父さん・・・
富良野はもうじき、ラベンダーの季節なわけで・・・
父さん、この世の中には悪い人間がたくさんいるわけで・・・
僕は今日、富良野を出てから初めて人に騙されました。
中野という、血も涙も無い男です。
話は、前日へとさかのぼる。
中野という男「あ、もしもしたこ?明日の釣り、下関の彦島に行かない?
釣りの後で北九州に彼女とデートに行くから、下関方面で
釣りがしたいんだけど。
私「いいんだけど、彦島ちょっと遠くない?
俺、近場の小野田でいいんだけど。」
中野という男「車で1時間ちょっとじゃん。朝は車いないし、大丈夫。
明日の釣りは彼女も来るから、近くにトイレのある
釣り場じゃないとダメなんだよ。
いつもは、タコの都合に合わせて、徳山とか防府に行って
やってるじゃん。」
折角彼女も来ることだし、たまには俺に付き合って。」
私「でも、彼女がいるなら早く上がるんでしょ?」
中野という男「まぁね、でも昼まではやるから。」
私「そうじゃのー。折角彼女も来てくれて、一緒に昼まで釣るなら、
トイレが近い荒田港付近じゃないとダメじゃのー。
わかった。それで良いよ!」
ってことで、本日は下関市彦島の荒田港。
島と言っても、橋でつながってて車で行ける。
余談であるが、ロンブー田村敦の出身地である。
午後からデートがある会長とは、別々の車で行き6時前に現地到着。
私「お疲れっ!あれっ?彼女がいないね。彼女は後から来るの?」
中野という男「んっ?彼女? あぁ、急遽来れなくなった。」
私「あー、そうなの?そりゃ残念。でも、あんたは昼まで釣るんでしょ?」
中野という男「ま、ま、まぁね。」
私「そうか。それなら問題ないけど。まぁ、昼間でがんばろうぜ!」
この時は、彼のバッカンの中の撒き餌が、いつもより遥かに少ないことに
何の疑問も持たなかった・・・
お互いに何も釣れないまま3時間が経過した午前9時、何故か彼は
バッカンを洗い始めた・・・
私「ど、どうしたの? 釣りは?」
中野という男「あぁ、釣りはもう終わり。今からデート♪」
待ち合わせが10時やもん。早く行かなきゃ間に合わん。」
私「あれっ? 昼まで釣りするんじゃなかったの?」
中野という男「しないよ。だって待ち合わせ10時なのに、昼まで釣りしてたら
間に合わないじゃん。お片付けお片付け。
あ〜忙しい忙しい」
その時・・・ 私は、初めて自分が騙されたことに気付いた。
確かに、当初は彼女も来る予定だったのかもしれない。
でも急遽彼女が釣りに来なくなった上に、9時過ぎに帰ることを
私に言ってしまえば、
「たこは、わざわざ下関の彦島まで釣りに来ないかもしれない。
でも、初めての釣り場だし、一人は寂しいし、このまま彼には言わないでおこう。」
きっとそんな心理状態が働いたではないかと考える。
てゆーか、間違いなくそうなはず!
彼は単純なので、彼の考えることはすぐに分かる。
私「って、おいおい、俺はそんな事、一言も聞いて無いぜ?」
中野という男「昨日の夜、急遽決まったんだけど、あれっ?言ってなかったっけ?
まぁいいじゃん。
俺は帰るけど、タコはこれから夕方まで釣りすれば。
どうせ何も釣れんじゃろうけどね。 がーっはっは。」
「荷物をまとめてヨッコラしょっと。
まぁ、せいぜい君は、がんばってフグでも釣ってくれたまえ。
がーっはは。」
大笑いしながら帰っていく、中野とかいう男・・・
と、父さん・・・
ここ下関には鬼が住んでます。
人間の格好をした邪悪な鬼が。
僕はもう、誰の事も信じられないわけで・・・
そろそろ富良野へと帰ろうかなと思うわけで・・・
でも鬼の目にも涙という諺もあるように・・・
たった一寸でも、中野という鬼の中にも人の心が残っているならば・・・
彼はきっと私に、焼肉か回らない鮨をおごってくれるはず。
ってゆーか、とっととおごりやがれコノヤロー!
今日の釣り場 | |
父さん・・・ これが人の姿をした鬼です。 |
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9時過ぎの鬼のバッカン。 すでに丸洗いも完了しており、 帰る気満々です。 |