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提督のケツダン 追撃戦!
作:高居空


  しまった!
  ゲーセンの筐体の画面に表示された情報を前に、俺は不随意に背筋が粟立つのを感じていた。
  俺の目の前では今、戦艦を擬人化した自分の艦隊の女の子が敵艦隊の砲撃に捕捉されたマークが示されていた。悪い癖だとは分かっちゃいるが、どうしても自艦隊の砲撃のタイミングに集中すると、相手の砲撃に対する注意がおろそかになる。だから自分の艦隊はいっつも大破を繰り返している訳なんだが……
  しかしこいつはマジでやべえ!
  そこに示された情報に額から嫌な汗が吹き出す俺。
  前回のプレイで敵の砲撃範囲に捉えられたのは駆逐艦だったが、今回敵艦隊に捕捉されたのは、よりにもよって俺の艦隊の中で最大の火力を持つエース艦だった。この艦が大破したら、勝利はおろか戦闘を痛み分けに持ち込むのさえ難しくなってしまう。
「!」
  が、相手艦隊の砲撃モーションが表示された次の瞬間、ピキーンという特殊音声が響くとともに、画面の中央にコマンドが出現する。
「……………………」
  そこに表示されたのは、前回のプレイと全く同じ「かばう」と「身代わりになる」の2つのコマンドだった。
  ふむ。
  その2つのコマンドから、ほぼ即決で「かばう」を選択する俺。
  このコマンドを選んだ理由は簡単だ。「身代わりになる」だと、ダメージを女の子と入れ替わった俺が受けるだけで、エース艦が被弾するという事実は変わらない。そもそもエース艦が被弾しちゃダメなわけで、ならば取るべき選択肢は一つしかないだろう。……べ、別にこれ以上“女の子の感覚”を知っちゃうと色々とマズいことになっちゃうかもとかそういうんじゃないんだからね! ……ないんだからな!
  だが、俺が「かばう」のコマンドを指でタッチしたその瞬間、頭の中に聞き覚えのある女の子の声が響く。
“いけません提督! 提督の生身の体でかばったりなんかしたら、それこそ体がバラバラになっちゃいます! ここはひとつ、わたしの体をお貸しします!”
「へ?」
  反射的に間の抜けた声を上げたところで、俺の見ている『世界』がまったく別の物へと切り替わる。
  荒れた海。そして俺目がけて飛んでくる敵艦隊の砲撃……いいいいっ!?
「きゃああああああああっ!!」
  次の瞬間、体を襲った衝撃に、俺はたまらず悲鳴を上げたのだった。そして……

“ここか〜? ここがええのんか〜!”
「あっ、やんっ、やっ、あ、あああ〜!」
  母港へと帰投した俺は、『提督』によってたっぷりと『女の味』を覚えさせられるのだった。
  マズっ……。俺、もうモドれないかも……。


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