9月21日  翼を広げて


前日、9月20日(土)夕方の時点では、翌21日の予報は1日曇りであった。
何の迷いもなく、渡船に予約を入れ、撒き餌を練る。

しかし、夜になってから会長より緊急連絡。
天気予報が急変し、21日は大雨が降る予報に変わったとのこと。

「す、すまん、俺が雨男なばっかりに・・・。」

とりあえず、朝起きた段階で様子をみようとのことで床に就く。

翌朝、起床時の段階では雨は降っていない。会長に連絡を入れると、とりあえず行くことに。
今日は用事があるとのカクちゃんを除き、永田を合わせた3人で徳山湾へ。

渡船に揺られること30分、本日の釣り場へ上礁。

さて本日は私、色々と試してみたいことがあった。竿先やライン、からまん棒でアタリを取る練習である。
先週の大会で同礁して頂いた方に色々と教わったことを、自分のモノにしたいと考えたわけだ。

仕掛けを作りながら空を見る。 今のところ雨は降っていない。
このまま天気が持ってくれればいいねと話していると、先週の大会で私の自作柄杓である、
「田吾作杓スタンダードバージョン」を使っていた永田が、今日も1日貸してくれと言う。
聞けばとっても使いやすかったとの事で、別の大遠投バージョンを使う私は快く承諾する。
こうなったら永田を、新鋭釣具メーカー「田吾作ブランド」の最初のフィールドテスターに任命してあげたいと
思う。 大きな字で[田吾作 ふぃ〜るどてすた〜]と書かれたワッペンを自腹で作って、ベストに貼り付けて
おいて欲しい。 皆の注目を集めること間違い無しだ。

で、私、1ヒロ半のタナでスタートした1投目、いきなり浮きが綺麗に消し込んだ。
合わせを入れると結構な重量感。しかもコクコクと首を振るこの感触は・・・  37cmのチヌでした。
1ヒロ半って・・・、いきなりめっちゃ浮いとるがな。で、そのチヌをスカリに入れた位からぽつぽつと
降り出す雨。それでもこのままの弱い雨であれば釣りは出来るなと思った側から、強くなる雨脚。

そそくさとロッドケースの中から傘を取り出し、カッパを着て釣りをしている二人の事を見学。
だって俺、濡れたくないんやもん。

「暫く待ってたら、そのうち雨も収まるでしょ。」 と楽天的に考えていた私だったが、雨は収まるどころか
益々強くなる。

渡船での磯釣り、後ろは崖になっていて逃げ場など・・・ と、辺りをきょろきょろ見渡すと、ふと後ろの崖で、
オーバーハングになっている場所を発見。あそこなら多少は雨が防げるかもと行ってみると、
これが意外や意外、結構快適じゃあ〜りませんか。

他の二人が入って来ると狭くなるので二人に気付かれないように静かにしていたんだけど、そのうち会長が
私の事を発見し、秘密基地へとズカズカと土足で、いや、磯ブーツで侵入してきやがった。

会長「あー冷たい冷たい。ったく、おっさん一人だけ快適そうにしてから。 もっと向こうに行って、
   俺も入れてくれっちゃ。」

私「嫌っちゃ図々しい。 この秘密基地、俺が発見したんじゃけー。 あっち行けっちゃ!」

それでも私の反対を無視して、無理矢理基地に侵入してくる会長、
仕方ないので、渋々入門を許可してやる。

しかし、そんな私の優しさなど微塵も感じていない会長は、非喫煙者の私が側にいるってのに、
プカプカとたばこを吸い始めやがった。

私「臭いっちゃ。たばこ消せーや。副流煙で病気になったらどうするつもりなんかっちゃ。」

会長「心配するなっちゃ。 俺、もうすぐたばこ止めるんじゃけー。」

私「はっ? また禁煙?」


聞けば会長、彼女との綿密な打ち合わせの末、禁煙に向けてのグッドアイデアを思いついたようで、
今月は1日に5本、来月は1日に4本と、1ヶ月ごとに1日に吸うたばこの量を1本ずつ減らしていき、
最終的には来年の2月に禁煙が完了!というナイスな計画を遂行中のようである。

「ほー、それは凄い計画だねー」と一応褒めてあげるが、そんな計画じゃ禁煙なんて、
 まず120%無理だから!」と、太鼓判を押してあげたい。
そんな意味のわからん計画で禁煙できたら、俺が一万円やるわ。できんかったら百万円もらうけど。


私「考えてみーや。1月になったら1日1本やろ? そんなん絶対無理やん。
 その前にまず、1日5本しか吸えないはずの今日、すでに10本位吸ってるやん。
 訳のわからん縛りを自分に課すくらいなら、たばこなんて吸いたいだけ吸った方がいいって。
 1日に100本でも200本でも好きなだけ吸った挙句に肺ガンにでもなって、あの時タコの言うことを
 聞いとけば良かったと、死ぬ程後悔すればいいじゃん。」

巷ではタバコ1箱1000円になるとかならないとか言われているが、タバコ代に月に10万でも20万でもかけて、
最後には色んな所に借金しまくって、

「私はこれで、人生やめました。」 と、昔の禁煙パイポのCM風に言ったらいいじゃん。


ただ、隣に私みたいな健全な非喫煙者が居る時にはたばこは吸わないでね。 迷惑やから。
特に、昔はタバコ吸ってたけどやめましたっていう人間は、より煙に対して敏感になるから。
そこんとこ、夜露死苦!


私「さてと、ほら、雨も小降りになったみたいだし、外に出て釣りでもしておいで。」

私に駄目出しされて、しゅんとした会長、雨の中を渋々釣りに出る。  「よし。追い出し成功!」

しかし数分後には、 「やっぱりダメじゃー」 と、尻尾を巻いて戻ってくる。 戻って来んでもええのに。


相変わらず、やむ気配の無い雨。 
秘密基地とはいえ、所詮気休め程度のほら穴じゃ全ての雨の全てを回避できるわけではなく、
岩の上からしたたり落ちてくる水滴とか、横風と一緒に降り込んでくる雨とかで次第に服がじっとりしてくる。
午前9時、やまないどころか凄い雷を伴いながら益々激しさを増す雨(帰って天気予報見たら、徳山には
当時大雨洪水雷注意報が出ており、1時間に22mlの強い雨が降っていた)に、服が濡れて寒いわ
気持ち悪いわでほんとに頭に来たんで、こうなったらフルチンで釣りをしてやろうと思い、釣り座まで
どしゃぶりの痛みの中を傘もささず走って行く。

ベストにカッパ、Tシャツを脱ぎ捨てズボンに手をかけた私であったが、ふと沖を行くフェリーが
目に止まり、あれでも観光フェリーに乗ったヤングレディーが、素っぽんぽんの私を見て頬を
赤らめたらいけないので思いとどまる。
服を着直し、そそくさと会長の待つ基地へと戻る。    「やっぱりダメじゃー。」


そんな中、今日は何故か普段なら一番打たれ弱いはずの永田が、このどしゃぶりの雨と
地響きのように鳴り響く雷の中でも、めっちゃ集中して釣りをしている。

この悪条件の中でも頻繁に竿を曲げ、木っ端グロをブリ上げている永田が、不覚にもかっこいい
磯釣り師に見えた。  なんか1ヒロのタナでチヌを2枚も食わせてるし・・・


私「たいじ〜、今日の永田、なんか、めっちゃかっこええのー。」

会長「ほんとじゃ・・・。 どうかしたんかのー。 体調でも悪いんかのー。」


傘さして、永田の釣り座まで行き様子を聞けば彼、先週の大会時に同礁した広島の名手の方に
竿でアタリを取る方法を教えてもらったとかで、

永田「今日は浮きを見なくてもアタリが取れるから、それが面白くて面白くて!」

と、彼らしくないまさかの強気な発言が飛び出してきた。

基地に戻り会長にそれを報告すると、そんな永田に触発された会長も、
「よし。俺も行ってくるわ!」と果敢にも基地から外へ飛び出すが、

「やっぱりダメじゃー」と、すぐに負け犬のように逃げ帰ってくる。


会長「くそー、何なんこの雨と雷。昨日の夕方までは雨は降るはずじゃなかったのに、
    わやじゃーや。 何でいきなり予報が変わるかのー・・・・   って、あ・・・ 」

私「す、すまん。 俺がついつい雨雲を呼び寄せてしまったばっかりに・・・。」

巷の小中学校では、今日が運動会の所も多かったと聞く。

「世の小中学生諸君、ごめんなー。おじさんが雨男なばっかりに楽しみにしていた運動会が
 中止になって・・・。 おじさんも悪気があるわけじゃないんで、どうか勘弁して欲しい・・・。」


そして、釣り座まで行っては戻り、行っては戻りを、6時半から11時半までの5時間もの間繰り返す。

11時半を過ぎて、ようやく雨脚も収まったんで、会長と二人で永田の様子を見に行く。

相変わらす凄い集中を見せている永田が、沖を指差しふと呟く。

永田「あそこに居るカモメの集団。カモメが溜まってる所には撒き餌がたまってるから、
   絶対魚もいるはずなんだよね!」

と、カモメ軍団の手前に仕掛けを入れた途端、竿が引っ手繰られるようにしてひん曲がる!

永田「なんかぶちデカい魚が掛かった!走りが止まらん!」

糸を出しながら、必死で竿を起こそうとする永田。ラインはもの凄い勢いで走っている。

ラインがスプールから無くなるって頃、これ以上糸は出せないと意を決した彼がベールを起こし
やり取りを開始するも、所詮1.7号の道糸では、青物(推定)の走りは止められず、無念の高切れ。 
仕掛け、丸ごとLOST!

興奮冷めあらず、放心状態の永田に、

私「取れなかったけど、3人の中で初めて青物掛けたやん!すげーじゃん!
  掛けただけでもうらやましいわー!」と、激励の声をかける。

で、そんな永田の勇姿を見ていた奇跡の男が、

「俺も青物!」とか言いながら、2匹目のドジョウを狙ってカモメの手前へ仕掛けを・・・。

その瞬間、何故か1羽のカモメが大きく翼を広げ、会長の仕掛けに向かって突っ込んできた!

慌てた会長、必死のサミングで仕掛けを止めるも、抜群のタイミングでハリスがクルクルクルッと
カモメの足へ巻きつき、会長、生涯初となる空に向かってのやり取り、  レディー ファイッ! 


会長、久々に体験する、  「体感ショーック!」


で、最初は必死で抵抗していたカモメだが、すぐに失速して着水。
海面で最後の抵抗を見せている。

差し出すタモの枠に噛み付いたり、「近づくと引っ掻くぞ!」という素振りまでしてこちらを威嚇してくる。
見ていてすげー怖い。ぜってー触りたくねー。

「何とかしてくれい」と助けを求めてくる会長を、
「自分で撒いた種なんだから、自分で解決してくれい!」と、優しく突き放し、
「でも、可愛そうだから糸は途中で切ったりせず、ちゃんとほどいてからリリースしてあげてね!」と、
愛情たっぷりの言葉までかけてやる。

「うわっ」とか、「くそーっ」とか、「ひぃ〜」って言って、暴れるカモメに泣きそうになりながらも糸をほどき、
なんとか無事に海に返す事に成功。

リリース後、あまりの恐怖体験で放心状態の会長に、

私「3人の中で、初めてカモメ釣ったやん! すげーじゃん! 全然うらやましくないけど。 
  むしろ俺は絶対釣りたくないけど。」 と、激励の声をかける。  大笑いしながら。


色んな奇跡で常に我々を驚かせてくれる会長がまた、クラブ史に新たな伝説を刻んでくれた。 
ありがとう会長!

しかも今回は、カモメのリリースに四苦八苦している会長を、世界で初めてビデオに収めることに成功。
そんな貴重なシーンは下の方で!

で、その後は雨も上がり、楽しいひとときを過ごすことができましたとさ。 めでたしめでたし。

しかし会長、あんたほんとに天才やな・・・。  逆方向に。


たまたま見つけた、オーバーハングになっている秘密基地。
気休め的な場所とはいえ、雨が避けられる避難場所があって
本当に良かった。
基地の中で服を脱ぎ、水を絞る会長。

裸が気持ち悪い。

「ちょっと行ってくる!」と、勇気を出した会長が
果敢にも外に出る。


数分後には、「やっぱりダメじゃー」と
逃げ帰って来るのだが。

どしゃぶりの雨が降る中でも珍しく集中し、
巨大な青物をかけた永田名人。

不覚にも、ずぶ濡れになりながら釣りを続ける永田が、
少しだけかっこよく見えた。
で、そんな永田の勇姿を見た会長が、
2匹目のドジョウを狙ってやろうと、同じように仕掛けを投げると、
なんとカモメが・・・

空に向かってやり取りした挙句に取り込んだ、
貴重な1尾。


You-Tube とニコニコ動画どちらからでも見れますが、個人的にはニコニコ動画でお願いします。


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