3月15日  忘れ物を・・・



昨年、結局小野田一文字では1枚もチヌが釣れず、チヌという名の忘れ物を置いたままにしてきてしまった
永田名人。今回のお話は、そんな忘れ物名人が主人公。

今日は、メンバー3人揃っての小野田一文字釣行。
永田名人、今年こそ小野田一文字のチヌへの意気込みは、並々ならぬ物があるだろうと予想していた私、
釣り場での彼の第一声に言葉を失う。


永田「あ、やべー・・・  撒き餌の入ったバッカン忘れてきた・・・」

私「つ、釣りに来たってのにバッカン忘れてきたの? (汗)」

永田「何かが足りないような気はしていたが・・・。 とりあえず家に取りに帰ってくるわ。」


な、なんということであろうか。
撒き餌を撒いてナンボのフカセ釣り師が、事もあろうか家にバッカンを忘れてくるという失態・・・。
釣り云々以前の問題である。

プロ野球選手に例えるならば、試合開始直前に球場入りはしたものの、何故かフルチンの状態で右手に
ゴルフクラブ、左手にサッカーボールを持ってそこら中を走り回るようなもの。 意味がわからない。

唖然としている私をよそに、「じゃ、取りに帰ってくるわ!」と、高らかにアクセルふかしながら来た道を引き返す
永田名人。
「釣り場に忘れてきた、チヌという名の忘れ物を探す前に家にバッカンを忘れてくるとは、さすがは
忘れ物名人だ・・・。」
そんなことを思いながら彼の車を見送ってたら、そんな彼と入れ替わるように釣り場へとやってきた、
こちらも色んな意味で大物の自称、日本代表的黒鯛釣師。今日も相変わらず、銀行強盗の様なスタイルで
のこのこ釣り場へやってきた。

「バッカンを忘れるとは、さすがは永田、大物だ・・・。」と、彼のことを賞賛していたが、大丈夫だよ会長、
君も全然負けてないから。

ってことで、まずは会長と5時半の1番船にて一文字沖波止へ。
ここ最近、暖かい日が続いているので水温も少しはあがってないかなぁと早速水温をチェック!
これが予想外の12.6度。

「チヌ、食ってきても全然不思議じゃない位、水温上がってるやん!」と、会長と二人興奮していると、
忘れ物名人より電話。

ダッシュでバッカンを取ってきて、そろそろ漁港に着いたのかなと電話を取ってみると、なんと家で優雅に朝食を
取ってるとの旨。

「急いだって、どうせチヌなんか釣れんっちゃ。」と、たいそう呑気に構えておられる。

水温が大分上がっており、チヌが食ってきても全然不思議じゃないことを伝えると、

「それじゃ、ぼちぼち行きますか」と、これから家を出られるとの事。
電話を切る間際、「でも、どうせ釣れんじゃろうから、クーラーは持って行かないよ。」との一言に、
今年の彼のチヌへの意気込みが、ひしひしと伝わってくる。

暫くして、やってきた2番船。そこには、大人の余裕を見せる、彼の姿があった。
しょっぱなの彼のバッカン忘れには驚かされたが、これでようやく3人揃っての釣行スタートとなる。

開始から2時間、水温上昇の期待とは裏腹に、何の生命反応も見られない、沈黙した海。
ダラダラと虚しい時間だけが過ぎていく。

いつの間にか、会長と名人の釣り座では、船長を交えパチンコ談義に花が咲いている。
一昔前は熱心に研究を重ね、週末パチプロのような生活を送っていた私の栄光も今は昔。

本を読んで勉強し、台の特性を知り、こまめなデータ収集を欠かさず、なおかつ良い台掴んだら閉店まで
粘りきっていたあの頃。時間とやる気と根性があれば、必ず勝てると言えるパチンコ。
それは私にとってギャンブルではなく割の良いバイト。ただ、結婚して生活が変わり、色々な縛りが入り、
時間的な余裕も昔のように取れなくなってしまった今の私にとって、一昔前の割りの良いバイトは、
ただのギャンブルに成り下がってしまった。だから私はパチンコをやめた。
まぁ、その辺の深い話はまた追々。

要は、何が言いたいのかというと、彼らの話についていけないのである。
何が無限ラッシュでとか、リプレイがどうのこうのとか、今の私にとってはチンプンカンプン。
仕方ないので、一人釣りに集中するも依然アタリは無い。

暫くすると、今度は彼らの釣り場から、韓流ドラマについて熱く語り合う声が聞こえてきた。
ユジンがどうであるとか、サンヒョクさんとチェリンがどうであるとか、何やら相当盛り上がっている。
聞けば、ペ・ヨンジュンは、もっと男らしくした方が良いらしい。
しかし、韓流ドラマはおろか、最近ではテレビを見ることすら少なくなってきた私は、ここでも話に入っていけずに
チンプンカンプン。仕方ないので、引き続き一人釣りに集中するが、依然アタリは無い。

で、またまた暫くすると、今度は彼らの釣り場からワキガについて熱く語ってくる声が聞こえてきた。
周知の通り、ワキガとは、腋の匂いであるが、そのワキガについて誰のワキが臭いとか、自分のワキが
どうであるとか、とても盛り上がっている。
この話題には何とか入っていけそうであったが、今は別にワキガはどうでもいいので、一人釣りに集中する。
相変わらずアタリは全くない。


すると、ワキガ談義に花が咲いていた向こうの釣り座から大声が聞こえる。

「きたー!!!」

見ると、永田名人が綺麗に竿を曲げている。
慌ててタモ持って駆けつける私。

永田名人「あ、あれっ? ボラかっ? いや、チヌ? いや、ボラっ?」


これまで、幾度と無く竿を曲げ、チヌかと思いきやボラだったというオチに、人間不信、いや、黒鯛不信に
陥ってる永田名人。
ここでボラを釣ってくれれば、早くも今年のMVPが確定したのであるが、上がってきたのは無情にもチヌ。
永田ボラ釣り名人、実に2006年10月8日以来、1年半振りの一文字チヌゲットである。

タモですくってあげた後、どんな状況で釣れたのかを一応確認。


私「どんなアタリ方だった? やっぱアタリは小さかった?」

永田「いや、小さいも何も浮きは全く動かんかった。 適当に巻いたら釣れた。 びっくりした。」

浮きに動きが出ずとも、適当にリール巻いたら釣れてるあたり、さすがは名人と言ったところ。

しかしながら、食いが渋いのも事実であり、この近辺では、チヌの数自体もまだまだ少ないようである。
このチヌもまだのっこんでいなかったし、時期的にまだ少し早いか。
これから水温が上がって活性が上がるまで、しばしの辛抱である。

しかし、活性の高い時期にあれだけ釣れなかった永田が、生命反応の全く感じられない位に活性の低い今の
状況であっさりチヌ釣るとは、やっぱり彼も不思議な人だ。


朝一バッカン忘れてきた上に優雅に家で朝飯まで食ってきた永田が楽しそうに本命のチヌ釣って、
ワキガ談義で盛り上がりながら適当にやっていた会長が、2匹もアラカブ釣って、「鱗海スペシャルぅ!」とか
盛り上がってて、一番集中して釣りをしていたはずの私が、完封負けのズボズボズーボーとは、絶対何かが
間違っとる・・・。

これから隣の釣り座からワキガについての話が聞こえてきた折には、進んで仲間に加わっていこうと思う
今日この頃であった。





向こうの方で、ワキガ談義に花咲く二人。
永田名人、遂に1年半振りの一文字チヌゲット!