10月25日 落ちぶれてすいません


前回、長府の一文字へ上がった際、我々の釣り方では釣れなかった

一緒にあがった別の団体さんは、
「ここの釣りは難しい。根本的に、釣り方を変えないと・・・」 とおっしゃられて
いた。

でも爆釣させていた方々の釣りは、何度か挑戦したことのある紀州釣り。
おまけに、少し高めの犬走りから立ったままの釣りは、防府の西浦漁港と、
ほぼ同じ釣り方。なんとかなるんじゃない?


ここ、関門海峡の流れは速く、そこで育ったチヌの引きは物凄く強かった。
前回のあの興奮が忘れられず、今度は本格的に団子を持ってリベンジと
なったのである。
会長もあのまま、「ボーズでは終われない、絶対リベンジ」とやる気満々だ。

会長にはあまり長所が無いが、釣りに関して負けず嫌いな所と、根拠のない
前向きさが私は大好きだ。


戦いは、前日から既に始まっていた。
私は、集魚剤を水で溶き麦に浸し、オキアミをサッとスライスして団子に
混ぜれば、副会長スペシャルの完成だ!  
におい最高、練りは絶品。
これで明日は、関門中のチヌが集結するに違いない。


さて翌日、期待に胸膨らませ、目覚める私がいる。時刻は4時。
集合の時間は4時40分であるが、前回大遅刻をやらかした会長のために、
起床確認のモーニングコールを行う。

Truuuuuuu Truuuuuuuuuu    留守番電話サービスセンターに・・・・


かぁー、こいつ、また今日もかよ・・・

しつこく5分位電話をかけ続ける。

Truuuuu   かちゃ


会長「何?」

私「はよ、起きろっちゃ!」

会長「起きちょるっちゃ! う○こ行っちょったんじゃい!
   あんまり電話がしつこいんで、おかんが起きてしもーたじゃろーがい!」

私「しらんっちゃ、はよ来いっちゃ!」


えーと、おばちゃん、起こしてごめん。
いつもたいじが寝坊するもんで、思わず出るまで鳴らしちゃったよ。

会長とは20年来の付き合いだから、当然おばちゃんとも長い付き合いだ。

以前私が下関へ電車通勤してた頃は、電車の中で同じ方面に通勤していた
おばちゃんと、カップルシート(普通の2人乗りの席)に一緒に座り、
ラブラブトーク(私や会長の近況など)を交わしたものだ。

だからきっと許してくれるはずだ。       おばちゃんごめんね〜♪

あ、それと、最近良い子見つけたみたいだから安心していいよ!
捨てられない限り大丈夫だと思うよ〜♪   
                            多分ね・・・


さて、今日は無事に時間通りに会長と合流。

いざ、長府一文字へ!

今日は、全体で7人での出港となる。

上陸し、棚を調整して、第1投。
竿を置いて、まだまだ混ざりきっていない団子を、

「団子混ぜ混ぜ〜、鼻くそほじほじ〜」とかオリジナルの鼻歌歌いながら
混ぜてると、浮きが視界からなくなっていた。

「んっ?」とか思ってとりあえず糸を巻くと、糸がジワーっと沖に出た後、
竿に魚の抵抗が伝わってきた。

「来たー」っと合わせを入れ、あがってきたチヌは28cm。
小さいけど、とりあえず釣れた。前回に引き続き、またも1投目から釣れるとは
幸先が良い。

会長に自慢げに報告に行くと、

会長「前回と同じく、1投目だけで、その後は釣れんっちゃ。」

と、嫌なことを言ってくる。

私「前回と同じなら、あんたはボーズじゃ!  へへっ」 と言い返す。


その直後、会長も 「きたー」 とか言って竿を曲げたので速攻駆けつけると、
あがってきたのは フグ太郎君。  
「びよよ〜ん」とあがってきた。


会長「かぁ〜っ、お前か〜!」

あがってきたフグは、漢字で「河豚」と書くだけあって、
「キューキュー、キューキュー」と、豚みたいな声で鳴いている。

私には、その声がまるで、

「僕だよ〜、僕だよ〜、チヌじゃなくて、僕だよ〜!キューキュー!」って
言っているように聞こえた。

会長に、その通訳したフグの声を伝えると、
「うるさい!このタコスケが」 と切れていた。

いやいや、俺が言ったんじゃなくて、フグが言ってるんだよ!
俺は通訳しただけだよ! キューキュー!


で、フグをリリースした次の1投、再び会長が竿を曲げた!
会長「さっきのフグとは全然違う。今度はチヌでしょ!」

あ、ほんとに結構竿が曲がっている。
今度は本気でタモを持って待ち構えていると、そこへあがってきたのは・・・


 「またまた僕だよ〜 キューキュー!
 また来たよ〜!キューキュー!」  

大笑いしながら再度通訳してやる。

会長「ま〜た お前か〜!!!」  なんか、顔を真っ赤にして怒っている。


いやぁ、おもろいわ〜。久々に笑った。  やっぱ釣りっておもろいな〜。  


で、

私「やっぱ、関門のフグはよう引くか〜?」とからかってみると、

会長「そりゃあ、ここは地元じゃけ〜の〜!」

との、予想外の答えが返ってくる。

下関のフグは日本一の水揚げ量ということを、引っ掛けての発言であった
ようだが、不覚にも再度大笑いしてしまった。

今日の会長、調子いいね!


その後、私が2枚追加した後の、午前11時以降は、関門特有の早い潮の流れが
我々を苦しめる。

会長にいたっては、釣りにならないんで、ちょっと寝るとまで言い出した。


会長「昨日も2時までメールしてたから、眠たいんでちょっと寝るわ。
   2時よ!2時。 どう思う?


私「いやぁ、どう思うとか聞かれても・・・
  アホやなぁ・・・   としか思わないけど。 
  他に何か思って欲しい?」

会長「まぁええ。 寝るわ。」  と横になる。


私「だから君はダメなんだと思うよ。」とか言って罵るも、無視して
あっちの世界へ行ってしまった。

一人でがんばるかと、釣りをするも、あり得ないくらい速い流れで、
釣れる気がしない。

相変わらず着水後の団子には、色んな餌取りが集まってきてはいるのだが・・・


・・・・・・

と、ここでふと、一人の男の姿が頭に浮かぶ。

急いで棚を浅くし、キャスト!



私「来た来た〜!  おーい、永っさ〜ん!」

関門は、急流のためかボラも良く引く!
慌ててボラ釣り名人の名前を呼ぶが、今日も彼はいなかった。
仕方がないので、会長を叩き起こす!

私「たいじー、写真撮って〜!」


暫くはボラ釣って遊んだのであるが、
結局その後も関門の急流は収まらず、午後3時撤収。
会長は、最後まで寝ていた。

後で彼のバッカンを見ると、私の4分の1くらいしか団子を使っていなかった。
だから君はダメなんだと思う。
釣りをする以前の問題じゃん。
「君も落ちぶれたねぇ。」と呆れ気味に言うと、

会長「いやぁ、落ちぶれてすいません。」 と、
貧ぼっちゃま風に開き直りやがった。

    
次の日、3回連続のボーズをくらい、このままじゃ気が治まらないからと、
一人近場の小野田一文字へ繰り出した会長。


やっぱり君は何かがずれてると思う・・・




会長「満珠島に上る朝日よ!
  俺が中野だ!」



朝日「だから何だ・・・」
干珠島
関門橋!
ご丁寧に靴まで脱いで、
深い眠りへと落ちていく。

だから君はダメなんだと思う・・・
風で飛び、散らばった会長のオキアミが
泣いていた。

放ったらかしにせず、俺達を使ってくれよと。
寝てないで釣りをしてくれよと・・・

結局、そんな声は会長には届かず、
彼等は不本意に、干からびていった・・・
HIT!
吠える銀狼!
いやぁ、良い曲がり!

相手はボラだけど、ナイスファイッ!



「お〜い、永っさ〜ん!」
一羽の鳥が、羽を休めにやってきた。

のどかな午後の、美しい関門の風景。

溜まっていたストレスが抜けていく。

さぁて、来週も仕事がんばろうっと!
いやぁ、よく寝たぜい!
爆睡後の一服はうまい!
今日もボーズを食らったが、
頭にきらめくフィッシングキャップから、
足元の磯靴に至るまで、
ファッションはどう見ても上手そうだろう?

もう、初心者なんて言わせない! イェ〜イ!
あの波止で逢おう!