第16話 タバコについて
私は、2年半前にタバコをやめた。
2年半前の初冬、長男が生まれるまさにその直前、
私は全室禁煙の産婦人科病院の外に出て、満天の星空の元で煙をくゆらせていた。
少し肌寒い感じが心地良い初冬の透き通った空気の、その遥か彼方で
きらめいている星達に話しかけるように呟く。
「ついに俺も・・・、 人の親だよ・・・。」
こんな、何の取り柄も誇れる物も持たない私が、今まさにこの世に生を受けようと
している我が子のために、これから何をしてやれるだろう・・・
煙を口に含みながら大きく深呼吸し、ふぅっと一息つく。
とりあえず・・・、 タバコやめるか。
若かれし頃、溜まり場にたむろって隠れるようにタバコを吸う先輩達が、
少し悪びれて格好良く見えた。
大人が決めた社会のルールというものを、少しだけ逸脱しているようで。
とりあえず、見よう見まねで1本のタバコに火をつけたのが全てのはじまり。
最初は見た目だけ、プカプカと口の中だけでふかしていた煙を、いつしか肺の
奥深くまで吸い込むようになり、気付いたときにはヘビースモーカー。
喫煙者の、その始まりの多くはこんな感じではないだろうか。
ほんのわずかな精神の安定を得る為に、1日300円もの大金を失い、健康な体を失う。
このホームページを見てくれている、これからちょっと背伸びをして、
タバコでも始めてみようかと考えているちびっ子諸君に、大きな声で物申したい。
「タバコは決して格好良くないですから!
公共の場での肩身が、どんどん狭くなって来てますから!
気がついたら、ニコチンの魔の手から抜け出せなくなりますから!
タバコの値段、ぐんぐん上がってきてますから!
月のお小遣い、どんどん無くなっちゃいますから!」
「そんなこと言われても、すでにすっかりヘビースモーカーになってしまっているよ。」
と言われる方、ご安心あれ!
一体どのようにすればタバコをやめられるのか。
方法は、至極簡単で単純明快。
すばり、タバコを買わないことである。
今では、ニコチンパッチやらニコチンガムなどの便利グッズも色々あるが、
私には必要なかった。
タバコが無ければ欲しくても吸えない。
買わなきゃ吸えないのである。
私には必要なかったが、ライターや灰皿など、タバコ関係のものを根こそぎ捨てて
しまうのも効果的であると思う。
あと、これは一番の必殺奥義で、それこそ特許が取れるんじゃないかと思うくらいの
秘密の技を公開してしまうのだが、それは、ずばり、深呼吸をすることである。
「ちょっと吸いたいな!」って思ったら、大きく深呼吸をしてみて欲しい。
不思議と吸いたい気持ちが落ち着くから。
えっ?吸いたい気持ちが収まらない?
そんなときには、もう一度大きく息を吸って・・・
いかがですか?
個人差はあると思いますが、私はこれで乗り越えられました。
禁煙をお考えの方は、だまされたと思って、是非一度お試し頂きたい。
とまぁ、ここまで偉そうな事を書いておきながら、やめたとは言いつつ、
年に何回かは人にたかって吸っている私が言うことなので、
あまり説得力はないのだが。
まぁ、自分で買ってないからセーフでしょ・・・
って、ダメ?
2007.03.21