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ゲームやりすぎると馬○になる
作:高居空


“このゲームやりすぎると馬○になるぞ! ホントに!”
  ……はあ? 何いってんだ、こいつは?
  俺が今はまっているゲームのファンが集う攻略サイト、その閲覧者全員にケンカを売るようなコメントは、ご丁寧にも頭に【警告】と銘打って書き込まれていた。
  ○○ばかりしてると馬鹿になる。それは昔から親が子供に勉強を強要するときなんかに使われる決まり文句だ。漫画ばかり読んでると馬鹿になる、テレビばかり見てると馬鹿になる、ゲームばかりしてると馬鹿になる、ネットばかり見てると馬鹿になる……。そんなもんをこの場に書き込む神経が分からん。
  だが、煽りコメントに反応するのは、それこそ相手の思うつぼ。
  俺はコメントにツッコみたくなる気持ちを抑え、スマホの画面を切り替えると、やりすぎると馬○になるというそのゲームアプリを起動する。
  しかしまあ、このゲームが時間泥棒なのは確かだ。擬人化された美少女キャラの育成にコミュニケーション、仕上がったキャラをレースに挑戦させ、見事結果を残し殿堂入りしたキャラから得られる素質ボーナスを新たなキャラに引き継いで素質を開花、それをまた育成して……とやることが多すぎて、時間がいくらあっても足りない。ゲーム内でトップランクを維持するためには、家に帰ってからだけでなく、日中の休憩時間でのプレイも必須の状況だ。学校にスマホを持って行けないようなガキが本気でプレイしようとしたら、それこそ勉強する時間なんてないだろう。
  さらに、最近はゲームに無名のキャラを育成してレジェンドキャラにチャレンジする新モードが実装され、毎週多くの新キャラが追加され続けている。育成するキャラも増えるし、新キャラを手に入れるためガチャも回さなきゃいけないし、そうなると時間だけでなく金も必要で……。
  うん、よくよく考えると、俺の最近の生活は、このゲームを軸に回っている気がしないでもないな。だが、別にそれはそれで構わない。このゲームにはそれだけの魅力があるってことだからな。今じゃ夜に寝床に寝っ転がりながらゲームをプレイするのが俺の至福の時となっている。そのまま寝落ちすることもあるが、それもまた良し。というか、そのために寝床でプレイしてるんだしな。
  さて、それじゃ今夜も頑張りますか。
  俺は寝床に寝っ転がると、さっそくゲームをプレイしはじめた。



  気が付くと、窓から日の光が差し込んでいた。
  昨晩意識したのが影響したのかどうか、どうやら俺はプレイ中に寝落ちしてしまったようだ。
  まあ、それは別にいい。が、今日はいつもにも増して体のあちこちがカチコチな気がするな……。
「ふわあぁ〜」
  寝ぼけ眼のまま、半身を起こし少しでも体がほぐれるようにと伸びをした俺は、そこで自分が発した声に違和感を覚えた。
「ん……あ、あっ〜、……って、なんだあ?」
  それは俺の本来の声とは似ても似つかぬ女の声、それもいわゆるアニメ声に類する少女の声だった。
  なんだこりゃ?
  その声に戸惑いながら何となしに視線を下ろす俺。その目に飛び込んできたのは、明らかに自分の物とは異なる肉体だった。
  俺の体は、紫を基調とした女物の学生服に包まれていた。もちろん、下はスカートだ。足にはニーソックスを履かされ、ソックスとスカートとの間に存在する絶対領域(?)からは、むだ毛のない白い太股が覗いている。
  そして、服の上部、ちょうど胸の部分には、ありえないことに、まるで女のような膨らみが見て取れた。
「……んっ……」
  見覚えのない白く小さな自分の手でその膨らみを揉みしだくと、胸からこれまで感じたことのない感覚が伝わってくる。
  これはいったい……?
  棚に鏡を置いてあったことを思い出し、そちらに視線を移すと、そこには胸に手をやり顔を赤らめた美少女の姿が写っていた。
  これが……俺……?
  その顔には、俺の本来の顔の名残さえ見受けられなかった。まるでアニメやゲームの中に出てくるような美少女……んんっ?
  その時、俺は鏡におかしなものが写り込んでいることに気が付いた。
  少女(自分?)の頭の上、ちょうど側頭部の上部に、まるで動物の耳のような物が2つ、ひょこんと生えていたのだ。これって、まるで今やってるゲームの……。
  それに思い至るのと同時に、床の方から突然音楽が流れ出す。
  それは、件のゲームのタイトル画面で流れるオープニングミュージックだった。
  寝落ちした以上、今でもスマホでゲームが起動状態であるのは分かる。だが、なぜこのタイミングで?
  背中になにかぞくっと得体の知れない物が走るのを感じつつも、音の鳴る方へと視線を向ける俺。
  その瞬間、いつの間にか床に転がっていたスマホの画面から、眩い光が迸る!
「きゃっ!」
  反射的に目を瞑る俺。な、何がどうなってるんだ?
  一瞬パニック状態に陥りかけた俺だったが、今度は前触れもなく猛烈な睡魔が襲ってくる。
  強烈な眠気に意識が混濁していくなか、俺の脳裏にはなぜか、昨日見たネットの書き込みが浮かびあがっていた。
“このゲームやりすぎると馬○になるぞ! ホントに!”
  あれ……この書き込みの○に入るのって、ひょっとして“鹿”じゃなくて“娘”…………



『今週もレジェンドチャレンジレース用のキャラクター大量追加! 無名の彼女達を鍛え上げ、夢の頂点へ駆け上がれ!』



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