トップページに戻る

小説ページに戻る
 


呪いのゲーム

作:高居空


  ふう、それじゃあ次は僕の番か。しっかし、空しいよね。こんな夜遅くに男だけで学校に集まってみんなで怪談してるなんてさ。ねえ、そう思わない?
  ふふっ、分かってるよ。「旧校舎のこの教室で7人以上の男性のみで怪談をしながら日付をまたぐと、参加者にはすぐに彼女ができる」っていうんでしょ? 代々この学校に伝わるオカルト話の一つだね。というか、そもそもネットに載ってたこの怪談会の募集告知にもしっかり書いてあったしね。君達もそれが目的で集まったんでしょ?
  あっ、言っておくけど僕は違うよ。僕は正真正銘、根っからの怪奇マニアだからね。今日ここに来たのも、怪奇現象にほとんど興味がないくせに彼女欲しさに怪談やってる君達を、恐怖のどん底に叩き落としてやろうと思ったからさ。
  ……まあいいさ。好きなように思ってればいい。でも言っとくけど、僕の話はホントに怖いよ? 聞き終わったあとは、思わずトイレに駆け込みたくなることうけあいさ。いい? 逃げ出すなら今のうちだよ?
  ……そうかい。じゃあ始めようか。
  僕がこれから話すのは、この学校に伝わる「呪いのゲーム」の話だ。君達、聞いたことはあるかい?
  ……まあそうだろうね。こいつはこの学校にまつわる怪異の中でも、とびきりマイナーな奴だからね。こうした話に興味のない人は知らなくても当然さ。
  あ、そうそう知ってたかい? 世間じゃよく「学校の七不思議」なんて学校の怪談話をいうけどさ、この学校にはその怪談話が実に百八つもあるんだよ。君達が釣られてやってきた、「旧校舎のある教室で7人以上の男のみで怪談をしながら日付をまたぐと、参加者にはすぐに彼女ができる」っていうのもその中の一つさ。
  で、僕がこれから話すのも、その百八つの怪談話の中の一つって訳なんだけど、この話はいわゆる「学校の七不思議」系の話とは少々毛色が異なっててね。大抵「七不思議系」の話ってのは、“ある時間にある場所に行き、ある行動をすると怪異が起こる”といった内容、つまりは怪異が起こる時間、場所、そして怪異を呼び起こすトリガーを言い伝えることによって、怪異の被害者が増えるのを防ごうっていう意図があるんだけど……って、あれ? 知らなかったのかい? ああいった話っていうのは大体は過去に怪異に遭遇した先輩から後輩達に向けた“怪異に巻き込まれないように”っていう警告なんだよ。だから、それを聞いて逆に怪異を起こそう、見に行こうなんて人は、僕から見たら物好きとしか言いようがないね。
  と、ちょっと話が横道に逸れたけど、とにかく僕がこれから話そうとしてるのは、そうした「怪異を回避するための警告」じゃあない。むしろ逆さ。
  というのも、これから話す怪異、それが引き起こされる前提条件は、「そこにいる人間達が怪異の内容を知っていること」だからね。さっき「学校にまつわる怪異の中でもマイナーだ」って言ったのもそれが理由さ。その怪異を知っていることで怪異に巻き込まれるっていうのなら、その話を後世に伝えなければいい。ただ、それでもなおその話が途絶えてないっていうのは、その話自体がガセなのか、それとも、人を怪異に巻き込もうという輩がいて、そいつが悪意を持って伝え続けているのか…………ふふっ、どっちだと思う?
  ……へえ、これでも誰も席を立たないんだね。僕としては最後の警告のつもりだったんだけどな。
  ま、みんなそれだけの覚悟があるっていうんだったら、こちらも遠慮なく話させてもらうよ。
  じゃあまずは、「呪いのゲーム」、それが生まれたきっかけから話すとしよう。といっても、これ自体は大して面白くも怖くもない話なんだけどね。だいたいどっかで聞いたことがあるなっていうような内容さ。
  ……昔、この学校には体が弱いうえに気弱なのが原因で、不良グループからよくいじめを受けていた男子生徒がいた。生徒はそのいじめを誰にも相談せずにただひたすら我慢してたんだけど、ついに耐えきれなくなると同時に頭のネジが一本取れちゃったんだろうね。こともあろうに、その生徒は黒魔術という正気とは思えない手段で不良グループに復讐しようとしたんだ。そして生まれたのが「呪いのゲーム」さ。
  どういうルートで手に入れたのか、そもそもどうやってそれを解読したのか知らないけど、生徒の日記によれば、生徒は中世に禁書処分となった異国の凶悪な呪術書を入手して、その記述に基づいて夜な夜なこの校舎に忍び込んでは黒魔術系の儀式を繰り返したらしい。そうして下準備を終えた生徒は、ある夜、自分をいじめていた不良グループを言葉巧みに呼び寄せて、この学校全体を舞台とした大規模な闇の儀式、「呪いのゲーム」を発動したんだ。
  このゲームの基本ルールは実に簡単で、儀式を発動した者が「鬼」となり、その他のその場に居合わせた者は儀式開始から1時間の間、「鬼」に捕まらないように逃げ回らなければならない。そう、要は「鬼ごっこ」さ。
  ただ、「呪いのゲーム」と呼ばれるだけあって、逃げ側が「鬼」に捕まってしまったときのペナルティはそれはひどいもんでね。「鬼」は自分が捕まえた者を、一生自分の言うとおりにすることができるんだ。言うことを「聞かせることができる」じゃないよ? この違い、分かるかな?
  ふふっ、その感じじゃ見当もつかないみたいだね。良いよ、ちょっとばかり例を挙げてみよう。
  まず、捕まえた相手が自分よりも年上の男だったとする。その相手に対して、「鬼」が「年下の女の子になれ」って命令したらどうなると思う? 普通に考えるなら何言ってるんだってなるよね。でも、このゲームで捕まった者はなんでも「鬼」の言うとおりになるんだよ。つまり、そのように鬼に言われたら、捕まった男はあらゆる因果を飛び越えて、文字通り「年下の女の子」に変わってしまうんだ。どう? まさに「呪い」と呼ぶにふさわしい怪奇だよね?
  ただ、このゲームには一つ、ある意味致命的ともいえる欠点があってね。君達、「人を呪わば穴二つ」って言葉を聞いたことはあるかい? 意味合いとしては「人を呪うのであれば呪った者も同等のしっぺ返しを受ける」ってことなんだけどね。実はこのゲームでも、厳密にいえばしっぺ返しじゃないけど、ゲームを始めた「鬼」側にも相当のリスクがあるんだ。
  もしも、「鬼」がゲーム開始後制限時間の1時間以内に「逃げる者を誰も捕まえられなかった」場合……その時は、「鬼」は儀式の代償として、闇に己が魂を差し出すこととなる。つまりは「死ぬ」ってことだね。相手を捕まえれば一生そいつを“おもちゃ”にできる代わりに、誰も捕まえられなかった時は自分が死ぬ……まさにハイリスク・ハイリターンという言葉がぴったりじゃないかい?。
  でもまあ、最初に事を起こしたその生徒は、そんなこと全然気にしてなかったんだろうね。そもそも相手を必ず捕まえられると思っていたからこそ、いくつもあったであろう呪術の中からこの儀式を選んだんだろうし、万一、誰も捕まえられなかったとしてもそれはそれ、決して不良グループから報復を受けることはない。何といってもその時には死んじゃってるからね。元から死んだ方がマシとか思ってたんだろうから、本人も納得のうえだったんじゃないかな。
  ああそうそう、その後、結局その生徒がどうなったかというとね。死んじゃったんだよ。本当に不良を1人も捕まえられずにね。なんで、この学校に生徒が仕掛けた呪術は、解除方法を知っている者がいなくなって放置状態。だから今でも「呪いのゲーム」の発動の仕方を知っている者がいれば、いつでもゲームが開始できるようになってるんだよ。
  とまあ、「呪いのゲーム」が生まれたきっかけについてはこんな所なんだけど、次はこのゲームの細かいルールについて説明しようか。ついでになぜ最初の生徒が1人も捕まえることができずに死んじゃったのか、その理由もね。
  それじゃあまずは、逃げる側のルールから説明しよう。逃げる方の勝利条件は、さっきも言ったとおりゲームが始まってから1時間鬼から逃げ切ること。ただし、制限としてこの学校の敷地内から外へはゲームの間誰も出ることができなくなっている。つまり、逃げる側は逃げるにしろ隠れるにしろ、この学校内で何とかするしかないってことだね。当然「鬼」は事前に下調べして学校内の構造を熟知しているだろうから、その点は逃げる側に不利と言えるだろうね。
  一方で、逃げる側に有利なルールも存在する。逃げる側には、「呪いのゲーム」が開始される前の5分間、特別タイムとして一方的に鬼から逃げることのできる時間が設けられているんだ。鬼はその時間の間、スタート地点から動くことができない。要は逃げる側はこの時間内に遠くに逃げるなり隠れるなりしろってことだね。なので、逃げる側は正確には1時間と5分間鬼から逃げるということになる。まあ、逃げる側のルールはこんな所かな。
  それじゃ、次に鬼の方のルールだね。鬼の勝利条件は、ゲーム開始の宣言をしたときに自分の周りにいた人間を1人でもいいから1時間5分以内に捕まえること。そして鬼が捕まえた相手は、その後一生鬼が自分の好きにすることができる。ああ、分かっているとは思うけど、端数の5分はさっき言った特別タイムの時間だよ。
  一方の敗北条件は、さっきも言ったとおり制限時間内に逃げる相手を一人も捕まえられなかった場合。その時には、ゲームの終了とともに、鬼はその場で命を落とすことになる。
  そして、これ以外にも鬼にはいくつか特殊なルールが存在する。まずは鬼にとってマイナスなルールから話そうか。
  まず一つは、さっきも言ったとおりゲーム開始宣言後実際にゲームが始まるまでの5分間、鬼はその場から動けないってやつだ。いわゆる特別タイムだね。
  そしてあと一つ、鬼にはターゲットを追いかける際の速度にも制限がある。
  話は変わるけど、君達はホラー映画は好きかい? サスペンスホラーじゃなくてスプラッターホラー、それもレトロなのに多い、どう見ても人間の限界超えてるような怪人が出てくるようなやつさ。君達も一応怪談話をしに集まってきてるような人なんだから、さすがに1本くらいは見たことあるだろう?
  ……まあいいや。見たことがないような人にも分かるように話をすることにするよ。
  そういった怪人が出てくる映画っていうのは、怪人の殺戮対象となった人間達が逃げたり立ち向かったりするっていうのがお決まりのパターンになっている。ただ、怪人は人間の常識を遙かに超えた身体能力や超能力を持っているんで、真っ正面から立ち向かってもまず勝てずに殺されてしまう。なんで、主人公は他の人間達が殺されていくのを背に、とにかく逃げながら怪人の弱点を探っていくっていう展開が多いんだけど、これってちょっとおかしいと思わないかい? 何せ怪人は人間を超える身体能力や超能力を持っているんだ。本気で追いかけられたら人間なんて逃げ切れるわけないってことは誰だって分かるだろ? でも、そうした映画では基本的に怪人は獲物を“じわじわと”追いかけてくる。決して逃げ切れるスピードではなく、かといってすぐに追いつかれるような速度でもない。そう、ターゲットよりもほんの少しだけ速い速度で奴らは迫ってくるんだ。ただ、ターゲットが自分を視認できないところでは本気で移動して、思いもよらぬ所から襲撃してきたりするんだけどね。
  じゃあ、なんで怪人はターゲットを追いかけるときにわざわざそんな行動をするのか分かるかい? ……って、こんなの誰でも想像がつくよね。要は怪人がすぐにターゲットに追いついてあっという間に殺しちゃったんじゃ、話が全然盛り上がらないからさ。必死で逃げるターゲット、だが、振り切るどころか徐々に迫ってくる怪人……。どうだい、頭の中にそれっぽい映像が浮かんできたんじゃないかな。
  で、今の話が「呪いのゲーム」に何の関係があるのかと言えば、実はこのゲーム、「鬼」には映画の怪人と同じような“怪物の掟”が適用されるんだ。
  鬼がターゲットを追いかけるとき、鬼は元の足の速さがどのようなものであったとしても、逃げるターゲットよりも少しだけ早い速度までしか出すことができない。もちろん、鬼がターゲットより足が遅かったりした場合は意味はないけどね。その制限速度は明確に決まっていて、逃げる対象の1.01倍までとなっている。ただし、相手が移動していない場合や自分が追われていると認識していないときはこの制限は適用されないんだけどね。
  さて、この制限速度に加えてさっきのルール……開始前5分間の逃走時間を加えたら、正直、鬼に勝ち目があると思うかい? ふふっ、そうだね、これでは鬼の勝利は非常に厳しいと言わざるをえないだろう。
  でもね、鬼に適用される特殊ルールはこれだけじゃあない。さっき、僕は先にマイナスのルールを話すって言ったけど、鬼には自分が有利になるルールもある。それも、これまで話したマイナスを一気に覆せるくらいのね。
  このゲームの開始時、鬼には一つの特殊能力が与えられる。その特殊能力というのは、逃げるターゲットを鬼は任意に“好きな姿”へと変えることができるっていうものだ。これは鬼がターゲットを視認できていなくても発動することができる。さらに、鬼が望めば変化させたターゲットの体の状態、体調や空腹度といったものまでいじることができるんだ。どうだい、これならさっきのマイナス条件があったとしても勝てそうだろ? まあ、さすがに好きな姿にとはいっても無制限にっていう訳じゃないけどね。
  鬼がターゲットを変化させられる姿は、あくまで人間、それも5歳から80歳までの間の健常者に限られている。要は満足に歩くことのできないような姿にはできないってことだね。そしてもう一つ重要なのは、鬼はターゲットの変化後の姿や体の状態を決める際、3つ以内のキーワードまでしか設定できないってことだ。例をあげると、「20歳代前半で」「巨乳の」「バニーガール」、これで鬼は3つのキーワードを使ったっていうことになる。だけどまあ、敗北条件を考慮に入れるなら、よっぽど自分の足に自信のある鬼でない限りは「自分より足の遅い」というキーワードを入れるだろうから、実質的に好きにできるのは2つのキーワードまでってことになるだろうけどね。
  さて、これで逃げる方と鬼の方、両方のルールを説明したけど、もう一つ、このゲームの開始方法について話しておこうか。
  「呪いのゲーム」を開始するにはまず、鬼と逃げる方、双方が今まで説明したこのゲームのルールを知っているのが前提条件になる。僕がこの話に入るときに“怪異が引き起こされる条件は、「そこにいる人間が怪異の内容を知っていること」”って言ったけど、つまりはそういうことだね。後は鬼になりたい人がゲームの開始を宣言すれば、それでゲームは始まってしまう。「これから呪いのゲームを始めるよ」。誰かがそう口にしただけで、もうゲームは開始されているんだ。正確には逃げる側が5分間好きに逃げられる特別タイムが、だけどね。
  さて、それじゃあ最後に、なぜこの「呪いのゲーム」を引き起こした生徒が、結局誰も捕まえられずに命を落とすことになったのか、その理由を話そうか。
  結論から言うとね。その生徒は頭がそれほど良くなかったんだ。……って、これじゃ何の説明にもなってないよね。それじゃ、もう少し具体的に話そうか。さっき、僕は鬼には逃げる相手の姿を自由に変えることができる力があるって話したよね。その時の不良の話によると、生徒はその力で不良達の姿を変えたらしい。だけどその時、生徒は不良達の足の速さをちょっと「遅くしすぎた」んだよ。
  どういうことか分かるかい? ふふっ、ちょっとは自分で考えてみなよ。少しばかり時間をあげるからさ。そうだな、シンキングタイムは1分ってところかな。
  ……どうだい、分かったかな? じゃあ、答え合わせといこうか。実はこれはちょっと計算ができればすぐに気が付くことなんだけどね。
  それじゃ、誰でも理解しやすいように例をあげながら解説するとしよう。
  例えば、逃げる側が1時間を時速10キロメートルで走って逃げたとする。鬼の方はその1.01倍で追いかけられるから、進める距離は10キロと100メートル。つまり、逃げる側は計算上、鬼の手の長さも考慮に入れれば、ゲーム開始前の特別タイムのうちに鬼から101メートル以上離れられれば安全って事になる。  でももし、逃げる側がそこで走らずに、歩いて逃げたらどうなると思う? 歩いた場合の時速を3キロメートルと仮定して計算すると、鬼が進めるのは3キロと30メートル。となると、逃げる側はゲーム開始時に鬼から31メートル以上の距離があればいい。
  ……どういうことかさすがに気付いたかな? そう、一見、逃げる側は走って逃げるのが当たり前のように見えるけど、実はゆっくり逃げた方がゲーム開始時に鬼から離れる距離は短くて済むんだ。これでもし、鬼に時速1キロメートルしか進めない体にされたとしても、逆にその場合は最初にたった11メートルのリードがあれば、足を止めない限りは鬼に追いつかれることはない。まさに発想の転換ってやつだね。
  まあ、実際に「呪いのゲーム」に巻き込まれたとしたら、「鬼に捕まっちゃいけない」っていうプレッシャーの中で冷静にそれを計算して実行できる人なんてそうはいないと思うけどね。ただ、鬼がターゲットをわざわざ全力で逃げても普通の人が歩くよりも遅い足へと変えたとしたなら、それは文字どおり自分で自分の首を絞めたとしか言いようがないね。
  ふふっ、それじゃあその生徒は、不良達をどんな姿にすれば捕まえることができたと思う?
  そうだな、僕が鬼なら不良達をこんな姿に変えるね。「僕より足の遅い」「強烈な便意に襲われている」「美少女」にね。
  ……ああ、言っておくけど、僕は別に排泄マニアとかそういうのじゃないからね。この姿にするのにはちゃんとした理由があるんだ。
  まず一つ、人間は動きながら用を足すのは非常に困難だ。実際にはやろうと思えばできるかもしれないけど、これまでにさんざん刷り込まれてきた生活習慣がそれを良しとしないだろう。それに用を足すのにもまずトイレに駆け込むだろうね。野糞なんてもっての他だって君達だって思うだろ? だけど、鬼からすればそれは願ったりかなったりだ。獲物が逃げ場のない小部屋で足を止めてくれるんだからね。
  そしてもう一つの肝は、相手を異性へと変えることだ。なぜなら、異性の体なんて経験したことがある人なんてまずいないから、自分の体がどのくらいで『決壊』するのか、まず予想がつかないからね。それこそすぐにでもトイレに駆け込みたくなるだろうさ。どうだい、納得いったかい?
  でも、さらに確実を期すなら、相手の姿を変える以外にももう少し工夫が必要だね。例えば、逃げる側に呪いのゲームの開始を悟らせない、とかね。要はゲーム開始前5分間の特別タイムに逃げる側が鬼から逃げなければ、捕まえるのは容易いってことさ。まあ、鬼が「呪いのゲームを始める」と口にするのを逃げる側が聞いていないとゲームは始まらないから、言うほど簡単じゃないけどね。でも、やろうと思えばやりようはあるものさ。
  ……さて、あんまり長引かせてもこちらもちょっとバツが悪いから、僕の話はこれでおしまいにするよ。ふふっ、あんまり怖くなかったかい? そう、それは失礼。でも、最初に言ったとおり、みんなトイレには行きたくなってきたんじゃないかな?
  と、ここでちょっと一つ忠告させてもらうよ。いくら夜間の旧校舎で他に人がいないとはいえ、みんな悪戯心で異性のトイレを覗いたりしちゃ駄目だよ。君達が使うのはそう、「女子トイレ」だからね。



トップページに戻る

小説ページに戻る