バカでもチョンでも                                     岡森利幸   2013/8/11

                                                              R1-2013/8/13

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2013/8/8 総合

自民党の溝手顕正参院議員会長は党本部での会合であいさつし、「安倍晋三首相のようにたいへん勢いのよい首相の下だと、ばかでもチョンでも(選挙に)通る」と発言した。溝手氏は直後に撤回し、記者団に「非常に問題ある発言だった」と陳謝した。

「チョン」は韓国・朝鮮人への差別的表現とされている。

溝手氏本人は、まったく差別語句とは気付かずに(不用意に)その言い方をしてしまったのだが、側近に注意され、あわてて撤回したわけだろう。多くの人も、それに気付いておらず、この報道によって初めて知ったという人も多いのではないか。私もそうだった。

「バカでもチョンでも……」という言い方は、今では差別的表現として放送禁止用語にリストアップされているといい、もはや死語になりつつある。それに派生的な表現、「バカだの、チョンだの、ノロマだの……」という言い方も同様だ。これら表現では、「バカ」と「チョン」を同列に扱っていることが特徴だ。つまり、「バカ」イコール「チョン」という等式で表されているようなものだ。

でも、ほんの一昔前までは、「バカでもチョンでも……」はポピュラーな言いまわしだった。ある大手メーカーのカメラは、バカでもチョンでも写せるカメラとして、「バカチョンカメラ」と略称され、親しまれていたほとだ。しかし近年、「チョン」が朝鮮人・韓国人を蔑視する言葉だ言われてから、急速に、その表現の使用が制限されてしまったのだ。それを知らずに平気でその表現を使うと、訂正や撤回をすることになり、そして陳謝を強いられるのだ。

問題は「チョン」だ。私個人的には、「バカ」という言葉の方が差別用語そのものすばりであり、公式の場などで使うものではないと考えるのだが、なぜ、「チョン」が差別用語なのか考えてみたい。権威ある辞書をいくつか調べても、語源的に「チョン」は、江戸時代にさかのぼる古い言葉であり、取るに足らない者、あるいは知恵が足りない人という意味に使われていたもので、朝鮮人・韓国人への蔑称としては見出せない。コミカルな誇張的言い回しに過ぎなかった。

 

「チョン」の言葉を探ると、実は、チョンは朝鮮人・韓国人の姓によくあるのだ。有名な人では、韓国の元大統領にチョンさんがいる。全斗煥(チョン・ドゥホアン)氏だ[1931〜。大韓民国の第11・12代大統領。在任1980〜88年。慶尚南道生まれ]。そのほかにも世界的な音楽家に、チョン・キョンファ氏、チョン・ミョンフン氏がいる。彼ら、チョンさんたちは、「バカでもチョンでも……」という言葉を聞くと、不快感を抱くのだ。バカにされた気持ちになるのだ。(チョン)斗煥氏が現職大統領だったときに、日本人の政治家が「バカでもチョンでも……」などと口走ったなら、重大な外交問題に発展したことだろう。

在日韓国人・在日朝鮮人の方の中にも、チョンさんが多くいるだろう。「バカ」と「チョン」を同列にして表現すれば、もろにかぶるから差別用語になってしまうわけだ。

 

 

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