5月11日  CAST杯磯釣り大会


5月11日日曜日、地元釣具店CAST主催のCAST杯磯釣り大会の開催される日である。
実は私と永田名人は中学生だったおよそ20年程前、釣具店の名前がまだCASTではなく前身の宇部釣具だった
頃に、丸山ダムってとこで開催されるブラックバス釣りの大会には参加したことがあり、それ以来の大会参加で
ある。その時は確か私がブービー賞で、タックルボックスを貰ったっけな。

この釣り大会、グレの部とチヌの部の2つの部門があり、私と永田名人がキーパー20cm以上のグレ、7匹の
総重量で争うグレの部、会長が1匹の最長寸で争うチヌの部に参加することに。
グレの部は20位まで、チヌの部は10位までが入賞となる。

当初は永田もチヌの部に参加する予定であったのだが、私が餌取りが沸いてて
チヌを釣るには難しいかもよってアドバイスをしたため、急遽グレ釣りに変更。

グレの釣り方なんてわからないと言う永田名人には、沸いたら誰でも釣れるからと的確なアドバイス。
で、私の忠告を無視してまで敢えてチヌを狙う会長には、練り餌とかコーンとか、餌取りに強い系の餌を持って来て
おいたほうが良いよと一応忠告。

そして私、当初は撒き餌は、赤系のV9スペシャルで挑もうかと思っていたのであるが、
夢の中で職場のおばちゃんの、「白く濁らせたら方が食いが立つよ。 ついでやからさなぎも入れとき!」って
お告げがあったため、直前になって撒き餌をV10スペシャルに変更。さなぎも500gほど入れ、グレ狙いで浮いてきた
チヌも狙う。果たして魚は釣れるのか?


受付開始は午前3時半。大会開催本部の置かれる周南市の晴海埠頭までは、国道2号線を通ってここからおよそ
2時間の道のりなので、余裕を持って集合時間を午前1時30分とする。

1時半の集合時間なら、1時には起きないといけないな。寝る時間、ほとんどないじゃん・・・。とか思ってたら、
案の定会長10分遅刻・・・。
永田名人にいたっては、電話をかけても繋がらない状態。   完全に寝とるがな・・・。

会長と二人、永田の分まで頑張ろうと心に誓った直後、彼から電話。
どうやら今起きたそうで、仕方が無いので直接家まで迎えに行くことに。

で、午前2時、30分遅れで出発も、こんな時間やから道も空いてて3時半には会場に無事到着。


この釣り大会、友達とペアを組んでわいわい楽しくエントリーできるのも良い。
今回は、3人揃ってのエントリー。
受付を済ませ、瀬渡しの順番を決める運命のくじ引き。

うちの会長、普段は全くに役に立たない男であるが、何故かこういう時には抜群の引きを見せてくれるので、
彼にくじを引かせることに。
多分私や永田がくじを引いたら、断崖絶壁のような釣り座に下ろされて釣りにならないだろうと予想し、
全てを会長に委ねる。

んで引き強の会長の、くじ引きにより渡された磯は、大津島の回天資料館すぐそばの潮通しの良さそうな場所。
場所によってはクロは釣れたり釣れなかったりするそうであるが、間違いなくここにはクロがいると直感。
足場も良いし、最高ですやん。  会長はん、たまにはあんたも役に立ちますのー。

瀬上がり後、辺りはまだまだ薄暗い。撒き餌を練り練り、周囲が明るくなるのを待ちながら足元に撒き餌を撒く。
ぼちぼち辺りも明るくなりはじめたので海面を見ると、撒き餌に群がる大量のスズメダイを確認。
やはり魚影は濃い。ただ、今の徳山湾、藻が至る所に点在しており、掛けた魚を如何に藻に巻かれないように
やりとりするかが今日の課題になる。

私の釣り方は、魚を掛けたら一気に海面まで浮かせ強引に寄せる作戦。
大遠投し、ガチガチに固めた撒き餌を1杯だけ被せる。
仕掛けがなじんだ後綺麗に浮きが消しこみ、1投目から手の平強のキーパーサイズ。
永田名人も、順調にキーパーを重ねていく。

浅棚を狙う私や永田のクロ釣りはこれでいいが、深場のチヌ狙いの会長はちょっと厳しい状況。
案の定チヌっぽい魚を掛けても、藻に巻かれ頭を抱えている。
06号の鱗海スペシャルに、1.2号の細ハリスでは勝負になっていない。

竿をNISSINの1号竿に変え、少々太仕掛で強引にやり取りした方が良いのでは?とアドバイスするも、
頑なに拒否し続ける会長。
加えて底狙い、彼お得意の重いガン玉をハリスに打つL字釣法では、仕掛けは根掛かりのオンパレードで
はっきり言って釣りになっていない。
魚の活性は高そうなので、底切って釣れば?と、アドバイスしようかとも思うが、頑固な彼、きっと聞き入れないで
あろうと推測し、放っておく。

私と永田名人はクロが入れ食い。ぎりぎりサイズであるが早々にキーパーを7匹揃え、入れ替えを狙う。

納竿の12時過ぎまで2時間を切り、度重なる根掛かりでまた糸の切れた会長が、ついに禁断の言葉を口にする。

会長「もうダメじゃ。この餌取り地獄、根掛かり地獄の中じゃ、チヌは釣れん。俺も今からクロ狙おうかな・・・」 と。


私「会長さんよ、あんた、今日はチヌで入賞狙いに来たんじゃないの?
  今からそんな中途半端にクロ狙っても、結局どっちつかずで自滅するだけなんじゃない?
  あれだけ俺が餌取りが沸いててチヌは難しいかもって言っても、全く聞き入れずに
  敢えてチヌを狙いに来たんじゃろ? そんならあきらめずに、最後までチヌを狙ってみーや!」


私のその一言で、彼の顔つきが変わった。

クロが入れ食いモードの私や永田の釣りに流されそうになっていた彼が全ての迷いを捨て、今、完全に腹を
括った。

私「3人が3人、足元に散々撒き餌を撒いてるんじゃから、絶対チヌは寄ってきてるはず。
  しかもこれだけ魚の活性は高いんじゃから、確実にチヌは浮いとると思うよ。
  竿と仕掛けを太いものに変えて、掛けたら藻に巻かれる前に一気に浮かせるようなやり取りしてみーや。」

そんな私の言葉をきっと不服に思っているのであろうが、無言のまま竿ごと仕掛けを太いものに変えている。 
棚も底を切るように調整した模様。


そして納竿1時間前の午前11時過ぎ、遂に会長がチヌを釣り上げる。
29cm。決して大きいとは言えないが、この餌取り地獄の厳しい状況の中で遂に彼がチヌを釣った。
さりげなくアドバイスはしたものの、まさか本当にチヌを釣ってくるとは思わなかった私、
「こんな状況下で、よう釣ったのー!」と、健闘を称えてやる。

しかし彼、これではまだ満足していなかった。
早々にスカリにキープし、手返し良く次の獲物を狙っている。
12時の納竿まで10分を切り、用意してきた最後の練り餌を針に指す会長。

ドラマは最後に待っていた。

ずっと集中を切らさず、最後まであきらめなかった会長に今、海の神が降臨した。

会長「たこ、来た!」

彼の言葉で海面に目をやると、そこには紛れも無く本命の銀鱗。
太仕掛けで、藻に巻かれる前にブリ上げる作戦が功を奏し、一気に海面に浮かせる。

差し出すタモに収まったのは、40cmのチヌ。
チヌの部10位以内の入賞は間違いないであろうサイズ。


私「このチヌは完全に俺のおかげやな。俺がチヌをあきらめるなと言わんかったら、絶対クロ釣りに
  変えちょったろーがや。」

会長「あほかっちゃ。俺は最初からチヌ一筋じゃい!」   

ようやく彼の表情に笑顔が戻る。

憎まれ口もお手の物であるが、残り時間も少ないこの状況でこの男、本当にやりおった。
こんな厳しい状況でも、ラストでドラマを作ってくれるあたり、少しだけ彼のことを見直した。



しかし・・・、

本当のドラマはここからであった。


会長「永田〜、見て見て〜♪ すげーやろ? 俺、最後にチヌ釣ったよ〜♪」


チヌを高々と掲げ、永田名人に見せびらかしている会長。  その時であった・・・。
会長の手にしたチヌが最後の抵抗を見せた。


ピチピチー → ツルリン → ポトン → バタバタッ → チャポン → ピュイーン


そう。奇跡の男会長は、10位以内入賞間違い無しのチヌを、あろうことかご丁寧に、海に返して
しまったのだ・・・。


チヌにしてみれば、棚からボタ餅。

チヌ「あれっ? 最後の力を振り絞って暴れてみたら、なんか海に落っこちたぞ。
   わて、海に帰ってええんでっか? ほんまでっか?  ほなさいなら〜!」 

と言わんばかりに、元気に海に帰っていった。

降臨していた海の神と入れ替わるように会長に今、笑いの神が降臨した!

一瞬何が起こったのか理解できなかった私と永田であったが、状況を把握したらなんだか笑いが
こみ上げてきた。

会長はん、あんた、おもしろ過ぎでんがな。

別に入賞間違い無しののチヌを捨ててまで、笑いに走らなくても・・・。


時が止まったまま、呆然と立ちすくむ会長の横で大笑いの二人。

巷では、歳を取るにつれ本気で笑うことが減ってくると言うが、いくつになってもこのおっさんは
我々のことを心の底から笑わせてくれる。  あ〜、腹痛い。

微動だにせず、じっと立ちすくんだままの会長を見ていたら、少しだけ可愛そうになってきたので
慰めの言葉をかけてやる。

私「たいじよー、たかが入賞がパーになっただけじゃん。元気出せっちゃ!」

永田「他の釣り場でチヌが釣れてなかったら、今のチヌで優勝できていたかもしれないけど、
   元気出せっちゃ!」

あーおもろ。


で、検量の結果、永田名人が初めての沖磯、初めてのクロ釣りで大健闘の12位入賞。
私はまぁ、一応キーパーを揃えた程度。

会長も、最初に釣った29cmのチヌを一応検量に持ち込むが、チヌの部ではもちろんランク外。
彼にとっての唯一の救いは、優勝者のチヌが50cmを超えてたって事くらい。
仮に逃がしたチヌを検量にかけていたとしても、6位か7位くらいの順位だったであろう。
入賞は逃したけど、それはまぁしょうがない。

しかし会長よ、魚には逃げられたけど、餌取りが大量に沸いたこのタフコンディションの中で、
あんたが見事に2枚ものチヌを釣り上げたのもまた事実。 俺達はしっかりと見させてもらったよ。

魚には逃げられたけど、俺も永田もあんたの勇姿をちゃんと見ていたぜ。

逃げたチヌ、大会の中で記録には残らなかったけど、俺達の記憶には永遠に残っていくはずだぜ!


ただ正確に言うと、俺達の記憶に永遠に残るのは、手の中から転げ落ち、ピチピチチャポンと
逃げていったチヌを、ただ呆然と見つめるあんたの姿だけどな。   ぷぷっ






夢で職場のおばちゃんが、撒き餌は白がいいと
言われたので、急遽V10スペシャルを使用。

オキアミ2角にV10スペシャル2袋。
遠投TR1袋にさなぎを少々とあとパン粉。
開始直後、会長の鱗海スペシャルが大きな弧を描く。
ただ、この写真は藻に入られた後。
相手は藻っこ
人間魚雷回天の発射基地が、当時の面影のまま残る。
洞窟の奥は、回天資料館。

映画「出口の無い海」のラストシーンで、
海にボールを投げたのがここの通路。
回収待ち。

大満足の永田名人!
回天の基地を望みながら。
初めての沖磯、初めてのグレ釣りで、
何気にちゃっかりと12位に入賞してしまった
永田名人。
本日の私の釣果。
なんとかキーパーを7枚揃えた程度。
まだまだ修行が足りません。