第7話 あの夏の日
また夏がやってきた。
テレビでは、高校球児達が熱く白球を追いかけている。
私には、この時期になると必ず思い出してしまう、思い出したくない過去がある。
おそらく一生忘れることはできないだろう・・・
「予選大会での痛恨のエラー。」
私のたったひとつのミスが、チームを敗北へと導いてしまった。
仲間達は、気にするなと言ってくれ、誰も私の事を責めなかった。
それが、団体スポーツのチームプレーにおける鉄則。
頭ではわかっていても、暑い夏がやってくる度に夢に出てくるあのシーン。
あの一瞬に差し出した手が、スローモーションで蘇り、そこではっと目が覚める。
あの夏我々も、確かに全国大会を目指していた・・・
当時のチームは、全国大会へ出場してもおかしくないほど、高いレベルにあった。
まぁ、全国大会とは言っても、全国高校生クイズ大会であるが。
広島平和公園での予選会。
多くのライバル達が、全国大会への切符を求めて、気合十分だ。
我々のチームは、私、永田名人、クラッチの3人だった。
3人とも、クイズの本を勉強し、雑学を頭に叩き込み、新聞を読んだ。
やることは全てやった。
福澤アナが登場し、熱気は最高潮!
そして・・・
予選第1問が出題される。
問題の内容は覚えてないが、私がYESで、永田とクラッチがNOという答えを
はじき出した。
多数決に・・・ しておけば良かった。
若かった我々は、何を思ったかじゃんけんで結論を出すことになった。
私がチョキで、2人はパー。
思わず勝ってしまった。
そのチョキを出す手が、スローモーションで夢に出てくる。
予選の、たった1問目で、我々の青春は終わった。
家に帰るまで、皆が無口だった。
押し黙った我々をあざ笑うかのように鳴くセミの声が、いつもより余計にうるさく
感じた。
セミ達は今日も、狂ったように鳴いている・・・・
2006.08.16