『宿無し犬』(1964年/大映)

監督:田中徳三。
出演:田宮二郎。天知茂。江波杏子。坂本スミ子。

小さい頃から喧嘩に強く女にモテモテ。でもその女よりも好きなのが拳銃という一匹狼の鴨井大介は母の墓参りに高松にやってきた。ところがその墓地はゴルフ場に変わっているわ、宿で昼間みかけた美女がやくざにからまれていると助けたつもりが、その美女はさっさと姿を消してしまうわ・・・散々な思いで高松を後にするフェリーで、沼野観光社長と名乗る男から声をかけられる。なんと昨夜鴨井が相手をしたのは大興組の連中で実は沼野を狙っていたのだが鴨井のおかげで命拾いをしたという。その上墓地をゴルフ場にしたのが大興組だと聞き、沼野のところへ厄介になることにするが・・・
痛快「犬シリーズ」第一作目。実は私クールで知的な田宮さんより、この作品や「悪名シリーズ」のようなコミカルな田宮さんの方が好きだったりするんですよねぇ。三枚目が三枚目をやったって当たり前で面白くない。もちろん二枚目が二枚目やったってつまんない。二枚目が三枚目をやることで二枚目半という微妙な線が出来上がるのが好きなんですよ。しかもこの作品では同じく色悪クールというイメージが定着している天知茂さんが、なんともみずぼらしい格好で冴えない刑事をやってるから二重にうれしい。でも「悪名シリーズ」もそうなんですが、どうも一作目って地味なんですよね。いや、地味というよりハードって感じかな。このあとどんどん弾けていく前哨戦という感じでラストのセリフが粋ですねぇ。事件解決、やってきた木村刑事に鴨井が「なんや、宿無しに宿世話してくれるっていうんか」。

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『喧嘩犬』(1964年/大映)

監督:村山三男。
出演:田宮二郎。浜田ゆう子。山下洵一郎。成田三樹夫。

第一作目で大興組を相手に大暴れして世話してもらった宿刑務所暮らしをする鴨井大介は窮屈な刑務所暮らしにうんざりしながらも、一匹狼の気性は変わらず、所内のボス小森に悉く対抗して大暴れしていた。やがて出所した鴨井は先に出所している刑務所仲間の小吉を訪ね、小吉と共に白タクをはじめる。そんなある日キャバレー「スクェアー」に勤めるゆかりに一目惚れした鴨井だが、どうも拳銃が手元にないと落ち着かない。なんとか拳銃を手に入れようと躍起になる鴨井に天地会のボス小森が拳銃をやるかわりに工事現場の監督を依頼してきた。小森を出し抜いてやろうと考える蒲生は鴨井の存在が目障りで仕方ない。なんとか鴨井を利用しようとゆかりが小森の女であることを吹き込むが、鴨井が乗ってこないことで、小吉を利用し鴨井を追い詰める・・・。
一作目よりノッてきて面白い。ところがお目当ての木村刑事が出てこない。ちょっとつまんない(笑)。でもこの作品で鴨井大介のキャラ固まったって感じですね。このあと必ず出てくる拳銃の曲撃ちも出てくるし、大暴れはするものの、捕まっちゃうようなとこまでいかないし。で、このシリーズに一個はあるしゃれたセリフの一つがこの作品では「顔はあんたより一枚下の二枚目やけどな」ってやつ。もう誰が見たって絶対に二枚目である田宮さんが言うから生きてくるセリフなんですけど、どっかで使ってやろうと密かに思ってたりする(笑)。

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『影の車』(1970年/松竹)

監督:野村芳太郎。
出演:加藤剛。岩下志麻。小川真由美。岩崎加根子。

旅行会社に勤める浜島幸雄は、団地で妻と二人暮し。陽気で社交好きな妻は自宅でアートフラワーの教室を開き、何の不満もなく毎日を過ごしていた。反面浜島は、ただ淡々と会社と家の往復だけ。そんなある日帰りのバスの中で偶然幼馴染の小磯泰子と出会う。2度目にまたバスで出会ったとき誘われるままに泰子の家を訪ねる。四年前に夫に先立たれた泰子は6歳の健一と二人暮し。保険会社に勤め慎ましい生活を送っていた。懐かしさと自分の家では得られない安らぎを覚えた浜島は頻繁に泰子の家を訪ねるようになる。泰子との関係が深くなればなるほど、浜島は健一の視線が気になりだす。浜島自身幼い頃健一と同じような目で自分の母の側にいる叔父を見ていたのだった。やがて浜島は健一が自分を殺そうとしているそんな妄想に悩まされはじめる。
なんかやたらベッドシーンが多いのが気になった(笑)。ま、そんなことはともかく・・・。常識というか良識というか、理性的な大人の見解という形でこの物語を観ると、健一の気持ちがわかるんだったら、家に上りこむなよ浜島!いくら寝てるだろうからって、引き戸一枚隔てて子供が寝てるところでよがってんじゃねぇよ泰子!あんた母親だろう!ってなことになって、こんなことは考えられない!あり得ない!許せない!ってなるんでしょうが・・・。さすが原作松本清張、人間の業、性っていうのがドロ〜っと流れとるんですなぁ。怖い。それにこの健一の描き方が浜島が感じる恐怖を観ているこちらも感じ取れて、ぞ〜っとするんですよねぇ。しかも浜島が自分の子供の頃と健一をダブらせたことで破滅へと向う・・・なんだか因果応報っていうのも感じてしまう。それとねぇ、この作品観終ってふと昨今の母親の新しい彼氏による幼児虐待、殺害を思い出してしまった。この作品の言おうとしているところと全く違うのかもしれませんけど、母親が母親である前に女であったり、男の必要としているものが母親である女だったりすることにも悲劇の要因はあるんじゃないかなぁ。

2006年1月5日(シネ・ヌーヴォー)

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『張込み』(1958年/松竹)

監督:野村芳太郎。
出演:大木実。宮口精二。高峰秀子。田村高広。

警視庁捜査第一課の下岡と柚木は、質屋殺しの共犯者で凶器の拳銃を持って逃げているとされる石井を追っていた。そして石井の立ち回り先として考えられる石井の別れた女さだ子が結婚して住んでいる佐賀へ向う。三人の子持ちで20歳も上の銀行員の元に後妻に入ったさだ子。毎日判で押したような単調なさだ子の生活に幸せなのだろうか?と思いながらひたすら石井の現れるのを待つ二人の刑事。二日が過ぎ、三日が過ぎ・・・やがて当初の張り込み予定の最終日。さだ子がいつもと違う行動をとる。
なんでこういう刑事ものって夏なんでしょうねぇ。しかも冒頭の佐賀へと向う列車のシーン。一体何時間かかったんだ。しかも冷房なんてのもない時代。すごいなぁ〜とただただ感心してみつめていた。いい時代になったもんだなぁ〜と・・・内容と関係ないことは置いといて。これってサスペンス?じゃないですよねぇ。何が幸せなのか?さだ子の単調な毎日の描写と、結婚には踏み切れない柚木の彼女との関係、そこに下岡の妻から持ちかけられた風呂屋の娘との縁談。そして石井が現れたことでとるさだ子の行動。いやぁ〜深いっすわ。そして悲しい。後悔しない人生なんてないのかもしれない。柚木は最後石井に「今日からやり直すんだ」と声をかけるが、私は石井よりもさだ子が哀れでしかたなかった。今ならご主人が帰ってくる前に家に帰れると柚木はバス代を渡すが、あのまま何事もなかったかのようにまたあの暮らしをするのだろうか?昔「幸せってなんだっけ?」なんてCMがありましたが、この映画でそれをつくづく考えさせられましたよ。

2006年1月5日(シネ・ヌーヴォー)

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『ごろつき犬』(1965年/大映)

監督:村野鐵太郎。
出演:田宮二郎。水谷良重。江波杏子。天知茂。根上淳。

バイクでご機嫌に疾走する鴨井大介。ところが途中でバイクが故障したところへキャデラックに乗った美人が通りかかる。その女性の計らいで白浜温泉に宿泊し、三沢葉子と名乗るその女性は主人が大阪の一六組に殺され自分も狙われているから助けて欲しいと頼まれる。喜々として大阪に戻った鴨井は今度はしょぼくれ刑事こと木村刑事から同僚の宮本を殺した一六組の稲取を探して欲しいと頼まれる。しかもその稲取は拳銃の名手だと言う。早速一六組を訪れる鴨井だが・・・。
今回はしっかりしょぼくれ刑事登場。しかも2作目でキャラのたった鴨井との掛け合いがいい。「サシで勝負しようか」と二人連れ立って行く先が将棋クラブというのもいいし、しょぼくれてる割には鴨井に負けて手持ちの駒を将棋盤に投げ出すときにピストルの弾も一緒に入れて鴨井に見せるなんてしゃれた動作するんですよねぇ。さすがくずしても二枚目、決めるとこはさりげなく決めてくれます。しかも1作目よりも出番の多いしょぼくれ刑事は今回は鴨井にモンタージュ作らせるためとは言え「実は胸を病んでてもう長くはないんだ・・・」なんて泣き落とし作戦まで。しかも鴨井がしょぼくれを叩き伏せて最後の決着を付けに・・・と思ったら手を振って見送ったりしてる。鴨井がかっこよく事件解決しても、結局はしょぼくれ刑事にうまく利用されてるんですよねぇ。やっぱこのシリーズはこのコンビあってこそ面白いですね。鴨井大介も好きなキャラですが、それ以上にしょぼくれ刑事が好きな私にはうれしい作品でした。

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『THE 有頂天ホテル』(2006年/東宝)

監督:三谷幸喜。
出演:役所広司。松たか子。佐藤浩市。香取慎吾。戸田恵子

大晦日のカウントダウンパーティーまであと2時間とせまったホテルアバンティ。コールガールがうろつき、汚職事件真っ只中の国会議員を追いかけるマスコミがつめかけ、カウントダウンパーティー出演者の相棒アヒルのダブダブが逃げ出し、リハーサルの出来にすっかり落ち込んだ大物演歌歌手は死にたいと大騒ぎ。ホテルの従業員、宿泊客、それぞれの場所、それぞれの立場で起こるカウントダウンまでの2時間の物語。
私はこういう「グランドホテル形式」と呼ばれる群集劇が大好きなんで、この作品の公開がとても待ち遠しかった。さすが三谷幸喜さんうまくまとめられております。元々人が右往左往する物語を得意とする方ですから、それが総勢・・・えっと何名だ?(笑)。ともかく10人以上の人たちが巻き起こすそれぞれの物語をそれぞれに右往左往させながら、しかも単品ではなく見事に繋がりのあるものとされているんだからすごいですよ。もう歌手への夢を諦めたからとその時に使っていたお守りの人形とバンダナとギターを仲間にプレゼントしたベルボーイのその3つの品物が最後には本人の手元に帰ってくるというパターンもうまく使われていて・・・とは言ってもさすがにギターだけは動かせなかったようですが(笑)。これでギターが動いていたら言うことなしですよ。ただねぇ、欲を言えばもっと大笑いさせていただきたかったな。副支配人のエピソードは笑えるんだけど、なんだか途中で痛かったんですよねぇ。(^^;)
あ、そうそうエンドクレジットで「監督と脚本 三谷幸喜」を見て私吹き出しちゃっいました。なんかかわいいな・・・と(笑)。「監督と脚本」ですよ「と」が入ってるんですよ。今までにもこんなのあったのかな?これから三谷作品はこういうとこも気をつけて見なきゃいけませんね。

2006年1月16日(TOHOシネマズ泉北)

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『博士の愛した数式』(2006年/)

監督:小泉堯史。
出演:寺尾聰。深津絵里。齋藤隆成。吉岡秀隆。浅丘ルリ子。

10年前の事故が原因で80分しか記憶がもたなくなった数学博士。今までに何人もの家政婦が来たがみんな長くは続かなかった。そんな彼の元に10歳の息子を1人で育てている杏子が新しい家政婦として派遣される。博士の記憶は80分しか持たない。だから杏子は毎日新しくきた家政婦だった。しかし博士の何度も繰り返される質問に笑顔で答え、博士の語る数学に感動する杏子。そんなある日杏子に家で1人で待っている息子がいると知った博士は子供を1人で置いておくのはいけないと、家に連れてくるように言い出す。翌日やってきた息子を博士は「ルート(√)」と呼び、短い記憶の繋がりの日々の中で彼を慈しむ。そして杏子とルートもまた博士との優しさに包まれた穏やかな日々を送るのだった。
春には少し遠いけれども、冬晴れの穏やかなあたたかい日差しの中でゆったりとまどろむ猫の隣に寝転び、猫の首筋をなでながら猫が奏でるゴロゴロという軽やかな音楽を聴きながら無為に過ごす至福のひと時を味わっているような気持ちになる映画ですね。すごく原作が読んでみたくなりました。それにしても寺尾さんの出演作品を観る度に言ってるような気がするんですが、寺尾さんは本当にいいです。博士の気難しさと優しさと悲しさと・・・すべてを見事に体現している。純粋に優しく博士を尊敬しみつめる家政婦役の深津さんもいいですよねぇ。やさしさに溢れている。そしてそれにもまして義姉役の浅丘ルリ子さんがいい。義弟との過去に心を痛め自分を責めながら、ただ義弟をみつめ見守る役に徹する彼女の心の葛藤とそこに到った経過を深く描かずとも今のその物腰、瞳の陰りですべてを物語っている。本当に見守られていたのは義姉の方かもしれませんね。自然の優しい光、俳優たちの所作、表情、この映画は目で入ってきて心に届く。そんな映画でした。

2006年1月23日(TOHOシネマズ泉北)

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『ポルノ時代劇 忘八武士道』(1973年/東映)

監督:石井輝男。
出演:丹波哲郎。伊吹吾郎。遠藤辰雄。ひし美ゆり子。

凶状持ちの明日死能は役人に追われ自ら川に身を投げるが、吉原遊郭の亡八者、白首の袈裟蔵に助けられる。亡八者とは「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を忘れた鬼畜外道たち。袈裟蔵の仕掛けた「亡八試し」には失格した死能だが、吉原総名主の大門四郎兵衛に気に入られ、客分として吉原に身を置くこととなる。そしてそこで死能に与えられた仕事は吉原の商売敵となっている武家が後ろ盾となっている私娼窟をつぶすことだった。次々と私娼窟に出入りする武士を斬り殺す死能。やがて大門の思惑通りに事が運び、大門にとって死能が邪魔な存在となる。
クック・・・クッ・・・。なんなんだこれはぁ!?(笑)。ポルノ時代劇となってるから裸がいっぱいでエロチックシーン満載ってのはわかりますが、スッポンポンのお姉ちゃんたちがやたらとウヨウヨ、ウロウロしてたらエロチックどころか笑いしか出てきませんがな。しかも伊吹さんに遠藤さんのなんともいえない濃ゆ〜いメイク。マンガだ。すっげぇ〜!火に囲まれた死能を助けるためにと現れた5人の女亡八たちは火を消すためにと火の上で体をゴロゴロ回転させるし、そのあと火を消すために黒こげになった着物脱いでるもんだからこれまたスッポンポンで「私たちはあなたを守るように言われました」って真剣な顔して死能の周り囲むんだけど、どう考えても笑いを誘ってるだろう?っていう図にしか見えない。人の裸って風呂かベッド以外の場所だとマヌケな構図になるんだと確信しました。血がドバ〜!と出て足が飛んで腕も飛んでおまけに首まで飛ぶ!しかも横に!?笑うなって言う方が無理です。ちゃんとストーリーはあって、丹波先生はニヒルにクールに決めて下さってますが、ある意味お笑い映画かと・・・(^^;)。あ〜・・・しかし、いつから私はこういう映画を楽しめるようになってしまったんだろう。献血はしたことあるけど輸血はしたことないから血は変わってないしなぁ。食生活が変わったのだろうか?(笑)。

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『寝ずの番』(2006年/)

監督:マキノ雅彦。
出演:中井貴一。木村佳乃。長門裕之。富司純子。

落語家の笑満亭橋鶴が今まさに臨終を迎えようとしていた。見守る妻と弟子たち。その弟子の一人が師匠にたずねる。「師匠何かやっておきたかったということはありませんか?」それに答えて息も絶え絶えに師匠が「そ・・・そ○がみたい・・・」。「さすが師匠や言うことが違うそそが見たいといわはった。」ということで弟子たちは大騒ぎ!
師匠の臨終にはじまって、師匠のお通夜。そして続く一番弟子の急死に師匠の妻、おかみさんの死と三つのお通夜での出来事。悲しいけれど葬儀のような形式にとらわれない「寝ずの番」ゆえのお笑い話し。
なんなんですかこれは?というくらいに下ネタ満載で、絶対にテレビ放映はされないセリフのオンパレード。なんなんだけど、なぜかえげつなくないんですよねぇ。見事にシャレで通じる作りがいいですよ。これは案外落語家の話しだからとお笑い芸人を使ってないからでしょうね。色物に色物やらすとどうしても濃くなっちゃいますから、このキャスティングは見事ですよ。ただ師匠の恋敵だったという堺正章さんはなんかちょっと違うんですよねぇ。ここはもっと濃い人を持ってきて欲しかった。ただ歌うっていうのがあったから人選に苦しんだのかなぁとは思いますが。それとラストの艶歌合戦はちょっとしつこかったような気がする。三代目マキノ監督の記念すべき第一作作品をさすがお兄様。見事に盛り立ててますねぇ。カンカン踊りのあのさりげない足の運び。うますぎますよ(笑)。

2006年5月1日(動物園前シネフェスタ)

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『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』(2006年/東宝)

原作:青山剛昌。
監督:山本泰一郎。
声の出演:高山みなみ。山崎和佳奈。神谷明。山口勝平。

謎の男からの依頼を受け、横浜へとやってきた毛利小五郎と蘭、コナン。そして少年探偵団たち。ホテルの一室に通された彼らに渡されたのはホテルに隣接する遊園地ミラクルランドのフリーパスの腕輪。そして姿を現さない依頼人はその場に毛利小五郎とコナンだけを残し、あとのメンバーをミラクルランドへ先に行かせる。明らかにされる謎の男の依頼はある事件の真相を12時間以内に解くこと。そのタイムリミットに間に合わなければ蘭たちに取り付けられたフリーパスの腕輪につけられた爆弾が爆発する。あせるコナンに「工藤新一」と話しかける依頼人。依頼人の正体は?事件の真相は?緊迫の12時間がはじまる。
う〜ん・・・ま、こんなもんかな(笑)。面白くなくはない。なくはないんだけどイマイチ物足りない。コナン=新一が見え隠れしながら、蘭が絡んでくるというのが今までのパターンだったように思うんだけど、今回はその絡みが妙に薄くって、蘭よりも灰原哀が大活躍?(笑)。それに12時間で解かなきゃいけない事件の真相ってのもなんだか意味不明だし、せっかく出てる怪盗キッドの存在も薄味。っていうか、タイトル負けなんですよねぇ(笑)。「探偵たちの鎮魂歌」なんて言ったらもっとハードなの想像するじゃないですか。冒頭に謎の依頼人が「何人もの探偵が被害にあってる」って説明するだけなんだもん、つまんないよぉ〜(笑)。「瞳の中の暗殺者」のようなハードさが欲しかった。でも今回のこの作品もおやじ好きの私をくすぐる場面が・・・。ラスト近く「5分前になったら子供たちのところへ行きます」という阿笠博士と、他の刑事たちを外へ行かせ自分も中に入る目暮警部。くぅ〜・・・おっちゃんら二人渋すぎ(笑)。
10周年ということでオールスターキャストにこだわり登場人物増やしたのが大きな疵になっちゃいましたね。

2006年5月2日(TOHOシネマズ泉北)

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『小さき勇者たち〜ガメラ〜』(2006年/角川)

監督:田崎竜太。
出演:富岡涼。津田寛治。夏帆。寺島進。奥貫薫。

美しい海辺の街伊勢志摩地方。この街は33年前自らの生命と引き換えに人間たちを守ったガメラの最後の街でもあった。この街に暮らす透は事故で最愛の母を失ったショックから未だ立ち直れていなかった。そんなある日透は海辺で赤い石に乗った小さな卵を見つける。手にとった瞬間、その卵から小さな亀が誕生した。透はその亀に自分が母から呼ばれていた「トト」という名をつけてかわいがり父に内緒で飼い始める。しかしトトはただの亀ではなかった。突然現れた怪獣ジーダスに街が破壊されたとき、まだ成長しきらないながらもトトは懸命に戦いを挑む。
私はガメラには全く思いいれありません。むか〜し昭和ガメラと呼ばれるシリーズはテレビで何作か見たことはありますが、平成ガメラは一本も観たことないんですよね。なのになぜ観に行ったか?なんかねぇ予告がよかったんですよ。この物語は好きかも。と出かけて、やっぱり当たりでした。もうこういうストレートなの好きですわ。平成ガメラ好きには案外ボロクソなんだろうなぁ〜って気はしますが、まさか「ガメラ」で泣くとは思いもよりませんでした(笑)。すっかり年くっちゃって涙腺ボロボロになってるせいもあるかもしれませんけど、とにかく子供たちがいいんですよ。『ガメラ〜小さな勇者たち』じゃなくって『小さな勇者たち〜ガメラ』ってのがミソですな。「トトに!」って赤い石をリレーする子供たちの姿にウルウル。しかもねぇ、この場面みんながジーダスから逃げてきている道を流れに逆らって走っていくんですよ。「流れに逆らい走る子供たちの図」これは私のツボでしたねぇ。それにこのトト(ガメラ)かわいいんだ。ネットで探してまでは買わないと思うけど、実際に見つけたらフィギュア買っちゃうかも・・・(^^;)。

2006年5月8日(TOHOシネマズ泉北)

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『ヨコハマメリー』(2005年/)

監督:中村高寛。
出演:永登元次郎。五大路子。

戦後50年間、横浜の街で娼婦としての生き方を貫いた一人の女性。かつては絶世の美人娼婦として名を馳せながら、年老いてもなお横浜の街で、ドレスを身にまとい顔を真っ白に塗り、本名も年齢も明かさず、横浜の街の風景のひとつとなっていた「ハマのメリー」と呼ばれた一人の女性。その彼女が1995年の冬、忽然と姿を消す。
横浜の伝説ともなった「ハマのメリー」その人とかかわった人たち、とりわけ彼女と一番親しかったであろう癌に侵され余命いくばくもないシャンソン歌手・永登元次郎さんを中心にメリーさんのこと横浜のこと、そして元次郎さん自身の思いも綴られるドキュメンタリー。
この映画を観て涙が止まらなかった。こうして感想を書くためにメリーさんの生き様を思い起こすだけでも涙が溢れてくる。一体メリーさんの人生の何が私の心をこんなにも揺さぶるのだろうか?奇異な存在となりながらもただひたすら娼婦であり続けたメリーさんの生き方が悲しいだろうか?いや、悲しいというのではない。高貴すぎるんだ。まっすぐで純潔で、気高すぎる生き方。本国へと帰っていった愛する人を待ち続けていたという話しもあるが、それでも娼婦であり続ける必要はないはずだ。ではなぜ彼女はそういう生き方を選んだのか?素顔を隠すような白塗りで、住む場所さえない街で、ビルの廊下を寝床にして、大きな荷物を持ち歩き、嫌がらせを受けたこともあるだろう。それでも彼女の笑顔はくすんではいない。彼女のよき友人であったシャンソン歌手の元次郎さんが初めて彼女を自分のコンサートに招待したときの映像に、その招待を受けてプレゼント持参でやってきたメリーさんの姿がある。この映像に私は心打たれた。そして彼女が利用するアート宝飾ビルのオーナーには盆暮れの付け届けがされていたという。世間から奇異な目でみられ、戦後何十年もたち世の中は変わり、すっかり終戦の遺物となってしまったメリーさんだが、人として生きていく上での礼節は忘れず、自分は娼婦であるという立場をわきまえた節度を持ち続けながらも卑屈さだけは持たなかった。人とはかくも気高く強く、美しく、そして悲しく生きていけるものなのか・・・。これにはメリーさんだけではなく元次郎さんの生き方にもそれは感じた。1995年にメリーさんは横浜を去るが、横浜という街にメリーさんの居場所が無くなった。メリーさんを受け入れられる時代では無くなりつつあった時期でもあるのだろう。ラスト、元次郎さんの歌う「マイ・ウェイ」の歌詞のすべてに頷くメリーさん。この歌はメリーさんと元次郎さんの人生そのものなのかもしれない。「嵐もおそれずひたすら歩いた いつも私のやり方で」
出来るものなら、ありのままの自分の姿でありのままの人の姿を受け入れられるそんな生き方をしたいものです。

2006年5月22日(テアトル梅田)

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『花よりもなほ』(2006年/)

監督:是枝裕和。
出演:岡田准一。宮沢りえ。古田新太。國村準。中村嘉葎雄。原田芳雄。

時は元禄15年。所は江戸のおんぼろ長屋。ここに暮らす青木宗左衛門は信州松本から父の仇を討つためにはるばる江戸までやってきて早や二年。目指す仇、金沢十兵衛の所在もつかめぬまま、実家の仕送りだけを頼りに貧乏生活を送るも、最近では滞りがちになる仕送りに、ますます生活は窮まっていく。おまけにこの宗左、剣の腕はからっきし。あれじゃあ仇討ちも無理じゃないかと長屋の住人たちにあきれられるほど。ところがある日宗左は父の仇、金沢十兵衛に似た男をついに見つけるが・・・。
この映画、まずは何に驚くかって、リアルなんだか描きすぎなんだかわかんないくらいに、おんぼろどころかずたぼろに汚い長屋。でもこの時代の貧乏人って本当にこんなんだったのかもしれませんよねぇ。風呂に行くってのが贅沢なんですから。でもこのとことん汚い長屋に暮らす人たちがみんなすごくいい。体一つで生きてるぜっていうたくましさがいいですよねぇ。以上を望まないながらもしたたかに毎日をとにかく生きてやるぜっていう真直ぐさが好きだな。そしてお犬様を食っちゃう反骨心。いいですわ。そして宗左が最後に書いた仇討ち芝居。もう最高です。武士としては失格なのかもしれないけど、人間らしさとは無理をしない大らかさなんじゃないでしょうか。武士らしく真っ向勝負に出たって結果は悲しいものにしかならない。だったらズルくったっていい、身の丈にあった優しい方法でいいじゃないって思いますね。なんともさわやかで気持ちのいい作品でした。

2006年6月12日(TOHOシネマズ泉北)

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『ブレイブ・ストーリー』(2006年/)

原作:宮部みゆき。
監督:千明孝一。
声の出演:松たか子。大泉洋。常盤貴子。ウエンツ瑛士。樹木希林。

小学5年生のワタルは、ある日幽霊ビルで大きな扉へと入っていく一人の少年の姿を見る。その少年は隣のクラスの転校生ミツルだった。そしてワタルはミツルからあの扉の向こうに行けば運命を変えられるのだと聞く。その後ワタルの父が母と自分を捨てて家を出たショックで母が事故に合い瀕死の状態に・・・。そんな母の姿を見てワタルは、母と自分、数日前まで幸せだった家族のために運命を変えるためにあの幽霊ビルへと向う。あの日見た大きな扉を抜けて「幻界(ビジョン)」へ旅立つワタル。ワタルの「幻界(ビジョン)」での冒険が始まる。
私はこの原作がすごく好きなんですよねぇ。愛人を作って家を飛び出す父親というリアルさ。ミツルが変えたいと願う現実もすごく悲惨で妙にリアルなんだけど・・・。そんなリアルな現実に「幻界(ビジョン)」という非現実的な世界を持ってきて、RPGのような楽しさを味あわせつつ、少年の成長物語の中に私がすごく好きな宮部さんの人間感が描かれていて・・・っていう原作の細やかさがさすがに1本の映画に纏めるにはむずかしかったんだろうなぁ〜っていう結果に終わってました。少年の冒険物語と成長物語のみが描かれてるんですよ。そうなると物足りなさはいっぱい。おまけにあのラストは原作と違うもんだから、どうもいただけないですよ。あれはねぇ・・・。あれじゃ「幻界(ビジョン)」での出来事ってなんだったんだ?って話になっちゃうじゃないですかねぇ。ま、期待度が高すぎましたか・・・(^^;)。
あ・・・そうそう『妖怪大戦争』に続き、この作品でも大極宮のお三方ご出演だとか(笑)。ノリいいですよねぇ。

2006年7月10日(TOHOシネマズ泉北)

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『点と線』(1958年/東映)

監督:小林恒夫。
出演:南広。山形勲。高峰三枝子。加藤嘉。志村喬。

福岡県の香椎海岸で青酸カリにより服毒死した男女の遺体が発見される。男は省庁の役人で課長補佐を勤める佐山憲一。女はお時という赤坂の料亭の女中だった。遺書などはなかったものの遺体の状況から情死と片付けられようとしていたが、捜査を担当した福岡署の鳥飼は、二人の足取りから香椎海岸で情死するということに不審を感じていた。そんな時本庁の捜査二課の三原が同じく二人の死に不審を感じ福岡にやってくる。死んだ佐山のいた省には不正入札にからむ収賄の疑惑があり、彼はその重要参考人とされていたのだった。捜査により浮かび上がってくる容疑者。しかし彼には完璧なアリバイがあった。
あまりにも有名な松本清張の作品なんですが、実は私、東京駅の13番線から15番線が見通せるたった4分間からはじまるアリバイトリックってことしかこの作品について知らなかったんですよねぇ。で、ず〜っと気になってた作品だったんですが、さすがに原作読む気にはならずにいたところ、今回CATVで放映されるってことで早速録画。でも考えるとこの映画って原作が有名な割りに映画としてはあまり話題になってないような気がするんですけど・・・(^^;)。原作読んでないんではっきりしたことは言えないんですけど、しっかりと原作通りに映画化してるんじゃないかなぁと思われる堅実な作りの作品で、面白くなくはない・・・んだけど、なんかこう物足りないんですよねぇ。多分この作品の物足りなさは主役にあるような気がしないでもないんですが・・・。この主役の南広さんって誰?顔は見たことあるようなないような・・・でも名前は一度も聞いたことないです。なんでもこの作品の時は新人だそうなんですが、その後売れなかったんですかねぇ。主役の割りに華がないんで、どうもしっくりこないんですよね。脇はすごくいいんですけどねぇ。ま、でもこの作品は今では当たり前みたいになってるアリバイトリック、時刻表トリックだから話題なだけで、映画にする物語としての面白さはあまりない作品なのかもしれませんね。東映っていうとどうもヤクザ映画ってイメージがあるもんで、こういう作品観るとなんか不思議ですよね。しかもこの作品には志村喬さんが出てるもんだから、それだけで東宝作品かと思ってしまいます。

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『紙屋悦子の青春』(2006年/)

監督:黒木和雄。
出演:原田知世。永瀬正敏。松岡俊介。本上まなみ。小林薫。

昭和二十年の春。両親を空襲で失ったばかりの紙屋悦子は、鹿児島の田舎町で兄夫婦と共に慎ましく毎日を過ごしていた。そんなある日、悦子に縁談の話が持ち上がる。相手は兄の後輩で海軍航空隊に所属する明石少尉の友人永与少尉。悦子の同級生でもある兄嫁は、「えっちゃんが好きなのは明石少尉なのに・・・」と夫に詰め寄るが、なんとその縁談を持ち掛けてきたのは明石少尉だという。以前悦子にはじめて会ったときに一目惚れをしたという永与に明石は航空兵である自分よりも整備兵である永与の方が悦子にはふさわしいと自らの思いを秘めたまま最愛の人を永与に託したのだった。
冒頭の病院の屋上のベンチに座る老夫婦。主演二人の老けメイクがちょっと・・・という前評判を聞いていたので、それなりに納得して見ることが出来たのですが、確かに・・・ちょっと・・・(^^;)。せっかく切なくて優しい物語なのに、最初にお笑い風味が入ってしまう。ここはやはり老齢の役者さんを起用した方が無理もなく、物語に重みも出たんじゃないかなって、やっぱり思ってしまいますね。ま、贅沢言ったらキリがないんですけどね。全然派手じゃない。しかも饒舌でもない。それでいて語りたいことは彼らが劇中で聞いた、聞こえるはずのない波音のように心の中に染みてくる。そんな映画でした。国が勝つということを信じて、日々を健気に送る人々。その善意の人々の哀しみの上に戦後ってあるんですよね。

2006年9月10日(動物園前シネフェスタ)

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『出口のない海』(2006年/)

監督:佐々部清。
出演:市川海老蔵。伊勢谷友介。上野樹里。塩谷瞬。香川照之。

1945年。甲子園の優勝投手だった並木は大学に入り、肩を壊し、以前のようには投げられなくなっていた。そこで彼は魔球を開発しようと練習していたが、彼ら学生も学徒出陣のため徴集されることになる。敗戦の色濃くなる中、海軍では人間魚雷回転が開発され、並木は特攻隊へ志願する。複雑な操縦法、作戦成功への不安、そして死の恐怖と戦いながら、回天に乗り込む意味を探す並木。
人間魚雷回天のことは知ってましたが、まさかここまで操作が複雑なものだったとは・・・。それだけでも十分にこの映画を観た価値はありましたが、映画としてはどうだったか?というと・・・。すみません訳わかんないです(^^;)。確かに戦争の理不尽さ、悲しさは伝わりますが、そんなことは戦争映画である以上描かれていて当然なんですよね。その中で主人公の生き方、行動が物語りの核となるはずなのですが、はっきり言って野球選手である必要性も感じないし、なぜ彼が特攻に志願するのかもわからない。そういう時代?そういう意識で当たり前?そんなことはないと思うんですけどねぇ。確かに苦悩はしているんですけどねぇ・・・。とは言え、回天に搭乗していざ発進!というところまでは、まぁまぁよかったんですよ。そのあとがいけません。なんであんな形にしたのか本当に訳わかんないですよ。しかも並木がみつけた死ぬ理由ってのが「回天を伝えるために死のうと思う」って・・・。じゃあなんで志願したんだ?う〜ん・・・ダメだぁ。どう考えても私にはそのセリフの意味がわからない。っていうか、どうして彼にそんなセリフをしゃべらせたのか?という意図がわからない。で、ラスト。余計にわからない。(^^;)

2006年9月18日(TOHOシネマズ泉北)

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『明日の記憶』(2006年/東映)

監督:堤幸彦。
出演:渡辺謙。樋口可南子。坂口憲二。田辺誠一。

大手広告代理店の部長を務める佐伯はもうすぐ50歳。結婚して25年になる妻との間に出来た一人娘は所謂出来ちゃった婚で、結婚と出産を間近に控え、仕事では大手得意先の大きな仕事が入り、ますます忙しくなろうとしていた。そんな中少しづつ佐伯の体調がおかしくなる。軽い頭痛に悩まされ、大事なクライアントとの打ち合わせを忘れ、いつも通っていた道さえも忘れてしまう。そんな佐伯の様子に不安を覚えた妻枝実子は無理やりに夫を病院に連れて行く。そしてそこで診断された病名は若年性アルツハイマー。死の宣告よりもつらい病名に苦悩する佐伯だが、妻の支えにより病気と向き合うことに・・・。
私は常日頃「あきらめる」っていうのは嫌いだ。なんて豪語しているのですが、すみません「あなた若年性アルツハイマーです」って診断されちゃったら、きっとこの映画の佐伯が病院の屋上で留まったようには留まれないです。もう本当に情けなさ過ぎる話なんですが無理だなぁ〜。これ私が一人身だからかもしれませんけどね。支えてくれる人がいれば・・・う〜ん、どうなんでしょうねぇ。反対に自分が支える立場だったら・・・と考えてもやはり、夫婦というものを体験?(笑)していない私には全く想像のつかないことですね。この作品はアルツハイマーという病気を描きながら、夫婦の根っこのところの深さ強さっていうのを描いている作品のような気がします。劇中枝実子が友人に「あなたにはわからない!」って言うせりふがあるのですが、友人の立場にある私は大きく頷いてしまいましたよ。(^^;) 二人はやはり強いです。土壇場に一人はやはり弱いものです(笑)。ラストの橋のシーンすごく好きです。とうとう妻のことさえ忘れてしまった佐伯なんですが、哀しさに歩みのとまる枝実子を、先に進みながらも立ち止まり振り向き気遣うんですよね。25年前、二人はこの優しさからはじまったんだろうな・・・、そして記憶のほとんどを失くしてしまっても、その優しさは消えずに残っているんだ・・・。佐伯の記憶の中には枝実子の姿は全くなくなってしまったけれど、枝実子の記憶にも心にも、この佐伯の優しさは永遠なんだということを表しているようで、名シーンだなって思います。この映画を観た旦那さんが家に帰って奥さんの顔が観たくなったっていう気持ちすごくわかりますよ。私は結婚したくなりましたから(笑)。

2006年9月24日(松原文化会館)

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『フラガール』(2006年/)

監督:李相日。
出演:松雪泰子。豊川悦司。蒼井優。富司純子。岸部一徳。

昭和40年。石炭の需要が減り次々と炭鉱が閉山していく中、福島県いわき市の炭鉱会社は何とか生き残りをかけて炭鉱の地熱と温泉を活かしたレジャー施設「常磐ハワイアンセンター」の計画を進めていた。北国にハワイを!そのためにはフラダンスも必要だということで、地元の娘たちによるダンスチームも結成されることに・・・。しかしフラダンスを教えるためにと東京から呼んだダンサーの平山まどかは素人の集団に全くやる気を見せず、何年も何十年も、炭鉱の町で炭鉱夫として生活してきた住民たちは「ハワイ」の計画には大反対。「今まで」にしがみつく人々と「これから」に賭ける人々の物語。
大好評!が納得の一作でした。私もこの作品は好きだぁ〜。出演者がみんないいですよ。みんなキャラがたってるし、無茶なく等身大だし。そしてそれぞれの事情に無理がない。人生なんて思うようにはなんないんだよと、とうとうこんなとこまで流れてきちまったよと思いっきりやさぐれている松雪さん扮するダンサーが、自分の人生なんとかしてやろうじゃないか!と若さで果敢に立ち向かう地元の娘たちとの交流によって、再生していく様が素敵です。そして、村を後にしようとしているまどかに「いい女になったな」と声かける吉本部長@岸部一徳さん。おじさんあなたかっこよすぎ(笑)。出ているみんなに見せ場があって、いいシーンがいっぱい。豊川悦司さんも泥臭くてかっこいいし、蒼井優さんはかわいくて健気だし、富司純子さん扮する母親がストーブを貸してくれとみんなに頼むシーンには涙が溢れてきた。何度観てもいいだろうなぁ〜という映画でした。それに常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)行ってみた〜い(笑)。あ・・・そうそう私エンドクレジットで志賀勝さんの名前みつけてびっくりしたんですよ。「え?どこに出てた?」って。しずちゃんのお父さん役だったんですねぇ。いやぁ、志賀さんと言えばあのまゆげのないこわ〜いお顔のイメージしかないんで、全然気付きませんでした。いやぁ〜もうみんないい!大満足の映画でした。

2006年10月2日(TOHOシネマズ泉北)

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『暴圧 -関東大震災と軍部-』(1960年/新東宝)

監督:小森白。
出演:天知茂。北沢典子。細川俊夫。沼田曜一。

大正12年9且1日、東京を大地震が襲った。多くの被災者が出る中、この混乱に乗じて朝鮮人がテロを起こしているというデマが流れ、罪のない朝鮮人たちが次々に襲われていた。この騒ぎを利用して軍部は社会主義者を一掃しようと企み、多くの朝鮮人たちと一緒に社会主義者たちも捕縛し、女子供の区別なく容赦なく殺害、遂には左翼の巨頭大杉栄も妻子と共に理由なく捕縛され、甘粕大尉によって殺害される。大杉を師と仰いでいた古川は数人の同志と共に軍部打倒を誓い、テロに走っていく・・・。
しかし・・・新東宝ってホント不思議な会社ですよね。エログロ路線かと思えば、こんな社会派・・・っぽい作品もある。でもまぁ、「っぽい」ってのがミソなんですけどね(笑)。実在の人物、そして事件。セミ・ドキュメントと言ってしまえばそれまでという社会派!と銘打つには主義主張が見えないという妙な作品でした。(^^;) なんたって、テロに走ったあげく罪のない人殺しちゃって、それでも主義のために!とひたすら走っていくのはいいんですが、とことん失敗しちゃう。で、捕まったあげくに「こんな不合理が許されていいのか!我々は民衆のために戦ったんだ!」とかなんとか護送車に押し込まれながら絶叫するんだけど・・・ねぇ。実話なのはわかる。実話なのはわかるんだけど、もうちょっと練れよ・・・と。しかし、この作品でもやたらと悩みまくる主人公古川役の天知さん。『地獄』のように踏んだり蹴ったりであります。祟られたり、悩みまくる役ってのが新東宝での天知茂の正しい使い方だったのでしょうか?(笑) あ・・・それでも冒頭の関東大震災のシーンはなかなかに見応えのあるものとなってました。やるじゃん新東宝と言ったところでしょうか。

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