トップページに戻る

小説ページに戻る
 


お花畑の妖精
作:高居空



  わたしはお花畑の妖精。ここにいる色とりどりの可愛い子達を、やってきた皆さんにお配りして幸せになってもらうのがわたしのお仕事なの。
  ほら、わたしの魔法の香りに誘われて、今日もみんながやってくる。

  いらっしゃいませ♪

  あれ、あの人なんだか心ここにあらずって感じなの。ひょっとしてお花畑にくるのは初めてなのかな? わたしの魔法の香りはみんなにお花畑に来てもらうためのもの。何回もここに足を運んでくれてるみんなはこんな事にはならないんだけど、これまでお花畑に入ろうとも思わなかった人は、わたしの香りを嗅ぐと意識がモウロウとしちゃうみたいなの。

  うん、あの人がお花畑に来るのが初めてなら、わたしが色々とお見立てしてあげないといけないよね。だって、わたしはお花畑の妖精。やってきた皆さんに、ここにいる子達の中で一番似合いそうな子を紹介するのもわたしの大切なお仕事なんだから。

  ねえ、この子なんてどうですか? 真っ白で、しかも立派なサイズ。初めてならこの子が良いと思いますよ♪
  だいじょうぶ。わたしの見立てはカンペキですから。きっとお似合いですよ♪

  あれ、ちょっと反応が薄いみたいなの。ひょっとして意識がモウロウとしているからわたしの言葉が分からないのかな? なら、実際に鏡の前で見てもらうのが一番だよね。
  だいじょうぶ。絶対この子はあの人によく似合うよ。ホントは内緒だけど、わたしはもう一つ魔法を使えるの。このお花畑にやってきたみんなを、選んでくれた子とぴったりな人に変えちゃう魔法。

  さあ、こちらに来て下さいね。はい、外から見えないようにちょっと閉めますね。ここをこうしてこうやって……それ、1、2、3♪

  ほら、どうです? とっても似合ってますよ♪ 本当、ぴったりです。ね、この子貰っていってもらえませんか。あなたに持って行ってもらわないと、この子すごく可哀相。だって、こんなにもあなたと相性ピッタリなのに。

  わあ、ありがとうございます! それであの、ついでといってはなんですけど、この子も貰っていってもらえませんでしょうか? え? コーディネートですよ。この子達、実は2つで1セットなんです。離ればなれになっちゃ可哀相です。

  はい、ありがとうございます! それじゃあ、こちらとこちらですね。ホントはこれだけお値段がするんですけど、オマケしておきますね♪ それじゃあ、この子達の事、可愛がってあげてくださいね♪

  ああ良かった。あの子達、絶対幸せになれるよね。だってあの人にとってはきっと初めて手に取る子達なんだもの。

  わたしはお花畑の妖精。色とりどりの可愛い子達に囲まれて、今日もお仕事頑張るの!





  でもね。ホントはわたしお花を売ってる訳じゃないんだよ。時々わたしのいる場所を“お花畑みたい”って例える人がいるからその呼び方をもらっちゃったの。
  だって、ここの正式名称をそのまま呼び名にするとすっごく恥ずかしいんだもん。“女性用下着売場の妖精”なんてとてもじゃないけど名乗れないの。

  あっ! ちょっと待って下さい。その子達を着けるのなら男物の服なんて着ちゃ駄目ですよ。お隣のコーナーであなたみたいな女の子にぴったりの可愛いお洋服を売ってますから、ぜひ見ていってくださいね♪
 

トップページに戻る

小説ページに戻る