5月23日  プラクティス


なんとなくリールを左ハンドルに変えて、早数ヶ月。
ようやくリトリーブも違和感無くこなすことができるようになった。

ただ最近気が付いたことには、餌取り用の撒き餌を右手で撒いた後、仕掛けを投入し、
右手で持ってる竿を左手に持ち替え、右手で本命用の撒き餌を撒いた後、再び竿を右手に持ち変えるという
一連の動作に、なんだか違和感を覚えた。
自分、とっても無駄な動きをしてるんじゃないかと感じたわけだ。

利き腕の右手で竿を捌くことができる左ハンドル、左手で撒き餌を撒くことができればこの上ない武器と
なるかもしれないが、残念ながら私は左手で撒き餌が撒けない。正確に言うと、足元から10m先くらいには
なんとか撒くことができるが、遠投ともなると撒いた撒き餌はパラパラと空中でバラけてしまい、どうにも
上手くいかない。


ってことで、私は左に矯正していたハンドルをさりげなく右に戻した。
左手で遠投ができるまではこのまま右ハンドルでいきたいと思う。
左で撒き餌を撒く練習は、家の庭でバッカンの中に赤土を入れて、それを投げて行おうと思う。 (嘘)


はい。という訳でサクッと左ハンドルを断念した私、本日は金曜日のウィークデイにも関らず、中野の
おっさん左衛門と平日釣行。今週末も仕事の私は、ジャパンカップまでに何とか1回プラクティスを行って
おきたかったので、かなり無理して代休を取る。そのことを会長に伝えると「俺も行く!」ってことで2人での
今日の釣りであるが、比較的休みが取り易い会長の職場が、本当にうらやめしい・・・。


さて本日の撒き餌、一般的に地アミを入れると、集魚力は高まるがその分餌取りも増えるそう。
前に大津島で釣った時には餌取りが大量に沸いていたので、今日の撒き餌には地アミを入れない作戦。
オキアミも大きいまま、なるべく形を崩さないように練ってみる。
表層に大きいオキアミを漂わせ、餌取りが時間を掛けて突付き合っている隙に、ツケ餌を本命のタナに
入れてやるイメージ。

本日はオキアミ2角にV9スペシャル、メガミックスグレ、遠投フカセTRにパン粉を1kg。
基本的に、赤い撒き餌で攻めてみる。
ツケ餌も、前回は剥き身が調子良かったのでメインは今日も剥き身。
更には赤系の撒き餌と同調させる為に赤く着色してみた。
念のため、オキアミ生とサシアミも準備。  さて、釣果はいかに??


釣り場までの道中、車を走らせながら、会長と人生のはかなさについて語り合う。


例えば車の運転、一瞬の判断ミスが、その後の人生を大きく左右するかもしれない。
人は、普段は気づいていないほんの小さな分岐点で、その後の人生が大きく変わってしまうかもしれない
可能性と、常に隣り合わせにいるのだということを思うと、なんだか人生ってはかないなぁと感じるわけだ。
リセットは効かない。  だからこそまぁ、面白くもあるんだろうけど・・・。

いや、どうしてまた突然そんなおセンチな事を急に思いついたのかといえば、車を運転しながらふと会長の
横顔を見たら、ついつい思わず前の大会での出来事を思い出してしまったから。

あの時私は、我慢の末に本命のチヌを釣り上げた会長とそのチヌを、写真に撮ってあげようかと一瞬思った。
でも、めんどくさかったのでやめた。

もし仮にその時、私が記念撮影で携帯カメラを会長に向けていれば、会長のその後の展開は変わっていたかも
しれない。チヌが暴れて、不意にリリースすることもなかったかもしれない。
そうすれば会長はそのチヌを検量にかけることができ、チヌの部入賞でウハウハってことになっていたはず。

しかし運命の悪戯か、彼は苦労の末にせっかく釣り上げたそのチヌを、ご丁寧に海に帰してしまう。

逃げてしまったチヌを、あたかも時が止まってしまったかのように、いつまでもいつまでも呆然と見つめる
会長の姿が、あまりにもせつなかったから。
背中を小刻みに震わせながら、いつまでもいつまでも海を見つめる会長の後姿が、あまりにも悲しかったから。

そして、意を決したようにおもむろにこちらを振り返った後で、
「キャッチアンドリリース!」って、ぽつんと呟いた彼の一言が、可笑しくてたまらなかったから。

絶対にミスが許されない一番重要な場面で、マンガにでも出てきそうなパーフェクトのミスを犯してくれる会長。

これはもう、私のような凡人では到底辿りつくことの出来ない神の領域。 
選ばれた人間にだけ踏み込むことが許される、幻のサンクチュアリ。
とりあえず私は、そちら側の人間に選ばれなくて良かったとしみじみ思う。

でもまぁ、こんなに身近に神に選ばれた人間がいるのだから、折角なので手を合わせて拝んでおこうと思う。
「な〜む な〜む ち〜ん」


ってことで、今日は気を取り直して中野のおいさんも、体感ショックを体験すべくクロ狙い。
念のために説明しておくと、体感ショックとは彼が愛用している釣りメーカーキザクラの仕掛けを使って取る
道糸のアタリのことであり、オープンベールのスプールに充てている指先が、ラインの出によってバチバチっと
はじかれる様を例えて、そう呼んでいるそうな。
(ちなみに以前会長が体験した体感ショックは、買ったばかりの竿が折れたり、次の日に熱が出て寝込んだ
ことのショックであり、本来のアタリを取る為の体感ショックとは少し意味合いが違う。)


そして本日、開始早々いきなり会長が叫ぶ。
「タコ、ラインが走った!  体感ショーック!」    上がってきたのは、丸々と太ったフグ。
「あれっ?一応ラインは走ったんじゃが・・・」  

ふむ。まぁ、フグのアタリも鋭いから、きっとさぞかしラインも走ってくれたであろうとは思うのだが、
いっそのことそのフグを、そのまま生でむしゃむしゃ食べると、もっと鋭くてこれまでに体験したことの無いような
強烈な体感ショックを味わうことが出来んじゃない? むふふっ。  
                                     (※注 良い子は絶対マネしちゃ駄目だ!)       


で、今日は餌取りの活性が高い割には、何故かクロの食いが悪い。
海面はスズメダイで真っ黒になるのであるが、肝心のクロがなかなか混ざらない。
たまに釣れてもサイズは手の平。
散々スズメダイに弄ばれた後で、早々にクロ釣りをあきらめる会長、
「スズメ鯛にしろスズメ蜂にしろ、スズメと名のつくものに、ろくなもんはおらん。」と捨てゼリフ。

実は会長も以前、宇部の小野湖ってダムでブラックバスを釣ってて、何気にスズメ蜂に襲われたことのある
スズメ蜂経験者。
彼もまた、命からがら車の中に逃げ込んで何とか事なきを得たのであるが、その時に私と同じく車の窓から
無理矢理中に入ってこようとするスズメ蜂の顔を間近で見て、そのことがトラウマになっているらしい。

会長「スズメ蜂、めっちゃ悪そうな顔してたから。 あの顔は、相当な悪党だから!」 と何故か興奮気味。

実は私、毎年秋になると、必ずといって良いほど家の庭でスズメ蜂と格闘しているのであるが、
確かにそのスズメ蜂の顔の悪そうなことと言ったらもう・・・。

うちの庭の柿の木から地面に落ちたベチャ柿を、その時期スズメ蜂がついばみにやって来る。
私としては、「何人ん家の庭に勝手に入り込んで、縄張り荒らしてやがんだよ。」ってな感じで許しておけない
わけで、左手に殺虫剤、右手に巨大スコップを持ってこの森のチンピラと戦うのであるが、殺虫剤を
少々ぶっかけてもこやつ、なかなか倒れない。元気に空を飛んで逃げていく。

スズメ蜂の生態も不思議なもので、餌の捕食モードの時は、ほとんど襲ってくることはないのであるが、
一度攻撃モードにスイッチが切り替わると、車の窓の隙間からでも平気で車の中へも入り込もうとするくらい
凶暴化する。チャンスは捕食中。

無論私は、蜂が空を飛んで逃げる前にスコップで叩く必要があるわけで、下手をするとこちらもタマを
獲られかねない。
我が家では毎秋、血で血を洗う緊迫した抗争が繰り広げられる。

スズメ蜂の顔を間近で見たことの無い方のために、秋になったらその命をかけた戦いの記録、そして義理人情
など全く通じない、冷酷無情な彼らの素顔もアップしていきたいと思う。

で、そんなスズメ蜂と同じ冠を持つスズメ鯛に翻弄された会長は、密かに持参していた砂を撒き餌に混ぜて、
即席紀州釣りに作戦を変更。結局何も釣れず、クロもチヌも釣れないどっちつかずの中途半端な結果に終わる。
ここに来て彼、ようやく本領を発揮。


そして私、今日もお気に入りの棒浮きでクロと格闘。
チヌを釣るときでもクロを釣るときでも、余程のことが無い限り私は棒浮きを使う。
ラインでアタリを取ることのできない未熟者の私が、遠投しても手っ取り早くアタリを察知するには
やっぱり棒浮き。今日は板鉛貼って、極限まで浮力を調整したダイワのベガステックでの挑戦。

前の大津島では剥き身が調子良く、針に残ってくることはなかったのであるが、今日は着色を施した
食わせムキムキV9(勝手に命名)が時折針に残ってくる。

生オキアミ、サシアミ、剥き身とローテーションした結果、今日はサシアミが当たり餌だったようで、
午前10時過ぎ、サシアミで立て続けに2枚の足の裏サイズをキープ。
しかしその後は、かろうじてキーパーぎりぎりの23cmが1枚釣れた程度。
ジャパンカップのキーパーサイズである23cm以上のクロを5匹は、残念ながら揃えることができなかった。
木っ端グロの中からいかに型を出して行くかが今後の課題であるな。





今日は、オキアミ生、サシアミ、
ノーマル剥き身、着色剥き身で釣ってみる。
クロが釣れないので飽きた会長、
持参した砂を撒き餌に入れて、無理矢理紀州釣り作戦に
釣り方を変更。
私の今日の釣果。
足の裏サイズが2枚に、23cmのキーパーが
1枚。20cm前後のノンキーパーは結構釣れたが、
イマイチ型の出し方がよく分からない。