9月上旬 会長ぶち切れ!

中野会長。穏やか且つ、温厚な正確である。

彼とはかれこれ、25、6年の付き合いになるが、
会長が切れたところは見たことがない。

男なら誰しも、人生の中で1度や2度はぶち切れて、喧嘩をしたことがあるはずだ。
しかし、こと、会長に至っては、一度も本気で怒ったところを見たことがない。

どちらかというと彼は、いじられることが多く、いつ切れていてもおかしくないのだが、
常に我慢というかなんというか、とにかく、尊敬するくらい忍耐の男である。

そんな会長が・・・


その日は、会長と二人で、防府の、とある漁港に来ていた。

ようやく二人ともチヌつりの何たるかが分かってきた? そんな頃である。

朝一、周囲の釣り人の注目を一心に浴び、私が竿を曲げる。
型は小さかったが、周囲へのアピールはばっちりである。
特に、我々の先、波止の先端の小学生の瞳は、私の竿に釘付けである。

ふと・・・
ここの釣り場で常連のTさんが我々のもとへやってきて、自分の釣りはそっちのけで、
私の釣った魚の確認を行う。

そして、私の仕掛けと中野会長の仕掛けを一通り見た後、自分の釣り座へ帰って
いった。

1時間後、また私と会長の仕掛けを確認しにきて、帰っていった。

ぽつぽつ周辺ではチヌがあがっているが、我々にはその後、音沙汰無しである。

2時間後、また我々の仕掛けを確認に来るTさん。

このTさん、とても良い人で、色々と教えてくれるのであるが、少々口が悪い。

Tさん「普段、わしは人に釣りを教えんのじゃが、お前らは良く挨拶をするから
    教えちゃろう。」

まず、私の方を見て、

Tさん「お前は大丈夫。そのうち釣れる。」

私「はぁ・・・」   

続いて会長の方をみる。

私と、ほぼ遜色のない仕掛けである・・・      が、

Tさん「お前はおかしい」

会長「はい?」

Tさん「何かがおかしい」

会長「はぁ」

Tさん「棚か?いや、団子か。いや、何かがおかしい。何かが変だ。」

私「知ってます。会長は、変どころか、変態です。」

とは言わなかったが、しきりに会長に絡んでくる。

なぜか、こういうときにターゲットにされるのは、決まって会長である。

昔からそうだった。生まれもって、そういったイジられオーラがでているのだろう。

10数分にも及んだであろうか。Tさんは延々と会長に絡んでいる。
終いには、「何かがおかしい。 いや、お前がおかしい」

会長は何もしていない。ただ、楽しくつりをしていただけであるが、
なぜか最後には、お前がおかしい扱いである。

顔を真っ赤にし、ぴくぴくなっている会長。
頼む。耐えてくれ。お前が常連のTさんに切れたら、ここでは釣りができなくなる。
頼む。

会長「えっと・・・、もういいです。自分でいろいろやってみます。」

Tさん「そうか?ほれならがんばれ!」

ようやく立ち去ってくれたTさん。

会長、よく頑張った。痛みに耐えて、良く頑張った。感動した。
会長の栄誉を称え、釣りに戻る私。

ふと、波止にいた小学生が、岸に戻るために我々の後ろを通っていった。
と、一人の小学生が、会長の仕掛けの針にズボンを引っ掛けてモゾモゾしている。
数秒後に「よしっ」の掛け声とともに少年は針をズボンから外し、立ち去ろうとする。

会長「
よしっ  じゃねぇぞーこらー!

私「えっ? 」

会長「よしっ  じゃねぇぞーこらー!」」

私「はいっ?」

会長、小学生にぶち切れである。

小学生「すいません」

逃げるようにその場を走り去る少年。
なんとか会長をなだめ、落ち着きを取り戻す会長。

その後の彼の話では、Tさんへの怒りが小学生に向いてしまい、
思わず声を荒げてしまったとのこと。
本人も十分に大人気なかったと反省している。

その時の小学生さん。このホームページを見ていたら、
どうかこんな会長を許してやって欲しい。
そして、気にしないで欲しい。
釣りを嫌いにならないで欲しい。


残暑がとても厳しく、まるで真夏のような一日だったけど、
山の木々達は、緑から茶へと色を変えようとしていた。

秋はもう、すぐそこまで来ていた。