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トランスWカップ!
作:高居空


「さあ、いよいよ始まりましたサッカートランスWカップ! まずはそれぞれ4チームによる予選リーグ戦が行われ、それぞれのリーグの上位2チームが決勝トーナメントに進出できることになっています。日本初戦の相手は強豪のI国! 解説の米沢ニシェルさん、この対戦、いきなり格上との戦いになりますが、どのような展開になると予想されますか」
「そうですね。日本はこれまでポゼッションを重視したパスサッカーに磨きをかけてきましたが、I国は伝統的に固いディフェンスを誇る強豪。そして近年は堅守速攻のカウンターサッカーに力を入れています。パスカットされるとロングボールからのカウンターで一気に失点しかねませんので、パス回しには細心の注意が必要です。あとはゴールが欲しいですね。トランスWカップではパスを回し続けることも一つの戦術ではあるのですが、前回優勝国のS国ならともかく、日本の力では時間が経つほど相手に押し込まれる可能性が高いですから、選手がフレッシュなうちにまず1点。そして相手が点を取りに前懸かりになったところでうまくパスを回して2点、3点とゴールを決めていきたいところです」
「日本チームの中心であるH選手の状態についてはいかがでしょうか」
「H選手は先月行われた強化試合の第1試合と比べれば調子は確実に上向いてきています。日本のパスサッカーは彼がいないと成り立ちませんから、頑張ってもらいたいです。ただ、ここはトランスWカップですから、今後のことを考えると、チームは彼にばかりボールを集めて後々彼が疲弊しないよう注意しなければなりません。このチームにとって彼は本当に代えのきかない存在ですから、第2、第3戦のことを考えるならば、ゴールを奪えそうもない展開ならば、途中交代も選択肢の一つではあると思います」
「ありがとうございます。さあ、フィールドでは国歌の斉唱も終わり、いよいよ日本ボールで試合開始です! 開始早々ボールをキープし、H選手を起点にパスを回していく日本! 気持ちよくボールが繋がっていく! さあ、このまま一気にI国のゴールへと迫れるか!?」
「いや、I国のディフェンスはかなりクレバーですよ。一見すると日本のパスが面白いように繋がっているように見えますが、受け手がパスを受けると同時に体格で勝るI国の選手が得点に繋がりそうなパスコースを消しながら寄せてくるので、日本は得点の臭いのする場所にパスを出せていません。パスを回しているのではなく、ボールを持たされ、パスを強制されているといった感じですね」
「確かに日本、やや攻めあぐねている感じで、左右にパスを繰り返しているもののなかなか前へとボールを運べていません。ですが、ここはトランスWカップ。これもまた戦術のひとつではあります」
「そうですが、開始早々この戦術をとるというのはかなりリスキーですよ」
「ここで通常のサッカーしかご存じでない皆さんにトランスWカップのルールを説明しますと、この大会では味方からのパスが繋がったとき、パスの受け手は美少女へと変身してしまいます。そして、パスが連続して成功するたびに、ボールを受ける少女のバストカップがAからB、Cと一つずつサイズが大きくなっていくのです。このバストカップですが、仮にAカップの選手が次に3番目のパスの受け手になった場合、バストカップはCカップになりますが、Eカップの選手が次に最初のパスの受け手となったとしても、カップはAカップにはなりません。つまり、バストのサイズは大きくなることはあっても、逆はないということです」
「日本はパスを相手にカットされずに既にかなりの数回してますから、I国ディフェンダー陣の執拗なマークと絶妙なポジショニングのせいでボールが入ってこないワントップのO選手以外、攻撃陣と中盤はみんな巨乳美少女になってしまってますね」
「この体を元に戻す方法はただ一つ、自分のチームが相手のゴールをこじ開けるしかありません。ゴールが決まった時点で得点したチームの肉体変化はリセットされ、元の姿へと戻ることができます」
「肉体が女性化することは見た目という点以外はデメリットしかありませんから、日本は早くゴールが欲しいところです」
「ですが、トランスWカップには特別ルールとして『Wカップポイント』というゴール以外に得点を挙げる方法が存在します。パスを繋ぎ続け、自分のチームにバストサイズがWカップの美少女が誕生したときにボーナスポイントとして得点が加算されるというものですが、その点についてはいかがでしょうか」
「確かにWカップポイントは1点を争うゲームでは終盤に特に重要になってきますが、試合開始早々から狙うというものではないと思いますよ」
「と、ここで日本にチャンス! 攻撃陣のK選手やオーバーラップしてきたディフェンダーのN選手の動きにI国ディフェンダーがつられてO選手がフリーになっている! K選手からボールを受けたH選手から絶妙なパスが飛ぶ! O選手、このボールをトラップして……お〜っと、ここで審判が笛を吹いたー! オフサイドではなかったように見えましたが、これはどういうことでしょうか!?」
「いえ、これは反則ではなく、Wカップポイントが入った笛ですね」
「Wカップポイント! Wカップポイントです!! 日本のパスはここまで繋がっていた!! 日本、Wカップポイントで先制、先制です!!」
「う〜ん、ですがこれは喜んでばかりもいられませんよ。むしろI国にうまく嵌められたといった感じです」
「といいますと?」
「トランスWカップでは、少女に変身してしまった選手の身長はどんなに高くても150センチ台になってしまいます。相手も女性化していれば話は別ですが、そうではない場合、総じて身長180センチ台の相手とマッチするのは体格差において非常に厳しいものとなります。今I国の選手は全員が男のままですから、今の状態では日本はポストプレイ、パワープレイともほぼ不可能と言えるでしょう」
「確かに、ここまでのパス回しで日本の中盤より前の選手は全員女性化してしまっています」
「さらに、Wカップポイントが入ったところから逆算すると、現在のところワントップのO選手のバストサイズがWカップ、チームの中心であるH選手がVカップ、攻撃の要のK選手がUカップですか。このバストではボールを胸でトラップするのはもちろんのこと、満足に走ることだってできませんよ。何せ選手はブラジャーも着けてませんから」
「ニシェルさんのおっしゃるとおり、自陣へと戻る3人の胸はここからでも動くたびにたぷんたぷんと揺れているのが分かります。非常に走りづらそうです」
「同じパスサッカーでもS国では司令塔やフィニッシャーはパス成功が二桁になった時点でボールにタッチしないよううまく調整しています。もちろん日本もその点は分かってはいたんでしょうが、I国にうまくパスコースをコントロールされてしまったといった感じですね。とにかく、女性化した選手は日本がゴールをあげない限り元に戻ることはありませんから、時間的には早いですがここは女性化していないサブの選手との交代で何とか打開するしかないでしょう。ここでH選手の代わりになるような選手がいないのが日本は非常に厳しいところですが」
「さあ、日本ベンチ、ここでサブの選手が一斉にアップを開始しました。一方フィールドではI国ボールでゲーム再開……っと、ここでいきなりI国にミス! フォワードを狙ったと思われるパスがあらぬ方向に飛んで、ディフェンダーのN選手の足下に収まりました!」
「いや、これはまずい展開ですよ。早く前にボールを出さないと……」
「おっと、ここでI国の選手が複数でN選手に対し激しい寄せを見せてくる! 前線の日本選手には全員にマンマークがついています! 身長160センチに満たない美少女になった日本選手に対しこれは厳しい! N選手、前線にパスを出すことができずにたまらず横へとパス!」
「あ〜、まずいですねえ。前にパスを回せないとなると横へのパスやバックパスを多用してしまうという、日本のチームとしての弱点が出てしまいました。ここはN選手、多少強引にドリブル突破を図るべき場面だったのですが……。この横パスのせいで、これまでフレッシュだったディフェンダー陣も次々女性化してしまっています」
「おっしゃるとおり、I国の選手のプレッシャーに圧され横にパスを繋げるしかできない日本、選手がどんどん女性化し、胸のカップも目に見えて大きくなっていきます。これは厳しい! と、ここでボールを持っているか弱い低身長の美少女と化したディフェンダーのY選手にI国の選手が複数人で襲いかかる! ああ〜! Y選手、とっさとはいえここでバックパスを選択してしまった〜! ゴールキーパーへのバックパス、日本守備陣最後の砦、ゴールキーパーまでもが巨乳美少女へと変身してしまった〜!!」
「これで日本の先発選手は全員が女性化してしまいましたね。選手は3人までしか交代できませんから、これでは交代枠を使っても焼け石に水ですね」
「さあ、前半のうちから早くも窮地に追い込まれてしまった日本! 打開策はあるのでしょうか〜!!」
  ……………………
  …………
  ……

「ここで終了のホイッスル〜! 1対11! 日本、強豪I国から1点を奪うも、世界の壁は厚かった!」
「正直、惨敗ですね。戦術を含めてI国に完全に弄ばれたといった感じです」
「選手達もショックが大きいのか、フィールドに倒れ込み、なかなか立ち上がることができない! 巨乳美少女達が芝の上でうずくまり、悔しさに耐える様はビジュアル的にはそそるものがありますが、第2戦以降の事を考えるとそうも言っていられません」
「女性化は次戦以降もトランスWカップ開催期間中はずっと継続しますからね。その点では、今回控え選手を誰も使わなかったのは、次戦をなるべく女性化していないメンバーで臨むための決断だったと言えるでしょう。ただ、日本は初戦勝利のためにこの試合ベストメンバーが出場していましたから、得点を決めるまでは彼らを使えないということからも、今後も厳しい戦いが続くのは間違いないですね。チームの要とはいえ今の状態のH選手を次戦も使うのかも含め早急な戦術の練り直しが必要でしょう」
「フィールドでは選手達をマスコミが取り囲み、コメントを求めようとしています」
「女性化した選手達のメンタルケアも重要ですね。女性化した選手をそのままにしておくと、次第に精神もその肉体にふさわしいものへと変容していきますから。これが進んでしまうと大変なことになります。変化した選手の肉体はチームがゴールを挙げたときに元に戻ることができますが、あくまで『戻ることができる』であって、『戻る』ではありませんから。つまり、チームがゴールを挙げても、本人がそれを望まなければ、肉体は元に戻ることはないのです」
「確かに、トランスWカップの決勝トーナメントでは予選リーグでゴールを挙げることができずに敗退したチームの選手達が際どい水着姿で自分の肉体を誇示しながら応援するという姿がたびたび見られ、それが大会の名物にもなっています」
「決勝トーナメントで青いビキニ姿の巨乳美少女達が観客席で応援しているなんてことがないよう、チームのスタッフは全力で選手のケアにあたるとともに、女性化していない選手は次戦積極的にゴールを狙う姿勢を見せてもらいたいですね」
「ありがとうございました。さて、そろそろ試合の中継時間も残り少なくなってきました。日本対I国の試合は1対11でI国の勝利。日本、この敗戦を引きずらず、しっかり立て直して次のK国戦に臨んでもらいたいものです。それではこの辺でスタジアムからお別れします。さようなら」



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