10月14日 腕の差・・・

前々から上陸したいと思っていた釣り場、長府一文字。
ここでは、チヌの仕掛けに真鯛が食ったりクロが食ったりと、かなり魚影が
濃いとの噂。

前々から行きたいとは思ってたけど、台風やら何やらで延び延びになり、
本日初上陸!
永田名人は家庭の都合で来られないという事なので、初上陸は会長と2人
でということになった。

さて当日朝、期待に胸弾ませ会長を待つ私。
待ち合わせの時間は4時半であるが、すでに過ぎている。

まさかねぇ・・・

彼は遅刻の常習犯につき、10分位は待ってみる。
我ながら自分の寛大さにほれぼれしているうちに、案の定10分経過。

とりあえず電話。

Trurururu   Tururururu   「留守番電話サービスセンターに接続します・・・」

「いやいや、まさかねぇ・・・」

レッツリダイアル!

Trurururu   Tururururu  かちゃ

会長「 むにゃむにゃ  んっ? むにゃむにゃ  何?」



かぁ〜、こいつ、案の定やらかしやがった・・・


私「ちょっとおっさん、何寝とるん?(怒) バカやないん?」

会長「いや、寝てないよ。全然。  今何時?」

言ってることのつじつまが全然合ってないし。
一発でバレる嘘つくなっての。


私「もう4時45分。 何しよるんかっちゃ。はよ来いっちゃ。」

会長「わりぃわりぃ、すぐ行くわ。」


ったくもー、ほんとこのおっさんだけは、いつもいっつも遅刻しやがって。
冗談は顔だけにして欲しいよ。まったく。


彼と走れメロスを演じたら、きっとこんな風になるだろう。


メロス中野は走った。
日没までに刑場に着かなければならない。
日が沈んでしまうと、セリヌンティウスおたこが処刑されてしまう。

メロス中野「私は、この命に代えても走り続ける。信じて待つ、友のために。」

太陽が、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も消えようとした時、
メロス中野の携帯電話に、メールが入ってきた。

メロス中野「あ、ラブラブメールじゃ♪」

とりあえずその場に座り込み、メールを打つ、メロス中野。
何度かメールのやり取りをしているうちに、どうにも眠たくなってしまった。
「10分だけなら大丈夫だろう」と仮眠をとるメロス中野。

気付いたら日が沈むどころか、一度沈んだ太陽が、
東の空から上ってきていた。

次の日の朝だった。

セリヌンティウスおたこは昨日のうちに、さっさと処刑されていた。

そして、翌日になってのこのこと刑場にやってきたメロス中野は、
屍と化してしまった、セリヌンティウスおたこの前に立ち、こうつぶやく。

メロス中野「わりぃわりぃ、昨日はメールのやりすぎで疲れてて、
       思わず寝過ごしてしもーた。  許せおたこよ。」

ってな具合に、感動の物語も台無しになっちゃうんだろうな。
とか思ってたら会長登場。

会長「わりぃわりぃ、昨日はメールのやりすぎで疲れてた。
      寝たのは驚きの2時。許せおたこよ。」

ほらね。


急いで車に荷物を投げ入れ、「だからお前はダメなんだ」と、
なんか前にも同じこと言ったなとか思いながら、車を走らせ、
なんとか出港の6時に間に合う。

今日は、全員で8人。
我々2人と、今日が2回目とおっしゃられていた、北九州からの3人さん。
そして、かなり釣りのうまそうな常連さんが3人である。

この釣り場は、テトラとコンクリートの2箇所のいずれかに渡して
もらえるのであるが、我々は足場の良い、コンクリートの方へ渡してもらう。

とりあえず棚を調整して、第1投。
竿を置いて、まだまだ混ざりきっていない撒き餌を

「撒き餌混ぜ混ぜ〜、鼻くそほじほじ〜」とかオリジナルの鼻歌歌いながら
混ぜてると、一瞬浮きが沈んだように見えた。

「んっ?」とか思ってそのまま浮きを見てると、
今度はひったくるように浮きが海面から姿を消した。

「こりゃあ、いけん」と、慌てて竿を手に取り合わせると、

これまで体験したことのない強烈な引きが伝わってくる。
ドラグは、「ジジジジーーーー」ってな具合で、止まらない。

「この強烈な引きは、ひょっとして青物かっ?」
とか思ったりするが、私は青物の引きは体験したことが無いので良く分からない。

急いで、「犬走り」の上に飛び乗り、磯釣り番組で、
魚をかけた人が磯をぴょんぴょん飛びながらやり取りしているかのごとく、
魚について行きながらやり取りしてみる。

頭の中で、「俺今、すごくかっこいいぞ!」と
周囲にヤングレディーがいないか見渡すが、そこにはタモ持った会長しか
いなかった。

で、あがってきた魚は、丸々と太った本命のチヌ。

関門のチヌは、急流で育っているせいか、めちゃめちゃ引いた。
いやぁ、面白かった。

「たこ、そのチヌ貸して!」と、
おもむろにチヌを手に持ってポーズを決めている会長。

会長「このチヌ、俺が釣ったことにして写真撮って! 彼女にメールで送るから。
   昨日ちょっと喧嘩しちゃってさぁ、メール送るきっかけが欲しいんだよね!」

私「そうなん?別に、まぁいいよ。」って感じで撮ってやる。


幸先の良いスタートで、今日の釣りに期待が持てる。


で、6時間後、会長はなぜかシーバスロッドでルアーを投げている。
先週、小野田の一文字でハネ(フッコ)が爆釣してたのを見てのことだ。
彼はとっても影響されやすい。


かくいう私は、足元に集まってきている大量のボラに撒き餌団子をやっている。

案の定、朝一以降、チヌの顔は見れていない。


撒き餌をドカ撒きしているせいか、ボラやサヨリの数がすごい。

30cmを超えるサヨリ達も、撒き餌を固めた団子が着水するごとに集団で
飛び上がり、まるで

「ヒャッホーイ! 餌がきた〜♪」

ってな具合に喜んでる様に見える。

魚にバカにされてるようで少しだけ腹立たしい。


ふと、とある男の事が頭をよぎる。

私「こんな時、ボラ釣り戦隊永田マン」が居てくれたらなぁ・・・
 きっと、そこら中にいるボラを根こそぎ釣り上げてくれるだろうに・・・」

しかし今日、    彼はいない・・・

ちょっとだけ寂しくなった私は、遠く海の向こうの永田マンに思いを馳せ、
思わず名前を叫んでしまう。

私「永田マーン    
永田マーン     永田マーン」


すると、どこからか謎の男が出現。

謎の男「ん? 呼んだかい?」

私「えっ?いや、私が呼んだのは、ボラを釣るのがとっても上手な永田マンなの
  ですが、あなた様は?」         

謎の男「私はただ今、ボラ釣り名人永田マンの下で、ボラ釣りの修行をさせて
    もらっている、見習いの者です。」

私「あれっ? あなたは確か・・・

 どこかでお見受けしたことのあるその貧相な顔立ちと、
 勘違いも甚だしい 撮影会でのヤラセポーズ、
 外道の魚である、ベラでも小っ葉グロでも何でもお構い無しに持って帰り、
 あげくの果てには、げっそりと痩せ細った45cmのチヌまでもがっつりと食して
 しまうという伝説の・・・

 くされ戦隊、ゲドーマン!  」


ゲドーマン「く、くされの外道って・・・、なかなか酷いことを言うね・・・
      まぁいい。
      それで、どうした?ちびっこ、 いやもとい、
      不細工な面した、むさいおっさん!
      
私「む、むさいおっさんって・・・。     言ったわね! むむむっ、 ムキー!

  いや、あのですねぇ、さっきからボラが大量に沸いてて、どうにも
  こうにもうっとうしいので、永田マンに退治してもらおうと思ったのですが・・・
  なんとかしてもらえませんか? ゲドマンさん。」

ゲドマン「そうか、それならよし。任せとけ!」

おもむろにシーバスロッドを手にし、ラパラ(ルアー)を投げ始めるゲドマンさん。

ゲドマン「こうやってルアー投げてりゃ、そのうちボラやサヨリも散っていくでしょ。

  ってあれっ?団子と間違えて、キャストしたルアーにまでボラが付いて泳いで
  くるぞ。    って、んーっ?何か引っかかった。  あっ。ボラじゃ。 

  やべー、何か変なとこに引っかかってるみたいで、ぶち(物凄く)引く。
  やべーやべー、糸が切れる。高価なラパラが持って行かれる。 タコ助けて!」

相変わらず一人で何かおバカなことやってるゲドマンさん。

無視して釣りに戻るも、結局その後もチヌを見ることは無かった。


そして・・・、 

彼女と喧嘩中の会長の携帯に、返信メールが入ってくることも無かった。

会長「さっきの写真、俺が釣ってないって事が彼女にばれて、
    怒ってるんじゃろうか・・・」

私「さぁ・・・」



結論から言うと、ここの釣り場は難しい。
上手い人がやると、結構釣れるみたい。

事実、一緒にあがった3人の常連さんは、一人頭10枚ずつ位チヌを釣って
おられた。
手のひらサイズのクロは、数え切れないくらい釣れたらしい・・・

話を聞くと、常連さんは団子を使った紀州釣り。
我々もそれに近いことを行っていたのだが、全然ダメだった。

会長「釣れないねぇ・・・   何がダメなんやろ?」

私「んー、  会長の・・・   顔?」


常連さん「私は今年の4月から、ここで、ざっと200枚位のチヌ釣ったよ!」

私「まじっすか? すごいっすね・・・」

会長は、「私なんか、今年の3月から毎週のように色んな所に釣りに行って、
     ざっと20枚は釣りましたよ!」って、心の中で思ったらしい。

だから何?


いやぁ、しかし、腕の差を見せ付けられました。
まだまだ修行が足りませぬ。
本格的に団子を配合して、必ずやリベンジをと誓う2人であった。



で、帰りの車の中。

会長「あーあ、魚は釣れんし、メールは帰ってこないしどうしたもんかねぇ・・・」

私「行くしかないんじゃない?  富士の樹海へ・・・・」

会長「そうやなぁ。どうせ俺なんか、誰にも見取られずに死んでいくんじゃ。
    一人寂しく樹海へ向かうか・・・」って、

冗談で言ったつもりがちょっと本気に受け止めている。


私「いやいや待て待て、何をバカなこと言ってるの?
  絶対お前一人じゃ行かせやしない。

  その時は、俺もついて行くから安心して。

  ちゃんと携帯電話のカメラ持って。
  
  で、ホームページで逐一実況するから。

  行くときには絶対声かけてよ!」
                ↓

「おっと会長がたった今、未知の樹海へと足を踏み入れました!
 何をしているかと思えば、立ちションをしています。
 緊張感がありません。大丈夫なのでしょうか?  
 とりあえず写真に収めてみます!  パシャッ!」

ってな具合にねっ。  いひひ




で、後日、「ちゃんと よりが戻りました」って会長からメールが入る。


ちぇっ



長府の沖に伸びる、長府一文字
コンクリ側。
釣りやすい。
テトラ側。
釣りにくい。
チヌ釣りに来たはずなのに、
なぜかシーバスロッドで
ラパラ(ルアー)を投げている会長。

「おーい・・・」
またまたメール。

でも、今日は返事が返ってこない・・・
関門橋が見えま〜っす♪
私が釣ったチヌを持ち、
自分の手柄としやがった・・・

しかしぶち引いた。