1月18日  刀を忘れる



武士にとって刀とは・・・      魂であり、  命である・・・  」      と 、 思う・・・   気がする。

例えば長坂の戦いで張飛益徳が持っていた武器が蛇矛ではなく竹やりだったとしたら、その後の三国志の歴史は大きく変わって
いたんじゃないかと思う。


では、釣り人にとって刀とは・・・      竿?     になるんかな?    普通は。     竿がないと魚とやりとりできないしな。

でも、おいらの釣りにおいての刀は、竿ではなく浮子取りパラソル。 

いざという時に私の繰り出す最後の必殺技が、 「道糸の高切れアタック」 なもんで。


竿を忘れたら、「あ〜あ、竿忘れたから帰ってパチでも行〜こう!」って感じで、速攻であきらめもつくのであるが、中途半端に浮子取り
パラソルを忘れてきてしまうと、特にチヌ釣りで深めを攻める場合、付け餌を底に這わせたくても根掛かりが怖くて攻めきれません。  
しかも、その釣り場が根の荒い釣り場だと尚更・・・


 
そんなわけで本日1月18日は、久々に愛車のフェラーリテスタロッサ(スバルの軽トラとも言う)をかっ飛ばしての地磯での釣り。
例によってこの釣り場は、軽の4WDでないとほぼ100%道中で立ち往生し、誰もいない山の中でオロオロと途方に暮れなければ
ならない秘境の釣り場です。

とは言っても、最終的には車を停めてからも、釣り場に降りるまでに、心臓破りの坂を上り下りしなきゃならないんですけど。
だもんで、背負子は必須。荷物も必要最低限の物にまとめる必要があるので、本日の荷物はロッドケースにバッカンにクーラー。
これを背負子にセットしてテクテクと、釣り場に着いたのは午前6時頃。

適当に撒き餌をパラパラやりながら、辺りもぼちぼち明るくなり始めた頃釣り開始。
本日のテーマは、バッカン2杯の撒き餌を、仕掛け投入前、投入後、仕掛け回収前に意識して3杯ずつ撒き、6時間で撒ききる練習。
加えて、先日大知正人君に習った、全遊動での仕掛けの入れ方、抜き方といったスルスルの練習。


普段浮子を沈めながら全遊動をやる時でも、あえてマーカー的な意味合いで浮子止めを付けて釣りしてる私も、本日はマーカー無しで
感覚だけで水面下の仕掛けがどうなっているのかをイメージしてみるとします。

だもんで、いつものなるほど浮子止め使っての半遊動は封印。 釣果は出なくても、別にええっちゃーええんです。
そりゃー、釣れるに越したことはないんですけどね。 

ってことで、最初は黒魂Rの00使って練習してました。  高価な大知浮子使って、もしも根掛かりしたら嫌だから。
一回だけですね、張り張りで釣ってた私の手元にまで、 「 ドン 」 と来る明確なアタリがあって、合わせると大きく竿が曲がる
チヌらしき獲物を掛けたんですけど、一瞬にして針外れ。    ん〜、マンダム。


その後はしばらく、何の音沙汰もなく変化もなし。  ツケ餌も冷た〜くキンキンに冷えて帰ってきます。
時々ベラやフグは釣れるものの、チヌの気配は無し。

そんな中で訪れた、本日唯一の見せ場は、なんとな〜く海に変化を感じた午前10時くらい。

仕掛けをここぞとばかりに変更します。
普段は管付使いの私が使う唯一の中通し浮子である、必殺の 大知浮子(2500円)と大知アタリ浮子(G5のナビで1個が700円位)に
変えます。

これを無くすと痛いのでなかなか普段は怖くて使えませんが、本日は今の所根掛かりもしていないし、これからのチヌ釣り大会に
向けて、使用している皆が絶賛するこの浮子の性能を確かめてみたいのと、使い方の練習ってことで。

ほんで第1投。
3ヒロ弱のハリスがなじむと共に、ジワーッと沈んでいく700円。その後をゆっくり追って沈んでいく2500円。

感覚はまだよくわからないのですが、確かに言えることは、ガラス管特許のこの大知浮子、糸落ち抜群です。
スルスルスルスル仕掛けが入っていきます。

そんで、スルスルスルスルと仕掛けが入って行きすぎて、案の定得意の根掛かりです。 今まで黒魂では、散々キャストして根掛かり
しなかったのに 仕掛け交換後の1投目からこの有様です。   まぁ、私の人生なんてそんなもんですわな。

最終奥義が、 「道糸の高切れアタック」 の私、糸を引っ張る前から万が一の最悪の事態に備えて、磯クールバッグに入れてある、
「1個取れれば元取れる!」 を取りに行きます。


私、自慢じゃあるんですが、釣りの腕はイマイチなのですが、浮子取りパラソルの腕はピカイチなんじゃねーかと自負してます。

過去には流れて行った杓や、果てはまさかのバッカンまで、奇跡の救出劇を繰り広げてます。
巧みな竿捌きと微妙なライン操作で、救った命は数知れず。
まぁ、単純に言ったら、そんだけたくさんの浮子を飛ばしてるんですかって話なんですけどね・・・


ほんでですねー、要はパラソル取りに行ったわけです。 万が一道糸が高切れした時のことを考えて。

そして、ここで初めて気づくんです。  磯クールバッグを持って来ていない本日、いつもクールバッグの横ポケットに入れている、
浮子取りパラソルを持って来ていないことに。

いやぁ、血の気が引きましたな。 なんてったって2500円です。  
竿二本先を釣っている現在、道糸が高切れてしまった日にゃー、さすがの私も救出不可能です。


大体こんなシチュエーションの時には、ほぼ100%の確率でハリスではなく道糸の方が切れてる私。
1.75号の道糸対、1号のハリス。  
どうせ今日もハリスではなく道糸の方が切れるんやろなーって思いつつも、 「お願いします!」 って糸を引っ張った結果は…


やっぱり道糸の方が切れました。  「ほーらやっぱりね!」 と、誰もいない磯の上で一人ばやいてみますが、まずはなんとか
この2500円を救出しなければ。 700円の方は錘なんで沈んでも仕方ないからあきらめもつきますが、2500円の方は目測で
大体竿1本強ほど先の海面をさまよっております。
とりあえず6mのタモを思いっきり伸ばして、磯際ギリギリの所で海面をパタパタやってみますが・・・      

目測で50cm〜1mほど足りません。


そうこうしているうちにも、潮に乗ってどんどん沖に行ってしまう2500円。   


こうなってしまったら・・・


かくなる上は・・・・







「泳ぐか?」








早速、頭の中で色々とシュミレーションをしてみます。
とりあえず防寒着をはじめ、着ているもの一式を脱ぐ。
ライジャケは・・・    泳ぎにくくなるやろうから脱いだ方がええやろな。
次にパンツは・・・   とりあえずこれも脱いどいた方がええやろな。濡れたら後が寒いから。  フルチンで行こう。 フルチンで。 
さすがに磯ブーツ履いたままでは泳げないので、ブーツも脱いだ方が良いと思う。
でも靴下は履いておかないと、上礁の際に間違いなく牡蠣殻で足の裏を怪我するだろうから履いておこう。


そんで、仮にそれで海の中に入ったとする。
2500円までの距離がおよそ8m。 行って帰って16m。  ん〜、まぁ、大丈夫かな。
服を脱ぎながら色々考える。

でも待てよ。 泳ぎ、ましてやこの寒の時期、  仮に、  もしも仮に下手こいて死んでしまうようなことになってしまったら・・・

水死体は、フルチンに靴下という完全に怪しいおっさんスタイルでの発見ってことになる。

最後に付けていた遺品が靴下。 それ以外はフルチン。  さすがの私も、このスタイルでの発見は、ちょっと情けないような
気もする・・・。   そして何より家族が私と対面する際、フルチンに靴下というナウい格好を見て、果たして何を思うだろう・・・。
しかも、最終的に死んでしまった理由が、2500円の浮子の救出に向かって失敗・・・  ってことになると・・・  

親は泣くな・・・      別の意味で。


ってことでですねー、あきらめました。 脱ぎかけていたパンツを履きなおしました。 あきらめた割合は5.5対4.5。 ほぼ互角でした。
これが天狗浮子だったら間違いなく行ってたですな。   2500円はひじょーに痛いですが、まぁ、しょーがないです。
お金貯めてまた買います。

その後は再び黒魂Rの00使って、恐る恐る釣りしてましたがこれまた根掛かり後に、お約束の道糸高切れで回収不能。
これで心が折れました。

棚を浅目に半遊動で、ちょっとだけ釣りをしましたが、根掛かり恐れて思い切った攻めの釣りができない上に折れてる心。  
おまけになんか寒ぃーし。 こんなやる気の無い心境で釣りしたって、釣れるもんも釣れないですわな。

ってことでですねー、本日の釣りは0点です。
でもまぁ、一応惰性で撒き餌だけは撒ききりましたよ。    竿はロッドケースの中にしまってましたが。

いやぁ、私にとって浮子パラソルがいかに大事なものであるかを思い知らされた一日でした。

帰りは無性に悔しかったので、フェラーリをキュルキュル言わせながら帰りました。                    終わり。




愛車です。

左 大知浮子  2500円
右 大知アタリ浮子   1個約700円
合わせて一回の遠投高切れで、
シャカシャカチーンの3200円です。

浅野温子風に言えば、

「前に、大知浮子使ってたの。とても幸せな気持ちで、
大知浮子使ってたの。だけど、浮子は流れて行ってしまった。
また、大知浮子使って、大知浮子のことがとても好きになって。
でも、怖いの。また浮子を失ってしまうことが。
私、怖いの。ねえ、怖いの。」

って感じです。

分からない人は、101回目のプロポーズを見るべし。
本日の釣り座。

なんか、写真はかっこいい。

やってる釣りは、全然かっこよくなかったですが。  

ってことで、まぁ、ぼちぼち頑張って生きてゆきます。