11月23日  今自分にできること



「わったんの結婚式、余興の取りで何か出し物をやって欲しい。」


山陽小野田チヌクラブ関東支局のクラッチからそんなオファーが舞い込んできたのは、
10月も終わりに近づいてきたある日の昼休みのことであった。
聞けば、11月23日に東京で行われる彼の式の余興、皆でDJ OZMAを踊った後に、
私に何か出し物をして欲しいとのこと。

「そうか。ついにわったんも結婚か・・・。」

青春時代にツルんでいた仲間の、最後の独身貴族であった彼の結婚。
友達関係では、恐らくこれが最後の結婚式になるであろう。
昔は色々とバカなこともやってきたし、無茶もやってきた。
だが時は経ち、みんながそれぞれに歳を取り、私もそれなりに大人になった。


私「ごめんクラッチ・・・。  
  俺もう、昔みたいにバカはできないよ・・・
  適当にOZMAの後ろで手拍子してみんなに合わせるからさ、
  取りは東京組で考えてよ。」

クラッチ「そっか。何かやってくれると思って楽しみにしてたんだけど、
      それならまぁ、仕方ないね。別の手を考えるよ。 それじゃ。」

私「うん。それじゃ。」


そう言って電話を切ったものの、どこか煮え切らない私がいた。

「何かやってくれると思って楽しみにしてた。」と言う、クラッチの言葉が脳裏に
 染みついて離れない。

なんだろう、この心のわだかまりは・・・。



誰もが一度は経験する青春時代。
楽しかった思い出が頭の中に蘇る。

放課後、皆でたむろっては、たばこ吸ってギター弾いて原チャリ乗って。
将来の事なんて、何も考えずにバカやって笑って。

あの頃は、自分達が就職して結婚して子供育てるっていう今の姿なんて、
想像すらしてなかったな。

一人結婚しまた一人結婚し、そして私も結婚して、いよいよ独身最後の雄である
わったんも結婚か。

誰かの結婚式の余興で出し物をするのも、これが最後かもしれない・・・。

モヤモヤを捨てきれない私に、心の中に潜むもう一人の自分が語りかけてくる。


「副会長のおっさんよー、お前、いつからそんなに丸くなっちまったんだい?
 いつも心だけは若いと言いながらも、結局は歳のせいにして逃げてるだけなんじゃねぇ?
 30過ぎてさー、見た目は老け込んだにしてもよー、
 持ってるハートまで腐らせちまったら、お前自信までがそこで終わっちまうんじゃねぇ?」


心の声に、その日は一日中仕事が手に付かなかった。


帰宅途中の車の中で、自問自答を繰り返す。

「確かに・・・   それもわかるんだけど・・・。」


家に着き車を降り、ふと星空を見てみた。

秋の澄き透った空気の向こう、何万光年も先にある数え切れない星達が、
遥かな時空を超え、今すぐにでも舞い降りてきそうな錯覚。


十数年前、海にキャンプに行き、何日も家に帰らずに皆でバカやったあの夏。
夜の砂浜に寝っ転がって、いろんな事を語り合いながら見上げた星空も
確かこんなだったっけ。

そんな青春時代を共にした友人達も、皆結婚し、新たな道を歩み始めている。
日本中に散って、それぞれの生活を送っているみんなが一同に会する機会も
これが最後かもしれない。

そんな大事な、ある意味皆の新たな旅立ちとなる席で私は・・・


再びもう一人の自分が語りかけてくる。


「まったくよぉ、煮え切らねぇ男だよなぁ?
 いつからお前は、そんなちっぽけな男に成り下がっちまったんだい?
 青春時代を共有した仲間内の、最後の集大成とも言える式の余興でよー、
 折角頼まれたオファーを断って、お前はただ皆の後ろで手拍子して、
 適当にやり過ごすつもりなのかい?
 ボーっとつっ立ってよー、ただ式を傍観してるだけなのかい?
 つまんねぇ男だよなぁ。
 ったくよー、何とか言ったらどうなんだい?  副会長のおっさんよ〜?」


私「・・・・・・・・

  ・・・  否  ・・・

  俺が・・・   俺がやってやる・・・

  俺がやらずに誰がやる?


  やってやろうじゃねぇか。 
  友達最後の結婚式、ド派手に盛り上げてやろうじゃないの!」


西の空で、大きな星がひとつキラりと流れ、消えて行った。


よし、余興で何かをやるという覚悟は決まった。

後はどういうキャラで式に臨み、如何に盛り上げるかである。

色々と考えながら家へと入ろうとしたその時、家の中から嫁の罵声が聞こえてきた。


嫁「誰が晩ご飯の前にお菓子を食べろって言った?」

息子「そんなの関係ねぇ!」


何々?どうした? 二人の中に割って入り実況見分。

聞けば、何やら嫁が楽しみに隠していた「キットカット」を息子が見つけ、
晩ご飯前に全部食べてしまった模様。


息子「なぜか〜  ママが〜 怒ってる 

   でもそんなの関係ねぇ   はい、おっぱっぴー!」


一丁前に振り付けまでつけて嫁に反抗している息子。
どうやら、行きつけの保育園でも、おっぱっぴーが大ブレイクしているらしく
そこで覚えてきた模様。

以前は怒られる度にベソかいてた息子が今では、「はい、おっぱっぴー!」である。

たくましくなった。 父として嬉しく思う。

そんな成長著しい息子の勇姿が、今回私の進むべき道を示唆してくれた。


「息子よ、父の背中を見て大きくなれ。
 そして友よ、新たな船出となる良き日に、最高の笑顔でスタートを切って欲しい。」


たくましく成長している息子に父として。
また、人生の門出を迎えようとしている仲間に友として。
今の私にできる、精一杯の演出。


小島・・・      よしおだ。


結婚式?  めでたい席?  そんなの関係ねぇ!


こうなりゃ新郎よりも目立ってやる!


だが、ただ海パン履いて小島よしおを演じても芸がねぇ。

そうだ。芸と言えば、
確か押し入れの中には、前に新年会で使ったハードゲイの衣装があったはず。

ハードゲイの衣装で会場狭しと走り回り、
 「そんなの関係ねぇ!」 と連呼しまくったら面白いんじゃね?

いや、でも待て待て。
そんな奇抜なスタイルで、逆に会場が静まりかえってしまったら・・・


 「ええい、知るか!そん時ゃそん時!
 なすがままに。  レットイットビーじゃ!
 長州男児のド根性を見せちゃるわい!」


ということで、ここにハードゲイと小島よしおの奇跡のコラボレートが実現。


当日は、私以外の仲間で DJ OZMA を踊り、最後にハードゲイの
私が郷ひろみのモノマネで登場、下手こいて小島よしおという流れとなる。


お下品な格好、恥ずかしくないと言えば嘘になる。
だが、途中で躊躇してしまっては、それを悟った観客は笑ってはくれないはず。
なりきって、演じ切るが賢明。
また、早いテンポの「そんなの関係ねぇ」で、噛んでしまったらそれこそ台無し。

新たなスタートを切る友のため、家で父の成功を待つ息子のため、
そしてこんな私に大取の大役を任せてくれたみんなのためにも、失敗は許されない。
出勤途中の車の中、昼休み、向かいのホーム、路地裏の窓、
それこそ24時間、寝る間も惜しんで 「そんなの関係ねぇ!」の練習に没頭。


そして当日、
前座のDJOZMAが終わり、クラッチが叫ぶ!

クラッチ「それではここで、もう一人のスペシャルゲスト、新郎の保育園の頃からの
     友人である  ヒロミ 郷 さんで〜す!」


会場に 「GOLD FNNGER '99」 が流れる。

満を持してハードゲイ姿の私が登場。
ステージに上がり、モノマネで第一声。

「 ゴー で〜す♪」    

場内、軽く静まり返る。 だが、引き下がるわけにはいかない。


予定通り、新郎の名前を間違えて下手こく私。

「こんな空気の中で行けるのか?」  

半信半疑のまましゃがみこみ、例の音楽が流れるのを待ちながら思う。

「やばい、このまま滑り続けたら・・・ 
 最後まで一人、静まりかえった会場内でそんなの関係ねぇを連発するのか? 」 

雰囲気に飲まれ、完全に気持ちは負けていた。  

「駄目かもしれない・・・」と、弱気に後ろを振り返ってみると・・・


そこには、輝かしい青春時代を共にした、古の仲間達がいた。
あの頃、共に全力で突っ走った親友達のまぶしい笑顔があった。
どれだけ時が流れ過ぎようとも、決して色褪せることのない変わらない友情が、
弱気になっている私の背中を後押ししてくれる。


私「み、みんな・・・」


音楽が流れ始める。

デケデンデケデンデケデンデケデン ズンズンズンズンズンズンズンズン

「あそれ、あそれ、あそれそれそれそれ!」


羞恥心とプレッシャーで潰れていきそうな私を、彼らが手拍子で盛り上げてくれる。


「俺は・・・  一人じゃない!」     


勢いよく立ち上がり、歌い出す。
今、これまでの人生の集大成であるステージの幕が上がった!


「結婚式で〜 名前を間違えた〜! ほんとはカズヒロなのに、五郎って言っちゃった!
 でもそんなの関係ねぇ、でもそんなの関係ねぇ! はいおっぱっぴー!
 ちんとんしゃんてんとん。 ちんとんしゃんてんとん。」


緊張が・・・   快感へと変わっていく。


 「なぜか、衣装はハードゲイ! でもそんなの関係ねぇ。

 後ろでお尻がはみ出てる! でもそんなの関係ねぇ。」


私はプレッシャーを克服、いや、むしろ自らそれを楽しんでいた。


「なんて楽しいんだろう・・・

 みんな・・・   もっと・・・   そうだ、もっと・・・     もっと俺を見てくれ!


俺のこの、はみ出たお尻を・・・  片足だけが半分ずり下がった靴下を・・・

おまけに革靴だ。 どうだ? すごいだろう。  完全に変態だ。」



結婚式なんて関係ねぇ。 私は今、極限の領域へトリップした!


「へ〜ん〜た〜い〜 Foo〜!」


「親族一同引いている? でもそんなの関係ねぇ!
 結婚おめでとおっぱっぴー!」


最後は音楽の終了と共に、お決まりのポーズで締め!

そこには一人、おっぱっぴーのポーズで華麗にFinishを決める私が居た。

会場がウケていたか静まりかえっていたかなんて、はっきり言って覚えちゃいない。
でも、会場の空気なんて私には関係無かった。


大事なのは、与えられた環境の中で、自分が精一杯がんばれたかどうか。
人からの評価なんてどうでもいい。
自分自身が、満足のいく頑張りが出来ていればそれでいい。
飾らず、気取らず、ありのままの自分を表現できたならば・・・。

バカと言われたっていい。蔑まれたっていい。
自分を偽って生きるくらいなら、バカを通した方がよっぽどマシさ。
ずーっとバカをやってやる。 一生バカで生きてやる。


いいか息子よ。これが私の生き様だ!
父の背中目指してついてこい!
いつか越えて行くその日まで。


「生 〜 き 〜 ざ 〜 ま 〜  Foo 〜!」

そんな感じで、新たな快感に目覚めた私であった。



さてと、
とりあえず息子にも物心がついてインターネットをやり始めるまでには、
このホームページも削除しとかなきゃいけねぇなっと・・・




「おらおら〜

もっと強い酒持って来い〜!

シラフでこんな格好ができるかってんでい!」
「 ゴー で〜す♪
 
はい、という訳でですね、軽く滑りましたところで
友人を代表して挨拶をさせていただきます。

新郎の、権田原五郎君! 結婚おめでとう!」
「何? 新郎の名前を間違えてるって?


あっ、やべー  どうしよ・・・」
「あ〜   下手こいた〜
デケデンデケデンデケデンデケデン

「ウェーイ!

あそれ、あそれ、
あそれそれそれそれ〜」

新婦の友人の皆様へ。

我々が結婚式で共有した時間は、長い人生においての
ほんの一瞬だったかもしれません。

でも、忘れないで下さい。
新郎の友人に、一人の変態がいたことを・・・

そして、くじけそうになったら思い出してください。

私のはみ出た、おしりの事を・・・・



   ぷりりん♪

結婚式での出し物?
私に出せるものと言えば、こんなものしかありませんが・・・




   to be continued