本当に厄介なヤツだ。
俺より弱いくせに生意気な口ばかりたたきやがる。
俺より弱いくせにいつのまにか俺を見下ろすぐらいでかくなってやがる。
俺より弱いくせに、先に逝きやがる。
「記憶」
「ラル!」
俺が振り向く前にコロネロが横に寄ってくる。
「くだらない話なら聞かん」
どうせこいつの話は大抵くだらないことだ。
「何だよ冷てぇなコラ」
すぐいじける。面倒くさいので聞いてやる。
「じゃあ何だ」
即座に顔を上げた。単純。
「次の月曜日と云えば?」
「七夕」
世間一般の解答だ。
「おまえ、もっとあるだろうがよコラ」
「月曜日は部下の指導だ。貴様も敵地の偵察だ」
「は〜・・・」
「盛大な溜め息吐くな。他に何がある」
「否、おまえに期待した俺が馬鹿だったぜコラ」
勢いをつけて立ち上がり、俺の髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。
「何しやがる!」
そのときコロネロはもう走り出していて、少し遠いところから笑っていた。
金色の色素の薄い髪が、陽の光に透けて反射して、少しだけ羨ましく想った自分を
慌てて否定して、俺は持ち場に戻った。
星の綺麗に見える夜だった。
演習場に行くと、コロネロがいた。
「おい」
コロネロが振り向くと同時に突きつける。
「せいぜい犬死するな」
俺が手にしたドッグタグを見て、にやっと笑うと少し身体を折り曲げて頭を下げた。
そのまま付けてやる。
「ナンシーみてぇだなコラ」
「黙っとけ。シドのつもりならさっさと死ね」
「さっき犬死すんなっつっただろうがよコラ」
シドみたいな弱くて、馬鹿で、逝き急ぐ男は嫌いだ。
結局残ったモノは、少し歪になったこのドッグタグと、髪をかき乱したときの掌の感覚だけだった。
あぁ、結局云い忘れてしまった。
――――誕生日、おめでとう。
* * *
コロネロ誕生日記念です。
・・・遅いって?7月中ってことで勘弁してください(汗)
ドッグタグ、やっぱり軍人ですから。
犬っぽいしちょっと女性からあげると束縛する感じが出て可愛いかなぁと。
ナンシーみたいに南京錠もいいですね!
シリアスなものを書くと独り科白が多くなるので会話を心がけました。
「コラ」のタイミングがぶっちゃけ解りません・・・。