トップページに戻る

小説ページに戻る


次元管理人フォスター・シリーズ
レンジャー・オブ・パワー
作:高居空

※「フォスター」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照して下さい。
http://www7.plala.or.jp/mashiroyou/Novels-04-Foster-FormalSetup.htm
これまでの作品はこちらです。
http://ts.novels.jp/novel/corrector/title.htm


  私は次元管理人フォスターだ。
  時空に暗躍する犯罪者を追って、今日も過去に未来に飛び回っている。
  タイム・パラドックスを引き起こす犯罪者は許せない!
  私はタイム・パトロールとして少々の「修正」を権限で認められている。
  その時代、位置に相応しくない出来事にはその権限を行使する場合もあり得る。
  私のモットーは、「細かいことは気にするな」だ!
  さて、今回の仕事は……






「はあ!」
  気合とともに赤い全身スーツのヒーローが放った蹴りが、大きな一ツ目のイラストの描かれたマスクを被る全身タイツの怪人達をなぎ倒す。
  体育館のステージ上で「悪の軍団」と戦う赤、青、黄のスーツに身を包んだ仮面のヒーロー達。
  しかし、群がる戦闘員を吹き飛ばしながら、赤いスーツの中にいる白田はおおよそヒーローらしからぬことを考えていた。

  ……まったく、なんで俺がこんな馬鹿みたいな茶番に付き合わなきゃなんねえんだ……

  年に一度の文化祭。高校生活の中でも一、二を争うイベントにおいて彼のクラスが出し物として選択したのは、よりにもよってステージ上でのヒーローショーだった。適当な展示でもして当日は女子高生でもナンパしようと考えていた白田は猛烈に反対したのだが、多数決には逆らえない。それどころかガタイが良くてステージ映えするからという理由で主役までやらされる羽目になってしまったのだ。

  ……だいたい、なんだこのタイトルの“アワレンジャー”ってのは? なんでヒーローなのに“哀れ”なんだよ? 訳分かんねえ……
  後ろから襲いかかってくる戦闘員をソバットで蹴り飛ばしながら白田は心の中で毒づく。
  彼らが演じているショーの題名は『ばくりゅ〜戦隊アワレンジャー』。数年前にテレビで放送された戦隊物のパロディなのだが、そういった物に興味のない白田にとっては全く意味不明なタイトルである。
  心中でおもいきり愚痴をこぼしながらも白田は他の二人の戦士とともに戦闘員を打ち倒していく。その内心はともかく、彼の躍動する肉体はヒーローとして申し分のない物だった。連日の稽古の成果で、殺陣も見事なまでに決まっている。瞬く間に全滅する戦闘員達。後は、悪の幹部との直接対決となるはずなのだが……
「ふむ、どうやら場所はここのようだな」
  そうつぶやきながら現れたのは、派手な銀色のスーツに身を包み、近未来的なゴーグルを付けた長身の男だった。手には昔の漫画に出てくるようなオモチャの光線銃のようなものを携えている。
「? 誰だお前は?」
  突然現れた男に誰何の声を上げる白田。確か台本ではこの場面で登場するのは黒い鎧に身を包んだ怪人だったはず。直前になって演出が変更になったのか?
「私か? 私の名はフォスターだ」
  銀色スーツの男は白田に向かいそう答えると、どこからか取り出したメモをペラペラとめくり始める。
「むう、まずいな。既に歴史の改変は始まっているということか……」
「何がまずいんだ?」
  メモを片手に顔を曇らせるフォスターという男に問いかける白田。
「私が到着する前にこうも事象を歪ませるとは、平行世界の地球からの侵略者、やはり侮れんということか」
「いや、さっぱり訳が分からないんだが」
「ふむ、今のお前には分からないのも仕方ないな。私のメモでは今日この時間、この場所で正義の戦隊と異世界からの侵略者との決戦が行われることになっている」
「そりゃあ……」
  俺達の台本ではそうなってるなと答えようとして、白田は慌てて口をつぐむ。舞台の上の役者がシナリオだ演出だなどと言っては、観客席がシラけてしまうのは火を見るよりも明らかだ。
「しかし、お前達の姿は私のメモにある戦隊の情報とはあまりにかけ離れている。おそらく、何らかの方法で自分達が未来で“本来の”お前達に敗北することを察知した侵略者が、事前にお前達の“存在”を改変したのだろう。私の予測では、そのままの姿で戦えばまず間違いなくお前達は敗北する」
  そう言って沈痛な表情を見せるフォスター。何のことだかまったく分からない白田は声を上げることもできない。
「だが、安心したまえ。タイム・パトロールの名にかけて、私がお前達をその戦隊名にふさわしい本来の姿に戻してやろう」
「!?」
  どういう事だと聞き直そうとした瞬間、白田は体を凍らせる。フォスターがメモとは逆の手に携えていた銃を発砲したのだ。ビビビと昔のアニメのような効果音を発しながら銃の先端から怪しげな光線が発射され、白田の脇に立っていた黄色いスーツ姿の女性ヒーローへと命中する。
「きゃあああああっ!!」
  悲鳴を上げながら極彩色の光に飲み込まれていくイエロー。まばゆい光の中でそのシルエットが変貌していく。
  全身を包みこんでいたスーツがものすごい勢いで縮み始める。顔全体を隠していたマスクもその面積を狭めながら変形していく。スーツの生地は胸と下腹部の二カ所へと凝縮され、下腹部へと集まった布が筒状に広がりミニスカートを形成していく。
  そして光が消えたとき、そこに現れたのは過激な衣装に身を包んだエロティックな美少女の姿だった。
  ギリギリまで丈を短くした黄色いエナメル質のミニスカート。サイドにはスリットが入り、そこから見える素肌がエロスを強調する。上半身はそのほとんどが外気へと晒され、かろうじて胸の大事な部分をスカートと同じ材質のビキニが隠している。顔のマスクはいつの間にか羽根を連想させるアイマスクへと変わっていた。その衣装は以前の姿を思い浮かべることさえ困難なくらいに変わってしまっている。
  いや、変わったのは服装だけではない。慎ましやかだったはずの彼女の胸、それが今ではビキニからこぼれんばかりにたわわに実っている。その大きさはF……いやGカップはあるだろうか。
“オオオオオオオオオオッ”
  想像を遙かに超えた演出に観客席から津波のような声が上がる。
「ふむ、それでは次」
  そう言いながらフォスターが再び光線銃を発射する。眼前で起こった非常識な光景に棒立ちとなっていたブルースーツの男性ヒーローに易々と命中する光線。
「うわあああああっ!」
  イエローと同じく光に包まれるブルー。だが、その後で観客が目撃したのは、先ほどの光景が子供だましのように思えるほど異常かつセンセーショナルな映像だった。
  ブルーの体……長身で鋼のようなその体が、身長はそのままにその形を変えていく。
  なで肩になっていく両肩、ほっそりとしていく足、くびれる腰。
  ぐぐぐと伸びる髪、大きくふくらんでいく尻、そしてそれ以上に大きくなっていく胸。
「あああああああ…………」
  いつの間にかその声も艶めかしい女の声へと変わっていた。
  イエローと同じようにその面積を狭め、ブルーの“女”を強調するような形へと変わっていくスーツ。
  やがて光が消え去ると、そこに出現した“女性”はクールな笑みを浮かべながら大きな胸を強調するように腕組みをして前屈みになる。
  身につけている衣装のデザインはイエローとブルーの違いだけで先ほどの少女とまったく同じものだが、イエローよりも頭一つ大きいブルーが着ると、よりアダルトかつセクシーに見えてくる。長身の頭から腰まで伸びる艶やかな黒髪が、その色気をより一層際だたせていた。腕組みの上で深い谷間を形成している胸も、背の大きさと比例するかのようにイエローよりも一回りは大きく見える。
“うおおおおおお…………”
  歓声とどよめきとに支配される体育館。
  しかし、舞台の上に立つ白田は目の前で次々と起こる非常識な光景に半ばパニック状態に陥っていた。
  何だ? 何が起こっているんだ!? 二人ともあんな巨乳のフェロモン女になっちまうなんて……。って、まさか俺も……!?
「さて、残りはお前だけだな」
  しっかりと銃を構えながら白田に向き直るフォスター。
「ま、待て……」
「ああ、言わなくても分かっている。ちゃんとリーダーらしく一番大きなサイズにしてやるから」
  一番大きなサイズ? 一体何の事を言っているんだこいつは……!?
  浮かんだ疑問に、次の瞬間まさに天啓のようなひらめきが走る。

  まさかこいつ、『ばくりゅ〜戦隊』の事を『爆乳(ばくにゅ〜)戦隊』と間違えてるんじゃ……!?

「おい!」
「では発射」
  白田の声など全く無視して光線を発射するフォスター。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!」
  その叫びも空しく、急激に変わっていく白田の体。
  身長が縮みはじめる。それと反比例するように大きくふくらんでいく二つの胸。その大きさを強調するように細く引き締まっていくウエスト。いやらしくふくらんだ尻の下にはむっちりとした太ももが形成されていく。
「いやああああああっ!」
  変形していく赤いスーツ。足の二つの筒が一つに溶け合い、ミニスカートが作られていく。ビキニのカップと紐が爆乳を形よく押さえつける。
「!」
  その感触に思わず体を仰け反らせる少女。
  肩まで伸びた茶色い髪を束ねるように頭の左右に赤いリボンが出現し、ツインテールを形作っていく。
  そして光が消滅したとき、そこに立っていたのは赤いエナメル質のビキニとミニスカートに身を包んだ、ツインテールの爆乳美少女だった。
  アイマスクに遮られて顔の全部は分からないものの、その輪郭は明らかに童顔。身長もあまり高くなく、年齢そのものもだいぶ若いように感じられる。そして、その印象からはあまりに不釣り合いな爆乳。いや、逆にそのコントラストが元々目立つその胸をさらに際だたせているというべきか。ブルーをも超えるサイズの爆乳は情熱的な赤いビキニに彩られ、官能的なフェロモンを会場内に充満させる。
  そして、劇的な変化は白田の精神面にも及んでいた。原型をとどめないどころか性別まで変わってしまった自分の体。通常なら精神的打撃は計り知れないものがあるだろう。しかしながら白田はそうしたショックを微塵も感じてはいなかった。生粋の女性であってもいきなり着せられたら羞恥心を抑えられないであろうその衣装にも、恥ずかしいという思いは一向に浮かんでこない。逆に、この肉体をもっと皆に見せつけたいという内からの熱い衝動が白田の心を塗りつぶしていく。
  ほとばしる強大なパワーに突き動かされるまま、白田は観客席に向かってポーズを取り、高らかに名乗りを上げるのだった。

「美乳爆大! アワレッド!!!!」








  ふう、今回の仕事はまさに危機一髪だったな。少しでも到着するのが遅かったら、彼らと侵略者との戦闘が始まってしまって歴史が改変されるところだった。しかし、私がいる限り時空犯罪は必ず食い止めてみせる! 歴史を守るため、私は今日も戦い続けるのだ!
  ……しかし、爆乳戦隊か。昔の地球には奇妙な戦隊があったものだ。まあ、目の保養にはなったから良いけどな。自分で修正しておいてなんだが、あの女達、今思い出しても……





  …………ときめくぜ…………




トップページに戻る

小説ページに戻る