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「ジャングル三千キロの奥地に幻の原住民族ポロリ族の秘密の儀式を見た!!」
作:高居空



  荒々しい太鼓の音が夜の密林に響き渡る。
  大河のほとりに据えられた蔦の絡まった石造りの祭壇の前では篝火が焚かれ、その周りを腰蓑一つの褐色の肌をした男達が、太鼓のリズムに合わせて踊りながら奇声を発している。
  私、探検家の川内広は生い茂った草の中に身を隠しながら、彼らの祭儀を息を殺して見守っていた。彼らの名はポロリ族。ジャングルの奥地に住む幻の原住民族であり、特に彼らの儀式は秘中の秘とされ、その実体は長らく謎とされてきた。それが今まさに、私の目の前で執り行われようとしているのだ。未知なる物を追い求め続ける探検家としては今が至福の瞬間だった。
  しかし、今の私は彼らの祭儀に見とれているわけにはいかない事情があった。少し後ろ髪を引かれながらも、私は意識を篝火の周辺から祭壇の上にいる2人の日本人へと向ける。
  いかにも探検隊風の格好をしたその日本人達は、後ろ手に縛られた状態で地べたへと座らされていた。その左右には石槍を手にした屈強な男達の姿。そう、彼らは危険な原住民の罠にかかり捕らえられた、私の部下達なのだ。




  私、川内広はその筋ではかなり名の知られた探検家だ。豊富な人脈と人望とで探検隊を組織し、世界のあらゆる謎へと挑戦する私の活躍は、たびたびテレビに特番として取り上げられては全国の少年達に夢と勇気を与えてきた。
  そして、私の名声は今回の冒険、「ジャングル三千キロの奥地に幻の原住民族ポロリ族の秘密の儀式を見た!!」によってさらに高まるはずだった。
  ポロリ族が生息するといわれるジャングルに面した小さな村に到着した我々は、森の地理に明るく昔ポロリ族を見たことがあるという現地ガイドを雇い、大型オフロードカー数台で意気揚々と出発した。
  そこまでは良かったのだが、すぐに我々の向かう先には暗雲が立ちこめてきた。ジャングルの奥地へと向かう我々に対し、いつも以上のアクシデントが立て続けに襲いかかってきたのだ。
  まず、初日からいきなり車が底なし沼にはまって使用できなくなった。隊員の誰かが底なし沼にはまるのはいつものことなのだが、移動手段である車が使用できなくなるというのはこれまでで初めての事態だった。やむなく荷物を隊員が背負い、予定より早く徒歩での探検を開始したものの、翌日の夜にはテントの中になぜか忍び込んでいた毒蛇に噛まれて医療担当がリタイアする。血清があったため命は助かったが、彼は念のため隊員数人とともに村へと戻されることになった。
  本来なら医療担当がいなくなった時点で探検を断念するべきだったのだろうが、私は隊長命令で探検を続行していた。私はただの探検家ではなく、日本の青少年の憧れの対象なのだ。なんらかの手がかりを掴んだのならともかく、原住民にも接触していないのに探検を断念するというのはあってはならないことだった。
  そしてガイドの導きの元ジャングルを進むこと三日、ついに我々はガイドがポロリ族の姿を見たという怪しげな洞窟へとたどり着いたのだった。
  懐中電灯を持った私を先頭に洞窟へと足を踏み入れる探検隊。そのままある程度まで奥へと進み、外からの光が届かなくなったところで事件は起きた。突然前触れもなく天井が揺れると、そこから毒蜘蛛の群れが雹のごとく降りそそいできたのだ。思わず懐中電灯を投げ捨て出口へと走る我々。だが、外へと飛び出した我々が見たものは、洞窟を取り囲むように待ちかまえてる原住民ポロリ族の戦士達の姿だった。
  それでも私も含め歴戦の隊員達は長年の経験とたゆまぬ訓練によって培われた戦闘術とサバイバル術とを駆使して何とか彼らの囲みから脱出することができたのだが、今回から探検隊に参加した新人隊員が2人、彼らの手に落ちてしまった。どうやら洞窟の中で毒蜘蛛の痺れ毒にやられていたらしく、2人はろくな抵抗もできぬまま捕らわれの身となってしまったのだ。
  当たり前のことだが我々探検隊は危機に陥った隊員を見殺しにして逃げ出すようなことはしない。体勢を立て直した我々は、こうして風下から2人を救出する機会を窺っているのだった。






「フフフ、ドウデスカ、ワレワレノ、ギシキハ?」
  祭壇の最上段に立つポロリ族の司祭の声が風に乗って聞こえてくる。
  片言の日本語で話すその司祭の顔は我々もよく知っているものだった。冒険の最初に村で雇った現地ガイド、まさか彼がポロリ族の司祭だったとはその時は思ってもみなかった。
「おっ、俺達をどうするつもりだ!!」
  捕まった2人の隊員の一人、勝気な性格の水木隊員が気丈にも祭司に食ってかかる。その隣ではすぐに悲観的な考え方をする百瀬隊員が俯きながら大きくため息をついていた。
「フフフ、アナタタチハ、コレカラ、ポロリニ、ナルノデス」
  口元に不気味な笑みを浮かべながら答える司祭。
「何? どういうことだ?」
  その言葉に訳が分からないといった声を水木隊員があげる。隣の百瀬隊員の顔にも同じく困惑の表情が浮かんでいる。
  彼の言葉が理解できないのは私も同じだった。それもそうだろう。ポロリと言うのは彼ら原住民族の部族名だ。生け贄ではなく、2人の隊員をポロリにするということは、つまり、彼らは隊員達を同胞として迎え入れようとしているということなのか? しかし、そうだとするならこの原住民達の非友好的な態度は納得いくものではないが…………。
  私が疑問に思っているうちにも、目の前ではポロリ族の儀式が進行していく。
  司祭の元に原住民が複雑な紋様の描かれた杯を運んでくる。
「サア、サカヅキノナカノ、セイスイヲ、ノミホスノデス!」
  見るからに怪しげな杯を持って隊員達に迫る司祭。
「だ、誰が飲むか!!」
  必死に抵抗しようとする隊員達だが、両手が縛られた状態ではそれにも限界がある。原住民に鼻をつままれた2人はやがて苦しそうに口を開いた。そこに流し込まれる透明な液体。
「ぐっ、あっ、ああぁぁぁぁぁ!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
  無理矢理その液体を飲み込まされた2人は祭壇の石畳の上を転がりながらもがき、苦しみ始める。
  同時に篝火の周りの原住民達が両手を突き上げ、アップテンポの太鼓のリズムに合わせるように部族の名を叫びながら踊り、飛び跳ね始めた。
『ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!!』
  男達の大合唱が森の中に木霊する中、我々の目の前では信じられない事態が起こっていた。
  祭壇の上で苦しむ水木隊員と百瀬隊員、その2人の姿が見る見るうちに別のものへと変わっていったのだ!
  彼らがもがき、転がるたびに身長が少しずつ縮んでいく。短かった髪の毛が背中にかかるぐらいまでぐんぐんと伸びていく。鍛えられた筋肉質の身体が柔らかいラインにかわっていく。腰の部分がくびれていくのと同時に胸と臀部が大きく膨らんでいく。
  そんな彼らの変化に合わせるように、2人が身につけた衣服は胸と下腹部の一部を除いてどろどろに溶けていった。残った布地もその材質と色を変化させていく。
  やがて2人の口から苦痛の呻きが聞こえなくなったとき、祭壇の上には屈強な探検隊員に代わって十代後半の肌もあらわな美少女達の姿があった。
「あ……ん……」
  色っぽい声を上げながら上体を起こし、女の子座りをする2人。
「あ…………」
  頬を染めながら長い髪を掻き上げる百瀬隊員だったピンクのビキニの美少女。
「アハッ……」
  照れながらも大きな胸を強調するように腕組みする水色ビキニの水木隊員のなれの果て。
  その仕草は既に男性ではなく、男を惑わす女そのものになっていた。
  何ということだ……! その様子をつぶさに観察しながら、私はポロリ族の儀式の驚異に言葉を失っていた。まさに秘中の秘、我々の常識を遥かに超えた祭儀。これがテレビで放映されれば、私の名声は不動の物になるだろう。だが、まだ彼らの祭儀には謎が残っている。司祭は先程隊員に対してポロリにすると言った。しかし、隊員達がなったのはビキニを身につけた日本人の美少女。彼らポロリ族とはあまりにも違いすぎる姿だ。これはどういうことなのか? どうやらもう少し儀式が進むのを待つ必要が…………もとい、隊員達を奪還するチャンスを窺う必要があるようだ。
「フフフ、コレハ、タノシメソウナ、ポロリニ、ナリマシタネ」
  いつの間にか原住民達の叫びも止まり、司祭の片言の日本語が再び風に乗って流れてくる。
「シカシ、マダ、タリマセン。モウスコシ、ポロリガ、ヒツヨウデス」
  そう言って司祭は2人の隊員から視線を外し、我々がいる方向へと向き直る。まさか…………。
「アナタタチモ、ミナ、ポロリ二、ナリナサイ」
「!!」
  まずい、気付かれていた!?
  しかし、立ち上がろうとした私を突然の激痛が襲った。思わず苦痛の声が口からこぼれる。あまりにも強い痛みに霞む目でそれでも辺りを見渡すと、他の隊員達もうずくまりながら呻き声を発していた。
「フフフ、サキホドノ、セイスイハ、ニセモノデス。ホンモノハ、ケサ、アナタタチノ、ノミミズニ、マゼテオキマシタ。ワタシガ、ネンジルコトニヨリ、セイスイハ、ソノ、コウカヲ、ハッキ、スルノデス」
  激痛の中、司祭の嘲りの声が耳に入ってくる。
  だが、私にはその事に腹を立てるような余裕は残ってはいなかった。全身の肉が、骨が、神経が悲鳴を上げ、私を別の物に作り替えていく。
「あっ、あっ、あっ!」
  私の隣に控えていた隊員が苦しみの悲鳴を上げながら女へと変わっていく。
「はぁ、あっ、あん!」
  私も同じように声を上げる。その声のトーンがどんどん高くなっていく。
  目の前の隊員の服がどろりと溶け、先端を緑色の布地に包まれた胸の谷間が露になる。
  続けて私の肌が外気に晒され、特大サイズのバストがこぼれ出る。金色に輝く布がかろうじて大事な部分を隠していた。しかし不思議と違和感も不快感も沸いてこない。むしろ、女のワタシをもっともっと見てもらいたい気持ちが心の中に溢れてくる。……って何を考えているんだ!? 私はれっきとした男だぞ!! でも今のワタシはエロティックな女の子……ああ……そんな…………。
「はあ……ン……」
  いつの間にか全身の痛みが消えていたことに気付いたワタシはゆっくりと身体を起こした。金色のド派手なビキニ、そして大きな胸が揺れる感触に思わず頬が熱くなる。隣では緑色のビキニ姿の少女が顔を赤らめながら女の子座りをしていた。
『ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!! ポロリ!!』
  その時、ワタシは原住民達が奇声を発しながら食い入るようにワタシ達の事を見つめていることに気が付いた。普通に考えるなら嫌悪感や恐怖を覚えるのが当然の状況。でも、今のワタシは先程感じた女のワタシをもっともっと見てもらいたいという感情が一気に高まってくるのを感じていた。
  ああ、やっぱりワタシ変になっちゃったみたい……こんなの男として駄目なのに……でも見て貰いたい、ワタシの身体を、この胸を!! みんなが見たいというのならトップレスにだってなっちゃうんだから!!
  気が付くとワタシは両手を頭の後ろで組んで自慢のバストをアピールしていた。隣では緑ビキニの女の子が地面に片手をついて前屈みの姿勢で胸の谷間を強調しているけど、普通サイズに毛が生えたぐらいの大きさじゃ巨乳中の巨乳であるワタシの敵じゃない。祭壇にいる水色と桃色ビキニの女の子だってワタシの前じゃ霞むだろう。これが選ばれた者、ゴールデンの主役の力ってやつね!
「フフフ、コレハ、スバラシイポロリ二、ナリマシタネ。ワレワレ、ポロリゾクニハ、タマリマセン」
  祭壇の上では司祭様が満足げな笑みを浮かべていた。ワタシはそんな司祭様に向かって両手で柔らかな胸を持ち上げながらウインクする。
「サア、コマモ、ソロイマシタシ、ソロソロ、ハジメマショウカ! ホントウノ、ポロリノ、ギシキヲ!!」
  司祭様の声にワタシ達は歓声を上げながら祭壇の裏の大河へと飛び込んでいった…………。







………………番組からのお知らせ………………
  スペシャル番組「川内広探検隊シリーズ」は今回が最終回になります。長い間応援ありがとうございました。
  なお、明日の特番は「ドキッ! ポロリだらけの水泳大会!!」をお送りします。お楽しみに!!


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