パンを作る
調味料浸けの食生活からの脱却

清酒醸造用 協会9号系酒粕培養酵母種パン
take-m©2006 Shinji Murakami

家庭でのパン作りのHow Toを目指しているページではありません。発酵とミキシングの関係がどのようなクラムとクラストを作り出し、どのような風味を生むのか?といった内容を考察することを目標にしています。

 始めてパンを作られる方は、様々な本が市販されていますので、手順を覚えられた後の方が分かりやすい内容です。

茨城県桜川市 ©2006 Shinji Murakami
この写真は大麦で、奥に筑波山が見えます。
始めてのパン作りお勧め配合表 表1

パン作りに興味のある方に

このページが初心者向きではないとはいえ、製パン工程を把握するためにレシピを一例だけご紹介します。

 身近に入手出来る材料と持っている道具を使って作ってみる。失敗を恐れないこと。ボソボソしたパンが出来て家族からバカにされようと、そんなパンでも大手パンメーカーの製品には無い風味が感じられたりするもので、実を言うと一度は狙ってボソボソのパンを作ってみることも「パンとは?」という本来的な事を考える上で重要なことと思われる。

 小麦粉は入手しやすい「スーパーカメリア」「スーパーキング」のような強力粉で、ドライ・イーストも普通の市販品で大丈夫。
 塩や砂糖(上白糖かグラニュー糖)も自宅にあるもの。ショートニングが無ければ食塩不使用バター(有塩バターの場合は配合計算が面倒なので)を用意する。こうした油脂類は、オリーブオイルやゴマ油を使用することで風味を生かしたパンを作ることが出来るが、小麦の香味を捉えるにはショートニングが良好と言える。

 左の表1参照。これからあらゆるパンを作り、楽しんでいくための基礎を学べ、熟練しても日常の食生活に楽しみを与え続けてくれる王道の配合表だ。入門書でも食パン等の配合表が、ほぼこの表に近いものになっているはず。
 始めての方や、小柄な女性が手で生地を捏ねるには300gの粉量が適当で、少なすぎても計量がシビアになり捏ね辛い。逆に欲張ってたくさん作ると体力的にもハンドリングにも慣れが必要となる。

 ベーカーズ%(以下B%と記述)について説明する。専門的な資料になるほど、この数字が記載されるので、覚えておくと便利。この表を例に説明すると、
強力粉300g×1.5(B%)=4.5gのドライ・イースト量
ということになる。同様に全ての材料の配合量を計算することが出来る。こうしたB%を使用することで、粉の量を変化させても配合を算出することが出来る。型を使ったパンを作る際に、仕込み生地量を微妙に加減しなくてはならない場合など、電卓で配合をはじき出せば良い。

 ドライ・イーストは5g。(原理を理解し、慣れてくれば2gでもパン作りは出来るが・・・)水は、B%で計算値63%=189gだが、190g(ml)で大丈夫。一応、強力粉に対する水量は、65B%を目安とするが、慣れないうちは、捏ね始めにべとついて生地をまとめ辛くなることを避けるため63B%で捏ね始めることをお勧めする。あまりに硬い生地の場合は、途中で手水を加えれば良い。
小麦について

小麦の種類
 北米産の輸入が一番多く、マニトバ小麦(カナダ)という名前を
聞いたことがあるかもしれない。カナダ・ウェスタン・レッド・スプ
リング(CW)と言われ、主に1CW(タンパク含有量13.5%)が製パ
ン用として日本で使用されている。オーストラリア産では、オー
ストラリア・プライム・ハードなどが有名。国内産では
ホクシン
農林61号の収量が多く、ハルユタカ南部小麦は自然食品志
向から生産量が不足気味。



茨城県桜川市で撮影した小麦
©2006 Shinji Murakami

小麦粉の分類
 小麦粉には強力〜薄力というタンパク含有量からの種類の分
類の他に、等級別分類がある。等級表示が包装に記載されて
いなくとも、成分表などが表示されている場合は、その数値のタ
ンパク含有量と灰分量から知ることが出来る。

 タンパク量によって作られるグルテン量が変わり、パンの食感
が大きく変化する。また、等級によって風味が大きく影響を受
け、クラムの色も変化する。使用する粉の特徴を感覚的に把握
することで粉のブレンドが可能になり、自分のイメージに出来上
がりを近づけていくための一要素となる。
材料 量(g) ベーカーズ%
強力粉 300 100
ドライ・イースト 4.55 1.5
6 2
砂糖 15 5
189〜195 63〜65
ショートニング 15 5
参考文献
プロのための わかりやすい製パン技術 柴田書店 江崎修著
新しい製パン基礎知識 改訂版 竹谷光司著 パンニュース社
DIE 100 BESTEN REZEPTE AUS ALLER WELT BROT
AUSGEWAHLT VON CHRISTIAN TEUBNER
お勧めチェックポイント!
製パンに使用している小麦粉を、フライパンで炒ってみて下さい。その時に立ち上る香りを覚えてください。粉のロットや品種、銘柄を変える度に行ってみてください。様々な材料を加える前の、粉自体の品質チェックの基準が自然に見えてくるようになります。
筆者作例写真


カラハナソウから起したパン種による
パン・ド・コンプレとパン・ド・セイグル


パン・ド・セイグル・オ・ノア


自然薯のむかご入りパン
心構え

パン作りに慣れるためには、同じ配合のパンを何度も作ること。
最初は手順を覚え、次に段取りを効率化し、それぞれの工程のポイントと加減をつかんでいく。
1度や2度の経験で上手にパンが焼けるとは思わないこと。そして、素人のパン作りはプロの作る製品としての完成度を求める必要はないということ。たとえ失敗しても、必ず市販品には得られない、香味や知恵が得られるという楽しみがある。自分の手で作ってみる経験は、店頭に並ぶパンの中から、より優れたものを選び出す目利きの基準にもなるだろう。
全てはより良い食を入手するために・・・まずは作る!

準備する材料
「始めてのパン作りお勧め配合表 表1」による。

準備する道具
ボウル大(生地ミキシング用・または鍋)
ボウル小(材料用・または小鉢)
カード(またはスケッパー)
菜箸
はかり(1gが計量出来るもの・デジタル表示のものが便利)
捏ね台(大きめのまな板で代用可)
温度計(デジタルもしくはアルコール棒温度計)
時計(キッチンタイマー)
紐もしくはメジャー
ラップ
オーブンシート

タンパク量による小麦の分類
強力粉は主に製パン用途で、CW, DNS, HRW(HP)といった原麦
が用いられる。タンパク含有量は11.5〜13.5で粒度は粗め。

準強力粉はパンや中華麺用途で、主に原麦はHRW。タンパク
含有量は10.5〜12.0で粒度は粗め。

中力粉はパン、麺、菓子用途で原麦はASW、国産小麦。タンパ
ク含有量は8.0〜10.5で粒度細。

薄力粉は菓子、天麩羅用途で原麦はWW。タンパク含有量は6.
5〜8.5で粒度極細。


奥本製粉開hcゴールデンオークの袋表示
小麦の等級別分類

一等 灰分0.4%± 色相良 繊維質0.2〜0.3
二等 灰分0.5%± 色相普通 繊維質0.4〜0.6
三等 灰分0.9%± 色相やや劣 繊維質0.7〜1.5
末粉 灰分1.2± 色相劣 繊維質1.0〜3.0
(1)材料の計量

「パンをつくるT」の「始めてのパン作りお勧め配合表 表1
したがって、
各材料を正確に量る。
右の写真を参照。
直径24p程度の大きさのボウルを用意し、強力粉300gの中
心部を窪ませて、そこにインスタント・ドライイースト4〜5gを配
置する。粉の土手の外側に砂糖15gを配置し、イーストと砂糖
が瞬時に合わさらないようにする。

塩は6g、水は195g(この解説では加水65%)を別容器に用意
する。ショートニング15gも別容器に用意し、分量外のショートニ
ングをすくった時に使用したスプーンにとってある。

うち粉に使用する強力粉の分量外も、右の写真では見えない
が、台の端に小さじ1/2程用意してある。


※粉を振るう必要はないが、異物混入を疑う場合は簡単に振
るっておく。


2006年6月21日
室温26℃、湿度75%
粉温26℃、水温25℃
室温、粉温、水温が捏ね上げ温度に近いので、特に温度調整
なしでミキシングを開始出来そうだ。


捏ね上げ温度の目標は、26〜28℃とする。
捏ね上げ温度の上限として30℃を超えないこと。
また、下限として25℃を下回らないこと。


計量に便利なので、アウトドア用のシェラカップを使っている。

兜x沢商店(以前の包装)の袋表示

小麦粉の成分
 小麦粉の大部分の成分はデンプンで、他の糖質ではペントー
ザン
(2〜3%)、デキストリン(約1.2%)である。タンパク質はグ
ルテンを形成する
グルテニングリアジン以外に、アルブミン、
グロブリン、プロテオーズを含有する。

 小麦の脂質はほとんどが胚芽やフスマに含まれるため、小麦
粉中には2%以下の含有となる。灰分も胚芽とフスマに多く含ま
れ、つまり小麦粒の外側に多く存在する。

 その他に酵素で、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プロテアー
ゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、チロシナーゼ、リポオキシダーゼ
などを含む。

 小麦粉は、原麦の保管から製粉工程、その後の保管条件で
変質していくが、そのうち水分量の変化は直接、製パン工程の
加水量に影響する。通常、小麦粉の含水率は13〜15%であ
る。



酵素活性の強い粉の保管
 購入した小麦粉を適切に保管することが大切で、特に三等粉
やグラハム粉等のように脂質が多くて酵素活性の強い粉
は、早く使いきることをお勧めする。



ちょっと一言
 ドイツのレフォルムハウスを見た時には、
「小麦405,550,812,1050,1600」
「ライ麦815,997,1150,1370,1700」
というタイプに分けられて売られていた。日本の蕎麦粉の挽き
方、「御前粉」「挽きぐるみ」といった区分けを数値化したようなも
のと理解した。日常で主食とするパンがドイツ人の食文化に深く
根ざしていることと、家庭でのパン作りが盛んなことを示してい
るように思われた。

 日本では、大量に粉を使用する業者を除き、一般家庭でコツコ
ツとパンを作る者が、製粉業者に粉の挽き方まで指示すること
は不可能だ。自家製粉を行っているパン屋さんなどで小分けに
売ってくれる所もあるので、そうしたところを探すことになる。こう
した粉は風味豊かで、普通に市販されている強力粉に少し混ぜ
ると、パンの格が上がったようになる。勿論、たっぷり使っても良
し!
(2)ミキシング初期(加水)

7割程の水をボウル中心部の窪みに注ぎ、菜箸でイーストを溶
かす。

次に土手の粉を少しずつ溶かしこみながら砂糖も少量ずつ混
ぜていく。


菜箸を力まずあわてずに、粉を切るように動かす。回転運動は
させずに、縦横に箸を動かし、時々ボウルを45度程回してまた
箸を縦横に動かすことを繰り返す。箸を回転運動させるより、
生地が良好にして効率的に合わさる方法だ。


この段階でいくらミキシング作業をがんばっても、粉が水を吸
収し、全体にまとまっていくためには時間も必要なので、とに
かくスローペースで肩の力を抜くこと!ミキサーを使用する場
合でも低速で回す工程なのだ。


台に取り出すときに、カードの通常持ち手側のアール部分をボ
ウル内側に沿わせるようにしてこびり付いた粉を落として生地
とまとめてしまうと効率的だ。



下の写真のような状態になってきたら、手を使って生地をまと
めて台に取り出し、捏ね作業にはいる。

生地は水を吸収し、べた付いた状態の所と、乾いた状態の
所、それに粉がまぶされた状態の所が混在するが、一応生地
を一塊にまとめて台に移すことが出来る状態。「Pick-up
Stage」
である。

※ミキシングの工程については「ミキシングについて」参照




この写真のように生地がまとまってきたなら、ボウルをかぶせ
て生地を乾燥から守った状態にして、5〜10分間程、生地を休
ませる。ルポ・オートリズ(捏ねベンチタイム)。

このことによって手作業によるミキシング時間を短縮するこが
出来、パン作りを始めようとする方の最大のハードルである
「捏ねるのが大変でしょう?」という意識を、いくらか緩和出来
るのではないかと思う。




ミキシングについて

パン生地を捏ね続けていくと、どのような経過をたどるのかを知
ること。どのポイントでミキシングを終えるかということが、完成す
るパンの性質に大きく影響する。


ミキシングの目的
原材料を均一に混合し、生地に適度な空気を含ませ、作ろうと
するパンの種類に合った弾性と伸展性を生地に持たせること。


ミキシングの経過
(1)Pick-up Stage
原材料に水を加えて粉が水を吸い上げる状態(Pick-up)。
材料の混合は均一ではなく、とりあえず生地がひとかたまりに
なった状態で、ベタベタしている。「つかみどり段階」とも呼ばれ
る。

ミキサーの速度は低速とし、手で捏ねる場合はゆっくりと材料を
合わせる感じで行うことで、自然と生地がひとかたまりになって
くる。菜ばしやへらを使用するのも効果的。

サワー種のドイツパンのミキシング終了点
(1B)Le Repos Autorise
ルポ・オートリーズ(捏ねベンチタイム)を、この段階でとること
で、ミキシングの手間を短縮する方法もある。


(2)Clean-up Stage
生地のつながりが出来てまとまるが、グルテンの結合が弱くて
生地が均一に広がらない状態。

生地表面に浮いた水が無くなるClean-up状態のことからこのよ
うに呼ぶ。「水切れ段階」とも呼ばれる。手で捏ねる場合は菊練
が効率的。

長時間発酵のフランスパンのミキシング終了点

(3)Development Stage
グルテンの結合と水和が進み、生地表面にツヤがでてなめらか
になってくる。生地を広げると伸展性がある状態。

フランスパンのミキシング終了点

(3B)Final Development Stage
生地は薄くなめらかに広げることが出来、ベタつかず、むしろ乾
いた印象を受ける表面となる。

Development Stageの後半をFinal Development Stage(最
終段階)と呼び、グルテン結合と伸展性のピークポイントであ
る。ファイナル・ステージの状態を一度体験することは、ミキシン
グの基準を把握する意味で重要。

中種法食パンのミキシング終了点(ステージ全〜中盤)
冷蔵生地・冷凍生地のミキシング終了点(ステージ中盤)
ハンバーガーバンズのミキシング終了点(レット・ダウン・ス
テージ前)

食パン等は、少々オーバーミキシングすることで、安定した白い
クラムとスダチの細かいパンを作ることが出来る。最もオーバー
ミキシングを行うハンバーガーバンズの性質からも仕上がり生
地の察しがつくだろう。


(4)Let-down Stage
生地は弾力を失い、ベタつく。広げた生地は抵抗無く薄く延びて
ダレた状態になる。

麩切れ段階とも呼ぶ。

(5)Break-down Stage
生地はベタつき弾力を失い、トロトロ状態となる。
破壊段階とも呼ぶ。手で捏ねる場合、ここまでミキシングする根
性のある人は、まずいないだろう。
(3)ミキシング

写真上から順番に見ていく。手首に近い手のひらで生地を前
方に押し出して伸ばす。生地の伸展性が出てくるに従って伸
ばす量を増やすようにしていき、無理をして生地を痛めてしま
わないように力加減を注意する。


粉の量が300g程度ならば、片手で捏ねられる。
慣れないうちは手に生地がくっついたり、台にへばりついたり
して始末が悪いものだが、右手で捏ねて、左手にカードを持
ち、そのカードで台に付着した生地を集めながら作業を続ける
うちに、生地はべとつかなくなってくる。
Clean-up Stage

伸ばした生地の先端を指先で手前に寄せながら折りたたむよ
うにして、上から軽く押さえてひとかたまりの生地の状態にす
る。


生地の端を持って90度向きを変えながら高さ20cm程度から軽
く台に生地を落下させ、その振動で生地内の水分を分散させ
る。


この作業を繰り返す。

この伸ばしては折りたたむ手法で生地に伸展性が出てきたな
ら、以降のミキシングを菊練で行うと時間は短縮される。


捏ねるというよりも折りたたんで向きをかえて伸ばす、と
いう作業を繰り返すような感じで行う。ただ台の上で生地
を揉みこんでいても、ミキシング効果は薄い。


生地の伸展性が出てくる状態に応じて、生地を伸ばす量を増
やしていく。伸ばしては折りたたみ、方向を変えて伸ばしては
折りたたむ作業を繰り返していくと、やがてなめらかに生地が
伸びるようになり、手のひらに薄く生地の膜が付着するように
なってくる。Development-Stage

本当に始めてパンを作られる方は、この状態でミキシング
を終らせ、次の工程に移って構わない。これから先のミキ
シングは、目的とするパンの特性によってミキシング終了
ポイントが変わっていく。


手で捏ねる経験により、捏ね一回ごとに変化する生地の状態
を感触で捉えることが出来る。「Clean-up Stage」から
「Development-Stage」までの間でも、生地が乾燥したような
感触や、少し水っぽい感触、やや固くなったりゆるくなったりと
いったように、変化を繰り返す。


生地が急にやわらかくなり、柔軟に伸び始め、台との接触箇
所に薄い膜を引きながらのミキシング作業となったなら、

「Final Development-Stage」である。生地表面が乾いた
印象でこの膜の状態にあるうちに、通常ミキシングを終了させ
る。

この先をオーバーミキシングとも呼び、わざとそうした状態に持
っ行き、目的とするパンを作る場合もある。









ミキシング終了と同時に棒温度計を生地に刺し込み、捏ね上
げ温度を計る。この日の捏ね上げ温度は29℃。目標より1〜
2℃高いので、右写真のように一回り大きなボウルに水を入
れ、そこに丸めた生地を入れたボウルを浮かせている。


始めてパンを作られる方は、とりあえず細かいことは置いてお
いて、捏ね上げ温度が26〜32℃ならば、そのまま次の工程に
移り、発酵時間で調整すれば良い。まずは工程と段取りに慣
れること、そして自家製のパンを食べる経験を得ることが優
先。


捏ね上げ温度が少し低い場合はぬるま湯で湯煎とし、極端に
温度が高かったり低かったりする場合は、右写真状態の生地
を、ボウルの中で捏ねて温度調整を行う。私はDevelopment
-Stage
の前半で、手に伝わる感触から、生地温度が極端に
外れていることが予想される場合は、温度計をミキシング工程
中に差し込み、ミキシング工程の仕上げ段階で湯煎や冷却の
捏ねを行っている。真夏や真冬は、捏ね上げ温度が大きく外
れやすいので注意が必要だ。

生地は、捏ねの摩擦熱で温度が上昇し、発酵も始まっている
ので発酵熱も生じている。おまけに手から伝わる体温もある。
私は合成大理石板で捏ねているので、上述の室温、水温、粉
温度でこのような捏ね上げ温度となったが、木製まな板の上
で捏ねた場合などは、このデータよりも温度は高くなる可能性
がある。


丸めた生地を分量外のショートニングを薄く塗ったボウルに入
れる。生地の綴じ目は下にする。乾燥を防ぐためにラップで覆
う。このあたりは多くの入門書に必ず記述されていることなの
で、ここでは詳しくは述べない。
イーストについての知識
 イーストはカビの仲間、菌類であり、パンに使用されるイースト
は、サッカロミセス属セレビシエ種の生物。その生理現象を人
間の都合に利用する。したがってイーストの事情を理解してあげ
なければ目的とする発酵が得られない。。


酵母の歴史
 古代社会ではパン発酵の現象は神秘的なもので、古い生地
の一部を残す(種)自然発酵の製法だった。無発酵の煎餅のよ
うなパンも多かったようだ。1680年にレーベンフックが顕微鏡を
完成して微生物も発見されるが、発酵現象が微生物と関係が
あることを証明するには、1857年のパスツールを待たなければ
ならなかった。それまで、酒も含めて発酵技術は経験則の積み
重ねによる神がかりだったのだ。酵母の存在が明らかになり、
その生態が研究されて純粋培養酵母によって安定した発酵が
実現した現在は、また一つ神の神秘を失ったとも言える。しか
し、膨張する生地の様子はやはり不思議なもので、発酵にまつ
わる歴史を紐解きながら、生地を観察するのも感慨深いもの
だ。


イースト(酵母)の生理と製パンの関係
 インスタント・ドライ・イースト、小さじ1/4程を、大さじ1杯程度
の砂糖を溶かしたコップ一杯のぬるま湯(30℃程度)に加えて、
ラップで覆って暖かい場所に置いておく。半日もすれば砂糖水
は濁り、泡立ち始める。これが発酵だ。2〜3日で泡立ちが収ま
り、この液体を味見すると甘みは消えてアルコール分を感じる。
(液体は酒であり立派な密造だが、発酵原理を勉強するためな
ので税務署には許してもらおう。)立ち上った泡は炭酸ガスで、
パン作りではこの炭酸ガスの発生を利用して生地を膨らませ
る。また、発酵に伴って生成される微量の有機酸が、旨みを与
えてくれる。


 発酵は、低温では緩やかに、温度が高まるにつれて活発にな
り、やがて高温で酵母が死滅する。低温状況下のパン生地は、
旨みを蓄積して長時間発酵によって生地の水和も進行するが、
度が過ぎると酸味が強くなってくる。この加減を経験的に探って
行けば、好みの旨みと酸味のパン種を作って行く事が出来るよ
うになる。パン生地の捏ねあげ温度(ミキシング終了時点の生地
温度)は、普通26〜28℃を一つの基準とする。多くのレシピが
27℃を基準に発酵時間を指定している。あなたの捏ねあげ温度
が27℃未満ならば、発酵時間は指定時間より長くなり
27℃を
超えれば発酵時間は短くなっていく。また、作業する室温や、作
業台の表面の温度、手作業が遅い場合は体温の影響も受ける
ことを考慮すること。

 パン焼成中、釜伸びといって最後の膨張を始める。温度上昇
によってイーストが活性化して炭酸ガスを大量に発生させ、やが
てイーストは死滅(65℃)するが、生地内に含まれる炭酸ガスの
膨張によって釜伸びが続く。この作用によってパンのクラム(内
相)のすだちが決定されてパン独特の食感が得られることとな
る。


 パン生地には、通常いくらかの砂糖を添加する。砂糖はパン
生地に適度な湿度を与えて柔らかな弾力を与える。この効果は
グラニュー糖よりも上白糖、更には異性化糖(水あめ)の方が高
く、したがってしっとりとした生地を得るには、水あめやハチミツ
を投入することが有効である。

 砂糖の添加量が少ない場合は発酵がゆっくりとなり、砂糖の
量を増やすにつれて発酵は盛んになり、ある限界を超えると発
酵が止まる。この発酵が止まることを利用して、砂糖漬けの保
存食やジャムが成立する訳だが、日本酒の醸造では濃糖圧迫
と呼んだりする。

 パンの焼成では、発酵で残存した糖分と小麦デンプンによるカ
ラメル・メイラード反応が進行し、焼き色や風味が決まる。残存
糖分の多い生地は焼き色が強くなり、少なければ薄く仕上が
る。これもまた風味に大きな影響を与える。

 菓子パンなどで極端に甘い生地を作る場合は耐糖性イースト
を利用することで「濃糖圧迫」による発酵不良を防ぐことが出来
る。また、通常のドライ・イーストよりも生イーストの方が耐糖性
が高いので、甘い生地には生イーストを使用するのも一方法。。

 一般的には入手が難しいが、製パン工場では超耐糖性イース
ト(糖50%以下)というものや、冷凍生地用イーストといって、冷
凍してもイーストの細胞壁が破壊されにくいもの等、様々なイー
ストが開発されている。


 イースト使用量の調整は、室温が高い場合や長時間発酵、天
然酵母や中種を使用するとき、水質の硬度が高い場合は量を
減ずる。小麦粉のエージング不足の場合や水質がアルカリ性
や軟水の場合、生地含塩量や糖度が高い場合や生成されるグ
ルテンが強くなる場合、乳製品や油脂類を多く含ませた場合は
イースト量を増加させる。発酵時間を短縮したい場合も増加させ
る。

 なお、参考までに通常イーストがパン生地内で増殖する条件
は、生地温度24〜35℃、pH5.0〜5.8と言われる。


イースト中の主な酵素
「インベルターゼ」 蔗糖をブドウ糖と果糖に分解する。
「マルターゼ」 麦芽糖を2分子のブドウ糖にする。
「チマーゼ群」 ブドウ糖、果糖を炭酸ガスとアルコールに分解
する。

「その他」 プロテアーゼやα−アミラーゼ等

パン職人と話す時に、「インベルターゼ活性が高くってねぇ・・・」
などという会話になる場合は、酵素の話だ。


イースト使用時の注意点
 生イーストは仕込み量の水の一部で必ず溶かしてから粉に合
わせ、ミキシングする。その水の温度は、室温と粉温度、希望
する捏ねあげ温度によって調節しなければならないが、極端に
低温であったり高温であることは避けなければならない。また、
イーストと砂糖、塩を直接合わせてはいけない。

 イーストを溶解して使用する場合は、30分以内に使い、保存
は冷蔵だが早目に使い切る。



天然酵母

 自然食品、健康食品志向、またはアトピー対策などで食品添
加物に敏感な人が増えてきた。ドライイーストに僅かに添加され
る物質について疑問を持つことは、時代の流れとしても当然と
思われる。しかし、天然酵母ならば何でも良い訳ではない。

 精製度の高いドライイーストや生イーストは、優秀酵母の集団
である。サッカロミセス属セレビシエ種であっても、天然培養酵
母の中には勤勉なものから怠惰なものまで含まれ、発酵が安
定しないことが多い。場合によってはパンが全く作れないリスク
もある。そうしたリスクを排除するために、選抜された培養酵母
を添加した天然酵母種が市販されている。こうした酵母は風味
に天然酵母らしさを付加できるので、パンのバリエーションを広
げられる。

 自宅で天然酵母種を起こす代表材料がレーズンで、無農薬栽
培のものが入手できればリンゴで種を起こしているパン屋もあ
る。私の経験では、生活圏内の野山のレンゲ、クローバー、ニセ
アカシアの花では勤勉な酵母に出会うことが出来ず、山桑の実
では発酵力が足りずにイーストとのハイブリッドになった。良好
な結果が得られたのは自宅庭の柚子の実と、八ヶ岳周辺で採
取したカラハナソウの花と山葡萄の実である。

 種を起こす際に、とりあえず発酵が始まったとしても、製パン
工程になると環境変化にへそを曲げる酵母もいるし、雑菌の繁
殖が勝ってくれば腐敗であり、腐敗種で臭いパンを売っている
店も残念ながら存在するので、天然酵母パンというだけで尊ぶ
のは間違いである。

 作ろうとするパンの狙いによっても、ドライイースト、生イースト
でやるか、天然酵母で作るかを選択する必要がある。小麦の風
味を生かす場合や、小麦品種の違いを明確に表現するならばド
ライイーストを選択する。したがって、バゲット、バタールは通常
ドライを選択する。生はリッチ配合の場合に利用するので、ブリ
オッシュだったら間違いなく生イーストを選択する。しかも、バタ
ーや卵といった素材の風味を生かすリッチ配合のパンでは、良
い素材を使うほど、その素材の魅力を表現したいので、天然酵
母は選択しない。

 天然酵母は、発酵によって生じる風味を楽しむパンなので、つ
まりはパン種の旨みの楽しみだ。

 こうした使い分けに関する考え方は、パンを作る人それぞれの
思想があることと思うが、私の例は、一つの考え方として参考に
なればと思う。また、市販されているパンを購入する際の一つの
選択基準になり得ると思う。

最も大変な労働の工程は終り、発酵が始まればしばらく他の仕事をしながらパン作りが出来る。
(4)発酵(一次、二次)

さてさて、ミキシングが終って生地をまとめれば一休みが出来
る。この日のパン作りは、室温がちょうど良いので、生地を入
れたボウルは水道の水をはったボウルに浮かせて作業台の
上に置いたまま発酵工程となったた。寒い日は、発泡スチロー
ルのトロ箱や、キャンプ用クーラーボックスにお湯を入れたカッ
プとともにボウルを入れ、発酵させる。暑い日は冷却するが、
冷蔵庫の中に入れるなど、極端な温度変化は避ける。これもト
ロ箱に氷水をいれたカップを入れて、そこにボウルを入れるよう
な方法を採る。このあたりも多くの入門書に記述されているの
で参照のこと。そして生地を風に当てないことは遵守事項。生
地の中ではイーストという生物が生命活動をしている。私たち
も極端な温度変化には体調を崩すように、同じことがイースト
にも言える。オーブンの発酵機能を使用するのも簡便


発酵時間は、捏ね上げ温度や発酵中の生地温度の変化、環
境に左右され、イーストの活性度、粉の品質にも左右される。
一概に「90分発酵」などとは指定出来ない。生地の変化を観
察することが大切で、見ることの経験を積上げる必要がある。
この点は美術作品の制作と同じことだ。


一次発酵
私はキッチンタイマーを30分に設定し、生地から離れる。そし
て事務的な仕事をしたり、資料整理をしたりする。30分後の生
地の膨らみ状態を確認して、この日はもう一度タイマーを30分
にセットした。このアタリは勘と経験で、一次発酵時間は80分
弱と見当をつけた。60分が経過した先は70分、75分と経過を
観察し、80分でフィンガーテストを行ってピッタリ。(右写真)


二次発酵
その後、パンチを入れて丸めなおして二次発酵に入る。一次
発酵と同様の段取りで45分発酵し、生地がパンチ後2.5倍程
度になったところで発酵工程を終了。


このあたりのパンチや丸め方なども、多くの本と内容が重複す
るので、詳細は割愛する。


(5)分割、丸めとベンチタイム

ボウルを斜めにして生地に負担をかけないように手を添えて、
台の上に生地を移す。軽くガス抜きを兼ねて生地をやや平たく
手のひらで伸ばし俵型にする。生地を手前と奥から折りたた
み、軽く転がす程度で大丈夫。
決して捏ねてはいけない。

目分量で分割。商売的には秤を使って正確に分割するが、家
庭でのパンは大体で問題なし。人にプレゼントするなど、余程
綺麗に作る必要が無い限り、神経質になる必要はない。むし
ろ、一度分割した生地を切ったり足したりと計量を繰り返し、生
地に必要以上のダメージを与えてしまうことの方が問題とな
る。慣れれば、目分量でも結構正確に分割できるようになるも
のだ。

今回、私は4分割。カードやスケッパーを使って、スパッと分割
するように。

分割した生地は丸めなおして、合わせ目を閉じ、その合わせ
目を下にしてオーブンシートを敷いた天板の上に置く。湿度保
持のためにお湯を入れた小さなカップを一緒に置く。部屋の湿
度が高い場合はこのカップは使わない場合もある。

(右写真のカップは日本酒用利き猪口で、ちょうど良い容量な
ので私はよく使う。)


ベンチタイムは10〜15分程度。ベンチテスト法もあるが、と
にかく生地を10分は休ませてください。ベンチタイムをとること
で生地は発酵を続け、分割や丸め作業で受けた生地のダメー
ジ(加工硬化と呼ぶ)を緩和し、伸展性が良くなり、次の成型
工程が作業しやすくなる。布を被せて湿度保持をする方法もあ
るが、ホイロ環境に置いておくことが簡便なので、オーブンの
発酵モードを使用してしまう手もある。

(6)成型

今回は、丸型のパンを作るので、Dの工程での丸めのまま、
つまりベンチタイムを延長してホイロとしてしまい、焼成すると
いう超手抜きも出来るが、一応様々なパンを作る上での工程
として、ここで成型を行う。

成型には丸めたり、折りたたんだり、平らに伸ばしたものを巻
いたりと、目的とするパンによって幾つかのパターンがある。

今回は丸める。ベンチタイムを終えた生地を軽く上から抑え
て、内側に丸め込むように、表面に新しい面が出るように巻き
込む。そして綴じ目は下にしてオーブンシートの上に置く。この
やり方は、多くの書籍にも詳細が書かれているので、その方
法で問題ない。


(7)ホイロ(最終発酵)

一般的には38℃湿度85%が基準。フランスパンやドイツパ
ンでは32℃湿度75%と、やや低温低湿度でホイロ。デニッシ
ュペストリーやクロワッサン、さらにはブリオッシュのような油
脂の配合が多いパンの場合は、バターの融点より低い温度で
ホイロをとらなければならなので、26〜28℃程度にするが、普
通の配合のパンを家庭で作って食す目的ならば、だいたい35
〜38℃の多湿環境に設定するれば、ほぼ問題ない。

ホイロの見極めは実は難しい。生地の熟成状態は、粉の質や
劣化状態、発酵の経過状態など様々な要因で焼成時の釜伸
びの量に関わってくるのだが、この焼成状態を予測しながらホ
イロの見極めを行わなければならない。経験がものを言う世界
なので、始めて作る場合は
2〜2.5倍に膨らんだらOK。時間
の目安は30〜45分といったところ。


右写真のホイロは、オーブンの発酵モードで行っている。

ホイロ


ホイロ終了

(8)クープを入れる

ホイロから出したら、直ぐにオーブンを余熱する。私の使用して
いるガス高速オーブンはシステムキッチン用のリンナイRBR-
51C。家庭用としては大き目の容量を持つ高性能な機種だ。
オーブンの性能は仕上がりに影響するので、導入時に金とス
ペースを惜しんではいけない。(熱量を大きくするテクニックな
どあることはあるが、うかつにやると家庭用の機種は故障する
かもしれない。)電気オーブンなど、余熱に時間がかかる機種
は段取りを考慮する必要がある。

今回のような小型で少量の焼成の場合は、220℃に設定して
余熱する。5分程で設定温度に達するので、その間に作業を
行う。


パン生地に1本ずつ切り目(クープ)を入れる。クープナイフは両
刃のカミソリを水に漬けながら使用している。なぜなら、薄くて
よく切れる刃が、クープを入れるのに適しているからだ。。包丁
でも入れられるが、刃をよく研いでおいたほうが良い。

クープを入れる目的は、パン生地が焼成中に釜伸びといって
急激な膨張を起すが、その時の生地内部の圧力の逃げ場を
作ってやることで、パンが破裂することを避けるため。また、内
部への火の通りも良くなり、パンに表情が生まれて見た目も
美しく、ボリューム感も生れる。クープの深さは、生地の膨張
の度合いと、グルテン生成の量、イーストの活性度などによっ
て変化するが、今回のように小型のパンで、しかも強力粉を使
っている場合はさほどシビアではない。深いところで5o程度
のクープで充分。

作業中の部屋の湿度が低い場合は、霧吹きを使用する。ただ
し、生地表面をあまりびしょびしょにしてはいけない。表面が濡
れた生地はクープが綺麗に入りにくくなる。


フランスパンの場合はクープの入れ方がシビアで、入れ方によ
って香味に大きな変化が生ずる。

(9)焼成

オープンに生地の載った天板を入れて扉を閉め、220℃設定を
200℃に下げて焼成をスタート。時間設定は15分。この15分間
は扉を開けずにそのまま焼成する。焼きムラの激しいオーブン
では10分程度焼成したところで天板の向きを入れ替える必要
があるかもしれないが、生地には触れない、動かさないという
ことが肝要だ。

15分後、設定温度を180℃に下げて5分焼成。全体で20分の
焼成となった。

200℃で20分焼成した場合は焼き色が濃くなり、場合によって
はクープの縁などが部分的に焦げてくる。バゲットではそれが
風味を生むが、このパンは強力粉を使用した気取らないパン
が目標なので、クラストをあまり固くせずに狐色に仕上げ、な
おかつクラムの中心までしっかりと火を通すために後半5分を
180℃設定にした。


200℃10分で180℃15分程度の焼成を行うと、クラストがやや
厚くなってくる。パンの狙いによって焼き方を変えることも必要
になってくる。


私の使用するオーブンの性能では、小型のパンなので15分に
設定したが、イギリスパンやバゲットなどを作る場合は、230℃
で余熱して210℃20分を一応の設定基準としている。

使用するオーブンの性能と設置状況、個体差によって条件は
変わる。また、オーブンが表示する温度も、完璧に信頼出来る
ものではない。誤差はかなりあるものと考えておく。「我家のオ
ーブン温度」を把握することが大切。回数を作ることで自然とオ
ーブンの癖が分かってくるはず。


焼き上がったパンは、網の上等において自然冷却する。ある
程度冷めるまではクラムが安定していないので静置すること。
カットするのも充分に冷めてから。部屋中に満ちた焼き上がり
のパンの香りは、充実感に満ちた豊かなものだ。



イーストフードとは?
 
家庭でのパン作りでは、イーストフードを使用する必要はまず
ない。ただし、粉が若くてまとまりづらい時に、酸化剤としてビタ
ミンCを極少量添加する場合はある。リーンなフランスパン生地
でビタミンCの添加を指示することも多い。ここでは、なぜイース
トフードの添加が必要なのか?という理由を解説し、市販されて
いるパンで、何故イーストフードが添加されるのかを概ね理解す
ることは、現代の食が抱える問題点を洞察するきっかけになる
だろう。


この先準備中
始めから大成功するとは思わないで下さい。プロでも新作のパンを試作する場合は、10〜50回も微調整したりするそうです。
完成度よりもまず、身近なスーパーなどで入手出来るシンプルな材料の配合でも、風味豊かなパンをつくることが出来ることを体
験してほしいと思います。

また、余分な添加物が、決してパンの質を向上する訳ではないことがお分かりいただけると思います。


エレミヤ(640?-570?BC)は孤独の預言者。場面は厳しい局面ながら、私は「パン屋街」という記述に引っかかる。「パン屋」ではなく「・・・街」というところ。神の審判を前にした王国の食を支えるパン職人達の姿と街並みを想像してしまう。その後、同書38-9において「エレミヤはそこで飢えて死んでしまいます。もう都にはパンがなくなりましたから。」となる。日本の食糧自給率のことを考えると、恐ろしいことだと思う。