7月23日  47cm!

本日は、中野会長、私、永田名人の3人での釣行。
夕方5時位から釣りを始め、本虫メインで粘る。小さな当たりはコツコツあるものの
とりきれない。まぁ、餌取りであろう。

ぼちぼちみんなやる気がなくなり始めた午前12時前、残った最後の本虫も
ボンレスハム状態(もうふにゃふにゃになって、使い物にならない状態)である。

永田名人はもう竿をたたんでいる。

中野会長と最後のボンレス本虫をわけ、

私、キャスト。「シューン」   ぽちゃん

会長、キャスト。「シューン」   ぽちゃん      

「って近いやん。ニアピンやん。」


僅か数センチの間隔で漂う、私の電気浮きと会長の電気浮き。

この瞬間こそが、我がクラブの伝説の釣技、
夫婦(めおと)浮きの誕生の瞬間である。

「まぁ、最後やからええか。」

竿をほったらかしにして、私も会長も帰り支度を始める。

周囲は真っ暗である。
ふとすれば時間が止まっているのではないかとの錯覚さえ覚える。

波の音だけが、ここにも時が流れていることを教えてくれる。

2つの赤い電気浮きの光が、暗い闇に吸い込まれるかのような、
幻想的な光景が広がる。

片付けがひと段落したところで、中野会長が浮きを見つめながら、口を開く。

別れた奥さんがまだ好きであると。できることなら復縁したいのだと・・・。

好きな人談義。さしずめ、中学生か高校生の修学旅行の夜といったところであろうか。

しばしの沈黙の後、永田名人がそっとつぶやく。


「最後にあのたいじの電気浮きが入ったら、前の奥さんとよりが戻るぞ!」
         (中野会長)

戻るわけはない。今度は小学生の修学旅行の夜のような、ありえない妄想である。

こんなアホな会話を交わしてはいるが、みんなそれぞれに家庭があり、守るものが
ある。いや、約1名は、その守るべきものを失っているが・・・

んっ?ふとニアピンで並んでいる2つの電気浮きのひとつがもぞもぞしている。

会長「あっちゃー、絡まった」

私「も〜、なんしよるんたいじ〜!」

  「まぁええ、巻くわ。」ジリジリ
   ああ?、なんか重い。たいじの糸と絡まっちょる。も〜」

中野会長の浮きが、私の巻く浮きについてくる。絡まっているのである。

今度はリールが巻けなくなる。

私「も〜、あげくに底に引っかかった〜。くっそー」

とりあえずやけくそで、びゅんびゅん、竿をしゃくる。

私「んっ?んんっ?  なんかついとる!  んんっ?  
魚じゃ!

反射的に合わせを入れる。
竿が弧を描く。完全に乗った。

しかも、これまでに釣ったチヌとは明らかに引きが違う。
     (まぁ、今までといっても、7月9日の2枚しか釣ったことがないのであるが。)

更に合わせを入れた際に、会長のラインが切れていたようで、会長の電気浮きが
どんどん沖へ流されていく。が、今はそれどころではない。

ゆっくりゆっくりその大きな魚体が水面にあがってくる。

「チヌじゃ」

皆が同時に叫ぶ!

私「タモッ!タモッ!はやくはやく!」

永田名人がタモを持って駆けつける。
一回すくい上げ、ほっとしたのも束の間、途中で落とす。

3メートルくらいの高さから、また海へと戻るチヌ。
とりあえずまだ糸はつながっている。

私「いや、マジでマジで!早く!お願いじゃけ〜!」

このやりとり、会話を今でも鮮明に覚えているのであるが、
「マジでマジで!」の意味不明な言葉からも、そのときの一杯一杯さが伝わってくる。

死闘の末上がってきたのは、47cmの巨体。
生涯3匹目のチヌがこのチヌである。





最後の1投でのメイクミラクル。これだから釣りは面白い。

この日は、余韻と興奮がなかなか冷めず、しばらく寝つくことができなかった。

その後、流されていった中野会長の浮きは、遠く海のもくずと消えていったので
あるが、それを見た永田名人の一言。

「浮きが遠くに消えたっちゅーことは、前の奥さんとのよりも戻らんね!」

見事に落ちがついた。