7月29日  念願の夜釣り、そして・・・


いよいよと念願の夜釣りに行けるときが来た。

1週間、本当にこの日を夢見て頑張ってきた。
官能的な電気浮きのゆらゆら〜 が、もうすぐ見れる。

永田名人は、家庭の都合により、明日の朝合流。
私は朝帰るが、会長はそのまま名人と昼過ぎまで釣るそうだ。
会長はとってもタフガイだ。

さて、いよいよと出撃の時間が迫ってきた。

早くも大量の撒き餌を練り練りし、入念に忘れ物がないことも確認した。
でっかいスズキさんが来られてもいいように、かなり太目の仕掛けが
ワンセット。これは投げっぱなしでほったらかしだ。

チヌ用の仕掛けは、何があってもいいように、竿3本のリール2個。
懐中電灯も持ったし、ティッシュも忘れない。

万が一、う○こさんが非常口のドアをトントンとノックしてきても、
ここには誰もいないので、堂々と胸を張ってドアを開けてあげられる。
会長のバッカンに、こっそりと大きなお土産を残してあげたい。

一度船で渡ってしまえば、迎えは朝の4時半までやってこないため、
何があっても帰れない。

唯一心配なこと。それは・・・
お化けが出てきても、逃げ場がないということだけだ。
陸ならBダッシュをかませば振り切れるかもしれないが、イチモンジに逃げ場はない。

「ごめんなさい」と、心の中でひたすらに謝りながら、気づかないフリをしようと思う。

食料やアルコールをしこたま買い込み、18時、運命の汽笛が鳴る。

上陸後、仕掛けを投入して撒き餌に水を加えていると、さっそく私の浮きが水中へと
消えこむ。あがってきたのは、挨拶代わりのメイタっち、25cm。
型はイマイチだが、幸先はいい。今日は、大変なことになっちゃう?

現在、風がやや強めだが、会長の予報によると、19時には収まるとの事だ。
心配せずに、赤い揺らぎを堪能しよう。

19時、元々強い風が、少しだけ強さを増す。
まぁ、もうすぐ収まるよね?会長。

・・・・・・

20時・・・

予想通りというか、我々らしいというか・・・
やっぱり逆の意味で大変なことになっている。

先ほどから、私、無性に家に帰りたいんですけど・・・

風は治まるどころか、より一層強さを増して、少しでも気を抜くと、海に持っていかれ
そうになる。もはや、釣りどころではない。

二人共が心の中で密かに思ってはいるが、口には出さない禁断の言葉。
先に心が折れた私が会長に向かってつぶやく。

私「やばくない?これ」

会長「間違いなく罰ゲームやね・・・  これは。」

ちょっとイライラしながら会長に問う。

私「19時には風、収まるんじゃなかった?」

会長「知らんわい、気象庁がそう言いよったんじゃい!」


 「海のもしもは118番」   日本には太古の昔より、こんな素敵なことわざがある。



私「海のもしも・・・  今はまさに、そのもしもの時なのでは??」
私「えっとー、これ以上強くなったら呼んじゃいますか?  初の・・・」

会長「いやぁ、でも、新聞載ったら恥ずかしくない?
[山陽小野田チヌクラブを名乗る怪しい2人、荒れ狂う海に釣りに出て遭難のところを
無事に救助!]みたいなことになったら恥ずかしいやん。」


私「いや、でも、命あってのモノダネじゃ・・・」

ふと私の脳裏にキロロの名曲が流れる。  

「生〜きて〜こそ〜♪ 生〜きて〜こそ〜♪」


私「じゃからわしは、最初から夜釣りには反対じゃったんじゃ。
  爆釣やから行こうって言ったのはどこの誰かー!」

会長「なにをー、お前もあれほど楽しみにしちょったろーがー」

・・・           風は相変わらず強い。

とりあえず、道具が風に飛ばされぬよう、ロープでしっかり結んで、身を寄せ合う
バカ2人。

そんなこんなしてたら、22時、幾分か風が収まってきた。

青ケビ(青ケブ、青イソメ)を100グラムも買ってきた私は、予定通り竿を2本出す。
一本はほったらかしのスズキ用。嫁のお義父さんからもらった竿に、仕掛けを作って
キャスト!電気浮きが魚信を伝えてくれるが、一応鈴を付けて、あと、万が一でかい奴が
釣れても、竿を持っていかれないように、ロープを竿尻に結んでと・・・
あ、ロープはタックルボックスの中だ。
急いで竿を置いて取りに戻る。

このとき・・・  リールをフリーにしておけば・・・

急いでロープを取って戻り、竿に固定を・・・  って、竿がない。
ぐるり懐中電灯で見渡せど、竿がない。

ふと水面に目をやると、  なんと、電気浮きが揺ら揺らしながら、ぐんぐん沖に
走っている。一瞬で全てのことを悟り、慌ててさけぶ。

「かいちょー、タモ持ってきて!」  

その間にもどんどん沖に走っていく赤いゆらぎ&竿&リール。
もう間に合わない。
服を脱ぎ、海に飛び込もうとする私。

会長「行くな、行ったら死ぬど!」
後ろから私を羽交い絞めにする会長。

私「放せ、あれはお義父さんからもらった、大事な竿なんじゃー!」


一部フィクションでお伝えしましたが、恐れを知らない10代の頃なら飛び込んでたな。
だが、今は守るべきものもあり、体力の低下も否めない。
ほんとに遭難してしまう可能性は、昨今の確変CR突入率並だ。

お義父さんの竿はいくらかわからないが、恐らくあんまり高くない。
総額1万円程度の仕掛けのために、そんな危険は冒さない。私も大人になった。

でもちょっぴり、ほんのちょっぴりだけど行こうかなとも思った。
行かなくて本当によかったと思う。

そしてふと、 釣り人による水難事故は、こんなシチュエーション起こるんだなと感じた。

風はだいぶ収まっていた。

気を取り直して釣りに戻る。
チヌは全然つれないが、波止に沿って一回流すだけで、ほぼ確実にセイゴが釣れた。
そこそこ赤い光が揺らぐので、それはそれで面白い。

時刻は午前2時、ちょっぴり眠たくなってきた。

一通り揺らぎを堪能した会長が、先に横になる。

会長「タコ、こっち来て横になってみー、星空が綺麗よ。
                  なんだか・・・、プラネタリウムみたいじゃ。」

私「んなわけないやん。 会長、何しにここに来たん?  釣りするど〜!」

そういいながら、ふと空を見上げる。
ほんとに綺麗だ・・・
私も少しだけ横になってみる。

ぐるり見渡せば、満天の星空。
手を伸ばせば、いくつかの星に届きそう。
ぼーっとしていたら、なんだかこのまま神秘的な夜空に吸い込まれそうな、そんな
不思議な感覚に包まれる。

多分、合コンの後でお目当ての女の子をここに連れてくれば、一瞬で恋に落ちて
くれるだろう。

会長「タコ・・・・」

私「んっ?」



会長「好・・・  き・・・  」


「うげっ、きしょっ」と思った瞬間に目が覚めた。危ない。寝てた。
横には会長が寝てる。

慌てて何かされてないか確認する。大丈夫だった。
なんとも嫌な夢だった。


時刻は4時。 もうすぐ1番船と共に、永田名人がやってくる。


私「さぁ会長、釣りするど!」

東の空はうっすらと明るくなり始めていた。

その後、永田名人と合流の後、
私はチヌを1匹追加し、8時にはお先に失礼する。
昼まで粘った2人、
会長 1匹
名人 1匹

で、本日の釣りは終了である。
終わってみれば、心配していたお化けも出ず、竿は一本ロストしたが、
それなりに楽しかった。

また行きませう。


西の空へと日が沈む。
海は少し荒れているが、
この後もっと大変なことに・・・
チヌをはじめ、セイゴ多数。
それなりに電気浮きがゆらぎ
楽しかったです。