レーザー手術を多用した美容外科理事長                    岡森利幸   2008/12/22

                                                                    R1-2008/12/23

以下は、テレビのニュース番組からの引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/12/1 社会面

美容整形手術に伴い診療報酬を不正請求し計約110万円をだましとったとして、神奈川県警が医療法人「天道会」理事長、菅谷良男(58)ら3容疑者を詐欺容疑で逮捕した。

菅谷容疑者は旧厚生省の元医療指導監査官で、保険診療の不正をただす立場にあった。

神奈川社会保険事務局は07年12月、監査で約400万円の不正請求を確認したとして菅谷容疑者を詐欺容疑で告発した。同局の06年3〜12月の監査結果によると、クリニックは「治療費請求マニュアル」を作成し▽ピアスの穴開けで患者から実費を受け取る一方、実体のない病名をつける▽単なるレーザー照射を「手術」扱いにする――などの方法で不正請求が常態化していたという。

一方、患者からの訴えも相次いだ。女性患者らが「レーザー治療ミスで跡が残った」などと賠償を求めた訴訟では、横浜地裁が医療過誤を認め数十万〜数百万円の支払いを命じている。

毎日新聞朝刊2008/12/2 神奈川(地方版)

菅谷クリニック(サニークリニックと改称)の診療報酬不正で、菅谷良男容疑者は詐欺容疑での逮捕前、毎日新聞の取材に、瘢痕(はんこん)拘縮(変形した傷跡)のレーザー照射手術を「毎日やっていた」と発言。架空の症状にレーザーを当て不正請求する手法が常態化していたことをうかがわせた。

――手術の頻度は。

毎日やっていた。私はレーザー治療を進める立場。より多くの(保険)点数がもらえるから。

――(患者が)タトゥーを消しにきたのに、瘢痕拘縮があったとしたケースは

瘢痕拘縮は保険で、タトゥーは自費だから、違法でもなんでもない。

――多くの患者が「手術の意思はなかった」と言っているが。

お金を踏み倒したいお客さんに限ってそういうことを言う。

――マニュアル作成の意図は

大学を出たばかりの先生(医師)は何も知らないので。

(以下、質問に、はぐらかすような応答が続く)

毎日新聞朝刊2008/12/2 社会面

神奈川県警は「治療費請求マニュアル」を押収しており、菅谷容疑者が組織的な不正請求を主導したとみて追求する。

一方で、神奈川社会保険事務局の内部報告書(監査結果)が「医学的にも妥当性を欠く」と指摘したほど医療過誤も多発していた。01年6月に手術を受けた横浜の女性(50)は、額のシミを取るレーザー照射手術を受けた後、大きく腫れ上がった。別の医院の医師はその額を見て絶句した。同年9月、健康保険から約2万円が返金され、不審に思いレセプト(診療報酬明細書)を請求すると、身に覚えのない「瘢痕拘縮」手術の文字があった。菅谷容疑者を追及すると、名誉棄損容疑の告訴で“反撃”してきた。

毎日新聞夕刊2008/12/2 社会面

横浜市の美容外科「菅谷クリニック」の診療報酬不正請求事件で、瘢痕拘縮の診療報酬請求が本院だけで、05年に1500件と極めて多かった。監査を受けた06年には5分の1近い280件に激減しており、県警は瘢痕拘縮手術が不正請求の「手口」となっていた可能性もあるとみて注目している。

神奈川社会保険事務局の担当者によると、瘢痕拘縮の手術は通常(一般の医院では)1度で完治し診療請求を一回請求する。だが、容疑者の場合、同じ部位に何度もレーザー照射し、その度に請求していたという。

ずっと以前から神奈川社会保険事務局や患者らの告発があったのに、逮捕まで時間がかかったのは、医療現場での「不正」を立証する難しさがあったからだろう。菅谷容疑者は、旧厚生省の元医療指導監査官だけあって、なかなか尻尾をつかませないしたたかさを持っている。確認された不正請求は氷山の一角だろう。

「治療費請求マニュアル」の存在がおもしろい。〈単なるレーザー照射を「手術」扱いにする〉のも、違法ではないのだろう。これは、クリニック全体で組織的に悪事を行なうための具体的な「やり方」を示す指南書だ。法の網をくぐり抜けるために、あるいは悪事がばれないように細心の注意が払われて作成されたものに違いない。彼にとって、悪事であっても「違法」ではないのだ。菅谷容疑者が理事長の権力で、これに従うように部下の医師に指示していたことがわかっている。

彼は厚生省の医療指導監査官だったとき、保険診療の不正を正すというより、不正の方法を学んでいたのだろう。「治療費請求マニュアル」にしても、警察の手に渡ったのは菅谷容疑者の想定外だったろう。旧厚生省の官僚のつもりで、外部には絶対漏れないものと思っていたのだろうし、自分たちに配分されたかのような社会保険の金の一部を引き出して自分のものにするなど「平常の感覚」で行なっていたようだ。

この人は、医療過誤(医師本人が否定した件で、公的に確認されるのは一般的に珍しい)を頻発させたのだから、美容整形の医師の腕前としても最低のレベルだろう。学校の成績はよかったかもしれないが……。

 

 

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