1月26日 レバーブレーキ2008!!
レバーブレーキ、大物に対した時でも即座に糸を送り出すことが出き、
巨大な魚も獲りやすくなる。
同じように糸を出すドラグとの違いは、ドラグはある程度の負荷がリールに
かかると自動で糸が出るのに対し、レバーブレーキは自分の意思で糸を送り
出せる。
「やばい、引きが強い!」と感じ、レバーを切り替えることで初めて糸が出る。
魚とのやりとりはよりスリリングで楽しいものとなるが、逆にそれだけ技術が
要求される、上級者向けの武器。
今日は、そんなレバーブレーキ付きの高価なリール「TYPE2」を、思わず勢いで
購入してしまった会長のレバーブレーキデビュー戦。
その日、会長は朝からテンションがすこぶる高かった。
釣り場に向かう車の中から既に、かなり興奮気味である。
会長「タコ、やばい、このタイプトゥー、むちゃむちゃゴールドじゃ・・・」
私「ほほう、TYPE2、なかなか良い感じですか。」
会長「違う。発音が違う。タイプツーじゃなく、タイプトゥーっちゃ!」
私「そ、そうなの? それはすまん。」
会長「あー、でもやべー、このゴールド感、なんか王者の色じゃのぉ・・・」
私「お、王者の色?」
会長「そうよ。百獣の王ライオンも、エジプトのファラオもみんなゴールドじゃろうが?
ゴールドこそ、キングの色じゃい。」
私「ふーん。そっか。
まぁ、ライオンキングだか何だか知らんけど、要はあんたが王様な訳ね? ほーう。そいつはすげーや。
よっ、この裸の王様! カレーの王子様!
リール、いきなりブッ壊れたらおもろいのにのー。 レバーとか、ポロッと取れんかいのー?」
会長「アホか。いきなり新調したばかりのクレッサをささくれにしたおっさんじゃあるまいし、
壊れるわけなかろうがや。
タコのクレッサ、ささクレッサ! タコのクレッサ、ささクレッサ! がーっはっは。」
む、むぅ、 なんかムカつく・・・
会長「あー、今日はこのリールからラインがバチバチーって走って、体感ショックが全身を駆け
巡るんじゃろうなぁ。」
私「今度は何っ? 体感ショック?」
会長「そうよ。全遊動で仕掛けを入れ、魚のアタリでラインがバチバチって走って、体中に電撃が
駆け巡るんよ!」
聞けば、何やら先日勉強の為にと購入した全遊動DVDの中で、九州の柴原さんって言うプロの人が、
「全遊動、最高に楽しいです。 感じてください、体感ショック!」 なんてコメントを言ってた模様。
で、それを真に受けた会長が、早速今日は新調したリールでそのショックを体感するんだそうな。
私「ふ〜ん。 そっか。 体感できるといいね・・・」
そんな訳で今日の釣り、会長がクロ狙いで私が適当にチヌ狙い。
ちなみに今日の気温、最高が6度で最低が-1度。
ここ最近寒い日が続いてるため水温は下がってるだろうし、厳しい状況が予想される。
案の定水温を計ってみると10.4度。2週間前よりも2度以上も下がっている。
海にはもう餌取りの姿はほとんどなく、頻繁に挿し餌が残って帰ってくる。
挙句、予報では無いはずの風が、実際には次第に強くなってきており、グローブはめてても
手がかじかんでくるような状況。
鉛色の空を流れる低い雲からは、いつ雨が降り始めてもおかしくない。
開始から1時間、早くも会長が 「タコに騙された〜、タコに騙された〜」とか言っている。
「バカ、勝負はまだ始まったばかりじゃろうがい!」と、会長に喝を入れるが、それは同時に自分を
鼓舞するための言葉でもある。
正直な話、実は私も少しだけ帰りたくなってきたところだ。
しかしなんだろう・・・ 冬の荒れた海には、人の心を弱気にさせる不思議な力があると思う。
失恋したときや事業に失敗した時なんかには、絶対近寄っちゃいけねぇな・・・。
そんなことを思いながら釣りを続けてると、水中浮きとガン玉でぎりぎりの浮力に調整していた玉浮きが
徐々にシモり始めた。
緩やかな表層とは違って、結構な速さの底潮が動き出したってことか?
水中浮き兼潮受が速い流れの底潮に引っ張られ、浮きを沈め始めたってことだな。
俗に言う二枚潮ってやつか。
何投かは続けてみたんだけど、海中に沈んでいった浮きではアタリを見極めることができないなと
感じた私は仕掛けを交換することに。
沈んでしまい、どこに流されてしまったのかさえわからない仕掛けを回収しようとリールを巻き始めると、
なんとなく重い。
「んっ?」 とか思ってると、なんかコンコンという感触。
とりあえず適当に合わせてみるとこれがなんと魚。 しかも意外や意外、結構な引きを見せてくれる。
上がってきたのは32cm程の寒チヌ。 体に似合わない強烈な引きで、私を楽しませてくれた。
私「中野のおっさんやー、釣れたどい!」 勝ち誇った顔で会長を呼ぶ。
会長「何が釣れたん?」
私「そりゃあチヌを狙っちょるんじゃけー、チヌに決まっちょろうがい!
いやぁ、おもろかった。サイズの割には良く引いた。レバーブレーキ炸裂ってやつよ。
早ぉ、あんたもレバーブレーキ使わんにゃ!」
会長「そ、そうじゃのー。それでアタリはどんなだったの?」
私「んっ? アタリ?
いやぁ、そりゃーもう超繊細で、わずかに浮きを押さえ込むような小さなアタリだったよ。
ほんの数ミリレベルかのぉ。あんたにゃ、あのアタリは取れんじゃろうのー。」
会長「嘘つけ。あんたがそんな言い方する時には、絶対アタリが取れてない時じゃ。
どうせ、微妙に浮きがシモってたんで、適当に合わせたら釣れただけじゃろうが?」
私「バレた? さすがに長い付き合いだけあって俺のことよく分かってるね。
まぁ、ひとつ訂正するならば浮きは完全に潜ってしまっていて、どこにあるかすらわからなかったんだけどね。
まぁええやん。釣れたんじゃけー。 めでたしめでたし。」
その後、一枚釣り上げ既に満足してしまった私からは、アタリはパッタリ遠のいた。
天候は回復し、まだまだイケそうな気はするんだけど、
私、一枚釣った満足感でそれまでの集中力が途切れると、以降はどうも釣りが適当になる。
めんどくさいのでタナを細かく取ることもせず、超適当。
それじゃダメだといつも思うんだが・・・。
対してこちら、電撃ショックを体感し、ゴールドのレバーブレーキを炸裂させるべくやってきた裸の王様。
指で押さえるリールからラインが走ることは無い。先を走っていたのは彼の妄想だけであったようだ。
相変わらず、 「タコに騙された〜、タコに騙された〜」と繰り返している。
そんな王様に、今日一番の見せ場が訪れたのは納竿1時間前。
「よっしゃ!」 の掛け声と共に豪快に合わせを入れた彼であるが、当然のようにスカ。
「んっ?どうした?」と話しかけるも、何故か無言で穂先を見つめる彼。 心なしか顔が青ざめている。
会長「や、やべー・・・」
私「んっ? 何が?」と、
彼が見つめる視線の先に目をやると・・・
そこにはこれまた正月に買ったばかりで、まだ1回しか使っていない彼の愛竿、
「NISSINアグレッサー磯1−5.0」の穂先が無残にも・・・
「会長、体感ショーック!」
私「ほら、朝私のクレッサを、ささクレッサとか言ってバカにするからバチが当るんだよ。」
とか言いながら折れた穂先を撮影してやろうと携帯持って近寄るが、
会長「人の不幸を笑うんじゃない!あっち行けペッペ」と、近寄らせてくれない。
私「いやいや、人の不幸を笑うつもりはないよ。
ただ、あんたの無様な姿を写真に撮ってやろうと思ってるだけだから気にしないで!」
と、撮影交渉を行うも決裂。 一応こっそり盗撮してみたが、うまく撮れてるかどうかはわからない・・・。
まぁいい。とりあえずこのスクープを誰かに報告せねばと、早速永田ボラ釣り名人に電話。
私「あ、もしもし永田? 会長が正月に買った竿、早速折ったよ!
今? あいつは今、折れた穂先見て放心状態。
もちろん魚は何にも釣れてないよ!うん。そうそう。踏んだり蹴ったり。 可愛そうだね。
俺?俺は釣ったよ。厳しい条件ながらチヌ1枚。
いやぁ、アタリはめちゃめちゃ小さい。
そりゃーもう、超繊細でわずかに浮きを押さえ込むような小さいアタリだった。
ほんの数ミリレベル。 多分、永田じゃあのアタリは取れんと思う。
えっ?嘘つけって?
どうせ微妙に浮きがシモってたんで、適当に合わせたら釣れただけじゃないかって?
バレた? さすがに長い付き合いだけあって俺のことよく分かってるね。
でも惜しい!今回は、浮きは完全に潜ってしまっていて、どこにあるかすらわからなかった状態。
適当に合わせたら釣れたの。
うん。まぁそんなとこ。
あぁ、会長に? おめでとうって伝えればいいのね? わかったわかった。 じゃーねー」
私「たいじー、 永田がおめでとうってさ。」
そんな私を無視して、無言で予備の竿を取り出し仕掛けを作り直している会長。
すると今度は彼、手が滑って、高価な水中浮きがコロコロポチャンと海の中へ・・・
「会長、体感ショーック!」
・・・・・・
会長「うぅー・・ ええいくそ、もうやめた。やめたやめた!」
結局、会長のレバーブレーキデビュー戦は、海面に浮かんだ巨大なゴミを相手に炸裂しただけに終わった。
「こんな所、二度と来るか!」と捨てゼリフを残して釣り場を後にした会長であったが、
実は、彼の体感ショックはこれだけに終わっていなかった。
翌日、なぜか死にそうな声の彼から電話が入ってくる。
会長「昨日の釣りがあまりにも寒かったもんで、風邪をひいてしもうたわ・・・
タコのせいで今、38度5分も熱がある。
苦しくて死にそうなんじゃが、どうしてくれるわけ?」
私「マジで? 会長、すごいじゃん! 願いが叶って。 ばっちり体中に電撃が走ってるじゃん。
これがほんとの、 体感ショーック ショーック ショーック ショーック・・・」
タイプトゥー | |
私のチヌを狙って、 追い払えど追い払えど寄ってくる泥棒猫。 奴にはもう、スカリの中のチヌしか見えていない。 |
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折れた穂先! バッチリ撮れてました。 「会長、体感ショーック!」 |