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夏の怪談:二〇〇八
作:高居空


「さあ、そろそろ始めようぜ」
  電気の消された室内で、僕達はゆらゆらと頼りなげな光を放つ一本の蝋燭を囲むようにして座っていた。
  今、この部屋に集まっているのは佐藤君、田中君、山本君、渡辺君の4人。山深いキャンプ場に建てられた年代物のコテージは蝋燭の明かりに照らされるとより一層怪しげな雰囲気を醸しだす。窓から見えるのは文字通りの闇。夜を静かに照らし出す月の光も、厚い雲で覆われた今夜は地上には届かない。
「なんか、こういう雰囲気だと話を聞く前から怖くなってくるよね」
  いかにも気の弱そうな佐藤君が肩をすぼめるようにして体を震わせる。
「なんだよ、もうビビってんのか? 情けねえなあ。タマ付いてるのかよ?」
「ちょっ、ちょっと!」
  その声を聞いた田中君が、わざとらしくオーバーアクションで佐藤君の短パンをずりおろそうとする。慌ててそれを防ごうとする佐藤君。二人がもみ合う中、一人静かに座っていた渡辺君が口を開いた。
「あまり大きな物音は立てない方が良い。既に先生達も眠っているはずの時間だとはいえ、万が一と言う事もあり得る」
「だね。お楽しみが始まる前に終わっちゃっちゃ、怪談のために集まったのが笑い話になっちゃうよ」
  渡辺君に続いての山本君の言葉に、田中君は舌打ちしながらも佐藤君を解放する。半泣きになりながら乱れた衣服を整える佐藤君。
「じゃあ今度こそ始めるぞ、怪談肝試し!」





  夏の夜、林間学校とくれば、怪談や肝試しがセットなのはいつの世でも変わらない。この部屋に集った体育着に短パン姿の少年達も、そんな林間学校独特の雰囲気に誘われこれから怪談話を始めようとしているのだった。いかにも健康優良児といった感じの田中君、こういったイベントに参加するのが好きそうな山本君、どちらかというと田中君に無理矢理参加させられているような佐藤君、それにやけに落ち着いている渡辺君。さて、今回はどれだけ楽しめるかな?
「さあ誰だ、トップバッターは?」
  そう言って部屋に集まった面々を見渡す田中君。どうやら田中君は自分から最初に話をしようという気はないようだ。そしてそれはどうやら他の人も同じようだった。何となく気まずそうな顔をして田中君と目を合わさないように視線を落としている。
  確かに、こういった怪談話なんかの一番手というのはかなり嫌なものだ。場が盛りあがってくれば楽に話せるような話でも、最初となると外す事ができないというプレッシャーから逆につっかえつっかえになったり、最悪の場合話そのものが頭から抜けてしまうなんてこともあったりする。
  しばしの沈黙の後、誰も自分から手を挙げようとしないのを確認した僕は、田中君に向かってゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、僕からいくよ」
「おお、やってくれるか! それじゃ頼むぜ一番手!」
  僕の言葉に実に嬉しそうな声をする田中君。やっぱり田中君も最初に話したくなかったんだ。というか、ひょっとして本当は田中君も度胸がないのかな? まあ、いいか。そろそろみんな話を聞きたがっているみたいだし。
  みんなの視線が集中する中、僕は一つ大きく息をついた。そういえばこうして人前で話をするっていうのも久しぶりだ。うまくしゃべれればいいんだけど。
「これって、実はここのキャンプ場で起こった話だっていうんだけど……」
  蝋燭越しにみんなの顔を眺めながら僕はゆっくりと話し始めた。
「今から二十数年前、ちょうどこのコテージで、やっぱり林間学校の夜に怪談話をやってたグループがあったんだって。そしてそのメンバーの中には一人、クラスでいつもいじめられ続けていた少年が入っていた」
  その言葉にピクリと眉を動かす渡辺君。あれ、ひょっとして僕の話を知ってるのかな? う〜ん、そんなに有名にはなってないはずなんだけど……。ま、いっか。他の三人はどうやら知らないみたいだし、このまま話を続けよう。
「その少年というのは小柄で中性的な顔立ちの上にとても気が弱くてね。暗がりでちょっと物音がしただけですぐに悲鳴をあげてしまうような子だった。そんなものだから、クラスメイトからは『女みたいな奴だな。ホントはタマ付いてないんだろ』とか言われていつもバカにされていたんだ」
「何だ、佐藤みたいな奴だな」
「…………」
「当然、そんな少年が自分から怪談話に加わるはずがない。彼はいじめっ子のクラスメイトによって無理矢理怪談話に参加させられていたんだ」
「ふ〜ん。悲鳴を上げてもらって場を盛り上げるためってところかな?」
  山本君の声に僕はゆっくりと首を振る。
「ううん、彼が参加させられたのはもっと別の理由があるんだ。その時行われた怪談話には実は罰ゲームがあってね。各々が怪談を披露した後で一番怖がった人は『男じゃない』ってことで女子の体操着に着替えなければならないってルールだったんだ」
「それって……」
「そう、怪談に参加したメンバーは本当は怪談話をしたくて集まったんじゃない。少年を女装させ、それをネタにしていじめるために場を設けたんだ」
  ふう、と小さく息をつく。
「そして彼らの目論見通り少年は怪談話に悲鳴を上げ続け、結局女子の格好をさせられることになってしまったんだ。それは酷かったらしいよ。何といっても二十数年前の女子の体操着というのは今のようにスパッツじゃなくてブルマーだったからね。それどころかさらにブラジャーやショーツまで用意してあったらしい。そして泣きじゃくる少年を無理矢理着替えさせながら、彼らは少年が一枚一枚女物の服を身につけていく姿を写真に撮っていったんだ」
「ひどい……」
  佐藤君が小さくつぶやく。
「しかもいじめはそれだけじゃ終わらなかった。彼らは学校に戻ってから、撮った写真を『林間学校の思い出』といって全校生徒が通る登校口の壁にでかでかと張り出したんだ。さすがにそれは先生によってすぐに剥がされたんだけど、少年のショックはとてつもなく大きな物だったらしい。それから数日して、少年はどこか遠くの学校に急に転校していってしまったんだ」
「なんだ、自殺したんじゃないのかよ」
  どこか物足りなさそうな田中君の声に僕は思わず苦笑する。
「まあね。ただ真相は分からないよ。ひょっとしたら本当は自殺したのを揉み消すために学校がそう説明しただけかもしれない。なんでも少年が通っていたのはかなりの伝統校で、政財界に力を持ったOBが大勢いるらしいからね。母校の名に傷がつくのを恐れて裏から手を回したってこともあり得るんじゃないかな」
「つまり、真相は藪の中ってこと?」
「そうだね」
  山本君にそう答えてから僕は再び真剣な口調に戻る。
「少年が転校した後、彼の名は急速にクラスメートの中から忘れ去られていった。もしも自殺だったらいじめたメンバーは人を殺めたという罪悪感から忘れるようなことはなかったんだろうけど、転校じゃそれほど罪の意識は感じないだろうからね。転校の原因について陰口を叩かれることぐらいはあっただろうけど、怪談話に参加していたメンバーはいわゆるいじめっ子。表だって話題にする人はいなかっただろう。それに今みたいに携帯もメールもない時代じゃ陰口自体も大きくはならなかっただろうしね」
  そう言ってから僕はもう一度小さく息を吐く。
「そして一年後、かつてのクラスメートで少年の事を話題にあげる人は誰もいなくなっていたんだ」
「ま、転校していった奴の事なんてよっぽど親しい奴じゃなければすぐ忘れちまうもんだからな。それが普通じゃねえの?」
「そうかもしれないけどね。ともかく、少年の存在が忘れられた一年後の夏、彼らは再び林間学校でこのキャンプ場を訪れていた。少年のいた学校というのは少し変わったところがあってね。一年生と二年生の両方とも同じ場所で林間学校をするんだ。そして再びこの地へとやってきた彼らは、一年前と同じく皆が寝静まった夜の部屋で怪談話をすることにした。もっともいじめが目的だった前回と違って今度のは罰ゲーム無しの純粋な肝試しだったらしいけどね」
  徐々に声のトーンを落としていく僕の事を見つめながら佐藤君がごくりと喉を鳴らす。
「彼らはちょうど今の僕らみたいに蝋燭を中心にして車座になって座っていた。そうして蝋燭に明かりを灯して電気を消したとき…………彼らは蝋燭に照らされた顔の中に、ここにはいないはずの顔が混じっている事に気がついたんだ」
「ひいっ!」
  佐藤君がたまらず悲鳴を上げる。それに合わせて、内心怖がっていたのか、それとも隣で突然悲鳴が上がったのに驚いたのか、田中君と山本君もビクリと体を震わせる。
  そんな中、渡辺君だけは先ほどからまったく表情を変えずに沈黙を保っていた。……というか、この感じからするとやっぱり渡辺君は僕の話を知ってるみたいだ。う〜ん、さすがにそれだと怖がってくれないかな……。まあ仕方ないか。続けよう。
「そこにいたのは、一年前に転校したはずのいじめられっ子の少年だった。だけど不思議な事に、怪談に参加していたメンバーはその時、少年がいることに何の疑問も持たなかったらしいんだ」
「? それってさすがにおかしいだろ?」
「確かにね。だけど怪談に参加したメンバーは誰もが少年の事を“最初から怪談のメンバーに入っていた奴”だと思っていて、怪談が終わるまでの間、まったく疑問を持たなかったらしいんだ」
「…………」
  そんな僕らのやりとりに、無言のまま渡辺君が再びピクリと眉毛を動かすのが見える。
「そして、その少年の存在に誰も違和感を感じないまま怪談は始まった……。その夜の怪談は随分盛りあがったらしい。怖い話が次々に披露され、参加者達は体を震わせながらもそれを楽しんでいた。矛盾しているみたいだけれど、元々怪談話というのは怖いのを我慢するんじゃなくて、みんなで怖がるのを楽しむみたいなところがあるからね。ただ、その中で一人だけ、まったく怖がる素振りを見せなかった参加者がいたんだ」
「それは……」
「そう、あの少年さ。1年前には彼らの話に悲鳴を上げ、顔を青ざめさせていた少年は、今回の怪談ではまるで別人であるかのように身震い一つせず、黙って怪談話に耳を澄ませていたらしい。そして少年が怪談を披露する番になったとき、彼はこうつぶやいたんだ」
  目の前にある蝋燭の炎が風もないのにゆらりと揺れる。
「『女みたいな僕より怖がるなんて、みんな本当の女の子なんじゃないの』……ってね」
「うわぁ…………」
  佐藤君と田中君、それに山本君が申し合わせていたかのように一斉に声を上げる。そんな彼らの様子を渡辺君は横目で観察するように眺めていた。
「そして少年の言葉にカチンときたメンバーが彼に詰め寄ろうとしたとき、彼らの目の前で少年は煙のように忽然と姿を消してしまったんだ」
  誰かがごくっと唾を飲み込む音が聞こえる。
「その瞬間、メンバーはそこにいたのが一年前に彼らがいじめていた少年だった事に気がついた。コテージに絹を裂くような悲鳴が響き、その声に飛び起きた先生が駆けつけると…………そこには泣きながら体を寄せ合って震えている体操着姿の女の子達の姿があったんだって…………」
「!!」
「怖!」
「なんか凄いオチだね……」
「…………」
  それぞれ違った反応を見せるみんなをグルリと見渡してから、僕は最後に大きく息を吐いた。
「これで僕の話は終わり。さあ、次は誰が行く?」
「…………僕が行こう」
  そう言って体を一歩前に乗り出したのは、先ほどから無言を貫いていた渡辺君だった。
「じゃあ、交代だね。怖いの期待しているよ」
「…………」
  声をかけた僕のことを渡辺君は一瞥すると、蝋燭の炎を見つめるようにして話し始める。
「僕が話すのは他でもない、彼の話した怪談の後日談にあたる話だ」
「なにっ? まだ続きがあったのか?」
  その声に一つ頷き、渡辺君は再びちらりと僕の事を覗き見る。僕の表情を窺おうとしてるのかな……何かそういうことをされても困るんだけど……。
「怪談に集まった少年が少女に変えられたとされる事件……しかしそれは、事の異常さにも関わらず大きな騒ぎになることはなかった。元は男だったと主張する少女達……そのいずれもが元々女だったからだ」
「? それってどういう……」
「文字通りの意味だ。彼女達は林間学校にやってきた学校に通う女子生徒だった。それは学校の記録でも、家族や友人の証言でも明らかだった。逆に、彼女達が言う男子生徒の名前はどこの記録にも、また怪談に参加したメンバー以外の誰の記憶にも残っていなかった」
「……つまり怪談に参加したメンバーは元から女の子で、催眠術か何かで自分が男だったと思わされていたってこと?」
「その時の関係者も最終的にそう判断したらしい。決定的だったのは男だったと主張する少女達自身に、これまで女として生きてきた過去の記憶が存在していたことだ。このことから、彼女達は何らかの原因で催眠状態に陥り、そこに何らかの方法で男性としての意識を植え付けられたという結論が導き出された」
「『何らか』ばっかりだな」
「実際、誰がどのような方法で彼女達にそんな事をしたのかは分からなかったのだから、しかたがないところだ」
  そう言って渡辺君は首を振る。
「結局、彼女達のほとんどは何回かカウンセリングを受けることによって『元の自分』を取り戻した。外部の記録、内部の記憶、それに自らの肉体という厳然たる事実がある以上、自分を男性だったと思い続ける方が困難だろうから、それは当然の流れといえるだろう。こうしてその時の事件は終わりを告げた」
「…………随分詳しいね」
「別に驚くほどのことでもない。この事件はうちの学校で起こった話なのだから」
「ええ!?」
  彼の言葉にみんなは驚きの声をあげる。
「新聞部の部室に保管されている学校新聞のバックナンバー、そこに当時の出来事が事細かに書かれている。……もっとも僕がそのような事件があった事を知ったのは、バックナンバーを綴ったファイルを整理していた時に偶然目に留まったからなのだが」
  …………なるほど、渡辺君は新聞部か。それなら昔の記事から僕の話を知ったとしてもおかしくはない。
「最初にその記事に気付いたとき、僕は奇妙な話だとは思ったが、特にそれについて調べてみようとは考えなかった。だが、過去の新聞を年代の古い順から整理していくうち、僕はあることに気がついた」
  皆の視線が集まる中、渡辺君は目を閉じひとつ息を吐く。
「最初の事件の後、この学校では同じような事件が繰り返し起こっているんだ」
「うそ……!?」
「ホントに!?」
「マジかよ……」
「信じがたいが本当の事だ。それらは前の事件が起こってからちょうど五年後、事件の当事者がいなくなり、事件そのものが忘れ去られた頃に起こっている」
  静かな声で淡々と話しながら、渡辺君は一同の顔をぐるりと見渡す。
「事件の概要は当時の新聞によるとこうなっている。林間学校中にこのキャンプ場で怪談話をしていた女子生徒が、元は自分達は男だったと主張している。彼女達の言葉によると、怪談話が始まったとき、見慣れない顔が一つ混じっていた。その時はそれ以上不思議に思わずに怪談を始めたが、ひとしきり怪談話が終わって気がつくと、そこにあったはずの顔が消え、そして参加者のほとんどが女に姿を変えられていた……と」
「? ほとんどってことは……?」
「そう、二回目以降の事件では、男性のままの生徒が僅かながら存在した回があったらしい。なぜ彼らが女に変えられなかったのか? ここからは僕の推測だが……」
  そう言って渡辺君は目を細める。
「問題の少年が怪談話に現れたとき、少年は自分が怪談を披露する番になると必ずある言葉を口にしているらしい。『女みたいな僕より怖がるなんて、みんな本当の女の子なんじゃないの』……恐らくはこれがキーワードなのだろう。僕の読みでは、彼がこの言葉を口にした時点で少年よりも恐怖のリアクションを取っていた者は、彼の言葉通りに女に変えられてしまうという事なのだと思う。最初の事件の時、少年が怪談を話す順番は一番最後だった。しかし、二回目以降の少年の話す順番は最初だったり中盤だったりとまちまちらしい。怪談の参加者で女に変えられなかった者がいた回は、参加者が全員怖がりきらないうちに少年がキーワードを口にしたため、その時点で怖がっていなかった参加者がそのまま男性の姿で残ったのだと僕は思う」
  そこまで一気に話すと渡辺君はもう一度大きく息を吐いた。
「最後に、これは本当なら最初に話しておくべきことだったんだろうが…………実は今年は前の事件が起きてからちょうど五年目にあたるんだ」
「ええええっ!!!!」
  その言葉にたまらず震え上がる佐藤君。
「ど、どうしよう、僕、これまでめちゃくちゃ怖がっちゃってるよ…………」
「ば、バーカ、何言ってるんだよお前。こんなの作り話に決まってるだろ! 本当にお前タマ付いてるのか?」
  そう言いながら田中君が佐藤君ににじり寄ると、四つんばいの格好で怪談が始まる前のように下半身へと襲いかかる。
「あっ、ちょっと、止めてよ!!」
  悲鳴を上げる佐藤君。だけど、よく見ると襲われている佐藤君よりも襲っている田中君の体の方が何だかブルブルと震えているようにも見える。
「でも、確かにこのまま怪談を続けるのは怖いよね。今日はここまでで終わりにしない?」
  自分を落ち着かせるように腕組みながら山本君が提案する。
「…………」
  黙したままその様子をじっと見つめている渡辺君。
  僕はそんなみんなの事を一通り見渡すと静かに席を立った。
  さっきの渡辺君の話、あれは渡辺君が自分で言ってたように、一番最初にみんなに知らせておくべき話だった。渡辺君がその事をどう考えていたのかは分からない。せっかくの怪談話の出鼻を挫くようなことはしたくないと思ったのかも知れないし、事件そのものに対して半信半疑だったのかも知れない。あるいは、本当に男が女に変わるのか興味があったのか。けど…………






  いずれにしたって、僕が話し終わってからそんな話をしたんじゃ全く意味がないんだよね。






  懸命に体操着を脱がされないように頑張っている佐藤君。彼は自分が既におかっぱ頭の可愛いらしい女の子に変わってしまっているなんてまるで気づいていないだろう。
  田中君も自分がずりおろそうとしているのが短パンではなくて臙脂色のブルマーだという事にまったく気付いていないに違いない。ましてや、自分が佐藤君と同じ格好をしたロングヘアーのナイスバディの女の子になっているなんて思いもよらないだろう。ふふっ、ああして四つんばいになって体を震わせてると胸やお尻が揺れてよけいエッチに見えるよね。びっちりお尻に張り付いたブルマーを目の前に突き出されている渡辺君もたまったものじゃないだろう。
  それに山本君。腕組みするのはいいけど、もう少し上で組まないとそれじゃ君の大きな胸を強調しているようにしか見えないよ。今の君はソバージュがかった長い髪をした巨乳美少女なんだから。



  ふふっ、恐らくあの娘たち三人はまだ僕が怪談話をしてないものだと思っているに違いない。君達が気付いていないだけで僕はちゃんと渡辺君の話にあったあの言葉も言っているんだよ。ほら、僕の話の中でちゃんと出てきてたよね、あの言葉。



  さて、なんだかこのまま怪談も終わりになりそうだし、そろそろお暇しようかな。
  ……それにしても今回の件を渡辺君がしっかり記事にしたらちょっと困るなあ。変な噂が立ってこのキャンプ場が使用されなくなるような事がないように、いつも五年間は間をあけていたんだけど、次は六年は様子をみないとまずいかも。……まあ、いいや。次に僕が現れた時、みんながどのような反応をするか、楽しみにしながら待っていよう…………。





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