1月21日  今の自分に足らないもの


前々から私の釣りには、何かが足らないような気がしていた。
そして、その答えは、2008年シマノジャパンカップ覇者である、柴原啓二さんの釣りの中にあった。


私はまず、道具を全て柴原さんと同じにすべく、竿からリールから玉網から、全てを
ファイアーブラッドで揃えてみた。
見掛け倒しである私の素性を知らない人が私を見たら、多分、結構な磯釣り師に見えるはずだ。
何事も外見重視、まず見た目は決まった!

しかし、まだ何かが足らない。

その答を探すべく、私は何度も何度もジャパンカップ決勝のビデオで柴原さんを見た。
そしてようやく、自分の釣りに足りてなかった物を見つけることができた。

それは、王者柴原さんの口元から燦然と輝きを放っている巨大なオーラ。


今の私に足らないもの・・・        それは・・・    ずばり・・・    ヒゲだ。


私の釣りにはヒゲが足らなかった。
ここに来て、ようやく自分の釣りに足らないものを見つけることができた。

しかし問題は、私がどのようなヒゲを生やすか。
柴原さんの如く男らしい口ヒゲを蓄えるか。 いや、ここは最近の若者よろしく、ワイルドな顎ヒゲを
生やしてみるか・・・。
結果、どちらとも決められない優柔不断かつ欲張りな私は、両方を生やしてみることにした。

ヒゲなんて、高校時代と大学時代にそれぞれ一回ずつ、これまでの人生で通算2回ほど生やしただけ。
休日に無精ヒゲこそ伸びてはいるが、意識して生やすなんて十数年ぶり。
果たして、きちんと生えてくれるのだろうか・・・

しかし、伸ばし始めてから一週間、そんな私の考えは徒労であったことに気づく。
たった一週間でフサフサとなった私のヒゲは、国民的ヒーローであるイチローにすら負けてない。
いや、イチローどころか、野口英世や夏目漱石も真っ青だと思う。
更に更に、このまま伸ばし続けたら、聖徳太子や諸葛孔明にも勝てそうな気がする。

遂にここに・・・  伝説のヒゲ釣り師が誕生した。

いやぁやばい。2009年は色んなタイトルを総ナメの予感・・・。


そんな感じで本日の釣りは、これから始まる伝説への入り口ってことで、
中野のおっさんと二人、山陰の磯へとレッツらゴーゴーである。


待ち合わせ場所である私の自宅、やって来た中野のおっさんが開口一番にこう呟く。

中野のおっさん「うわっ、タコ、どうしたんそのヒゲ・・・。 めっちゃ汚いんやけど・・・。」

私「フッフッフ、2009年は俺、これで行こうと思う。 イチローもマーシーも真っ青やろ?」

中野のおっさん「い、いや。 ってゆーか、普通に汚い。 すごく汚い。」

私「汚い・・・か。 フッ、まぁ、みんな最初はそう言うのよ。暫くすれば違和感が無くなって、
  イチローみたいに見えてくるから。」


そんな感じでヒゲの紹介も無事に終え、午前7時には釣り場に到着。

最初からそんなに釣れるとは期待してなかったが、案の定今日もダメダメ。
餌は毎投無くなるが、恐らくフグ。
理由は、3投に1投は餌だけでなく、針が丸ごと無くなって帰ってくるから。

で、本日も早々にやる気の無くなる私。

クーラーに座ってポケーッとしていると、会長が私に問いかけてくる。


会長「おっさん・・・  闘志は・・・  燃えているか?」

私「んっ? 闘志? いや、あんまり燃えてない。むしろえらい(疲れた)・・・。帰りたい。
  なんか、訳のわからん倦怠感が・・・・」

会長「か〜っ。  おっさん、ダメダメやの〜? 

私「んっ? ダメダメ?  そうよ! 俺は世界一最低なダメ人間よ。 今頃気付いた?」

会長「ほんと、ファイアーブラッドみたいな高っかい道具ばっかり買うてから。  
    おっさん、ひょっとしたら、日本一やる気のないファイアーブラッダーじゃね?」

私「うん。そうよ。俺は日本一やる気のないファイアーブラッダーじゃよ。だったら何? 何か文句ある?」

会長「か〜っ、そんなんじゃ、シマノも江頭さんも泣きよるわ!
    やる気無いなら、暫くそこでボケーッとしちょけっちゃ!」


ってことで、暫くボケーッとしながら会長を観察。
たまに釣れるフグを「あ〜」とか、「うふぅ〜」とか言いながら楽しんでる会長。
一投ごとに無くなる餌や、時折無くなる針に一喜一憂。

中野さんて、本当に相手がどんな魚であれ純粋に魚釣りを楽しめる人なんだなぁと、しみじみ実感。

そんなことを思いながらふと海に目をやると、潮上の方からアワビやらウニやらサザエやらが、
大量に入った桶が、どんぶらこー、どんぶらこーと流れてきた。


「ありゃ、こりゃー魚なんか釣るよりよっぽどええもんが流れてきたわい。」と

ここぞとばかりに自慢のファイアーブラッド玉網を差し出そうとすると、側からウェットスーツに
身を包んだ尼さんが浮上してくる。

そりゃそうだなとか思いながら、暇なので尼さんに、


私「すいませ〜ん、この辺にチヌとかクロは居ます?」 と問うたらば、

尼さん「はぁ〜っ? こんなところに魚なんておりゃーせんよ!別の所に行きんしゃい!」 との答え。


で、早速その事を会長に報告すると、

「タコ、騙されるなっちゃ。魚はおる。フグがおる。」とか言って、まだまだフグをたくさん釣りたそう。

そうこうしているうちに、最後は雨まで降ってきて踏んだり蹴ったり。

さすがの中野さんもこの真冬の冷たい雨には心が折れたようで、正午過ぎ、撤収。
まぁ、いつも通りの展開となった。


そして本日の釣りの総括であるが、使ってる道具が釣果とは関係ないことは昔から分かっていたが、
もしかするとヒゲの有無も、魚釣りの釣果にはあまり影響しないのかもしれない。
暫くは統計を取りつつ、その辺りを詳しく検証していきたい。






ボーッと海を眺めていたら、
上流の方からどんぶらこー、どんぶらこーと
お宝が流れてきた。
人も一緒に流れてきた。
中野のおっさん2009!
で、本日唯一のタモの出番は、
その2009が海に落とした杓を
掬ってやったのみ。
釣り場近くの海。
いやぁ、山陰の海はほんとに綺麗ぢゃ
ついでに、ゲレンデに映えるヒゲ2009!