第6話 奇跡の生還

それは、高校1年のときである。
当時は、林間学校なるものが学校行事としておこなわれており、
我々は、十種ケ峰キャンプ場へと行くことになった。

お決まりのカレーやら何やらを作り、順調に事が進んでいた
2日目の山登りで事件は起こった・・・
頂上まで上り、弁当を食べ、さぁ、これから下山だというときだった。

先生、中野君がいません!
同じグループだったY君が点呼時に、彼が居ないことに気づく。

とある女子「そういえばさっき、中野君が茂みに入っていくのを見ました!
   その時には気にも止めなかったんですが、もしかしたら・・・」

とある女子の目からは、今にも涙がこぼれそうだ。

とりあえず、皆で彼が最後に目撃された地点へと向かう。

その茂みの中には・・・

今まさに誕生したばかりと推測される、
超特大の う○こ があった。

私「原因はこれか・・・」

彼が茂みに入った理由はわかったが、肝心の彼が居ない。

「おーい、中野ー」   「中野くーん」
当然返事は無い。

とりあえずこのままではらちが明かないので、みんな一旦下山することに。

ひょっとしたら、このでっかいマーキングを頼りに、彼が帰ってくるかもしれないことを
期待しつつ・・・


下山後、あたふたしている教職員陣。
とりあえず学年全体が前庭に整列させられる。

列の一番前に立ち、先生の事情説明が始まる。
先生「今、みんなの仲間である、2組の中野君の行方がわかりません。」

  事情を知らない、他のクラスからどよめきがもれる。

先生「これから捜索隊を派遣しようと思います。」

  どよめきが加速する。

マイク越しに先生のため息が聞こえた、次の瞬間だった・・・

とある女子が、山の上を指差し、

「あっ、中野君!」と叫んだのだ!

一斉に皆が振り返る。

そこには、一歩一歩、しっかりした足取りで下山してくる、中野君の姿があった。

いやぁ、感動した。
そのときのBGMには、ロッキーが、敵をノックアウトした際に流れる、
あの曲がぴったりだ。それくらい感動のシーンだった。

どこからともなく、拍手が起こる。
その拍手はどんどん大きくなる。

「なかのー! 「なかのくーん!」

皆が、彼の無傷の生還を称え、
中には涙をこらえられない女子もいる。

拍手と大声援に迎えられながら、それに手を振り応えながらゆっくりと、
そしてしっかりと確実に下山してくる中野君。

どうやら道に迷い、島根県との県境まで行ってしまったとのことであった。
今のすさんだ世の中では、なかなか見ることができない、現実に目の前で
起こった感動の物語。

私は、この感動の物語を一生忘れない。


ただ・・・   行方不明になった理由は誰にも言えない・・・


                                      2006.07.22