性知識が最低とされた日本人たち                           岡森利幸   2011/4/27

                                                                  R1-2011/5/9

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2011/2/15 総合面

日本人の妊娠に対する知識が、国際的に見て低い水準であることが英カーディフ大などの調査で分かった。調査は、同大や製薬会社と共同で、欧米、中国など計18カ国の男女1万人(平均年齢31.8歳)をインターネットで実施した。妊娠に関する知識を○×で答えるもの(13問)だった。その中で、「健康的な生活を送っていれば妊娠できる」という考えは誤りだと正しく答えられた日本人は28.7%で、英国(90.7%)などの3分の1程度だった。

生殖に関する意識を各国で比較したところ、日本人は「子どもを持ちたい」という欲求や必要性が際立って低く、特に女性の育児への負担感を強く感じている傾向が出た。

「健康的な生活を送っていれば妊娠できる」という設問に、日本人回答者の71.3%は○をつけたことになる。これが不正解だったことによって日本人の妊娠に関する知識は最低だと判定されてしまったようだ。でも、これはひっかけ問題だろう。

一般的な夫婦が健康的な生活を送っていれば妊娠する可能性が高まるはずなのに、それが×というのだから、困惑してしまう。それは大筋としては正しいはずだった。これが正しくないとすれば、「不健康な生活を送っていれば妊娠できる」が正しいことになってしまう。「健康的な生活を送っていれば妊娠できる」と「不健康な生活を送っていれば妊娠できる」を比べるなら、前者を○とするのが明らかに常識的だろうし、感覚的に正しいように思える。

私は「健康的な生活を送っていれば妊娠できる」に対して、英国人の90.7%が×をつけたことに、むしろ驚きをもっている。かれらは、男女の生活を「不健全な生活」などと思い込んでいるのだろうか。

 

質問者が求めた正解は、「健康的な生活を送っているだけでは、妊娠できるとは限らず、妊娠するためにはまだ多くの条件がありますよ」ということなのだろう。専門家としては、○をつけた人たちに「健康的な生活を送っていれば妊娠できるという単純な思い込みでは、妊娠できませんよ。不妊治療が必要な場合が多くありますよ」とアドバイスしたいらしい。つまり、厳密に言えば、「健康的な生活を送っていれば妊娠できる」は、正しい知識に基づく文章とはいえないということなのだ。その問いに不正解だったとしても、特段、くやしがる必要はないだろう。不妊治療がビジネスとして成り立つから、製薬会社も協力して、「イジの悪い設問」を考えたにちがいない。英国の人たちはこの種の引っ掛け問題に慣れているように思える。それならば、引っ掛け問題の真意をどれだけ見破れるかどうかのテストということであって、妊娠に対する知識とは別の知識をテストしたことになる。

だいたいにおいて、たいした知識はなくても「男女が普通に生活していれば、妊娠してしまう」ものなのだ。この文章にしても、あなたは×にしなければ、英カーディフ大では不正解にされてしまいそうだ。

育児に関して一言で言えば、女性も働きに出るようになって、育児や家事に専念できず、家庭の中で孤立している状況が育児の負担感を強めているのだろう。

 

 

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        原子炉から立ち上った黒い煙