2月16日  左ハンドル


本日、2月16日、愛車のベンツ(4WD)に道具一式とたくさんの夢を詰め込んで、中野のおっさんと2人がかりで
関門釣行。


最近、めっきり寒い日が続く。
水温もかなりの勢いで低下していることが予想される。
で、

ここまで寒いとチヌは釣れないかも・・・
    ↓
でも相手がどんな魚であれ、浮きが入る瞬間は味わいたい・・・
    ↓
そしたら今が旬のメバルなんかどう?


ってな感じの会長の提案により、チヌが釣れなかった時の保険で、メバル釣りのためのモエビも用意した。
最悪チヌは釣れなかったにしても、お土産の確保には困らないであろう。


今回も新規開拓で初めて行く関門の釣り場。
水深もそこそこあってチヌはいそうだし、岩礁地帯でメバルも付いていそう!


釣り場に着いて、早速仕掛けを作っていると、会長が私のある変化に気付く。


会長「あれっ?タコ、なんでリールが左ハンドルなの?」

私「ふふっ?気付いた? これから先のトーナメントでの戦いを想定する中で、左ハンドルのほうが手返しが
 早くなるし、利き腕でレバーブレーキを操作した方が使いやすいって何かの本に書いてあったから。」

会長「何かトーナメントにでも出る気?」

私「いや、今の所まだそういった予定はないけどね。」

会長「だったら別に意味無いじゃん。何で今更そんな面倒くさいことするかねぇ?」

私「だまらっしゃい。なんとなく左ハンドル使ってる方が釣りが上手く見えるでしょうが。
  見た目の問題よ。見た目。 釣りは見た目が一番でしょうが?
  今日の俺、見た目は生粋のトーナメンターじゃ!」


そんな感じのトーナメント仕様で望む本日、果たしてメバルは釣れるのか???



一時間後。


私「おかしーのー。全く持って釣れんのー。餌すら無くならんわ。 ま〜たモエビが元気に生還してきたわ〜・・・」


チヌが釣れないのはある程度想定の範囲内だったが、モエビを使ってメバルすら釣れないのは
完全に予想GUY。
針先のモエビは一通り海底を散歩した後、元気に戻ってくる。
更には、考えもしていなかった出来事が追い討ちをかけるかのように私を苦しめる。


会長「よーい、おっさんやーい、空を見てみ、ついに降り始めたどい!

私「んっ? 何? って、おー  雪じゃ・・・   予報では雪が降るとは一言も言ってなかったが・・・
  ど、どーりで寒いわけじゃ・・・」

会長「雪の降る中での釣り、遂に俺達も究極レベルに到達したの〜。
   しかし幻想的な光景じゃ。 たまにはこうして雪の中で釣りをするのも、
   風情があって良えもんじゃのー。」

私「い、いや、全然良えもんじゃないと思う。 すごく寒い。
  ってゆーか、このめっちゃ寒い中で、どうしてあんたはそんなにテンション高いわけ?」

会長「だって俺、全然寒くないもん。寒さ対策はバッチリやもん。
  見てみ、このネックウォーマーとニット帽。 これを深々とかぶれば全然寒くないわ。」

私「おおー、あったかそうじゃのー。
  でも、客観的に見たら凄い格好じゃよ。
  あ、そうだ。良い考えがある。その格好のままロッドケースを担いで、どっかの銀行に入ったら
  100円やるぞ!」

会長「マジで?  でも、速攻でガードマンとかに取り囲まれそうじゃない?」

いや、大丈夫だと思うよ。別に何にも悪いことしてないんだから、仮にガードマンに囲まれても、
 
 「あなた方は、見た目で人を判断するんですか?
  ロッドケース担いで銀行に入っちゃいけないっていう法律でもあるんですか?」 
  
って逆切れすれば良いと思う。 だからちょっと行って来て!


と、さりげなく彼を挑発するも、残念ながら彼は銀行には行ってくれなかった。 つまんないなー。


で、餌は無くならないわ雪は降ってきたわで、一気にモチベーションが下がってきたところで何気に水温を
計ってみると、9,4度。先週より1度も下がっている。


ふむ。なんか風景は墨絵みたいになってきたし、水温は10度を下回ったし、まぁ、あれだな。  
ここにチヌはいねーわな。  チヌだけじゃなく、魚自体がいねーわな。



私の師匠曰く冬のチヌ釣り、朝から夕方まで全くアタリの無い状況で、我慢して我慢して最後に僅かに動く浮きを
見逃さずに手にする一枚に、何とも例えようの無い満足感があるそうであるが、ヘタレな私としては
この寒さの中で、魚が釣れる満足感なんて、正直どーでもいーやって思えてきたわけであり、
とてもじゃないが夕方まで粘れる気力など持ち合わせていないわけで、できることなら一刻も早く家に帰って
コタツであったまりたいと思う。

釣れなくても釣れなくてもただひたすらに撒き餌を打ち続ける師匠の鋼の如き屈強な心、残念ながら私は
持ち合わせておらず、どちらかと言えばむしろ生まれたばかりのヒヨ鳥の、産毛のようにか細い私の心は、
早くもペッコペコに折れた。



私「中野のおっさんやーい、帰るどー!」

会長「はー?  うそー、マジで? まだ撒き餌が大量に残ってるんやけど。」

私「別にええやん。どうせこの界隈には魚はおらんのじゃけー、いつまで粘ったって一緒っちゃ。
  早よー捨てて帰るっちゃ!」

会長「ま、まぁ、確かに生命反応はないのー。しょーがない。ちょっと待って。 
    それなら撒き餌を、永田撒きするから。」



説明しよう。永田撒きとは、人間観察の鋭い会長曰く、釣りに飽きた永田名人が余った撒き餌を撒く時に
さりげなく繰り出す技だそうな。


帰り際に、ブレーキランプを5回点滅は 「愛してる」 のサインとして有名であるが、
撒き餌ブレンダーを使って撒き餌をドカドカ撒く名人の永田撒きは、「そろそろ飽きたんですけど・・」という彼の、
「帰りたい」 のサインである。小野田一文字でよく繰り出される技らしい。


会長「大量に余ったモエビはどうする?」

私「捨てたらもったいないけー、裏山の泉にでも放流して養殖するわ。成功したらモエビ取り放題じゃ!」



帰りの車中、会長が私に問いかけてくる。

会長「ところで、結局左ハンドルはどうだったの?」

私「ん? 左ハンドル? 
  まぁ、自慢じゃないが、普通に使いにくかった。  やり辛いったらありゃしない。
  やっぱ、釣りも車も右ハンドルに限りますわ。」





左ハンドルといえば外車。
今日は愛車のメルセデスベンツ(4WD)での釣行!
息子はモエビを見て、
「エビちゃんだーいすき」と大興奮だったが、
私は I'm lovin' it のエビちゃんが大好きだ。
永田撒き
海のギャング。
どうかお願いだから、その格好で銀行に入って欲しい。



ちなみに彼のニット帽に書かれてある
「WINTER」とは、日本語で冬という意味だ。
ふ、降ってきたー