当初今週は22日の日曜日に中野会長と永田名人、3人での釣行予定であった。
しかしながら予報では22日は一日中雨。
急遽予定を繰り上げ、土曜日の釣行となった。

ちなみに急遽予定を変更したために会長は参加することができず、
永田名人と2人での釣行。

場所も、当初は魚影の濃そうな下関か徳山への予定だったのだが、
これまた急遽、夕方永田名人の家でチヌパーティを
やろうということになったので、近場の小野田一文字。

先週の感じでは、まだまだ釣果にムラがある印象で、腕の未熟な
我々では釣りきれないような印象であったのだが、果たして今週はいかがで
あろうか。

船長の遅刻というプチハプニングもあり、5時15分の船出となる。

適当に釣り座を決め、撒き餌を練り練り釣り開始。

開始早々、一文字の一番奥に行かれた常連さんが何故か釣り座を変えられた。

常連さん「漁師が網入れてて、網に仕掛けが引っかかる・・・」


昨日の昼までは無かったのだが、どうやら漁師の方が、この一文字のぐるり
周辺に網を入れられたようである。

そのため根掛かりはするわ、魚は警戒しているわで状況は芳しくない模様。

まぁ、漁師の方は本業であり生活がかかっておられるわけで、
我々はただの遊びなわけで・・・

たまには仕方ないと思いながらも、何か釈然としない。


全体的に激渋な状況を見て、さすがの船長も早々と8時には、

「こりゃ今日はもう駄目じゃ。」とあきらめられてしまった。

船長までがそんな弱気になられたら、我々は何を頼りに釣りをすれば
良いのですか?


動かない浮き。伝わってこない生命反応。
果たしてこの海には、魚がいるのだろうかと疑わしくさえなってくる。
一文字全体を、ただ刻々と、無益で空虚な時間だけが流れているような
気がしていた。


だがしかし、一人の男がこの重苦しい空気を打ち破ってくれる。

やる時にはやってくれる男、永田が口火を切って竿を曲げる。

「ちょっとみんな、何を暗い顔してるんだい? 
勝負はまだまだこれからじゃない?」と言わんばかりに、
得意のボラで一文字全体を励ましてくれる。



そしてまた数分後、  「よっしゃー!」

大きな掛け声と共に、再び彼が強烈なボラの引きに耐えている。

タモですくってあげて、自分の釣り座に戻ろうとする私の後ろで、再度

「よっしゃー!」 の声。


そして数分後、再び 「よっしゃー!」って・・・

な、何連発させるんですか?
この、全体的に激渋な状況で、あなたには何が見えているのですか?


昔、 「 F 」という、F-1レースをモチーフにしたアニメがあり、
その中で、主人公の赤木軍馬が、

「 何人たりとも、俺の前は走らせねぇ。」と言っていた。

今の永田名人はまさに、

「何人たりとも、俺のボラは釣らせねぇ。」 と言わんばかり。
まさにイケイケのアゲアゲだ。



永田「タコ、俺、釣れない気がしねぇ・・・」

ぽかんと呆気に取られている私の横で、今もまた楽しそうにグイグイと
竿を曲げている永田名人。


はっと我に返り、慌ててタモ持って彼の元へ駆けつけ、すくいあげる。

今日私は、完全に彼の下僕となってタモ係りをやっている。
だが、不思議と私に不満は無い。

むしろ、この激渋な状況下で、一人入れ食いの状況を作り出している彼を、
羨望と尊敬のまなざしで見つめていた。


永田「タコ、また来た。 タモじゃ!」

私「は、はいっ!」

果たして、自分の釣り座と彼の釣り座を何往復したであろう。
タモ持って、彼の元へダッシュしていた私の足がふいに止まる。

目の前に、信じられない光景が広がっていたのである。

遂に私は、この小野田一文字の波止の上で、奇跡の目撃者となった。


華麗にボラとのやり取りをしている永田名人の体からなんと、
奇跡のオーラが出ていたのである。

彼を優しく暖かく包み込むような、何匹ものボラのオーラが・・・。


私「な、なんてことだ。 

  遂に永田が・・・、   ボラと一体化しやがった・・・。
 
  彼の元に今・・・、   ボラの神が光臨した・・・。」


私の目には、いつしか熱い感動の涙がこみ上げていた。





 ←※注  これはイメージです。



差し出すタモの先にいるボラが、涙でにじんでよく見えない。

なんとかタモ入れを完了すると、彼がグイッと大きな手を差し出してくる。

私は、感動の涙でくしゃくしゃになった顔を隠すこともせずに
その手を掴み返し、満面の笑顔で熱い握手を交わす。


私は今・・・、奇跡の瞬間に立ち会った。



一通りボラの入れ食いラッシュも落ち着いた所で、ふと永田名人を見てみた。

クールに、じっと海を見つめる彼の横顔がまぶしい。

以前私は、彼を山口県を代表するボラ釣りの名手と書いたことがある。
しかし、それは間違いであった。

彼が今見据えているもの、

それは今まさに彼が見つめているその海の、遥か向こうの世界であると
いうことを。

そして私は気付く。彼が今目指しているものは、
WBCの完全制覇(ワールドベースボールクラシックではなく、
ワールドボラ釣りクラシック)であることを。

彼ならきっとその夢を現実のものにしてくれるだろう。



ふと私の視線を感じ、こちらをふり向いた彼と目が合う。

白い歯をこぼしながら、爽やかな余裕の笑顔で私に微笑みかけてくれる。

グッと私に親指を立て、再び自分の浮きへと視線を戻す彼。

格好良い。格好良過ぎである。

自信に満ち溢れた彼の横顔を見つめながら私は思った。


私「永田・・・、   最高だよ。

  やっぱりあんた、間違いなく名人だ。

  最高の・・・     


  ボラ釣り名人だよ。   ププッ 」






余談ではあるが、釣り終了後、永田名人の知り合いの常連さんが彼に
話しかけてこられた。


常連さん「今日の厳しい状況の中、永田君はよく竿を曲げていたねぇ・・・」

永田「いやぁ、ボラばっかりですよ。」     

常連さん「で、本命のチヌは何枚位釣れたの?」

永田「いや、チヌは全然釣れてません。全部ボラです。」

常連さん「そ、そうか・・・」






「 HIT! 」

おっととと、
走って走って、ケーソンの中に潜ろうとしたって、
そうは問屋が卸さないぜ!


軽く一丁上がりぃ!
どうだい?
良い感じのボラだろう?
折角レバーブレーキ付きのリールを
買ったにもかかわらず、ドデカい
ボラとのやり取りでも全然使っていない。

私が、「レバーブレーキ使わんの?」と
聞くと、思い出したかのようにレバーを
切り替えている。

ハンドルは、申し訳なさそうに
グルングルンと逆回りしていた。

散々レバーブレーキ自慢してたのに、
全然使いここなせてないじゃん・・・

そんな不便なもの、早くもいだ方が
良いって!

チヌパーティーをやるつもりが、
二人ともボーズ喰らったので、
急遽たこ焼きパーティーになった。

ドンマイドンマイ!


4月21日  神業!