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抱き枕
作:高居空


「うおっ! こいつは……」
  俺の部屋に入るやいなやダチの小山が驚嘆の声をあげる。予想通りのリアクションを見せる小山に、俺は勝利の笑みを浮かべながら胸を張った。
「どうだ小山、この俺のスゥィィートホームは? すんばらしくて声も出ないだろう?」
  だが、初めて俺の部屋へと上がった小山は、勝ち誇る俺に対し何だか汚らわしい物でも見るような視線を向けてくる。
「……いや、思わず声が出なくなったのは確かだけど、さすがにこいつは初めて来た奴ならみんな声を無くすんじゃないか? 何だよこの壁一面に貼られたタペストリーは?」
「うん? 見りゃわかるだろ、『ハカシン』だよ『ハカシン』。お前も結構はまってるだろ?」
「いや、そんなのは分かっちゃいるけどさ……」
  窓側を除いた俺の部屋の三方の壁に吊り下げられたいくつもの布地。その表面には全て等身大の美少女のイラストが描かれていた。この美少女達はみな、『破壊神姫ペルセポナ』というゲームから始まって漫画やアニメ化もされた作品に登場するキャラクター達だ。
  ファンの間で『ハカシン』と呼ばれている『破壊神姫ペルセポナ』は、ゲームのジャンル的には対戦格闘系に分類されるが、使用できるキャラが全員美女または美少女キャラという、ターゲットを絞ったいわゆる『萌え系』の作品だった。もちろん、それだけの特徴しかなかったら『ハカシン』は恐らくは同じような有象無象の作品群の中に埋もれ、日の目を見ることはなかっただろう。が、ハカシン開発陣のある意味開き直りともいえるようなゲームバランス調整とバトル時の演出により、このゲームは愛すべきバカゲーとしてその知名度を上げていったのだ。
  バトルアクション物や格闘物のゲームは今、連続コンボを主眼に置いたゲームバランスが主流となっている。コンボというのは、最初の攻撃から相手に反撃の隙を与えず……というか、反撃できないタイミングで次々と追加攻撃や必殺技を繋げていくもので、最後までコンボが決まったときの爽快感は格別の物がある。が、連続攻撃を前提とした代償として、そうしたゲームでは単発の攻撃、特に必殺技ではない通常攻撃のダメージは強攻撃であっても体力ゲージがミリ単位でしか減らないような仕様となってしまっていた。そのゲーム界の流れに確信犯的に逆行したのが『ハカシン』だ。『ハカシン』の強攻撃は、通常でも一撃で体力ゲージの6分の1が吹っ飛ぶくらいのダメージを与える。ただでさえそれなのに、特殊ゲージとして設定されている破壊衝動ゲージというゲージがマックスの時には、さらにその倍のダメージを相手に与えることができるのだ。一歩間違えばゲームバランスが崩壊しかねない大味なシステムだが、今の時代には逆にそれが受けた。さらに、このゲームバランスはオールドゲーマーの間でもかなり高評価らしい。何でも某サムライ格闘物の第一作目を思い出させるバランスなんだとかなんとか……さすがにそれは昔のゲームすぎて俺もプレイしたことがないんで、どんな感じなのかはイマイチよく分からんが。
  ともかく言えるのは、『ハカシン』はその名の通り、今時のゲームには珍しい一発の破壊力重視のゲームだってことだ。そしてそれは、ゲームやその後のアニメなどのキャラクター達の演出にも現れている。例えばバトルステージが街中の場合、キャラクターがパンチを空振りすれば風圧で路駐してあった車が吹っ飛び、回し蹴りが宙を切れば衝撃波でビルが薙ぎ倒されるのだ。その破天荒すぎるカオスな演出もまた、この作品の大きな魅力なのである。
「……ということで、この作品にドはまりしている俺が、登場する全キャラクターを窓側以外の壁の三方に飾っていてもどこもおかしくはないということだ。まあ、高校生ながら両親の仕事の関係でアパートで独り暮らしをしている俺の家庭状況によるところも大きいけどな」
「いや、そもそも何が『ということで』なのかさっぱり分からんぞ……」
「それに小山、お前一つ思い違いをしている。ここにあるのはタペストリーじゃない。こいつらはみんな『抱き枕』だ!!」
「っておい、そっちの方がもっとまずいだろ! お前なんで成人向けのアイテムを堂々と手に入れてんだよ。しかもキャラクターフルコンプとか、ありえないだろ……」
  根は真面目なことがありありと分かる小山のツッコミを、俺はふっと鼻で笑いとばしながら余裕の笑みを浮かべてやる。
「なに、問題ないさ。彼女達のイラストで『キャストオフ』した方の絵は見ての通り表にはしてないから、ほとんどの奴はお前が見間違えたようにタペストリーと区別がつかないだろうさ。それに、これで分かる奴はおそらく同好の士だからやっぱり問題にならないしな。まっ、カンニングはばれなきゃカンニングじゃないのと同じだな」
「…………」
  なぜか白い目を俺に向けながら黙り込んでしまう小山に対し、優越感に浸りながら胸を張る俺。こいつをコンプするのには本当に骨が折れたのだ。様々な新機能を盛り込んだ意欲的な実験作という触れ込みで現在のところほんの少数しか生産されていないそれを、様々なルートを駆使し、交渉し、オークションで競り落とし、ようやくフルコンプしたのが一昨日の事。昨日一日その満足感に浸っていた俺は、今度はこのお宝を他者へと見せびらかすべく、前から『ハカシン』好きだと知っていた小山を家へと招待したのだ。まあ、小山を呼んだのにはそれ以外にも色々と理由があるんだがな。
  ちなみに『キャストオフ』というのは某特撮番組を語源とする言葉で、いわゆる脱衣状態を指す隠語である。キャラクター物の成人向け抱き枕は、一方にシーツの上で横になった等身大のキャラクターのイラストが描かれており、もう一方にはその脱衣バージョンが描かれているというパターンが多い。実用としては当然キャストオフ状態の方ということになるのだろうが、さすがに自分以外の者が目にする時にはそちら側を表にしておくのはまずいという制作者側の配慮なんだろう。それに、着衣状態の方が萌えるという性癖の輩も少数ながらいるだろうしな。ま、それはともかくとして、そうした仕様の抱き枕をディスプレイする際、キャストオフしていない側を表にした俺の倫理感は全くもって正常だといえるだろう。そんな俺をなんで小山がこんな白い目で見てるのかはまったくもって分からんが。
「まあ、ともかくだ。この抱き枕、実はこれって従来の抱き枕とは一味も二味も違うんだぜ。まずはともかく触ってみろよ」
「……良いのか? だったら……」
  何だかんだで興味があったのか……まあ、男なんだから興味を持たない方が正直何だと思うが……さっきまでの態度はどこへやら、小山は俺の言葉に素直に従い、壁に飾られた抱き枕の一つへと手を伸ばす。その抱き枕には『ハカシン』のメインキャラクターの一人、涼香のイラストが描かれていた。半袖の白いシャツにプリーツスカートという女子高生の夏服風のコスチュームを身に纏い、黒い長髪をポニーテールにまとめた美少女。こうした美少女物作品のロリ担当外のキャラの例にもれず、その体は服の上から見ても分かるくらいボン、キュン、ボンのナイスボディだ。そうした活発な印象の外見とは裏腹に、性格の方はやや気弱で口調も馬鹿丁寧なのが萌えポイントなんだよな。シーツの上に横たわる彼女は、顔を赤らめながら何かを期待するような目でこちらに視線を送っている。そういや、小山のゲームでの持ちキャラは確かこの娘だったな。
「どうよ?」
  さわさわとその表面を触っている小山に感想を求める俺。
「いや、正直よく分かんないな……。そもそも、従来の抱き枕ってのも触ったことないし」
  まあ、そうだろうな。肌触りがどうだとかいっても、比較する物が無くちゃ判断のしようがないのは確かだ。
「それじゃ、次にその脇にあるファスナーから中に手を突っ込んでみろよ」
「こうか……?」
  俺の言葉に従い、枕の脇についたファスナー部分から抱き枕の中へと手を突っ込む小山。
「って、うわっ!?」
  次の瞬間、小山の上げた叫び声が俺の部屋に響き渡る。
  それは一瞬の出来事だった。小山が手を突っ込んだ抱き枕、それがまるで獲物を捕らえた蛇のように大きくファスナーの付いたその口を広げると、一気に小山の体を飲み込んだのである。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
  抱き枕に飲み込まれた小山はしばらくじたばたとその中でもがいていたが、やがてよろよろと室内を移動すると、ばたんと俺のベッドの上へと倒れ込んだ。そしてそのベッドの上で、抱き枕は次の変化へと移行する。
  元々は円柱形に近い形をしているはずの抱き枕、それがぴっちりと中に入った小山の体へと張り付き、そのシルエットが表面に浮かび上がる。が、小山の形をしたシルエットは徐々にそのラインを崩していった。体の大きさが一回り小さくなると、胸の部分がだんだんと盛り上がってくる。それに合わせるかのように腰がくびれ、腕や足が細くなっていく。まるで表面に描かれた涼香のイラストが鋳型であるかのように、その姿に合わせてシルエットを変えていく抱き枕。張り付いた布の衣服部分が立体感を増し、やがてそれは本物の衣服へと変化する。顔や腕、太ももといったイラストで肌が露出した部分も、張り付いた布がきめ細やかな少女の肌へと変わり、形が整っていく。長く伸びた黒髪もいつの間にかポニーテールへと結い上げられていた。やがて変化が終わったとき、俺のベッドの上にいたのは、二次元の世界から三次元の世界へとやってきた『ハカシン』のキャラクター、涼香そのものにしか見えなかった。
  変化が終わった後、しばらくは眠っているかのように動きを見せなかった『涼香』。が、しばらくすると意識が戻ったのか、彼女は頭を左右に振りながら、ゆっくりとベッドから上体を起こす。
「う……なにが起こったんだ?」
  左手を額に当てながら、ゲームやアニメの涼香の声音と全く同じトーンの声を発する『涼香』。そんな『涼香』に向かって俺は尋ねる。
「どうだ小山、抱き枕の機能を体感した感想は?」
「え、なんだよいきなり……? というか、ここ、お前の部屋か……? 抱き枕の機能……? って、なんだこれ!?」
  目を覚ましていきなりかけられた俺の言葉にしばらく戸惑いの表情を浮かべていた『涼香』だったが、ようやく自分の体が変わっていることに気が付いたのか、急にわたわたとし始める。
「な、なんだこの胸!? ……あう、か、感覚がある……」
  まず目に付いたのかその大きな胸をもみ上げた『涼香』は、次にスカートの上から手で股間を押さえつける。
「あ……うっ!?」
  そこで何やら衝撃的な事態を悟ったのか、言葉を詰まらせ目を白黒させる『涼香』。その姿を前に俺は思わずほくそ笑む。
「そうだ小山。お前は女の子になったんだよ。そう、『ハカシン』の『涼香ちゃん』にな」
「って、それってどういうこと……!?」
  俺の言葉にベッドの上からこちらに体を乗り出してくる『涼香ちゃん』。その体からは女の子特有の匂いなのか香水なのか、ともかく良い匂いが漂ってくる。
「どういうことも何も、これがこの抱き枕の機能なのさ。この抱き枕はファスナーの中へと体の一部を突っ込んだ人間を取り込んで、描かれたイラストそのものの姿へと変えてしまえるんだ。つまり、涼香ちゃんの抱き枕に手を突っ込んだお前は、そのまま涼香ちゃんになっちまったってことさ」
「そ、そんなの信じられるわけ……」
「ならその大きな胸は何なんだい? さっき、その白く細い指で触れてたみたいだけど、股間に男のモノはあったのかい?」
「うっ……」
  絶句する『涼香ちゃん』に畳みかけるように言葉を続ける俺。
「ちなみに、この機能は中に入った人は自分で解除できないからな。誰か他の人に解除してもらうしかその姿から元の姿へと戻る方法はないぜ」
  そう、これこそが俺が小山を部屋へと連れ込んだ大きな理由の一つだった。抱き枕に搭載されているという新機能。だが、それを確かめようにも自分でそれを解除できないのでは自分一人で確認するにはリスクが高すぎる。だから俺は小山に機能を使用してもらい、実際にそうした機能が付いてるのかどうかを確認させてもらったのだ。小山にその事を事前に説明しなかったのはまあ、あれだ。元々がこの抱き枕を買った俺でも信じられないような突拍子もない機能だったし、説明しても頭の中身を疑われること間違いなしだったからな。それに、万一機能について納得してもらったとしても、その内容的に断られる可能性が高かっただろうし。
「……それで、こんなことして、これからどうするつもり?」
  半ばむっとしたような顔をしながらも不安を隠せない目でベッドから俺を見上げてくる『涼香ちゃん』。それに対し、俺はふっと息を吐くと口元に笑みを浮かべながらびっと親指を立てた。
「そんなの決まってるだろ。こうした『抱き枕』の本来の用途っていったら、やっぱり『アレ』しかないじゃないか!」
「って、まさか……!?」
  俺の言葉にこれからナニをするのかを悟った『涼香ちゃん』の顔が硬直する。
「でも、お前だって本当は嫌じゃないんだろ? 何てったってお前は俺に向かってベッドの上からあんな誘うような目つきをしてた『涼香ちゃん』なんだ。何だかんだでお前だって俺とヤりたいと思ってるはずさ」
「ば、馬鹿なこと言わないでください……! 何で私が貴方みたいな人と……」
「お、さっそく口調も涼香ちゃんになってきたじゃないか」
「…………!?」
  俺の指摘に不随意にはっと口を手で押さえる『涼香ちゃん』。
  そんな彼女に俺は某有名なオールドアニメの怪盗よろしく大きく手を広げ指をわきわきさせながらにじり寄る。
「そう、この抱き枕は中に入った者の外見だけでなく内面までもそこに描かれたキャラクターそのものに変えていくのさ。さあ、そろそろお前もあの涼香ちゃんのイラストみたいに俺に抱かれても良いかも……って思ってきたんじゃないか? さあ、さあさあさあさあ!」
「ちょっ、ちょっとこっちにこないで……っきゃあ!?」
  そんなパッションみなぎる俺の迫力に圧されたのか、その場からずりずりと後ずさりをしようとした『涼香ちゃん』だったが、シーツで滑ったのかそれともなれない体だからなのか、急にバランスを崩してベッドの上へと倒れ込む。そのベッドの上に横たわる姿は、まさに抱き枕に描かれていた涼香のイラストそのものだった。
「うおおおおっ、涼香ちゃんもうたまら〜ん!!」
  熱い衝動に突き動かされるままに、怪盗アニメの続きとばかりに大きくその場からジャンプしベッドへとダイブする俺。
「い、イヤっ!!」
  次の瞬間、鳩尾から全身に何かが走ったのを感じるのと同時に、俺の視界は急にブラックアウトした。
  あ、あれ……?
  さらに五感のうち残り四つの感覚もなくなり、何だか空中にふわふわと浮いているようなよく分からない状態に陥る俺。
  な、何が起こったんだ? 俺はベッドの上の涼香ちゃん目がけて怪盗ダイブしただけだぞ? そして、それに反応するように涼香ちゃんが拳を握って……
  と、そこで俺は自分の体に何が起こったのかを瞬間的に理解する。
  あの抱き枕は肉体、精神ともに中に入った者をそこに描かれたキャラクターそのものへと変える機能を持っている。その力で小山は『ハカシン』の涼香ちゃんになった。そう、拳を振るえば風圧で車を吹き飛ばすような『ハカシン』の涼香ちゃんにだ。そんな一撃を普通の人間がもろに喰らったならば、それは言うまでもなく……

  G A M E  O V E R






 ……………………
 …………
 ……
 …

「……………?」
  それは、いきなり前触れもなしにやってきた。
  突然、失われた五感が体へと戻ってくる。鳩尾に感じるズキズキとした痛みに何だかぼんやりとした視界に入ってくる天井の照明の明かり。そして、背中から伝わるこの馴染みのある感触は、いつも使っているベッドのものだ。ここは……ベッドの上……?
「良かった! 気が付いたみたいですね!」
  と、そこで突然可愛らしい声とともに、こちらを覗き込むような格好で視界に見覚えのある美少女の顔が入り込んでくる。
  それは、まがうことなき『ハカシン』の涼香ちゃんの顔だった。
  ということは……さっきのあれは、GAME OVERじゃなかった…………?
  少々腑に落ちないながらもそう思ったところで、涼香ちゃんが心配そうな顔をしながら尋ねてくる。
「どうですか、体の調子は? どこも何ともないですか?」
「う、うん。ちょっとお腹は痛むけど、こっれくらい全然大丈夫……」
  と、そう返答したところで、何とも言えない違和感を感じる。
  なんだこの声? これが、自分の声……? なんか、いつもと全然違うような……。
  思わず喉に手をやろうとして、今度は目に映りこんだその腕に驚愕する。
  その腕は、自分の物とは明らかに異なる細く柔らかそうな作りをしていた。やや日焼はしているものの、そのきめ細やかな肌はまるで女のそれを連想させる。
「……………!」
  まさかと思い、上体を起こし自分の体に視線を向けたところで目に飛び込んできたのは、涼香ちゃんと同じ白いシャツとプリーツスカート、そして胸元で生地をぐいっと押し上げている大きな胸の膨らみと、ミニ丈に調整されたスカートと黒いニーソックスにより作り出された絶対領域だった。シャツのボタンは第2ボタンまで外され、胸の物体が作り出す谷間が見え隠れしている。
  そのあまりにも想定外な事態に思わず言葉を失ったところに涼香ちゃんの声が響く。
「ふう、良かった……。少し拳を当てただけなのにかなり大変な状況になっちゃったからちょっとあたふたしちゃいましたけど、貴方を抱き枕の中に入れたのは正解だったみたいですね」
  その言葉に自分の身に何が起こったのかを理解する『アタシ』。
  普通の人間なら一発で致命傷になるような『ハカシン』キャラの一撃。だけど、同じ『ハカシン』キャラなら一発であの世行きなんてことはない。アタシが助かったのはつまりはそういうことだ。こいつはホント、涼香ちゃんのヒラメキにチョ〜感謝!
「それにしても、この抱き枕って本当に凄いんですね。まさか現実に貴方が愛奈になっちゃうなんて思わなかったです」
  愛奈。そっか、今アタシは愛奈になってるんだ。愛奈は『ハカシン』で涼香ちゃんの後輩として設定されてる娘で、先輩である涼香ちゃんを「ちゃん」付けで呼び、セクハラまがいのちょっかいを出すなど、天真爛漫かつフリーダムな性格の味付けがされているキャラだ。体の方も涼香ちゃんより年下なものの彼女に負けず劣らずのナイスボディー。確かにこのシャツを押し上げる胸の大きさは涼香ちゃんのそれと同等のものに見える。いや、ちょっとだけアタシの方が大きいかな……♪
  そんな事を考えながら自分の小さな手をグーパーさせたり胸を押し上げたりして感覚を確かめていたアタシに、涼香ちゃんが何やら意味ありげな笑みを浮かべながらすうっと顔を近づけてくる。
「それじゃあ、貴女も大丈夫みたいだから、そろそろ続きをしましょっか?」
「へっ?」
  何のことだか見当がつかず間の抜けた声を上げた次の瞬間、アタシは涼香ちゃんに両肩をどんと押されてベッドに押し倒されていた。
「きゃあ!?」
  予期せぬ涼香ちゃんの行動に思わず悲鳴をあげるアタシに、微笑みを浮かべながらも目に怪しげな光を湛えながらのし掛かってくる涼香ちゃん。
「ふふっ、きっと貴女が着せてくれた抱き枕の機能なんだとは思うんですが、私、さっきからずっと体が火照っちゃってどうしようもないんです。だからといって男の人とするつもりは全くなかったので、何とか自分で処理しようと思ってたんですが……目の前にいるこんなに可愛いくて扇情的な後輩の姿を見ていたら、思わずいたずらしたくなってきちゃいました♪」
  へ、それって……?
  その意味するところに思い至り、体中がかあっと熱くなったときには、アタシは涼香ちゃんに強引に唇を奪われていた。


  to be continued?



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