と同じらしい。そこでふと思うのですが、この子役の子、天知さんの方が似てるんじゃないか?と。もしかして似てるってこともキャスティングの一つ?などと思ってみたりもする。 難病モノ・・・の作品の割りにこの作品は、「ほら泣けよ」な所が全くない。そのくせつまらないか?というとそうでもない。悲しいけれど優しい作品である。 しかもこの天知茂という俳優さんの不思議なところは、子供というアイテムが加わるとなぜか今までの臭みが消えるんだ(笑)。『眠狂四郎 無頼剣』の愛染の成功は弥彦屋の末娘を絡ませたところにあるんじゃないかと思っているくらいです(笑)。 苦悩するのはお得意。そこに子供というアイテム。そしてかっこつけなくていいという肩の力を抜けるお芝居。天知さんのいいところを引き出すにはもってこいの作品ではないか?と(笑)。 一部、どう見てもそれは聞き込みの刑事だろう?な雰囲気の場面はありますがね。

2009年3月29日(CATV録画)

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