6月14日  蓋井島


6月14日、土曜日。
今日は、初めての響灘、蓋井島の磯。
前々から来たいとは思っていたのだが、何となくきっかけがなく今日に至る。

しかも、日本海や響灘の磯は瀬戸内と違って荒いイメージがある。
5mを超えるバカ波が普通に釣り人を襲って来るらしい。

行かれたことのある方にはわかると思うが、日本海に面する山陰方面の漁港のテトラは、
要塞のようにバカでかい。仮に釣りの最中、テトラから足を滑らせて海に落ちたならば、まず戻れないで
あろう位にデカい。でないと、日本海の荒波が防げないからである。

バカ波が来る前には、ありえない位に磯際の潮が引いていくらしい。
そんな潮の引き方を目撃したら、とにかく釣りを放棄して高い所へ移動して、襲い来る波に警戒しなければ
ならない。とにかく海に背を向けてはならないというのが、日本海や響灘方面の磯の鉄則らしい。

基本ヘタレな我々としては、そんな波が怖くて山口県でも日本海とは違って比較的穏やかな瀬戸内海方面へ
釣行することが多かったのであるが、釣りにハマって来るにつれより大きい獲物を求めてしまうのは釣り師の
性であろうか。魚というものは何故か荒い海ほど大物が育つようで、得体の知れないデカバンとの遭遇確率は、
瀬戸内を遥かに凌ぐらしい。

山陰の磯でデカい尾長と格闘してぇなぁと思っていた矢先、偶然にもこのホームページを見た高校の同級生の
カクちゃんからメールが届く。
実はカクちゃんは、昔一緒にバンドを組んでいたことがあって、X-JAPANのコピーバンドとして高校の文化祭
にも出場した仲間。
今は茨城で頑張っている山陽小野田チヌクラブ茨城支部長のクラッチがリードギターのHIDE役、カクちゃんが
サイドギターのPATA役、そして私がピアノ&ドラム担当のYUSHIKI役(ピアノは弾くフリ)として当時は色んな
意味でキャーキャー言われたもんであるが、そんな栄光も今は昔。寄る年波には勝てず、今では風貌もヨシキと
いうよりは、どちらかと言えばむしろオスギと言った方がしっくりくるのであるが、それもまた人生と
前向きに生きていきたいと思う。

話は逸れてしまったが、高校時代以来音信不通となっていたそんなカクちゃんから、響灘の蓋井が面白い
から行こうよってお誘いを受け、最近少しずつクロにはまりつつある我々3人と合わせ、計4人で蓋井島釣行。
ちなみにカクちゃん、全盛期には、年間50回も蓋井島に釣りに行ってたとのことで、年間50回と言えばほぼ
週一ペースなわけで、カクちゃん、君、凄いな・・・。
ってことで、蓋井島を知り尽くす男カクちゃんは、本日より山陽小野田チヌクラブ名誉顧問に就任。
これからは頑張って、その持てる技術を余すことなく私だけに伝授して欲しい。


今日の撒き餌は、オキアミ2角にアミエビ1角。メガミックスグレとV9スペシャルを各2袋。
これを2回に分けて使用。
オキアミの1角はクーラーへ、集魚剤の半分は後半用に磯クールバッグの中に入れておき、折り返しの
時間になったら混ぜ合わせる予定。

カクちゃんの事前情報では、「蓋井島では何が食ってくるかわからんけー、竿も仕掛けも太い方がいいよ〜!」
ということだったので、久しく日の目を見ていなかったダイワの大島磯クレッサ1.5号が登場。
安売りセールのときに、いつかは磯に行って大物と対峙する時の為にと思って買った太竿の本領を、
遂に発揮するときが来た。朝一は特に気をつけておいた方がいいとのことで、ハリスは巨大尾長の不意打ちや、
300kg級の本マグロとの戦いも視野に入れて、2,5号を選択。

会長も、いつもとは少し状況が違う今日の釣りに、「今日は体感ショック、浴びまくりなんじゃね?」と興奮気味。


蓋井島へと向かう渡船の中でも、 「今日は何かが起こる・・・」 そんな予感がしてならなかった。

朝4時、船長より4人でも釣りができる広い磯に上げて頂き、撒き餌作り。
辺りがぼちぼち見え始めた頃、釣り開始。

「今日は何かが起こる!」との私の予感は、早くも的中。 
午前6時、その時は突然やって来た。


 「ザッブーン」 


日本海特有のバカ波が、撒き餌の大量に入った会長のバッカンを、綺麗に磯際からさらっていった。
ひっくり返ったバッカンから、会長の今日一日分の全ての撒き餌が海に放たれる。


「会長、体感ショーック!」


釣り開始早々、特大の体感ショックを感じることができた会長、
慌てて空になったバッカンを一生懸命拾い上げたものの、何が起こったのかを理解できずにしばし放心状態。

会長、わざわざ蓋井島まで磯釣りに来て、さぁこれからといういう時にも関わらず開始からわずか1時間
ちょっとで、早くも本日の釣り、終了〜!

「午前6時です。  ご愁傷様でした。」


回収の午後1時まで残り7時間もあるけど、残された時間はタモ係やみんなへのお茶配りなどのサポートに
徹して欲しい。会長よ、やることが無くなった時こそ自分で何かできることを探す。それが仕事の出来る、
立派な社会人というものだ。

しかし、わざわざ蓋井島まで遠征してきて、未だ見たことの無い大物を前にしているにも関わらず、
たった1時間での強制終了とはこれ、会長、過去最大の体感ショックなんじゃね?
いや、体感ショックと言うよりはむしろ精神的ショックの方が大きいような気もするが、まぁ、所詮人事なので
放っておく。


ただ呆然と撒き餌で濁りまくった海を見つめながら、微動だにしない会長。

可哀想な彼に掛ける言葉も見つからない私は、とりあえず無言で彼の釣り座に歩み寄り、その濁りの中に
仕掛けを投入。狙い通り、見事30cmのクロをゲッツ! イェイ!

折角会長が捨て身の攻撃で大量の撒き餌を撒いてくれたんだから、彼の意思は無駄にはしない。

私「永田〜、永田も早くこっち来てみ。今ならここ、撒き餌がむっちゃ効いてるから。」

向こうで釣りをしてる永田名人も呼んでみた。
そして、私の磯クールバックの中に予備の撒き餌が入っていることは、私の胸の内だけにそっと秘めて
おきたいと思う。


今日もまた、自分の釣りを放棄してまで笑いに走ってくれた会長。

そんな彼に敬意を表し、合掌しながら一礼する。   「な〜んま〜いだ〜 」


あまりにおかしくてあまりに可愛そうな会長の事は、そっとしておいてやるのが一番と、私と永田はそのまま
彼を放置プレイ。
まぁ一応君も大人なんだから、自分で起こしたトラブルは、自分で解決してネ♪

でも、そんなかわいそうな会長の元へ歩み寄ってあげている、とっても良い人の名誉顧問カクちゃん。
会長は変態なのでそのまま放置されてる方が喜ぶから、次からは放置しといて良いからね。



その後も暫くオロオロする会長の行動見てて笑ってたけど、折角蓋井島くんだりまで来てお茶汲み係
させるのもかわいそうなんで、まぁ、多めに持ってきた予備の撒き餌を分けてやる事に。

私「たいじ〜、俺のクールバッグに後半用の撒き餌があるから、それ使ってええよ。」

我ながらなんと優しい男であろうかと思う。自分でも感心する。

とりあえず、離島価格の1000円で売ってもおかしくないメガミックスグレを、半額の500円で売ってやる
ことにした私であるが、そんな私の優しさを無視するかのように、「100円まけて400円にしろっちゃ!」と、
何故か上から目線で金額を値切ってくる会長。

「君、自分の置かれている立場わかってる?」

嫌そうな顔で、渋々私に500円払う会長。撒き餌のみならず、恩まで売ってしまった。
いつか何倍にもして返して欲しいと思う。


で、会長も撒き餌を作りなおしたところで、4人揃って仕切り直し。
山陰の磯は瀬戸内と違ってタナが深く、釣りが難しい(ような気がする)。
加えて若潮の今日、はっきりとした潮が動いておらず、非常に釣り辛い。 らしい。(カクちゃん情報)

餌取りはわんさか沸いているのに、本命のクロがアタってこない。
時間はとっくに9時を回っているにもかかわらず、私に釣れたクロは最初の1匹だけ。

私の10m向こうで釣りをされておられる、フローティングベストに某メーカーフィールドテスターの刺繍を
入れておられる方が時折竿を曲げておられるのは、きっと気のせいだと思う。

何が違うのかを盗むべく、高台にあがって菓子パンかじりながらしばし他の人の釣りを観察。
カクちゃん曰く、「撒き餌の打ち方だと思うよ」とのことであるが、私にはよくわからん。

しかし、高台にあがってぐるり回りを見てみると、この辺り凄い景色。
そして、なんと釣り座の多いこと。
暫く景色を眺めながらいろんな釣り座を見ていたら、ふと小威勢という磯に、某釣り雑誌に
「釣っちゃろ〜もん漫遊記」を連載されておられるTさんと、
「でったん!フカセ上達塾」を掲載されておられるEさんを発見。
ってことは、今度のお二人の釣行記は蓋井島ですか?とか思いながら、しばしお二人の釣りを拝見。

向こうもあまり釣れてないのか、Tさん、おもむろにエギングロッドに持ち変えられる。
ビュッと投げ、シャクったと思ったらもう竿が曲がってる・・・。
パッと見、キロオーバーのアオリ?

釣ったイカを写真に撮られてるところを見ると今度の釣行記でその写真、使われるんですね?


さて、モグモグと菓子パンかじりながらボーっと景色を堪能している私や永田を尻目に、
一人まさかの大健闘をしているのが、朝一撒き餌をバッカンごと海に撒いてしまった奇跡の
天才釣り師。

向こうで離れて釣っている彼の釣り座からは、頻繁に 「体感ショーック!」 の声が聞こえてくる。
今日は彼、得意のキザクラの全層ルートって水中浮きを使って、全遊動で釣っているのであるが、
これが見事にハマっているようで、何故か絶好調。
撒き餌ワークもへったくれもあったもんじゃなく、思いっきり撒き餌を浮きに被せまくりであり
スズメダイも沖に出て、優雅に撒き餌をつまんでいるこの状況、
そんなデタラメな釣り方でも釣れるんだから、何が正解なのか全然わからん。


で、そんな会長、

会長「今日は師匠の言う事を素直に聞いたら入れ食いじゃ!」と大興奮。

私「あれっ? 師匠? って、あんた師匠がいたの?」

詳しく話を聞いてみたら、会長が勝手にキザクラの柴原さんの事を師匠って思いこんでいるだけのようで、
師匠の言う事というのは、柴原さんがDVDの中で話しておられた解説のコメントを指すようである。

柴原さん、知らないところでこんな会長みたいな人に勝手に弟子入りされて、凄く迷惑だろうな。
そんなことを思いながら、さりげなく私も仕掛けに全層ルートをセットするのであった。
しかし、私の釣り座は相変わらず沈黙を保ったまま。

仕掛けも釣り方も、遜色ないはずの私と会長であるが、その後も何故か会長だけが絶好調。

ここで釣りの手を止め、彼の釣りを見ながら、なぜ今日の彼が調子良いのか考えてみた。

仕掛けは同じ。撒き餌も同じ。  あと、私と彼の違いと言えば・・・  

「あ、わかった。 会長は朝一で、バッカンごと撒き餌を海に撒いたからか・・・。」



10時30分、潮も干潮に向けて大分引いてきたことだし、撒き餌の効いている会長の釣り座横へ
こっそり移動してみた。
今までの釣り座と違って、ガンガンに動いている潮の流れの中に仕掛けを入れ、仕掛けが馴染んだ
直後に浮きが視界から消え、私も足の裏サイズをゲット!
磯って、少し場所が変わっただけでも潮の流れが全然違って、釣果も全然違ってくるんだから不思議。


それからは私にもアタリが頻発し、納竿の13時まで楽しいひとときを過ごすことができましたとさ。
めでたしめでたし。

途中、放置プレイしていた私の仕掛けの素針にバリ(アイゴ)が食いついて、竿受けにセットしておいた
竿とリールが丸ごと海に落ちてしまったり、納竿直前、最後の1投で合わせを入れた永田名人の
BB-Xの穂先が華麗に折れたりと、色んなドラマがあった一日だった。

私らの裏の釣り座では、朝一に40cmの尾長が3枚もあがっていたようで、帰港してから見せて頂いた
その魚体に感動。
「釣っちゃろ〜もん漫遊記」のTさんもそれを写真に撮っておられたので、今度の釣行記にはその
尾長の写真も?


よし、次は私が40オーバーの尾長じゃ。






山陽小野田チヌクラブの
名誉顧問に就任されたカクちゃん。
年に50回も蓋井島釣行ってアンタ・・・
バッカン1杯分の撒き餌で、濁りまくった
会長の釣り座。

もし私が居なかったらその後の釣りが出来なかったで
あろう会長、もっと私に感謝して欲しい。
素針を食って、高価な竿とリールを海に持っていって
くれたバリ。
さすがに今日はもうダメかと思った。
タモが6mで、本当に良かった。
魚も釣れるが景色もすごい。
型は出ませんでしたが、後半になって
数は釣れました。

さすがはバッカン一杯の撒き餌を朝一撒いた
だけあって、会長の釣り座が一番釣れました。