メラミン入り粉ミルクはいかが                             岡森利幸   2008/9/20

                                                                    R1-2008/10/10

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/9/19 国際面

中国、汚染粉ミルクで逮捕された搾乳業者は、牛乳に水を入れて薄め、たんぱく質の含有量検査をパスさせるため、メラミンを混ぜたと供述している。

メラミン混入を巡っては昨年、米国でペットフードを食べた犬や猫が相次いで死亡し、原料の中国製小麦グルテンにメラミンが混入していたことが判明した。ペットフードへのメラミン混入が粉ミルクにまで拡大したことで、政府の思惑とは裏腹に効果的な対策がとれていない実態が浮き彫りとなった。

毎日新聞朝刊2008/9/19 社会面

弁護士31人が被害者弁護団を結成し、中国政府や大手企業を相手取った集団訴訟を起こす。

中心メンバーの弁護士は毎日新聞の取材に「個人で争っても勝訴できる可能性が低く、集団訴訟が最良の方法だろう。製造業者だけでなく、政府機関に違反行為があれば、一括して責任を問いたい」

この事件では全国21社の粉ミルクからもメラミンが検出され、乳幼児4人が死亡、6200人以上の健康被害が報告されている。関係者によると、中国では近年、環境汚染や強制立ち退きを巡る行政訴訟が増加しているが、住民側が勝訴することはまれだ。準備段階で原告側が当局から訴訟を起こさないように圧力を受けることもあるといわれる。

メラミンは、中国では、たやすく手に入る、ありふれた商品のようだ。メラミン樹脂など工業用の限られた原料として使われるだけのはずなのに……。少々の水増しは、どこの国の搾乳業者(酪農家を含む)でも発想すること、あるいは、実際にやっていることかもしれないが、水だけでなく、メラミンを入れたのは悪質すぎる。彼らは、メラミンが健康を害することを知らなかったのだろうか。

その有害性は、昨年アメリカで、メラミン入りのペットフードにより犬猫が腎臓をやられ、相次いで死んだことで、分かっていたはずだ。メラミンは化学物質で、「食べたら有害」なものだ。多くのメディアで使われている「汚染粉ミルク」という言い方は、私はそぐわないと思っている。人為的にメラミンを入れたのだから、「有害物質入り粉ミルク」と表記した方が適切だろう。

全国21社の粉ミルクからもメラミンが検出されたということは、ごく一部の搾乳業者だけでなく、多くの業者の間で、牛乳を「水増し」する便利な方法としてメラミンが使われていたことになる。だれか一人がそれをやり始めたら、自分もやるようになって広まったのだろう。水増ししてもばれずに、加工業者が高く買ってくれるのであれば、貧しい搾乳業者としては、こんなにありがたいことはないのだが……。

メラミンを搾乳業者に売りさばく業者にも、「水増し」をほう助した責任があるし、メラミンの販売を見逃してきた警察や政府機関にも問題がある。そんな業者たちの、見せかけだけの生産性が向上し、収入が増えるとともに、地方経済が豊かになって行政の税収も多くなることで、役人たちはほくそえんでいたのだろうか。

私は、メラミンを売りさばく業者が搾乳業者に広めた可能性が高いと推測している。メラミン業者が搾乳業者たちに、こんなふうにささやきかける――

「ここだけの話ですが、これを牛乳に混ぜれば、いくらでも水増しできます。ええ、ぜったい、ばれっこないですからね。みんな、やっていることですよ。値段はいくらかって? こんなもんは、化学原料をつくる際の余りもんですから、安いもんですよ。へい、まいどあり」。

 

全国21社の粉ミルク製造業者は、「水増し」された牛乳を買い取っていたのだから、だまされた側であって、被害者の一人かもしれない。しかし、メラミンが添加され、水増しされた「ごまかし牛乳」を原料にして粉ミルクを製造したのは、りっぱな加害者である。製造業者たちは、長期間、「毒入り牛乳」を見過ごしてきたのだ。「一部の搾乳者がメラミンを混ぜている」という情報は、いくらなんでも、昨年の時点で、あるいはもっと早い段階で会社側の耳に聞こえてきていたはずだ。メラミンを検出するような厳密な検査を行うと、手間もかかるしコスト高になるという理由をつけて、わざと見落としていたのだろうか。だいたい、検査員が牛乳を一口なめてみれば、それが薄いかどうかすぐにわかるはずだが……。製造した粉ミルクの成分解析もまともにやっていなかったのだろう。たんぱく質とメラミンの区分がぜんぜんできていなかったとは、品質管理が甘さすぎる。

昨年の米国で大騒ぎとなったペットフードの問題で、メラミンの混入が原因(製造過程で、たんぱく質の成分表示の数値を合わせるため、故意に入れていたことが判明している)と指摘されていたのに、中国政府は、〈わが国の製品にいちゃもんをつけるな〉とばかりに、それをすなおに認めようとしなかった。犬猫がバタバタ4000匹以上死んでも、「人には害がないことだ」と高をくくっていたのだろう。ペットフードにメラミンが加えられていたのは、個別的な特殊例だとして、他の食品に混ぜられていることなど、調べようともしなかった。

メラミンの毒性が人々(特に消費者)に伝わらなかったは、政府による情報統制・メディア規制のせいだろう。米国での騒ぎの状況が、ほとんど伝わらなかったし、中国政府は国際的な悪評が立つのをやっきとなって押さえ込もうとするだけで、メラミンの毒性を理解しようともせず、国内で食品類にメラミンを混ぜることを禁ずるなどの有効な対策を何もしていなかったのだ。「情報隠し」や「何もしないこと」が6200人以上の乳幼児に被害を拡大させたのだ。(13日の中国衛生省の発表後、その数は堰を切ったようにどんどん増え、世界保健機関によると、9月末時点で、53,000人が病気になったという。)

 

 

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