第2話 信じられぬ大人との争いの中で・・・

それは、今から17年ほど前、中学2年の文化祭のときのことである。
当時は「イカ天」などに影響を受け、押しも押されぬバンドブーム。
我々の周りでも、みんなやれエックスやら、やれブルーハーツやら、やれプリプリやら
のコピーで、当時の一大イベントの文化祭に望んだのである。
そのバンドの評価しだいでは、今後、女子にモテモテの学校ライフが約束される。
いやがおうにも気合が入る。

そんな大事な、一大イベントの文化祭で、私と、山陽小野田チヌクラブの中野会長は
何を血迷ったのか、女装をし、当時人気絶頂だった、WINKの物まねを行ったので
ある。しかも、お互いほっぺに口紅で、ぐるぐる渦巻きまで書くといった念をいれた
女装である。今考えると大変恐ろしいが、当時はこれで「明日からモテモテやね♪」
と二人ほくそ笑んでいたのだから、二人とも頭があまりお強くない。

女子達に猛アピールをするために、二人ともやる気満々である。
ちなみに、会長がさっちん。私が翔子役である。

1ケ月前から二人、コンサートの準備、振り付けや歌詞など、完璧に頭に叩き込む。
当日は持ち時間20分。その限られた時間で、どれだけ女子にアピールできるかが
勝負を決める。
そして、途中には、「突然ステージ上で、病に倒れこむ会長、それを心配し、助ける
私。そして二人元気にまた歌いだすといった、小劇場まで準備してある。」
完璧なシナリオである。明日からのモテモテライフはすぐそこだ!

さて、迎えた当日。我々の出番が回ってきた。
いよいよ幕があがり、我々がど派手に登場!

「どうも〜 WINKで〜っす♪」

まばらな拍手! 冷たい視線! 何?といった会場の空気!
いやいや、ノープロブレム!
我々には、スパイスの効いた小劇場という名の最終兵器がある。

開始5分
「ハローウェー  チャカチャンチャチャンチャチャンチャン」
気持ちよく歌っていたそのときであった。

「はい、WINKはここで終了です。」
突如流れるティーチャーM田のアナウンス。
20分の持ち時間を、15分も残しての終了確認である。
当然、スパイスの効いた小劇場も登場していない。
しらけきった会場の空気を読み、ティーチャーM田が早々に終了させた
のであった。

私「え?どうしてですか?」
会長「これから面白くなるんです!」
ティーチャーM田「はい、WINKのお二人、どうもありがとうございました!」
我々の声は届いていない・・・

これが権力なのか。
これが大人のやり方なのか。
俺たちは腐ったみかんなのか。
もう、大人達なんて信じられなかった。

この日はとにかくもう、学校や家には帰りたくなかった。
盗んだバイクで走り出したかった。
いや、バイクを盗んだら犯罪なので、二人で自分達のチャリンコで走った。
そのまま海まで走り続けようと思ったけど、途中で雨が降り出したし、
お腹が減ってきたので家に帰った。
ほろ苦い青春の一ページである。

おっと、忘れてました。その後会長は、「エロブタ」なる素敵なあだ名を頂き、
ある意味素敵なスクールライフを送ったのでありました。




途中で止められる前の私と会長。
気分はまさに、寂しい熱帯魚である。



 
                                      2006..05.08